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木下某 5/27(木) 22:46:52 No.20100527224652 削除
逃れきれぬと観念をして、服を着て居間で話をする。
珈琲を入れる智晴を見るとあの時にこの場面から始まったなと思いながら智晴を見ている。

今、この時点では後ろから抱きしめれば話は先延ばしだな、抱きしめたい欲望が涌いてくる。
智晴がキツイ眼でこちらを睨んで私の行動を制した。

珈琲を入れてきて私の前に座った。

誤魔化す・誤魔化す・・・頭の中を渦巻いています。
謝罪・土下座何でもします。意気地の無い私が浮かんでます。

「木下君、美由紀と私たちのことどこまで知ってるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「言いたくないの?それとも言えないの?」

怖い、言いそうになるのをじっと堪えて

「言いたいことが有るなら智晴が先じゃないか?」

言った言ったよ。強気な発言。でもそれ以上が続かない。
単発の蛇花火みたいものです。効果は期待出来ないのが大きな欠点です。

「そうね、何から話せばいいのかしら」

暫く沈黙の後重い口を開いた。

「美由紀と私は高校時代からの友人なの。彼女は短大に私は四年制に」

呆然として珈琲カップを持つ手が震えていた。

美由紀が就職して二年が過ぎ智晴は大学を卒業そのまま親父の会社に就職した。
智晴が就職してすぐに美由紀から、出来ちゃった結婚をする連絡がくる。
式は六月に身内だけで内々にして披露宴とかはしない。
高校・大学の仲間でささやかなお祝いをした時に、ご主人になる人が木下君と知って驚いた。

私はその話だけで言葉が出ません。そんな昔からの付き合いか。

「ネエ〜木下君何時から気づいていたの?まさか全て気づいていて手の上で躍らせたとか?
遣りかねないよね。君なら」

隠し切れなくなった私は言葉を一つ一つ選びながら話し始めた。

「疑惑のピースの一片は、昨年美由紀が社内移動になったことに有る」

「何でそれが疑惑に繋がるの?」

「子供たちが手が離れパートでもと思っておじさんの会社に就職したと言うことは、お袋が相談したと思うんだ。それなら、おじさんの眼の届く部署の総務にずっと置いておくはずだ。
美由紀に何か間違いが有って、お袋たちに知れたらおじさんの立場ゼロだからな。おじさんは今でもお袋に頭が上がらないんだろうから」

「そうなると移動を画策した人物がいる。それが智晴、君だよね。
部長の女の好みを熟知していて餌として撒いた。そんなところだろう」

「そんな風に考えたのか。相変わらず読みが鋭いね」

褒められて何も出ませんよ。出るのはため息だけですよ。
自慢する気にもなりません。これから先の智晴のきつい追及を考えると恐ろしくて。

身を乗り出して聞き入る智晴に話を続ける。

「二片目は智晴が二十八まで処女だと言った事。部長は騙せたかも知れないけどばればれの嘘だろう。
思わず吹き出しそうになった。余りにも三文芝居で」

「やっぱりそう思った。木下君に言って私もヤバイなと思ったのよ。完全に疑ってたとわね。
御くびにも出さないなんて詐欺師よね」

「最大の失敗は俺に智晴が抱かれたことだろうな。昔の智晴なら絶対に有り得なかった。
何故抱かれたか?それを突き詰めて考えると全ての断片が繋がっていった」

「君と美由紀はお互いにアリバイを補完し有って男と遊んでいた。違うか?」

ここまで断定して引くに引けないぞ、どうする。目の前を弱気の虫が飛んでいます。
心臓がドキドキと音を立てます。

「その通り、二人で良く遊びにいったわ。
美由紀は木下君の実家に子供を預けて、私が結婚して出産するまで散々遊んだ」

冗談で言った積もりです。当てずっぽうだったのにそれが真実とは眼がくらみます。

「でも美由紀が木下君と結婚するまでバージンだったのは事実。それだけは信じてあげて欲しいな」

予想外の展開です。思っても見ませんでした。

「木下君、美由紀をこの話に巻き込んだのは全部私が悪いの。だから美由紀を責めないで欲しいの。
自分を強く責めているの、美由紀は」

そう言われると私は困ります。なんせ意気地なしですから。
強気に弱い性格ですから今大変に困ってます。

私は冷めた珈琲を飲みながらじっと智晴を見ている。



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