差別・偏見やヘイトスピーチを助長する「嫌韓」デマ・中傷に対抗・反論するウィキです。

「嫌韓」の主張

2014年、最高裁が「外国人への生活保護は違憲」という判決を下した。

反論

誤読、もしくは悪質なデマ。判決は「外国人の生活保護申請を却下したのは違法ではない」という判断を示したもので、外国人への生活保護の是非についての判断を下したものではない。

在特会のホームページには10分で分かる在日特権Q&Aというページがあり、その「生活保護編」という項目には次のような記述があります。
「国民への最低限度の生活保障」を国に義務付けた憲法に基づいて、生活保護というシステムは成り立っています。憲法が義務付けるのは、あくまで『国民の保護』であり、そのため外国人に対する生活保護は憲法違反との声が非常に強いのです。本来、外国人の保護は第一義としてその外国人が所属する国(在日であれば韓国政府)が行うべきものなのです。外国人への保護は、ある意味においてその外国人が所属する国家への主権侵害ともいえるのではないでしょうか?
(太字による強調は引用者)

これに対してはすでに在日コリアンFAQ「在特会」への反論その3で反論がなされています。

ここでは「荒唐無稽」「一笑に付されるのがオチ」と一蹴されていますが、驚くことに在特会と同じようなことを現役の政治家、しかも政党の幹事長が主張しています。
今年最高裁は「生活保護費を外国人に支給することは違憲」との判決を出したが、いまだに「違憲状態」が放置されたままだ。生活困窮の外国人に対しては、まず母国が保護すべきであり、緊急の場合のみ期間を限定して保護するような新制度に変えるべき。
次世代の党幹事長 山田宏 2014年11月21日のツイート



ここで山田宏氏が言及している「最高裁…判決」とは、いわゆる「永住外国人生活保護訴訟」に対して2014年に下された最高裁判決のことを指していると思われます。これは永住資格者である中国籍の82歳の女性が、生活保護申請を却下した大分市の処分を違法とし、処分の取り消しを求めていた裁判で、福岡高裁では女性の訴えが認められたものの最高裁では棄却されました。マスコミでは「永住外国人は生活保護法の対象外 最高裁、二審を破棄」(朝日新聞)「永住外国人の生活保護認めず 最高裁が初判断」(日本経済新聞)「生活保護外国人は対象外 中国籍女性が逆転敗訴」(読売新聞)などと報じました。こうした報道を目にして、事情に詳しくない人が「外国人の生活保護は本来法律違反なのか」と勘違いしても仕方がないかもしれません。しかし政治家(しかも京都大学法学部出身)の山田宏氏が上のような発言をするのは非常に問題です。

山田宏氏の発言のどこが誤りかを指摘する前に、まず生活保護法と在日外国人の関係について(上記の在特会への反論と重複する部分もありますが)見ていくことにします。

生活保護法と在日外国人


日本に「生活保護法」ができたのは敗戦間もなくの1946年。この1946年の生活保護法(旧生活保護法)では日本国内にいる生活困窮者が対象で、国籍による制限がありませんでした。この旧生活保護法は1950年に現在の形の生活保護法に改正されます。新しい生活保護法は対象を「日本国民」と定めました。しかし1954年、厚生省は「当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて」生活保護を与える、すなわち生活保護法を外国人にも「準用」するとの内容の通知を出しました。

ここで注意しておきたいのは、日本国民に対する生活保護の根拠が生活保護法であるのに対して、在日外国人に対する生活保護の根拠は「生活保護法」ではなく「厚生省の通知」であるという点、そして日本国民に対する生活保護が「適用」であるのに対して在日外国人に対する生活保護が「準用」である点です。前者と後者で異なるのは、後者、つまり在日外国人の場合、生活保護を申請し、それが却下されても「不服申し立て」ができません。また生活保護が打ち切られたり、減額されたりしても同様に不服申し立てはできないことになっています。

さて、日本は1979年に国際人権A規約、1981年に難民条約を批准します。これらは社会保障などについて内外人平等(国籍によって差別してはいけない)をうたっているため、日本国内の社会保障に関する法律の国籍条項が撤廃され、たとえばそれまで日本国民のみを対象にしていた国民年金に外国人も加入できるようになりました。当然国籍条項のある生活保護法についても議論がなされましたが、「実質的に外国人にも準用されており、内外人平等の原則と矛盾しない」ということで、それまでの状態、つまり「日本国民に適用、外国人には準用」という形が維持されることになります。

最高裁判決では何が棄却されたのか


さて、ここで永住外国人生活保護訴訟の最高裁判決文を見てみましょう。

「永住外国人生活保護訴訟 最高裁判決」判決文

原告の女性が訴えていたのは、外国人も生活保護法の対象として認められるべきだ(ゆえに申請を却下した大分市の処分は違法だ)というものでした。前述したように福岡高裁ではこの訴えが認められ、最高裁では棄却されました。ざっくり言うならば福岡高裁は生活保護が事実上・手続き上外国人も日本人とほぼ同様に扱われていること、また国際人権規約や難民条約の内外人平等の原則と生活保護法の国籍条項について国会で審議された内容などを踏まえるならば、生活保護法が外国人にも準用される(生活保護法の対象となる)と主張したのに対して、最高裁は生活保護法があくまで「国民」を対象としたもので、外国人にも生活保護が与えられるのは正式な法改正によるものではなく「通知」によるものに過ぎない、よって「外国人が生活保護法の対象となる」というのは誤りであるとし、女性の訴えを棄却しました。言い方を変えると、福岡高裁は「実質・実務」を重視したのに対して、最高裁は「法の原理・原則」を重視した、と言えるかもしれません。

しかし、福岡高裁も最高裁も、生活保護が外国人に準用されてきた経緯については認めており、それが憲法違反であるなどとは言っていません。以上のことから、冒頭に挙げた山田宏氏の「憲法違反」というのは誤り、もしくはデマです。どちらにしても政治家としての資質が厳しく問われなければなりません。

永住外国人生活保護訴訟から見えてくるもの


さて、この裁判から見えてくるものは何でしょうか。

先に述べたように、国際人権規約・難民条約を批准した際、生活保護法にも「内外人平等の原則」との整合性が求められました。しかし、「実質的には平等と言える状態だから」ということで法改正されることもなく、つまりは日本国民と外国人との不平等が維持されたまま現在に到っています。今回の最高裁判決はそうした、今までうやむやにされてきた不平等の歪みが晒されたものと言えるかもしれません。

「国際人権規約・難民条約の内外人平等の原則を遵守すべき」という立場に立つなら、それに反する不平等状態は是正されなくてはなりません。しかし現在はそれと反対の声が目立っています。先の山田宏氏のツイートは1日で500以上リツイートされ、寄せられた支持コメントの中には排外主義をむき出しにしたヘイトスピーチも少なくありません。

山田宏氏が幹事長を務める次世代の党は、公約の一つとして「生活保護を日本人に限定すること」を挙げています。在日なら生活保護が受けやすい?でも触れていますが、外国人生活保護受給者には無年金状態のため生活保護に頼らざるを得ない在日コリアンの高齢者が少なくありません。そうした人の多くは日本での暮らしになじんでおり、帰国は困難です。そうした人々から生活保護を奪うのは「死ね」と言うのと同じです。山田氏はじめ次世代の党の人々は、自分たちがどれだけ暴力的な主張をしているかという自覚はないのでしょうか。あるいは、排外主義者の支持が得られるのならば、踏みつけにされる人々などどうでも良いと思っているのでしょうか。

【追記】
この記事を執筆している途中でツイッターを見たところ、山田氏が新たにツイートしていました。

「外国人への生活保護費の支給」に関しての最高裁判決を、「違憲」とツィートしたが「違法」の入力ミス。指摘感謝。生活保護法は外国人への支給を定めたのではないとの最高裁判決に基づき、生活保護法による外国人への支給を禁止し、緊急の場合に期間を定めて外国人対象の特別法を制定すべきだ。
次世代の党幹事長 山田宏 2014年11月22日のツイート


「違憲」を「違法」に変えても誤りもしくはデマであることに変わりありません。むしろ、外国人への生活保護を禁止すれば、それは国際人権規約及び難民条約違反になり、どうしても強行するというならこれらから脱退しなくてはならなくなります。


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