雨月物語による三つの断章
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chorus_mania 2024年04月15日(月) 23:01:02履歴
女声合唱とピアノのための「雨月物語による三つの断章」
曲データ
初演データ
作品について
テキスト
蛇性の婬
菊花の約
青頭巾
楽譜・音源
曲データ 
| 編成 | SMA+Pf. |
| 演奏時間 | ca.19'00" |
| 蛇性の婬 | ca.6'30" | 2012 |
| 菊花の約 | ca.6'20" | 2014 |
| 青頭巾 | ca.6'00" | 2013 |
初演データ
| 全曲初演日 | 2015年8月8日 |
| 初演演奏会 | 福島県立安積黎明高等学校合唱団第45回定期演奏会 |
| 初演会場 | 福島県郡山市民文化センター大ホール |
| 初演指揮 | 宍戸真市 |
| 初演ピアノ | 鈴木あずさ |
| 初演合唱 | 福島県立安積黎明高等学校合唱団 |
作品について
テキスト
蛇性の婬
雨のやどりの御恵みに。信ある御方にこそとおもふ物から。今より後の齢をもて御宮仕へし奉らばやと願ふを。汚なき物に捨給はずば。此一杯に千とせの契をはじめなん
國の守の召つるぞ。急ぎまゐれといへど。答へもせであるを。近く進みて捕ふとせしに。忽地も裂るばかりの霹靂鳴響くに。許多の人迯る間もなくてそこに倒る。然見るに。女はいづち行けん見えずなりにけり。此床の上に輝／＼しき物あり。人／＼恐る／＼いきて見るに。狛錦。呉の綾。倭文かとり。盾。槍。靭。鍬の類。此失つる神寳なりき。
千とせをかけて契るには。葛城や高間の山に夜々ごとにたつ雲も。初瀬の寺の暁の鐘に雨收まりて。只あひあふ事の遅きをなん恨みける。
あやし。此邪神。など人をまどはす。翁がまのあたりをかくても有やとつぶやくを聞て。此二人忽躍りたちて。瀧に飛入と見しが。水は大虚に湧あがりて見えずなるほどに。雲摺墨をうちこぼしたる如く。雨篠を乱してふり來る。
古き契を忘れ給ひて。かくことなる事なき人を時めかし給ふこそ。こなたよりまして悪くあれ
他し人のいふことをまことしくおぼして。強に遠ざけ給はんには。恨み報ひなん。紀路の山々さばかり高くとも。君が血をもて峯より谷に潅ぎくださん。あたら御身をいたづらになし果給ひそ
あな苦し。なんぢ何とてかく情なきぞ。しばしこゝ放せよかしといへど。猶力にまかせて押ふせぬ。
白き蛇の三尺あまりなる蟠りて動だもせずてぞある。
國の守の召つるぞ。急ぎまゐれといへど。答へもせであるを。近く進みて捕ふとせしに。忽地も裂るばかりの霹靂鳴響くに。許多の人迯る間もなくてそこに倒る。然見るに。女はいづち行けん見えずなりにけり。此床の上に輝／＼しき物あり。人／＼恐る／＼いきて見るに。狛錦。呉の綾。倭文かとり。盾。槍。靭。鍬の類。此失つる神寳なりき。
千とせをかけて契るには。葛城や高間の山に夜々ごとにたつ雲も。初瀬の寺の暁の鐘に雨收まりて。只あひあふ事の遅きをなん恨みける。
あやし。此邪神。など人をまどはす。翁がまのあたりをかくても有やとつぶやくを聞て。此二人忽躍りたちて。瀧に飛入と見しが。水は大虚に湧あがりて見えずなるほどに。雲摺墨をうちこぼしたる如く。雨篠を乱してふり來る。
古き契を忘れ給ひて。かくことなる事なき人を時めかし給ふこそ。こなたよりまして悪くあれ
他し人のいふことをまことしくおぼして。強に遠ざけ給はんには。恨み報ひなん。紀路の山々さばかり高くとも。君が血をもて峯より谷に潅ぎくださん。あたら御身をいたづらになし果給ひそ
あな苦し。なんぢ何とてかく情なきぞ。しばしこゝ放せよかしといへど。猶力にまかせて押ふせぬ。
白き蛇の三尺あまりなる蟠りて動だもせずてぞある。
菊花の約
吾近江を遁來りしも。雲州の動靜を見んためなれば。一たび下向てやかて帰來り。御恩をかへしたてまつるべし。今のわかれを給へ
さあらば兄長いつの時にか帰り給ふへき。
重陽の佳節をもて帰來る日とすべし。
兄長必此日をあやまり給ふな。一枝の菊花に薄酒を備へて待たてまつらん
赤穴は信ある武士なれば必約を誤らじ。其人をみてあはたゝしからんは思はんことの恥かし
人の心の秋にはあらずとも。菊の色こきはけふのみかは。帰りくる信だにあらば。空は時雨にうつりゆくとも何をか怨べき。
小弟蚤くより待て今にいたりぬる。盟たがはで來り給ふことのうれしさよ。
既に夜を續て來し給ふに。心も倦足も労れ給ふべし。幸に一杯を酌て歇息給へ
吾は陽世の人にあらず。きたなき霊のかりに形を見えつるなり。
永く居りて益なきを思ひて。賢弟が菊花の約ある事をかたりて去んとすれば。經久怨める色ありて。丹治に令し。吾を大城の外にはなたずして。遂にけふにいたらしむ。此約にたがふものならば。いにしへの人のいふ。人一日に千里をゆくことあたはず。魂よく一日に千里をもゆくと。此ことわりを思ひ出て。みづから刃に伏。今夜陰風に乗て來り菊花の約に赴。この心をあはれみ給へ
今は永きわかれなり。只母公によくつかへ給へ
吾今信義を重んじてこゝに來る。汝は又不義のために汚名をのこせ
さあらば兄長いつの時にか帰り給ふへき。
重陽の佳節をもて帰來る日とすべし。
兄長必此日をあやまり給ふな。一枝の菊花に薄酒を備へて待たてまつらん
赤穴は信ある武士なれば必約を誤らじ。其人をみてあはたゝしからんは思はんことの恥かし
人の心の秋にはあらずとも。菊の色こきはけふのみかは。帰りくる信だにあらば。空は時雨にうつりゆくとも何をか怨べき。
小弟蚤くより待て今にいたりぬる。盟たがはで來り給ふことのうれしさよ。
既に夜を續て來し給ふに。心も倦足も労れ給ふべし。幸に一杯を酌て歇息給へ
吾は陽世の人にあらず。きたなき霊のかりに形を見えつるなり。
永く居りて益なきを思ひて。賢弟が菊花の約ある事をかたりて去んとすれば。經久怨める色ありて。丹治に令し。吾を大城の外にはなたずして。遂にけふにいたらしむ。此約にたがふものならば。いにしへの人のいふ。人一日に千里をゆくことあたはず。魂よく一日に千里をもゆくと。此ことわりを思ひ出て。みづから刃に伏。今夜陰風に乗て來り菊花の約に赴。この心をあはれみ給へ
今は永きわかれなり。只母公によくつかへ給へ
吾今信義を重んじてこゝに來る。汝は又不義のために汚名をのこせ
青頭巾
山の鬼こそ來りたれ。人みな出でよ
痩法師の強盗などなすべきにもあらぬを。なあやしみ給ひそ
渠等が愚なる眼より客僧を驚しまいらせぬ。
こゝに希有の物がたりの侍る。妖言ながら人にもつたへ給へかし。此里の上の山に一宇の蘭若の侍る。代々大徳の住給ふなり。越の國へ水丁の戒師にむかへられ給ひて。逗まり給ふが。他國より童児を倶してかへり給ひ。起臥の扶とせらる。童児が容の秀麗なるをふかく愛させたまふて。年來の事どもゝいつとなく怠りがちに見え給ふ。かの童児かりそめの病に臥けるが。終にむなしくなりぬ。泣に涙なく。叫ぶに聲なく。火に焼。土に葬る事をもせで。終に心神みだれ。其肉の腐り爛るを吝みて。肉を吸骨を嘗て。はた喫ひつくしぬ。院主こそ鬼になり給ひつれ。夜／＼里に下りて人を驚殺し。或は墓をあばきて腥／＼しき屍を喫ふありさま。実に鬼といふものは現にかくなり給ふを見て侍れ。
夜更て月の夜にあらたまりぬ。影玲瓏としていたらぬ隈もなし。
禿驢いづくに隠れけん。こゝもとにこそありつれ
我あさましくも人の肉を好めども。いまだ佛身の肉味をしらず。師はまことに佛なり。あなたふとゝ
江月照松風吹 永夜清宵何所為
汝こゝを去ずして徐に此句の意をもとむべし。意解ぬる則はおのづから本來の佛心に會ふなるは
江月照松風吹 永夜清宵何所為
禅師見給ひて。やがて禅杖を拿なほし。作生何所為ぞと。一喝して頭を撃給へば。忽氷の朝日にあふがごとくきえうせて。かの青頭巾と骨のみぞ草葉にとゞまりける。
痩法師の強盗などなすべきにもあらぬを。なあやしみ給ひそ
渠等が愚なる眼より客僧を驚しまいらせぬ。
こゝに希有の物がたりの侍る。妖言ながら人にもつたへ給へかし。此里の上の山に一宇の蘭若の侍る。代々大徳の住給ふなり。越の國へ水丁の戒師にむかへられ給ひて。逗まり給ふが。他國より童児を倶してかへり給ひ。起臥の扶とせらる。童児が容の秀麗なるをふかく愛させたまふて。年來の事どもゝいつとなく怠りがちに見え給ふ。かの童児かりそめの病に臥けるが。終にむなしくなりぬ。泣に涙なく。叫ぶに聲なく。火に焼。土に葬る事をもせで。終に心神みだれ。其肉の腐り爛るを吝みて。肉を吸骨を嘗て。はた喫ひつくしぬ。院主こそ鬼になり給ひつれ。夜／＼里に下りて人を驚殺し。或は墓をあばきて腥／＼しき屍を喫ふありさま。実に鬼といふものは現にかくなり給ふを見て侍れ。
夜更て月の夜にあらたまりぬ。影玲瓏としていたらぬ隈もなし。
禿驢いづくに隠れけん。こゝもとにこそありつれ
我あさましくも人の肉を好めども。いまだ佛身の肉味をしらず。師はまことに佛なり。あなたふとゝ
江月照松風吹 永夜清宵何所為
汝こゝを去ずして徐に此句の意をもとむべし。意解ぬる則はおのづから本來の佛心に會ふなるは
江月照松風吹 永夜清宵何所為
禅師見給ひて。やがて禅杖を拿なほし。作生何所為ぞと。一喝して頭を撃給へば。忽氷の朝日にあふがごとくきえうせて。かの青頭巾と骨のみぞ草葉にとゞまりける。
楽譜・音源
| 「雨月物語」をテキストにした3曲からなる組曲。福島県立安積黎明高等学校合唱団委嘱作品。 | ||
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