むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

ひとまづ江夏に逃れた玄徳たち。そこへ呉の孫蓮の遣ひとして魯粛があらはれる。
曹操から平和協定を迫られた呉は、協定に賛成する非戦派と協定締結は降参とおなじと見る抗戦派とにわかれてゐる。
抗戦派の魯粛は、孔明ひとりをつれて呉にもどる。
孔明は、並み居る呉の非戦派を論破し、孫権に徹底抗戦を説く。
そこへ、孫権の妹・貞姫の呼んだ非戦派の周瑜が鄱陽湖からもどつてくる。しかし、孔明から曹操が求めてゐるのは孫策の未亡人・大喬と周瑜の妻・小喬と聞かされて我を失ひ、曹操軍と戦ふことになる。
周瑜は孔明を生かしておくのは危険と見なし、ついでに玄徳も殺してしまへといふので、それと知らせず孔明の兄・諸葛瑾を玄徳を招待する使者として江夏へ送る算段をする。

一言

演義でいふと、四十二回の最後から四十四回の途中まで。
舞台はいよいよ江東へとうつり、赤壁の戦ひも秒読みといつたところ。
否が応でももりあがる展開である。

番組冒頭の紳助竜介の(いらぬ)解説に出てくる、「天下の軍師・孔明の逆転満塁ホームランともいへる奇略」つてなんだつけか、と考へることしばし。
あ、あれか、呂王に援軍を頼んだことか!
あれは奇略だなあ、確かに。孔明自身も「手品」云ふてるしな。
呂王なんて、出てくるとは思へないもの。

前回、張飛の聲におどろいた馬にさんざんな目にあはされたのとおなじ男とは思へぬくらゐ落ち着いてゐる曹操。かうのうてはかなはぬかなはぬ。
「もはや玄徳などわしの敵ではないといふことだ」とか、云ふこともデカい。
曹操軍の水軍はチト弱い、といふ話に、許褚が「水軍の力がつくまで攻撃は見送り?」みたやうなことを云ふと、「バカモノ。江東を手に入れる方法は戦ばかりではないぞ」とか、余裕たつぷりで云ふ曹操が、らしくてとてもよい。
ただし、「平和協定だ」は、ちよつといただけないけどなあ。
三国志に「平和協定」はなんだか妙。「和を結ぶ」とかなんとか、まちつと云ひやうがある気がするんだが。

キャプションの「江夏城・表」つてなんだよ。裏もあるのかよ。せめて「表門」とかぢやなからうか。
劉琦さまがいつになくさはやかだぞ。
どつかの会社の会議室のやうな感じで玄徳の前にならぶむかつて右から孔明・関羽・張飛・劉琦。
趙雲はかういふところにはゐないのね。
このころの孔明は聲が若いな。

そして、その「御前会議」で孔明が云ふたとほりに、やつてくる魯粛。
演義では、魯粛がやつてきて、孔明が劉琦に「孫策が死んだときに弔問の使者を送つたか」つて訊くんだよね。送つてないと知ると、ぢやあ偵察に来たな、と、看破することになつてゐる。
玄徳に、なんで曹操なんかに降伏しやうとするのか、と、詰め寄られて、「正直に話しませう」といふ魯粛。
「お恥づかしいことながら」つて恥づかしいのはおまへだ、魯粛。正直に話し過ぎ。TVを見てゐる方は、まあ、玄徳がどういふ人間かわかつてゐるから、この程度のこと話してもどうつてことないといふか、むしろ話してしまつてよし、といつたところかもしれないけどさ。
「殿にはご親戚筋にもあたる周瑜殿の強大な力がいささか煙たくなられてゐるごやうすなのです」、とか、そんな身内の話までしてしまふなんて……。まあ、そこが魯粛のかはいいところでもあるのだが。

魯粛に一緒に来てほしいと頼まれて、快諾する玄徳に、「それはなりませぬ」といふ孔明。
ここも、演義だと最初から玄徳と孔明とのあひだでは話ができてるんだがね。
玄徳が動くときには軍から民からみんな引き連れていかねばならないが、といふやうなことを云つて、
「しかし、私なら動けます。ひとりで。どこへでも」と云ふところが飄然としてゐてなんだかいいぞ、孔明。

魯粛につれられてひとり江東へ向かふ孔明を城壁から見送る玄徳・関羽・張飛。
「孔明殿、云ひ出したら聞かぬお人ですからなあ」つて、関羽、如何にもよく知つてゐるかのやうに……。知つてゐるのか。

目が緑色な孫権。魯粛に、孔明をつれてきたと告げられて、明日は文官を呼び寄せて孔明と論戦させろ、といふ。諸葛瑾も呼べ、と。
おなじ弟として思ふところがあるのだらうか。
孫権、もしかしたらなにかと孫策と比べられてゐて、おもしろくない思ひをしてゐるのかもしれないなあ。

孔明に夜討ちをかける呉の……えー、下つ端の人々?
ここ見てて、酒見賢一の「泣き虫弱虫諸葛孔明」に出てくる呉の「ゴンタクレ」の人々のことを思ひ出してしまつた。やはり、呉はさうなのか、「呉」だけに、とか。
しかし、孔明もおどろかしてくれるよ。
「私とて武術の心得ぐらゐはある」つて。
え、さうなの? 知らなかつたよ。
そして、確かに強さう。長い得物を持つた相手に白羽扇だけで戦つてるし。白羽扇は仕込み杖ならぬ仕込み扇だつたりして。

ここで、顔の長くない諸葛瑾登場。
「ゴンタクレ」の人々は諸葛瑾と知つて蜘蛛の子を散らしたやうに逃げ去る。
諸葛瑾は、そこにゐるのが孔明と知らずに出てきたやうなのに、「おまへの高笑ひを聞いて出てきたのだが……」とか云ふ。高笑ひを聞いて出てきただけではないのか。そして、出てきてみたら、どうやら笑つたのは孔明だつた、と、さういふことぢやないのかなあ。ま、いつか。

どうやら、「ゴンタクレ」の人々が孔明を襲つたのは、諸葛瑾の家の前だつたのらしい。
兄・瑾の家に招じ入れられる孔明。ここではじめて「諸葛亮孔明」といふキャプションが出る。いまさら出なくても……

諸葛瑾は、明日孫権の前に出るやう呼ばれてゐて、孔明と論戦を張るやうに云はれてゐる、といふ。
そして、呉の文官たちや自分に云ひ負かされて、恥をかきたくなければ、帰れ、と。
しかし、孔明少しも騒がず、「いいえ、恥をかくのは兄上です」とか、しれつと云ふ。
しかも、負けないよ、とか云ひながら、「でも、相手が兄上ではやはり心が乱れます。ですから明日は、欠席していただきます」とか、弟ぶりつこするのはずるいぞー。さすが天下の軍師。ちがふか。

ここで場面は変はつて翌朝、となるのだが、どうやらこのあと兄弟の会話はまだつづいたのらしい。
それはのちほど明らかになる。

孫権の前に呼び出された文官の中に、張昭はゐないつぽい。
単に、老人がゐないからさう思つただけだけど。

文官たちにあれこれ云はれて、玄徳は負けたばかりで、領土もないし、兵も少ない、と正直に答へる孔明。
ひととほり文官たちに云ひたい放題云はせておいて、突然聲をはりあげて云ふのが、「木を見て森を見ざるのたとへをあなたがたは御存知か」つて、意味がわかんないよ、孔明……

でも、この場面、演義ではいつも「いや、孔明の云ふてること、論理的にをかしいし。なんでたれもつつこまないんだよ」と思つちやふところなんだよね。それをそのまま持つてこなかつたのは正しい判断といふ気がする。

ここでの孔明の話を総合すると、つまり、「狂信者は怖い」つていふことだな、と思ふ。
これで玄徳が「教祖」とかだつたら、宗教団体だもんね、あの領民の慕ひ具合とか。

孔明、頭ひとつ分くらゐほかの人より背が高いなー。

「権力のみで人望のない曹操の考へさうなことだ」つて、孫権よ、そんな、人望のない人間に百万もの兵を率ゐることができるわけないのに。いくら勢ひだとしても、それはチト浅慮に過ぎる発言だぞ。

孫権は曹操軍と戦ふ意志をかためるが、ここに長刀持つて貞姫登場。
振り返つた孔明が、「なんと、これは……」とか肚裡でつぶやいた上、画面に桃色の紗がかかるから、「すは、孔明は貞姫に惚れたか!」と思つたよ、リアルタイムで見てゐたときも。
きつと孫権もさう思つたのにちがひない。
「なにをぼんやりしてゐる。ふははははははは。これは余の妹貞姫だが」つてあたりに、そんな感じがするんだよね。

孔明は、「淑玲殿にうりふたつ。これは危険だ。このお方を殿に会はせてはならぬ」と、さらに胸の中で思ふわけだが、なにが「危険」なのかわからん。
あと、淑玲と貞姫つてそんなに似てるかなあ。全然似てないと思ふんだけど。
わづかにふりむきがちに貞姫を気にする孔明。

そのころ、江夏城には、見るからに本邦の忍者のやうな人影が。あとで、これは許攸のはなつた密偵とわかる。

美芳に抱かれて泣いてゐる阿斗。そのまはりには玄徳、関羽、勝平。
「淑玲の手はとつても細くてやはらかだつたのに、この美芳の手はこんなに太くて無骨なんだものねえ」と云ふ美芳に、「そんなことはない」といふ玄徳。しつかり抱いてくれる人の方がこどもにはありがたいはず、とか云ふ。
それを聞いて、「あら、褒められたのかしらけなされたのかしら」といたづらつぽく云ふ美芳に、「もちろん褒めたのだ」つてなんのてらひもなく真顔で答へるところが玄徳だよなあ。
関羽、赤ちやんの抱き方、うますぎだ。こどももゐないくせに……
星見をする勝平。不吉な星占ひを口にする。
そんな勝平を、「星占ひは孔明殿にまかしておけ」とかさとす関羽。
いいなあ、この、勝平と関羽のやりとり。

机蹴るなよ、曹操……
いくら、許攸から、「孔明は江東に行つたらしい」つて聞かされたからつて。

一方、柴桑城には明日周瑜が来るのらしい。
魯粛は孔明にそれを知らせる。
「日頃からあなたの軍師ぶりに反感を抱いてゐる周瑜殿のこと」つて、なぜ周瑜がそんな孔明の軍師ぶりなどを知つてゐるのだ。しかも、なぜ反感を抱く必要がある。呉にとつて危険だから? まあそれはあるかもしれないけれど、なんだか納得いかないぞ。
自分が周瑜と話をすれば、「なに、おそらくそれで周瑜殿の気持ちも一変しますよ」つてさらりと云ふてのける孔明も孔明だが。

朝もやの中、周瑜の船がつく。
周瑜の衣装は裾がラーメンのどんぶり模様。
自分の前にあらはれた魯粛にむかつて、「魯粛、孔明などといふ口先ばかりの男を引っ張って来て、殿をたぶらかしにかかつたさうだな」つて会つたこともないのに、よく知つてるなあ、周瑜。
魯粛に、孔明が庭に来てゐると知らされて、「なんだと」で振り返る周瑜のやうすのよさといつたら。
呂布もさうだつたが、周瑜も目がきいてゐるんだよなあ。目尻に朱が入つてゐて、目の玉が横に寄つたときに、目が生きるんだよね。

孔明、庭で階段にちよこんと腰掛けてゐる感じがなんとなくかはいい。

ここで、孔明は大喬・小喬を曹操にさし出せば、戦を避けられる、といふ話をする。
孔明、「曹操は稀代の女性好き」とか云ふのだが……「女好き」といふてくれた方がよかつのたに。「女性好き」は妙だらう、「女性好き」は。せめて「色好み」とかなんとか、ほかにも云ひやうがあるものを。

それはまことのことか、と、周瑜に詰め寄られて説明する孔明のことばの中には、曹植の詩は出てこない。

大喬は孫策の未亡人、小喬は周瑜の妻と、魯粛に聞かされた孔明の背後でピアノのがーんといふ音が鳴る。
ギャグにしか聞こえない。

それまでの平和論者がうそのやうに徹底抗戦上等になつてしまふ、火の玉・周瑜。冷静になつて考へてみれば、単純すぎるのだが、その場の雰囲気といふかなんといふか、不自然には見えない。

曹操の使者として呉にやつてきた紳々竜々にむかつて、「この世は権力がすべてではない。玄徳殿とともにこの江東の我らもまたうつて一丸となつて邪悪この上なき曹操軍と戦はんとな」、さう曹操に伝へよ、といふ周瑜がまた鉄火な感じといふか、いいね。あら、鉄火だつたら江戸つ子か知らん。

「その方とはじめて志をおなじくした。これほど嬉しいことはない」つて、これまで不仲だつたのか、孫権と周瑜は。だから煙たがつてたんぢやないのかなあ。それとも兄を亡くした孫権に、兄代はりとして少しきつくあたつたりしてゐたのかなあ、周瑜は。
孫権は、周瑜を大都督に任じて剣を授け、魯粛は賛軍校尉。演義では程普が副都督に任命されるのぢやが、人形劇ではそこはなし。

孫権から授かつた剣をちやりんと鞘におさめて、「やられた……」とうめく周瑜がまたステキで、なあ。なんだらう、このよさは。それまで鉄火で火の玉のやうだつたのが、ふつと弱さを見せるところがいいのかな。
なんのことです、とか訊く魯粛に、「孔明ぢや。やつにしてやられた」つて、いま気がついたのか、周瑜よ。気づくのが遅すぎるぞ。もつと手前でわかつてていい気がするがなあ。さうだなあ、孫権から「大都督に任ずる」つて云はれたあたりで気がついててもをかしかない。むしろ、さうだつたのかもしれないぞ。
なんと、魯粛は、曹操が二喬を狙つてゐるといふ話を聞いたことがあつたのらしい。えー、孔明の話を聞いてゐたときは、そんなそぶりは見せなかつたくせにー。しかも、孔明のこと「うそをつくやうな人では……」みたやうなこと云ふてるし。いまのところ、うそは云ふてゐないのか。しかし相手は「天下の軍師」だぜ。うそのひとつやふたつ……、なあ。
そんな魯粛に、「嘘ではあるまい。しかし、真実もそれをいつどこで明かすかによつておそろしい武器になる」と、答へる周瑜もまたいい。

こののち、玄徳と孔明は、呉の国にとつて「目の上のこぶ」になるから、殺してしまへ、と云ふ周瑜。
同盟を組むにあたつて、玄徳を呼び寄せ、孔明と一緒にそれとなく始末しろ、と云ふ。
さう云はれて、魯粛はおろおろするばかり。さういや、この回冒頭から「おろおろ魯粛」の名に恥ぢぬおろおろつぷりを見せてくれてゐるんだよね、魯粛。

玄徳への使者にうつてつけの人物がゐる、と、周瑜がたづねたのは諸葛瑾。
さる日、孫権から召されたのに参内しなかつたことを周瑜からたづねられての諸葛瑾の答へがこれ。
「わたしは弟孔明の天下三分の計な壮大な理論に打ち負かされたのです」
え! いつのまに!
といふわけで、どうやら、久しぶりの兄弟の邂逅の夜、そんな会話もあつたのだらう。多分、あのあと、孔明は兄を前に滔々と自説を展開したのにちがひない。
「周瑜殿、久しぶりに会ふた弟のこの見事な理論に、私は泣きました」、といふことばにもおどろく。天下三分の計のどこに泣くやうな要素があるのか。もしかして、あれか、瑾と亮とは年もはなれてゐる。最後にあつたときは、まだあどけなさの残るおさない弟だつたのに、こんなに立派になつて、とか、そつちの感動がおほきかつたのか。だつたら納得いくがなー。

そんなわけで、周瑜から玄徳を迎へに行つてほしい、と云はれて、快諾する諸葛瑾。玄徳と同盟を組むことで、孔明と自分は「文字通りの兄弟、戦友になれるのです」つて意味不明。感動しすぎて、チト回路がショートしたか、諸葛瑾。

玄徳と孫権との同盟によつて、曹操の心に火をつけちやつたぞ。
大変だぞ。
といふわけで、次回につづくのであつた。

脚本

小川英
四十物光男

初回登録日

2013/01/14

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