むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

玄徳軍に、勝平の父・勝傑が加はる。
曹操は、西涼の馬騰を偽りの詔で呼び寄せて殺さうと謀る。
玄徳は、孫権に依頼されて、馬騰のもとに龐統を送り、馬騰の真意を確認する。
黄門侍郎の黄奎は、馬騰と謀つて曹操を殺さうとするが、曹操は黄奎の企みを看破してり、黄奎も馬騰も命を落とすことになる。
馬騰が殺されたのは玄徳の使者が曹操と内通してゐたからではないかと、馬騰の甥・馬岱が疑つてゐると聞き、孔明は龐統を責め、龐統は自分は潔白で孔明に責められる謂れはない、と、仲違ひをする。
ふたりの仲違ひをさらに助長させやうとする勝傑。
勝傑は、勝平の実の父親ではなく、曹操の命令を受けて孔明と龐統との離反をはかつてゐた。
正体がバレて勝傑は自害する。
関羽は、勝平を養子に迎へる。

一言

演義でいふところの五十七回の後半、かな。

「父子再会」なんぞといふ題名になつてゐるが、今回はもつと重要なことがもちあがつてゐる。
曹操による馬騰親子の謀殺、だ。
玄徳が関はらないのでかういふ作りになつてゐるんだらう。
番組がはじまつた直後の白馬童子な感じとか、無理矢理劉表の援軍に行つたりといふ展開は許せなかつた。つまらぬ入れごととしか思へなかつたからだ。
しかし、今回はちがふんだなあ。
見てゐて楽しい。
なぜだらうか。
我ながら不思議である。
それも、関羽がいいからか。あと孔明と龐統とがすつごく楽しさうなところがいいのかもな。

紳助竜介の背後の窓が開くと、龐統と孔明とがうしろ向きに立つてゐる。紳助竜介の説明にあはせてこちらを振り返るふたり。孔明が白羽扇を龐統にあてたりして、なんか、仲いい? どうかな。

荊州。どこかの空き地。馬上の龐統が兵を訓練してゐる、といつた図。張飛が一緒だ。
龐統の命令どほりに兵隊が動く。
番組のはじまつたころのことを考へると、こんな日がやつてきたのだねえ、と、感慨深い。
玄徳軍が訓練、だと? しかも、軍師がゐる、だと?
夢のやうぢやあないか。

訓練のやうすを荊州城の城壁から見てゐる玄徳と孔明。「さすがは龐統殿、兵の指揮ぶりも、見事でございます」と、なんだか嬉しげな孔明である。上から目線? そんなことはないと思ふがな。
もしかして、うまいこと張飛を押しつけることができてよかつた、とか思ふてゐるのではあるまいな。
なにしろ、前回玄徳に「張飛は殿の前では遠慮もいたしますが、殿がいらつしやらなかつたら怖いものなしです」などと訴へてゐたくらゐだからなー。
閑話休題。
玄徳も心なしか満足さうだ。よい軍師を得たのだから、兵も増やさねばな、とか云ふてゐる。
ほんたうに、うそのやうにものごとがうまく運んでゐる。うますぎて心配になるほどだ。

許昌。地図を見ながら曹操がなにごとか企んでゐる。
その場には夏侯淵と程昱とがゐる。程昱、今回は松橋登だな。
孫権・玄徳を討つにあたつて、馬騰が邪魔だ、といふのだ。
西涼に馬騰を討ちにいけば、南から孫権・玄徳が許昌を狙つてくるだらう。だが、孫権討伐に赴けば、西涼から馬騰が出てくるにちがひない、と、曹操は考へてゐる。
程昱は、帝に詔を発させて馬騰を西南将軍に任じて孫権討伐を命じてはどうか、と献策する。もし逆らへば反逆罪を適用すればいい、と。さすが程昱。ここの、曹操に寄りかかるやうな感じで話をする程昱が、なんとなく可愛い。をかしいかな。をかしいかも。
寄りかかつてゐるわけぢやなくて、耳に囁かうとしてゐるのかもしれないけどね。しかし、夏侯淵がゐるのに、ひそひそ話をするのも妙な話だよなあ。
演義ではこの献策は荀攸がするんだが、まあ、仕方ない。

宮中。
献帝が、冠のビーズのついたビラビラを震はせて怒つてゐる。
忠義心厚い馬騰を不利にするやうな詔を発せねばならないとは、と。
曹操の連絡係は黄奎。曹操の部下だといふのに、自分に任せてほしい、と云ふ。
献帝は、おまへは曹操の部下だらう、と疑ふが、黄奎は、わたくしは黄門侍郎ですぞ、と云ひ、信じてほしい旨を伝へる。
黄奎は、曹操の云ふとほり詔勅を署名してくれれば、自分があとはいいやうにする、といふ。
献帝は、黄奎のことばを信じる。
忠義心篤い黄奎に、袖で目元を抑へる献帝のさまが、ああ、哀しきラストエンペラー。

荊州城。
中庭、だらうか。貞姫が侍女たちを訓練してゐる。なかに美芳もゐて、長刀の稽古だ。
貞姫は、相手が美芳でも容赦がない。
一方、美芳は、これまで武器を手に稽古などしたことがないので、即まゐつてしまふ。
「わたくしは女でございます。戦のまねごとは勘弁を」と、美芳が弱音を吐くと、「それでも張飛将軍の妻か。張飛殿が泣きますぞ」と、貞姫が叱りつけるといつた具合。
貞姫は、男は戦場に出て戦ふもの、そのあひだ城を守るのが女のつとめ、といふのだが。
しかし、中国の城つて、城壁に囲まれた街みたやうなの全体ぢやないの? ちがつたつけか。ま、そこはつつこむところぢやないのかな。ないのかも。

場面変はつて、やはり城内の庭のどこか。玄徳の母が、歩きはじめたばかりの阿斗の面倒を見てゐる。
そこに美芳が逃げ込んでくる。玄徳の母に助けてくれるやう頼み、美芳は植え込みの中に身を隠す。
貞姫もあとを追つてくる。
助けを求められたからか、玄徳の母はしらばつくれるが、隠れてゐる美芳のところへ阿斗がやつてきてしまふ。空気読めないなー。さすがキング・オブ・空気読めないさんの息子だ。
貞姫が、美芳を連行しやうとすると、阿斗がひきとめやうとする。だつたらどうして忍んでゐる美芳のところへ行くやうなことをしたんだ、阿斗! まつたくきみのしたいことが全然わからないよ。
と、そこへ駆け込んでくる勝平。父親が見つかつた、と、喜んでゐる。錦の袋を持つてゐる男が、職を求めてやつてきた、といふのだ。

室内。
勝傑と名乗る男が、関羽から面接を受けてゐる。袁紹軍の侍大将だつた、といふ。
関羽は、男の話を聞いて、なるほどほかの求職者とはやうすがちがふ、と褒める。
さらに、関羽は、こどもがあるか、と訊く。
をりました、と答へる勝傑。こどもの名は勝平だとも。
そこへ、勝平と美芳が駆け込んでくる。
「お父さん、会ひたかつたよう」と、すがりつく勝平。勝傑も勝平を抱き寄せる。
美芳がそつと袖口を目にあてる姿が奥に見えて、よい。
気をきかせて部屋から出てゆく関羽と美芳。
ここだけ見ると、ほんとに感動的な父子の再会、なんだなあ。
「それにしてもよく忘れないでゐてくれたな。ありがたう、ありがたう」つて、なにがありがたいんだかなあ。おつと、これはもうちよつと先に行つてからの感想かな。

部屋の外では、美芳が関羽にすがりついて泣いてゐる。
ここの、美芳と関羽のびみょーな距離感がいい。美芳は、とにかく勝平にお父さんが見つかつてよかつたよかつたといふので泣いてゐるんだが、関羽のやうすは「ちよつと困つたなあ」といふ風に見える。泣きつかれて仕方なくさうしてゐる、といふかね。
そこに張飛が通りかかる。うろたへる関羽がいいな。
「こいつは穏やかぢやないな」つて、一見そのとほりですけどさ、張飛さん。
「てめえの女房がほかの男の肩にすがつて泣いてゐるのに、文句がないわけないだらう」と、憤る張飛に、「なに云つてんのよぅ、勝平さんのお父さんが見つかつたのよ。これが泣かずにゐられますか」と、応戦する美芳。
そのいきほひがあれば、貞姫との長刀の訓練もなんのその、だと思ふよ、美芳。

さきほどの部屋で、再会といふか初対面といふかを喜び合ふ父子。
とくにこどもである勝平は嬉しさうだ。
さうだよなあ、初登場のころからずつと父戀子だつたんだもんなあ。
よかつたねえ、といきたいところだが、勝傑のやうすが妙だ。
ずつといつしよにゐられるんだよね、といふ勝平の問ひに、「ああ、玄徳様が家来にしてくださるのならば」と、外に向かつて聲を張り上げるぢやあないか。
えー、偽物なのー、と、ここでちよつとがつくり来る。
しかも、そこに張飛が大泣きしながら入つてくるからなほさらだ。嗚呼、そうね、張飛はだまされるよね。きつとね。
「おめでたう」といひながら、張飛はさらに大落とし。

荊州城の城門。
紳々竜々がやつてくる。孫権からの親書を持つてきたといふ。
親書を運ぶ役でもないと紳々竜々の出番がないから、といふのもあるが、この二人にはこのあと重要な役割が待つてゐる。

城内。
玄徳が、親書を読んでゐる。
孔明に訊ねられて、玄徳は、孫権から馬騰の真意を探つてくれるやうに頼まれた、と告げる。
孔明は、龐統に馬騰の元へ行つてくれるやう頼む。
龐統は、馬騰とは初対面だから自分に対して肚を割つて話してはくれまい、と云ふが、孔明に龐統の眼力があれば馬騰の真意を探れるはず、と押し切られる。

場面かはつて紳々竜々に酒をふるまふ勝傑。
そこへ勝平がやつてきて、張飛が勝傑を呼んでゐる、といふ。勝傑は、紳々竜々の相手を勝平にまかせて、部屋を出てゆく。
勝平にむかつて、勝傑とはどつかで会つたやうな気がする、といふ紳々竜々。
勝平に問はれるままに、紳々竜々はこれまでの所属を語る。黄巾軍、董卓の家来、呂布の家来、曹操軍、孫権軍。丁原のところにゐたつてのが抜けてるぞー。
「父は袁紹軍で侍大将をしてゐたのださうです」と、誇らしげな勝平。
一度袁紹軍につかまつたことがあるから、それで見覚えがあるのかなあ、といふ紳々竜々。
ここがまた不穏だよね。袁紹軍につかまつたことがあるのはそのとほりだけどさ。
そんな紳々竜々如きが捕まつて、敵の侍大将を見たりする機会があるのだらうか。
そもそも、侍大将つてどのくらゐ偉いの? まづそこからか……。

庭では張飛と勝傑とが手合はせをしてゐる。
張飛といい勝負なのか? 強いな、勝傑。
張飛は龐統の供として西涼に行くことになつたので、腕に覚えのあるもの少数で行かうと思つてゐる、といふ。
いまの手合はせで勝傑の力量がわかつたので、つれていく、とも。
勝傑は喜んで、ことさらに「倅勝平にも顔が立ちます」などと云ふ。
「ことさらに」といふのは偏見かな。でも張飛にさう云へば、心証よくなりさうだもんなあ。
それに、張飛からことを打ち明けられてゐるあひだ、勝傑の目はずつと右の方を睨んでゐるんだよな。不自然だし、胸に一物あるやうにも見える。

紳助竜介の説明。
背後の窓の中に馬騰がゐる。
かつては打倒曹操の連判状に名を連ねてゐた馬騰が、曹操から西南将軍を授かり、玄徳や孫権を討たうとするのだらうか、とかといふところで場面転換。

馬騰の陣営。夜。
兵隊の頭のまはりに毛皮がついてゐるぞ。
黄奎がやつてくる。

馬騰の天幕の中。
馬休と馬騰を前にして、黄奎は、西南将軍に任ずる、といふのは、曹操の謀、と、云ふ。
黄奎は西南将軍の参謀に任じられてゐる、とも云ふ。
そこに、玄徳の使ひが到着したことを告げる兵がやつてくる。
黄奎は、自分のことは玄徳の使者には話さないやうに、と、云つて去る。
馬騰と馬休とは似てゐるな。少年ケーンのお父さんにも似てゐる。
馬騰は馬休に、黄奎の話を信じてもいいものか、と相談する。
馬休は、玄徳の使者である龐統に相談しては、と云ふ。

馬休が、龐統・張飛・勝傑らを案内する。が、張飛は勝傑を門のところに待たせる。

ふたたび天幕の中。
龐統は、黄奎の父は忠義の士なので、信じても大丈夫、と馬騰たちに云ふ。
曹操を討つのは自分のはずだつたのに、と残念がる張飛に、龐統は、「がつかりすることはない。張飛殿が曹操を討つ機会はまだいくらでもあるでせう」ととりなす。
この龐統のことばに馬騰も馬休もかちんときたんだな。
馬休に問ひつめられて、黄奎だけではダメ、と龐統は云ふ。龐統は、黄奎の謀は曹操にバレてゐる、もしくはバレるにちがひない、と見てゐるわけだ。
だから、許昌に赴くのは結果を見てからにした方がいい、と云ふ龐統に、馬騰は黙れと云つて龐統の云ふことを聞かうとしない。龐統も、こちらの云ふことをきかぬのはそちらの自由とチト冷たい。
まあでも、あの馬騰のいきほひではさう云ふしかないか。
龐統は、馬騰は使へぬと見たのかな。味方にするに如かず、とか。
味方は多い方がいい、とは考へなかつたんだな。さう思ふしかない。

夜。荊州への帰途につく馬上の龐統、張飛、勝傑。
張飛は龐統に許昌に行つて曹操を討ちたい、といふが、龐統は、張飛の役目は自分の護衛だらう、と云つて許さない。
張飛は、護衛は勝傑で十分だ、といふが、龐統は昨日や今日加はつたばかりの勝傑では心もとない、と答へる。いや、龐統も十分新入りだから、とは思ふがなあ。
困り顔の張飛が可愛い。そして、不満げな勝傑。
龐統は人を見る目がある、と、孔明のお墨付きがあり、このあとすぐに黄奎では心もとないといふ龐統の読みが当たる展開になる。
その龐統が疑つてゐるといふことは、と、すでにこの時点でいろいろ手がかりがそろつてゐるんだな。

許昌。
曹操が黄奎を呼びつける。
その場にゐるのは程昱、夏侯淵、許褚。
曹操は黄奎に、馬騰が来たら自分がみづから出迎へた方がいいかな、と、問ふ。
黄奎は、もちろんそのとほりでございますと答へるが、黄奎の陰謀はバレてゐたんだなあ。
曹操は、黄奎をとらへて拷問にかけよ、と命じる。

許昌の城門にやつてくる馬騰と馬休。
黄奎が白状したとは知らぬ馬騰は、自分たちの軍と黄奎とで出てきた曹操をはさみ討たんとする。
しかし、曹操は不敵に笑ひ、すべてはお見通しだ、と告げる。
黄奎は城壁から身を投げる。
はさみ討ちにするつもりが、前面からは夏侯淵、背後からは許褚にはさみ討たれる馬騰と馬休。
馬騰と馬休とは逃げる。
そこへ夏侯惇見参。
すつかり囲まれた馬騰と馬休とは戦ふが、敗れたことが題字で知れる。
出番はないけれど、「あー、また献帝、泣いてるなー」とか思つてしまふよ。

荊州。まだゐる紳々竜々。勝平と釣をしてゐる。
勝平は紳々竜々に父の袁紹軍での活躍を聞き出さうとする。
紳々竜々は、勝傑は官渡の戦ひで袁紹軍を蹴散らした、といふ。
「そんなはずないでせう、父は袁紹軍にゐたんですよ」と勝平は反論するが、紳々竜々は勝傑がゐたのは曹操軍に間違ひない、と断言する。

玄徳たちのゐるところに趙雲があらはれ、馬騰が捕へられ謀反の罪で死罪になつた、と、告げる。
さらには、この謀反の謀が曹操に知られたのは玄徳の使者がもらしたからだ、といふ。馬休が馬騰の長男の馬超にさう云つた、と。
さう報告する趙雲の背後から睨む勝傑。
そんなバカなことがあるか、と暴れる張飛。いやー、視聴者にはわかつてるんだけどねえ、張飛はそんなことしないつて。龐統については……うーん、まだわからないけれども、まあ、前回からここまでの流れを見たところ、裏切るやうな人物ではないだらうといふことは知れる。勝傑は、まあ、下つ端だからねえ。
孔明は、厳しい口調で「人の口に戸は立てられぬ。龐統殿、やはりなんとしてでも馬騰を止めるべきだつたのだ。お主には失敗することがわかつてゐたのだからな」と、龐統を責める。
それはそのとほりかな、と思ふのは、あの馬騰との場面での龐統がチト冷たい感じがするからだ。まちつときちんと忠告してあげればいいのに、といふ気がしたものな。
しかし、龐統も負けてはゐない。「孔明殿はその場にゐなかつたからそんなことが云へるのだ。かうなつたのも、私の忠告を聞き入れなかつた馬騰殿に運がなかつたとしか云ひやうがあるまい」と、さう云はれても、「や、龐統さん、それ、ちよつとつきはなし過ぎ」つて思つてしまふんだよなあ。いや、わかる、馬騰の剣幕は確かに龐統の忠告を聞き入れられるやうな、そんななまやさしいもんぢやあなかつたけどさ。
といふわけで、ここで軍師二人の怒濤のかけあひ……ぢやなくて論争が火ぶたを切る。
「だが、結果としては殿には迷惑をかけることになつてしまつたではないか」と、孔明がなほも云ひつのれば、
「それを私のせゐだといふのか。私は殿に命令された使者の役目を果たしただけだ。そのやうなことで、お主に責められる謂れはない」と、龐統も負けてはゐない。
うーん、多分、龐統の問題はこの「殿に命令された役目を果たしただけ」といふところなんだらうな。それは正しいことなのだらうけれど、人情としてもうちよつと期待しちやふんだよね。
「しかし、軍師を名乗る以上、そのくらゐの配慮があつてしかるべきではないか、龐統殿」と、孔明が聲を荒げれば、
「なに」と、龐統もだまつてはゐない。
そして、云ひ争ふ孔明と龐統とを、勝傑はそれとなく見つめる。
「まあまあ」つて諌めてゐるのは関羽か。玄徳もあひだに入り、関羽は西涼の誤解を説くのが先決、などと云ふが、孔明は、誤解がほんたうに誤解であることを証明しなければ、と主張する。おもしろくないのは龐統で、孔明に、自分を疑ふのか、と孔明の胸元に手を突き出すが、孔明は、さうではなく情報漏洩があつたかどうかを確かめねばなるまい、と、云ふ。
そんな龐統と孔明とのやうすを横目で見つつ、「さうか。やはり両雄並び立たず、か」と勝傑はひとりごちる。半ば諦め気味といふか、残念さうな様子にも見える。もしここで孔明と龐統とが云ひ争つたりしなかつたら、もしかしたら勝傑は、とか、無用な妄想をしてしまふ。

城内の庭で横になつてゐる勝平。
紳々竜々に云はれたことを悩んでゐる態。
そこへ勝傑がやつてきて、帰つてきたのになんで迎へに出ないのか、嬉しくないのか、と、訊ねる。
勝平は、直接勝傑に曹操軍の侍大将だつたといふのはほんたうか、と訊ねる。
玄徳に敵対してゐる曹操軍にゐたといつたら雇つてもらへないと思つたからだ、といふ。
勝平はなほも納得しないやうす。
「このやうな戦乱に明け暮れる世の中だ。一国一城の主だとて敵になつたり味方になつたりしてゐるのに、一介の侍大将がそのときそのときの縁や運で主人をかへるのは仕方あるまい」と、勝傑は云ふ。「一介の侍大将」などといふといふことは、侍大将つてそんなにえらくないのかも?
勝傑は、玄徳様は最後のご主人、といひ、妙な目で見られたくない、とも云ひつのる。
勝傑は自分が曹操軍にゐたことを勝平に口止めをする。さらに、誰がそれを勝平に伝へたのか、と問ふ。勝平は紳々竜々だと答へる。
一件見ると、仲睦まじさうな親子なのになー。勝傑は、勝平をひそかに斬らうとする。
そこに張飛があらはれて、孔明が呼んでゐる、と勝傑に告げる。勝傑は急いでその場をあとにする。
勝平は「なんの御用だらう」と、心配げに勝傑の背を見送る。
張飛が、馬騰のもとに行つた者の中に曹操に内通したものがゐるのではないかと孔明が疑つてゐる、と告げると、さらに勝平は不安げにうつむき、その場にうづくまる。
なにも知らない張飛は勝平を力づけやうとするが、その張飛からはなれて水面にうつる勝平。

孔明は、勝傑に、西涼に行つてゐるあひだ、龐統にをかしなところはなかつたか、と訊く。
「来てもらつたのはほかでもない。龐統のことだ」とか、「殿のお使ひで行つてゐるあひだ、不審なことはなかつたか」つて、孔明先生、怖いよ。
龐統が曹操と内通してゐたやうなやうすはなかつたか、と孔明に問はれて、「さういへば」と答へるさまが、わざとらしいよ、勝傑。
張飛が馬騰と一緒に行きたがるのを止めたのは、張飛が行つたら成る策も成らぬからでは、といふ勝傑に、「なるほど。いや、さうかもしれん」と、ちよつとうつむき加減に白羽扇を顔に寄せて、考へこんだやうな態を見せる孔明。あとから考へると、「いやー、役者やのう」といつたところか。

庭。ひとり歩いてゐる勝傑。
そこへ、龐統が聲をかける。
孔明がなにを訊いたか聞く。ここで、龐統は勝傑と顔を合はせやうとしない。まるで、間者と話すかのやうな態だ。
孔明は、龐統が曹操に内通したのではないか、と疑つてゐる、と、勝傑は告げる。ま、それはそのとほりだな。
孔明は龐統の才能を妬んでゐる、といふのも、ありさうありさう。
勝傑は、龐統を曹操軍に引き入れやうとしてゐるのかな。
前回も書いたけれど、実は龐統にとつてはその方が幸せなのかもしれないぞ。
だつて、龐統を見てその才能を見てとつたのは、曹操と周瑜とだけだもの。孫権も玄徳も、龐統のやうすを見ただけで「こいつダメ」つて判断しちやつたわけだしね。
云ふことを云つて勝傑はその場を立ち去る。
それを見送るともなく見送り、一人庭に立つ龐統のやうすがいいぞ。

関羽の部屋。
勝平があらはれ、父のことで相談したいことがある、と、関羽に告げる。
関羽は読書でもしてゐたのかのう。机の上に書籍とおぼしきものがちらほら見えるし、目の前には開いてゐる冊子があるやうに見うけられる。
勝平は、父がウソをついてゐることを玄徳に正直に話すべきか否か判断がつかない、と、関羽に云ふ。
関羽、やさしいのう。
「よし、他言はせぬから、どんなウソか云つてみなさい」つて、関羽に云はれたら、白状しちやふよねー。
勝平から勝傑が曹操軍にゐたことを聞いて、「なんと」といふ関羽の表情がいいなあ。
曹操軍にゐたなんてことはたいしたことぢやありませんよね、と勝平は云ふ。関羽さんに「うん」つて云つてもらひたいんだよな。
でも、ほんとはたいしたことなんだよねえ。関羽、困つて髯を撫でる。

夜。中庭。
水面にうつる勝傑。
勝傑は、勝平を呼び出したところだつた。
勝平ももう一人前だから短剣をやらうと思つてな、と、勝傑は短剣をふりかざし、今にも勝平を斬らうとする。
そこに、「あぶない!」と聲がして、石つぶてのやうなものが飛んできて勝傑の手から短剣が離れる。
見れば孔明と龐統とがゐるではないか。
でね、「あぶない!」つて云つてゐるのは、あきらかに孔明なんだよ。でも、孔明は右手に白羽扇を持つてゐる。といふことは、石つぶてのやうなものを投げたのは龐統なのか? え?それとも孔明は私の彼、ぢやなくて左利きなのか。
「まんまとひつかかつたな、勝傑」と云ふ孔明に、
「え」と、勝傑。だまさうとしてだまされた、わけだな。
「私には龐統殿が曹操と内通したやうに云ひ」
「私には孔明が疑つてゐると告げ口をしたな」
で、立ち位置を入れ替へる孔明と龐統。どんなデュオですか。
「我々が離反するやうに仕向けたのは、曹操の命令であらう」
「我々が殿の前で、わざと反目しあつてみせたとも知らないで、だまされをつて」
「この、愚か者めが」
と、孔明と龐統とに畳みかけるやうに云はれては、反論なんてできないよねえ。
これでこの場が崖つぷちとかだつたら、二時間ドラマの犯人当て場面を見てゐるかのやうだよ。
「そのうえ、我が子の勝平を殺さうとするとは、とんでもない親だ」と龐統がつきつけるやうに云ふと、勝平は、「父ちゃん、うそだうそだよねえ」と、勝傑にすがりつかうとする。
勝傑が自分の正体を白状する。自分の真の名は王達(漢字はあてずつぱう)、錦の袋は戦場で戦死した相手から奪つたものだ、と云ふ。その袋の中を見て、死んだ兵士に勝平といふ息子がゐることを知つた、と。
正体がバレたとあつちやあ生かしておくわけにはいかねえ、とばかりに、その場にゐる三人を斬り捨てやうとする勝傑実ハ王達に、龐統と孔明との背後から「相手はわしだ」と、関羽があらはれ、ぐつさりと勝傑を突き刺す。
勝平は「関羽さま、やめて」と懇願するが、もはやこれまでと思つたのか勝傑は勝平に向かつて父の敵を討てと迫る。イヤだと、勝平は泣いてわめく。
やむなし、と覚悟を決めたのだらう、「さらばだ」と、自害して果てる勝傑。
目を伏せて髯をしごき、「戦とはなんとむごいものか」と独白する関羽。それを君が云ふかね。

夕景。人形劇三国志には忘れ難い夕景がいくつもあるけれど、これもその一つ。
「お父さん。お父さん」と半泣きの勝平の背後から、「勝平」と、関羽があらはれる。
「お父さんのことは、気の毒だつたな」と、関羽に云はれて、そつと袖口で目のあたりを拭ふ勝平がいとをしい。
このあとの関羽と勝平とのやりとりの、間が実にすばらしいのだが、それを表現することのできぬ菲才の身を嘆くばかりである。
「おまへに話があるんだが、訊いてくれるか」と、関羽が云へば、
「話つて」と、ふしぎさうに訊く勝平。
「話があるんだが」と、切り出すの、タイミングはかるよね。云ひ出しにくいよね。
「どうだ勝平。いつそおまへはわしの子にならぬか。つまり、養子だ」との関羽のセリフに、「関羽様」と、それまでかなしげだつた勝平の聲のやうすがわづかに変はる。
「いやか」つて、まぢで訊いてますか、関羽さま。関羽にそんなこと云はれて、「いや」つて答へる輩がどこにゐるよ。
「いいえ、とんでもない、とんでもない、関羽様」と、勝平の答へもきまつてゐる。
「だつたら、わしのことを父さんと呼んでくれ」うう、関羽にこんなことを云はせるなんて、勝平よ、なんたるお子ぢやいのう。
ためらひつつも、「お、お父さん」と関羽を呼ぶ勝平に、「よしよし、それでよい。これからはおまへもわしの名をとって、関平と名乗るがよい。よいな、関平」と、最初はうれしさうに、あとの方はほんたうの父にやうに云ふ関羽。ここの関羽の横顔がまたすばらしくて、ねえ。
そして、「お父さん」と叫んで関羽にすがりつく勝平。
いいのう、いいのう。

紳助竜介の解説場面。
くわんぺいといふことは将来の戀人はお軽かね、といふ竜介に、忠臣蔵とちがふねんこれは三国志、とつつこむ紳助。お約束ですな。
しかし、「お軽勘平」つて、お約束、なのかな。芝居を見るやうになつてしまつた身にはなにをいまさらな事実だけど、「人形劇三国志」の想定する視聴者層としてはどうなんだらう。そんなことは親に訊け、といつたところなのか。リアルタイムで見てゐたこどもの親の代は、「お軽勘平」を知つてゐたか。うーん、ちよつと微妙な感じがする。

ところで、勝傑実ハ王達は、ほんたうに王達だつたのだらうか。
ほんたうは勝傑で、勝平の実の父だつた、といふことはないのか。
記憶にないほど幼いころに別れたとあれば親子の情もさほどはないのではあるまいか、といふ気もする。
邪魔とみれば即殺さうとするあたり、やはり勝傑は王達だつたのだらうとは思ふのだが、「さうか。やはり両雄並び立たず、か」と、なんだかチトがつかりしたやうすでひとりごちるさまを見ると、「実はそんなに悪い人でもないのかも?」といふ気がしてしまふのである。

ここまで書いてきて、我ながら、やはりこの回は好きだな。
入れごとばかりの回は本来好かぬのだが、なあ。
思ふに、ここまでずつと勝平の面倒を見てきた関羽が、勝平を養子に迎へる、といふのがいいんだよなあ。
関羽といへば、最初のころは張飛の面倒を見て、中盤からは勝平の面倒を見て、いい兄貴・いいをぢさん、といふところがたまらんのだよねえ。
あと、孔明と龐統とが楽しさう、といふのがいい。ふたりとも役者だし。「この二人を敵に回したらおそろしいことになるんだぞ」といふ気がひしひしとする。ああ、やはり臥龍と鳳雛とにタッグを組ませてはいけなかつたんだわ、とか。

それにしても、この件、玄徳はどれくらゐ知つてゐたんだらう。
だいたい、勝傑が勝平の父親だつたといふことを玄徳が知つてゐたかどうかも定かではない。
すつかり蚊帳の外ぢやあないか。
あ、そこがこの回を好きな理由か。
関羽は勝平に内緒だと云はれたからには玄徳には伝へてない気と思ふんだよなあ。
そんな心配をしなくても、軍師二人が伝へてるか。あるいは「こんなこと、殿に知らせるまでもない」といふことで、内密に関羽と謀つて夜を迎へたか。
玄徳には云はなくても、張飛には伝へなきや、かな。張飛は勝傑をずいぶん気に入つてたし。だいたい、勝平の父親が見つかつたといふことで、あんな大落としをするくらゐだものなあ、張飛は。
といふわけで、知らぬは玄徳ばかりなり(あと趙雲)、といふことでひとつ。

脚本

田波靖男

初回登録日

2013/10/16

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