おっとい嫁じょ

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おっとい嫁じょ～日本の略奪婚　日本の奇習①

　昭和34(1959)年、鹿児島県串良町(現鹿屋市)に住む二十二歳の青年Ｋは、
義兄から結婚をすすめられ、二十歳の女性Ａ子を紹介された。
ＫはＡ子に一目惚れし、その場で結婚を申し込んだ。
しかし10日ほどしてＫはＡ子の兄から、Ａ子には結婚の意思が無いと断られてしまった。
　諦めることができないＫは、「Ａ子と強引に関係を持って婚姻に同意させよう」と決意。
義兄ともう一人と協力してＡ子を誘拐することにした。
　Ａ子が隣市の職業安定所に行くとことを聞いた三人は、待ち伏せしてＡ子を食堂に連れ込み
結婚の同意をするよう説得したが、Ａ子は応じなかった。
改めて安定所から帰るＡ子をタクシーに無理矢理連れ込んで食堂に連れ込んだ後、
「自宅へ送る」と嘘をついて三度タクシーへ乗せ、
Ａ子が「途中下車させてくれ」と懇願するのも聞かず知人宅へＡ子を連れ込んだ。
　Ｋはそこで恐怖に震えているＡ子に対して二度に渡り強姦をし、全治五日間の裂傷を負わせた。
さらに協力した２名もＡ子を輪姦した。その後解放されたＡ子は警察に駆け込みＫは逮捕・起訴された。
しかし、裁判でＫの弁護人は驚くべき主張をする。
それは「被告人の居住地である串良町地方には、婚姻に同意しない婦女をして婚姻を止むなく承認させるため、
相手の婦女を強いて姦淫する「おっとい嫁じょ」という慣習があり、右姦淫行為は一般に適法視されている」というもの。
つまりＫは風習に従っただけで無罪であるという主張だった。
　たしかにＫたちが住む鹿児島県大隅地方には古くから『おっとい嫁じょ(嫁おっとい)』と呼ばれる風習があった。
「おっとい」とはこの地方の方言で「盗む」という意味。つまり“略奪婚”である。
結婚を望む男が相手女性を誘拐・監禁し、協力者たちで説得することで結婚を強引に承諾させる。
Ｋの両親も父かつて親が母親をおっとい嫁じょすることで結婚していたという。
　しかし裁判官は「供述調書からはＫが『おっとい嫁じょ』の反社会性を認識していたことがうかがわれる」として、
弁護人の主張を退け、Ｋに対し懲役三年を言い渡した。

　略奪婚の風習は「嫁かつぎ」などと呼ばれ、かつては鹿児島に限らず日本各地で見られていた。
一般的には婚姻にはあくまで本人や家族の同意が必要で、女性側に拒否権がある場合が少なくなかった。
　しかし特に九州地方では、女性が監禁状態におかれ男性やその知人らによって長時間に渡る説得を受け、
女性が承諾するまで解放されないため、嫌々ながら婚姻を同意するケースも多かったという。
ただ、強姦をして婚姻を強要する例はあまり見受けられなかった。