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【蟲】芽殖孤虫〜致死率100%。人体を蝕む謎の寄生虫
2013年7月20日 画像追加

 熊本県天草郡牛深町。1915年9月15日の夜、18歳の女性が友人の家から帰宅すると悪寒と強い頭痛を感じた。
翌日は食欲も失い、4日後には赤く痛みのある腫れが左大腿部の内側にできる。
痛みは日に日に酷くなり夜も眠れない程になったので、近所の医者へ行って腫れを切開してもらうと大量の膿が流れ出てきた。
切開はその後2回行ったが腫れは引かないままだった。20歳になる頃には腫れは左下肢・右大腿・下腹部にまで広がっていた。
その腫れを引っ掻くと皮膚が破れ、膿や血に混じって動く白い虫が出てくるようになる。虫はある時は5,6匹、時には2,30匹にもおよんだ。
症状は悪化するばかりで、ついに1921年の4月4日に九州大学病院へ入院することになった。
 入院後は肥大した下腹部と両大腿部の成形手術等を数回受けるが症状は好転せず、逆に身体の数箇所に腫れが広がっていく。
やがて肺炎の兆候が現れ全身状態が悪化していき、1922年の4月23日、24歳という若さで死亡してしまった。
 死亡後、女性を解剖すると胸・腹・大腿部の皮膚、脳の表面・肺・小腸・腎臓・膀胱などから無数の白い虫体が検出された。
まさに全身虫だらけ、というにふさわしい恐ろしい状態だったのである。。
 この虫は芽殖孤虫。条虫類寄生虫の幼虫。芽殖孤虫は成虫が判明しておらずその生活史が不明で、
感染すると確実に死に至る、恐ろしい寄生虫なのである。。
(『頭にくる虫のはなし』 西村謙一 技報堂出版 参照)


 芽殖孤虫(Sparganum proliferum:スパルガヌム プロリフェルム)とは、
人間に芽殖孤虫症を引き起こす条虫網擬葉目裂頭条虫科に属する寄生虫の幼虫である。
世界で15症例※1が報告され、そのうち7例※1が最初に報告された日本で発生している。
芽殖孤虫は薄い嚢に包まれており、大きさは数ミリから1センチ程度で皺だらけである。
形状は様々でワサビやショウガの根のような形をしているものが多いが、
中には蝶の羽様に拡がった虫体も確認されている。
 体内に侵入すると無秩序に発芽した芽が嚢を破って他の部位に到達し、
そこで成長しながら新たな嚢に包まれて分裂する。それを繰り返し体内で無数に増殖していき、
やがて皮下組織・筋肉や内臓に脳、骨などあらゆる組織器官に虫体が蔓延、全身が虫だらけになる。
その量だが、2例目の患者では筋肉片約3平方センチメートル内に20〜25個もの蟲嚢があったという。
芽殖孤虫がはびこる様は、2例目の東大病院での部検所見において
「無数ノ大小種々ナル条虫及ビ嚢虫ノ湧キ出ルヲ認メ、一見慄然タラシムルモノアリ」
「全身至ルトコロニ居リテ、肺ノ如キハ最モ著シ」
「斯ノ如ク多クノ蟲ニ寄生セラレテハ蟲ヲ殺スヨリ人間ヲ殺ス方早シ」と記されている。
 症状はまず、局所皮膚にイボ状の結節あるいは小突起ができ、やがてそれが全身に広がる。
その結節ないし突起は痛みや痒みを伴い、掻き潰すと白い虫体が出てくる。
その後の経過は症例により異なるが、主に下半身の皮下組織が腫れて肥大していき、
細菌感染なども生じ、場合により皮膚が象皮病様になることもある。
内臓へ侵入した場合は出血を伴い、肺では喀血を起こす。
脳に侵入した場合では言語障害・運動障害といった脳症状を引き起こしていく。
(体内を成虫になれない幼虫が動き回ることで起こる症状を幼虫移行症という)
 経過は慢性的で数年から十数年もの長期にわたり、最終的には死に至る。※2
有効な駆除薬は無く、治療法は外科手術による虫体の全摘出しかないが事実上不可能といえる。
 芽殖孤虫の「孤虫」とは成虫が同定されていないことを表す。
人間が最終宿主では無い為人体で成虫にならず、成虫の同定が出来ていない。
犬や猫、猿への感染実験でも最終宿主であるとは確認されなかった。
人間への感染経路は不明で、終宿主や中間宿主といった生活史は一切判明していない。
ゆえに予防方法も分からないままである。
裂頭条虫に近いとすれば、井戸水などに生息するミジンコを中間宿主として
感染するのではないかと考えられるが、確認はできていない。
 人間以外では、牛と犬に芽殖孤虫と思われる寄生虫への感染が報告されている(いずれも日本)。
1982年にベネズエラで発見・摘出された虫体が現在もマウスの体内で継代中で、日本でも研究に使われている。
マンソン裂頭条虫の変異体との説もあったが、後に遺伝子検査によりマンソン裂頭条虫とは近縁ではあるが、異なる種だと判明した。
またこの遺伝子検査で、日本とベネスエラの芽殖孤虫は同じ遺伝子を持っていることが判明している。
日本における直近の感染例は、1987年に死亡した茨城県の男性(48)である。

【日本における症例】 日本では7例※1 世界全体でも日本含め15例※1
 ★資料により症例の年・発生地等に相違があり不確定・推定部分あり。 年・歳は判明してる場合は死亡時のもの。
 (資1)(資3)(資5)(資7)(資8)(資A)から作成
症例No 発生地 性別(年齢) 職 業 経過期間 予後  備  考 
1 明治37(1904)年 東京 女性(33) 主 婦 5年 不明(途中退院) ★1905(飯島魁)新種報告
2 明治40(1907)年 東京 男性(36) 僧 侶 不明(5-6年) 死亡 (資8)
3 明治43(1911)年 京都 男性(57) 不 明 13年 不明(途中退院) ★1914年6月までは生存確認(資14)
4 大正 8(1920)年 京都 男性(62) 無 職 12年 死亡
5 大正11(1922)年 熊本 女性(24) 店 員 6年 死亡 ★1924死亡とする資料あり(資5)
6 昭和31(1956)年 熊本 男性(72) 不 明 不明 不明 (資7)
? 昭和41(1966)年 東京 不明(**) 不 明 不明 不明 ★論文未発表事例(資5)
7 昭和62(1987)年 茨城 男性(48) 会社員 1年 死亡 (資9)

※1 いくつかの資料では日本の症例は6件となっているが、
 『図説 人体寄生虫学 第8版』吉田幸雄/有薗直樹 南山堂 等では7件となっている。
 これは症例No.6(「芽殖孤虫の1例」(熊本医学会雑誌32(補5)1958 岡村一郎/松下文雄)(資7))を
 事例に含むか含まないかで見解が分かれている為だと思われる。
 この症例では虫体が3体しか抽出されず、特徴である発芽状態が起きていない(小突起は有)ことが理由ではないかと。
 報告者の岡村・松下は虫体が骨盤の骨組織内に入り込んだことで分芽が阻害され、
 また栄養状態が悪いことから増殖しなかったのではないか、と考察している。
 また1966年に東京で論文未発表の事例があるという資料(「病理レポート5 芽殖孤虫症」(診断と治療79巻5号 中村卓郎))もあるが、
 他にこれについて言及している資料は存在していない。
 ★日本の症例を7件とすると世界の8件と合わせて15件となる。多くの資料では14件としているが、当サイトでは15件とする。 
※1966年の東京事例についてご存知の方いらしましたらお願いします。

※2 ほとんどの資料では感染者に生存例は無い(または不明)となっているが、(資5)では台湾の3件が生存とされている。
  しかし病態から生存は難しいと思われ、生存者への治療手段が明らかになっていないことからも生存は疑問である。

◎症例別症状(資1)(資3)(資7)(資8)
【1】全身(除く頭部・頚部、上肢)に結節、両下肢著しい膨張、掻痒感。途中退院の為予後不明。
【2】頚部〜全身へ結節、嘔吐、人事不省、言語・運動障害、右半身麻痺、てんかん発作、喀血、嘔吐、直腸・膀胱障害、掻痒感、精神錯乱。全身に虫体。
【3】結節、掻痒感、言語障害、右大腿の膨張・象皮病様。
【4】皮膚白斑、結節、掻痒感、栄養不良、腹部肥満、大網・左肺・両腎臓・腹膜から虫体。
【5】悪寒戦慄、頭痛、左大腿部痛痒ある膨張、膨張の発赤・拡大、四肢の運動・知覚麻痺・象皮病様、体温上昇、嘔吐、肺炎。骨を除くほとんど全ての組織器官から虫体。
【6】左鼠蹊部膨張し波動、坐骨神経痛様の痛痒、骨盤カリエス様症状、骨盤から虫体。
【?】不明。
【7】右腰・右大腿の痛み、腫れ、肺にX陰影、呼吸困難。内臓・筋肉・腰骨から虫体。

【世界における症例】(資4)(資5)(資6)から作成
症例No 発生年 発生地 性別(年齢) 職 業 経過期間 予後  備  考 
1 1908年 アメリカ/フロリダ 男性(48) 漁 師 25年 死亡
2 1976年 アメリカ/ペンシルベニア 不明(**) 不 明 不明 不明 (資6)
3 1978年 台湾 女性(58) 教 師 7年 ※? ※(資5)で生存とあり
4 1981年 パラグアイ 男性(24) 農 業 数ヶ月 死亡
5 1982年 ベネズエラ 男性(35) 不 明 4ヶ月 死亡 (資5)1981年
6 1983年 カナダ 不明(**) 不 明 不明 不明 (資6) フィリピン人
7 1984年 台湾 女性(24) 教 師 18ヶ月 ※? ※(資5)で生存とあり
8 1987年 台湾 女性(43) 主 婦 3年 ※? ※(資5)で生存とあり


■芽殖孤虫画像(写真・画)

◎5例目・天草の女性患者画像(資13)


◎同女性の大腿部皮膚に寄生している芽殖孤虫の虫嚢画像(資13)


◎同女性から摘出された虫体画像(資13)


◎アメリカ/フロリダの患者写真と摘出された虫体画像(資13)


◎1例目の患者から摘出された芽殖孤虫の画像(絵)


◎目黒寄生虫館の標本画像


◎京都患者の画像(「熱帯病学」高崎佐太郎)



※下の画像が芽殖孤虫としてネットで紹介されているが、どちらも芽殖孤虫とは関係ない画像である




◎参考資料
(資0)「On a New Cestode Larva Parasitic in Man (Plerocercoides prolifer) 」(飯島魁 1905)※英文 ★新種発見論文
(資1)「幼裂頭条虫症.マンソン裂頭条虫並びに芽殖孤虫の感染」(最新医学44巻4号1989 影井昇)
(資2)『図説人体寄生虫学 第8版』吉田幸雄/有薗直樹 南山堂

(資3)『頭にくる虫のはなし』 西村謙一 技報堂出版

(資4)『特集アスペクト48 蟲実話』アスペクト

(資5)「病理レポート5 芽殖孤虫症」(診断と治療79巻5号 中村卓郎)
(資6)『寄生虫病の話』 小島莊明 中央公論新社中公新書

(資7)「芽殖孤虫の1例」(熊本医学会雑誌32(補5) 岡村一郎/松下文雄)
(資8)「Plerocercoides prolifer Iijima に就いて」(動物学雑誌244号 吉田貞雄)
(資9) 「PIE症候群,肺塞栓症を合併した芽殖孤虫症の1例」 (日本胸部疾患学会雑誌27号 中村卓郎 他)
(資10)「分殖性幼条虫症」(医学中央雑誌 1909年7巻 碓井龍太)
(資11)「プレロチェルコイデス プロリフェル 患者供覧」(京都医学雑誌 1911年8巻 井上五郎)
(資12)「Plerocercoids prolifer Ijimaに因する象皮病の1例患者及び標本供覧」(福岡医科大学雑誌 1920年13号 田代規矩雄)
(資13)「目で見るページ 芽殖孤虫症」(臨牀と研究38巻3号 宮崎一郎)
(資14)「日本から報告された稀有な人体寄生条虫類」(目黒寄生虫館 森下薫)
(資15)『熱帯病学』高崎佐太郎 東京大学出版会
(資16)『世界の奇病大全』宝島社


◎参考サイトリンク
(資A)謎の寄生虫  http://www.nichidokyo.or.jp/animal-doc/warm-5.html (リンク切れ)
(資B)芽殖孤虫wikipedia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%BD%E6%AE%96%E5...

◎1987年事例の新聞記事
1988.06.01 読売新聞 東京朝刊
1988.07.13 朝日新聞 東京夕刊

【3大ヤバい寄生虫】
・芽殖孤虫:全身虫だらけになって死ぬ。致死率100%
・マイクロネーマ・デレトリックス:脳が虫だらけになって死ぬ。致死率100%
・フォーラー・ネグレリア:脳が溶けて死ぬ。致死率95% 全部日本にいる。


◎オススメ寄生虫小説
『孤虫症』 真梨幸子 講談社文庫
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