差別・偏見やヘイトスピーチを助長する「嫌韓」デマ・中傷に対抗・反論するウィキです。

「嫌韓」の主張

朝鮮学校の女子生徒のチマチョゴリが切り裂かれる事件があるとたびたび言われるが、不審な点が多い。これは在日による自作自演ではないか?

反論

「自作自演」説に根拠は全くない。また、「自作自演」説の根拠とされる文章にそれを裏付けるような記述もいっさいない。

(注意)この記事の後半部分には、悪質なヘイトスピーチの事例画像が表示されています。閲覧にはご注意下さい。


『マンガ嫌韓流』第五話「反日マスコミの脅威」の中に、チマチョゴリ切り裂き事件が朝鮮総連による自作自演だと示唆するような記述(p146ー153)があります。『マンガ嫌韓流』はその説の根拠としてルポライターきむ・むい氏が1994年に『宝島30』12月号に発表した「チマ・チョゴリ切り裂き事件の疑惑」という記事(きむ・むい氏の記事全文はこちら)を紹介しています。

『マンガ嫌韓流』できむ・むい氏は「切り裂き事件について自作自演ではないかと疑惑を持ち」(p147ー148)と紹介しています。しかし、きむ・むい氏の記事には「自作自演」という言葉は一度も出てきません。

きむ・むい氏は「国際情勢や日本国内世論が北朝鮮にとって圧倒的に不利になると、なぜかチマ・チョゴリは切られだす」(『宝島30』1994年12月号p34。以下同)ことなどについて「うさん臭い」と言い、「では、それ以外の年には、朝鮮学校の女子生徒に一件の被害も発生していないのだろうか。もしそうなら、それはそれでずいぶん不思議な話である」(p34)と疑問を呈し、取材を行います。その結果、「北朝鮮関連で、とくに何かが起こった年とは言えない」「何もなかった年」(p36)にもチマチョゴリ切り裂き事件が起きていること、すなわち「北朝鮮にとって不利な時」以外にもチマチョゴリ切り裂き事件や朝鮮学校生徒への嫌がらせ事件は恒常的に起きている(※注1)にも関わらず、朝鮮学校や朝鮮総連が充分な対策や被害者へのケアを行わず、ただ北朝鮮批判を抑えるための手段として政治利用していること、また朝日新聞が朝鮮総連・朝鮮学校の発表を裏取りもせずに記事にしていることを批判している(※注2)のであって、「自作自演」という結論は出していません。したがって『マンガ嫌韓流』による「チマチョゴリ切り裂き自作自演説」は全く根拠のない妄説と言えるでしょう。


なお、『マンガ嫌韓流』では他にもチマチョゴリ切り裂き事件に関する「疑惑」の根拠を挙げていますので、以下でそれぞれ検証していきます。
記事発表の数ヵ月後にきむ・むい氏が変死?

『マンガ嫌韓流』では断定こそしていないものの、あたかもきむ・むい氏の死に朝鮮総連が関係しているように印象づける描き方をしています。確かにきむ・むい氏の記事は朝鮮総連に対して批判的なものですが、『マンガ嫌韓流』がほのめかしているような、朝鮮総連に致命的なダメージを与えるものでもありません。また、もし仮にきむ・むい氏の死に朝鮮総連が関わっていると疑われる要素があったならば、警察が見過ごすことはまずあり得ないでしょう。日本の警察はそれほど無能ではないし、またそれ以上に朝鮮総連に対して優しくも甘くもありません。
民団(韓国)系の学校で服を切られる事件はない?

そもそも韓国学校ではチマチョゴリを制服にしていませんから、「チマチョゴリ切り裂き事件」は起きようもありません。ただし拉致問題が話題になった2002年、韓国学校の生徒・児童が「朝鮮に帰れ」などの罵声を浴びせられるという事件が確認されています。また、これは『マンガ嫌韓流』出版後の出来事ですが、2012年には韓国学校の生徒が見知らぬ男性から暴行を受ける事件が起きています。
朝日新聞報道の「被害件数124件」に対し被害届は22件?

朝日新聞が発表した「124件」という数字は朝鮮総連の発表を元にしています。それに対して同じ期間、警察への被害届が22件であったことが、あたかも不自然なことであるかのように語られていますが、これは犯罪事件における認知件数(警察が把握した犯罪事件の件数)と実際に起きた犯罪件数に差が出るということを知っていれば何ら不自然なことではありません。たとえば痴漢や性暴力の被害者の全てが被害届を出すわけではない(恥ずかしい、被害自体を忘れてしまいたい、取り調べの過程で事件について根掘り葉掘り聞かれるのが嫌だ、もし犯人が捕まっても傷が癒されるわけではない、など様々な理由で)、ということを考えてみるとわかりやすいでしょう。実際、大韓航空機爆破事件の後、二度にわたって背後から首を絞められるという被害に遭った女子生徒は、一度目こそ警察に届けたものの、警察の反応は鈍く「言ってもむだだし、その取り調べ方がいや」だったため、二度目の際は被害届を出さなかったそうです(※注3)。なお、2002年に「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会」が朝鮮学校の児童・生徒にアンケートを実施したところ、朝鮮学校側が把握していない事件に関する回答もあったとのことです。これらの事から「実際に起きた件数>朝鮮学校が把握し、発表した件数>被害届の件数」であることは容易にわかります。
金日成が亡くなった直後、「あたかも喪に服するかのように」チマチョゴリは切られなくなった?

これは正確に言えば「金日成が亡くなった直後はチマチョゴリ切り裂き事件について朝鮮総連から発表がなかった」ということです。先に述べたように、朝鮮総連・朝鮮学校が被害を訴えていない時期にもチマチョゴリ切り裂き事件や生徒への嫌がらせは起きています。


この他、『マンガ嫌韓流』には出てこないものの、ネット上などに書かれているチマチョゴリ切り裂き事件にまつわる「疑惑」についても触れておきます。
犯人が逮捕されたことがない?

これは「チマチョゴリ切り裂き事件」に限定すればその通りですが(切り裂き事件はたいてい被害者に気づかれないよう、背後から行われます。被害者がチマチョゴリを切り裂かれたのに気づくのは犯行から時間が経ってからのことがほとんどのため、容疑者を特定するのはかなり困難です)、それと同時に行われた朝鮮学校生徒・児童に対する嫌がらせについて言えばその限りではありません。きむ・むい氏の記事でも、被害届が出された22件のうち2件について被疑者が検挙されたことが紹介されています。
犯人が日本人とは限らない?

確かに犯人の全てが日本人と断定はできないでしょう。しかし、日本における犯罪の98%が日本人によるものであることを考えれば、大多数が日本人によるものと考えるのが自然です。逆に、もしそのほとんどが日本人ではない、と主張するのであればよほど強力な根拠が必要でしょうが、現在の所そうした主張を裏づけるような明白な根拠は存在しません。
全てが排外主義・レイシズムに基づくものとは限らない?

これもまた、全ての事件がそうだと断定はできません。実際、日本の女子生徒が制服を切られる事件もあります。また先に挙げた22件の被害の中には強制わいせつも含まれており、これが「たまたま朝鮮学校の生徒が被害者になっただけ」という可能性はあります。ただ、朝鮮学校から日本の学校に進んだ辛淑玉氏は「民族服からセーラー服に替えたとたん痴漢にあう数はぐんと減った」と述べています(余談ですが、痴漢や性犯罪の加害者は一般に「抵抗したり騒いだりしなさそうな人」をターゲットに選ぶ傾向があります。そこから考えると、仮に差別意識や排外意識がなかったとしても、チマチョゴリ姿の生徒をより「弱い存在」と見なしてターゲットにした可能性は充分考えられます)。また、「朝鮮に帰れ!」「朝鮮人のくせに」などの罵倒を伴う事件が多く見られることを考えれば、日本の排外主義・レイシズムが大きく関わっていることに疑問の余地はありません。
「電車内でキムチを盗み食いされた」という被害?

ネットでは、朝鮮学校生徒の保護者が「ラッシュアワーの中で持っていたキムチを盗み食いされた」と訴えたとするテレビ報道画像が拡散されています(たとえばこちらのブログ)



要は「こんな荒唐無稽なことを言うなんて、やっぱり嫌がらせ被害なんて嘘じゃないか」と言いたいのでしょう。

しかしこれはテレビ報道の字幕を改ざんしたものです。実際の報道映像がYoutubeに保存されています。







このような改ざんは単なるデマであるというだけでなく「在日は自分達が被害者だと主張するためにはこんなとんでもないことまで言うのだ」という「見下し」のメッセージをも込められた悪質なヘイトスピーチでもあると言えるでしょう。

「自作自演説」による深刻な二次被害


ところで、この「自作自演説」の流布は、現在深刻な二次被害をもたらしています。チマチョゴリ切り裂き事件以外の差別被害に対して「自作自演」「なりすまし」というような心ない言葉を投げつけるという事例が頻発しているからです。



こうした事例は氷山の一角にすぎません。また最近では悪質な差別事件について「日本を貶めようとする在日コリアンの自作自演・なりすまし」などという根拠のない主張も見られます。



更に酷いのは、在特会などによる極めて悪質なヘイトスピーチすら、「在日コリアンによる自作自演・なりすまし」と決めつける例(※注4)です。




こうした事例は、それ自身が悪質なヘイトスピーチであると同時に①被害をなかったことにし、②責任を被害者・被差別者側に押し付け、③被害告発の声を抑圧・封殺する、という点で何重にも悪質なのです。

こうした悪質な事例を生み出すことになった、チマチョゴリ切り裂き事件自作自演説、およびその拡散に大きく寄与した『マンガ嫌韓流』の責任ははなはだ大きいと言わざるをえません。


関連ページ:
朝鮮総連の幹部が「自作自演だった」と告白?
朝鮮総連関係者が「自作自演だ」と告発?


(※注1)
こうした事件が被害者にどのような傷をもたらすのかについては、以下のブログなどが参考になります。
チマチョゴリ制服の話。


(※注2)
このきむ・むい氏の結論については賛否あると思われますが、ここでは留保しておきます。

(※注3)
『世界』1994年11月号、下嶋哲朗『<ルポルタージュ>「チマ・チョゴリ切り裂き事件」を追う 日本人は変わらないか』より。

(※注4)
このような主張は、一見在特会と対立しているかのように見えます。しかしどちらも深刻な差別をネタ化し、消費しているという意味では同じ穴のムジナと言えるでしょう。

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