むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

単身江東を訪れる玄徳。周瑜のはなつた暗殺者たちに命を狙はれるが、ひそかについてきてゐた関羽によつて助けられる。
曹操軍はためしに呉に対して戦をしかけてくる。呉の完勝に終はるが、曹操軍はもつと大軍のはず、と思ふ孔明は、舟遊びと見せかけて、曹操の秘密の水上大要塞を見つけてしまふ。
大要塞を知られてしまつた曹操は、今度は呉軍内部の切り崩しにかかる。周瑜の旧友・蒋幹に命じて、周瑜の引き抜きにかからうとするが、これもまた周瑜・孔明に見破られてをり、蒋幹は逆に蔡瑁が裏切つてゐるといふいつはりの情報を握らされてしまふ。これを信じた曹操は、蔡瑁を斬り捨てる。

一言

演義でいふと、四十五回、といつたところか。
だいぶ周瑜の活躍が減らされてゐる。孔明に取られちやつてるんだよなあ。これではあまりにも周瑜が不憫。水上大要塞を見つけるのは周瑜のままでよかつたのでは、と思はずにはゐられない。

実はリアルタイム放送日は誕生日であつた。
しかし、誕生日に関する記憶はなにもない。
このころ、吉川英治の「三国志」を誕生日に買つてもらつたのだが、それは翌年のことだつたやうに記憶してゐる。

まづ、諸葛瑾が玄徳のまへで呉に来てくれよー、とか云ふところからはじまる。
「弟・孔明の壮大な理論・天下三分の計」つて今回も云つてるよ、諸葛瑾。そんなに気に入つたか。

諸葛瑾に誘はれて、「まゐりませう、どこへでも」と、即答する玄徳は腰が軽すぎる。
といふか、人が良すぎる、といふべきか。
顔を見合はせる関羽と張飛が無言でさう云つてるぞ。

舟に乗る玄徳を見守つてゐる関羽の後ろ姿が異様にやうすがいい
自分を一緒につれて行けと暴れる張飛を必死で止める関羽だが、勝平に「用意できたよー」と云はれて、表情のゆらぐやうすもまたステキ
関羽はひそかに勝平にたのんで、舟の用意をしてゐたんだな。それで、こつそり玄徳の後を追ふつもりなのだ。演義では、関羽が行く、といふので、玄徳がこれを許し、張飛が自分も、といふが、「関羽ひとりでいい」つていふところなんだがな。
勝平が、「きつと帰つてきてよ、関羽さん」とか云ふてゐるのが、かはいい。慕はれてるなー、関羽。
取り残されて、「オレは待つのが一番苦手なのに!」と、ジタバタする張飛もかはいい

例によつて本邦の忍者のやうな風体の人間がそのやうすを見てゐて、曹操に、玄徳が呉にまねかれたことを知らせる。曹操は、これが周瑜の策略、といふことには気づいてゐない。
うーん、曹操だつたら、気がついてもをかしかない気はするんだがなあ。周瑜は玄徳を亡き者にせんと思つてゐる、とか。ムリか? ムリかな。
そして、夏侯淵がみづから進んで使者に立つ。
夏侯淵が行つてどうにかなるとはとても思へぬのだがなあ。

「孔明にたぶらかされをつて」つて、曹操は孔明に対する評価が高すぎるんぢやないかなあ。人形劇三国志中、孔明を一番評価してるのは曹操だよなあ。評価してゐる、といふか、それこそ「たぶらかされてゐる」のかもしれない。だつて、曹操が云ふほど孔明がすごいとは思へないんだよね。いや、まあ、たしかに、人形劇の孔明は、ウルトラスーパー大軍師ではあるけれども。なにしろ、手品も使ふしな!

玄徳が着いたら、玄徳と孔明を殺すつもりなのか、と、魯粛に訊かれ、「うん、さうだよ」つてな調子の周瑜。
この、悪気のない感じといふか、あつけらかんとしたところが、周瑜のいいところだ。

魯粛が、「玄徳も孔明も、呉を倒さうといふつもりはない、天下三分の計によれば」みたやうなことを云ふと、「おまへもおろかな男だな。そんなくだらん話にどうして感心するのだ」とばつさり切り捨てる周瑜。
天下三分の計は、なにがなんでも自国または自軍で天下統一するのだ、といふことにこりかたまつてゐると、「おお、そんな手もあつたか」と思はないでもない。最終的にはオレが天下を統一するけど、その前の段階として、とりあへず、三つ巴な状態を作つておいて、互ひに攻め難くする、といふのは、こんな書き方はえらさうかもしれないけれど、たしかにいい策だとは思ふ。
周瑜だつて、いきなり呉が天下統一できるとは思つてなかつただらう。でも、いま、この状況でとくに力のあるわけでもない玄徳軍を利するやうなことはしたくない、とも思つてゐただらうし、まあ、実は、玄徳軍なんて、全然眼中になかつたんだらうな。
ゆゑに、天下三分の計なんて、どーでもいい、むしろ今力のない玄徳軍を三分の一にするなんて、と思つてゐた、といふのは、ありだらう。
むしろ、魯粛とか諸葛瑾の方が心配だ……
「たわけ」と云ふてふりむいた周瑜のやうすが「美周郎」の名に恥ぢないうつくしさである。

そして、白昼堂々玄徳に襲ひかかる呉の「ゴンダクレ」の人々。
そこにあらはれる、釣り人仕様の関羽がまたなんともいい。
関羽は案外かういふ偽装工作をするよな。あるときはそのへんの野良犬、またあるときはただの酔つ払ひ。しかしてその実態は、みたやうな。七つの顔を持つ関羽。
いやー、ちよつと釣りに出たのですが、どうも妙な魚がかかつたもので。はははは」と、笑ひながらゴンダクレの人々をばつたばつたとなぎ倒してゆく様には惚れ惚れするよ、ほんと。

一方、岸壁に佇んでゐた孔明は、背後から弓矢を射かけられて撃たれて落ちる。
もちろん死にはしないわけだが。
呉の暗殺集団(?)は最後のつめが甘すぎる。そんなことだから孔明にしてやられるんだぞ。

玄徳は死んだものと思つてやつてきたのだらう周瑜がちらと狼狽するやうすもいいし、腕をつつてる孔明を見て、びつくりする魯粛もいい。
「安心なされい。幽霊ではない」といふ聲が幽霊のやうな孔明。かへつて驚いちやふよ。
腕をつつてて痛々しいのだが、矢のささつたのは二の腕で、つらなきやいけないやうな状況なのかどうか、よくわからないぞ、孔明。それとも、崖から落ちたときにひねつたりなんだりしたのか知らん。

孫権と玄徳が顔を合はせたところへ、夏侯淵が駆け込んでくる。礼儀もなにもないぞ。ちよつと、「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」のランスロットを思ひだしてしまつた。
孫権が曹操からの親書を投げ捨てると、夏侯淵の顔が大写しになつて、またピアノのがーんといふ音。ちよつと大げさすぎるやろ。

玄徳から、なぜ孔明はこの場にゐないのかと訊かれて、ちよつと怪我をして、と答へる魯粛のおろおろつぶりがいい。「階段からころげ落ちたとかで」つて、そんな説明ぢや納得できないよ、魯粛。

ここで出てくる貞姫のえらさう過ぎるところがとてもいい。二十歳近く年がはなれてゐるだらう周瑜にむかつて、「周瑜殿、戦は断固避けると仰ってゐたあなたまでがいつたいどうしたといふのです」とか云ふし。この、「周瑜殿」つて呼びかけ方が、また、困つた生徒の名を「やれやれ」つて感じで呼ぶ先生のやうな感じで、念入りにえらさうだ。
「曹操殿の和平の条件は、玄徳とやらいふ流浪の将軍を打ち取ることと聞きました。そんなことは雑作もないでせう」つて、玄徳の目の前で云ふし。知らぬとはいへ。

前回、孔明が「貞姫を玄徳に会はせてはならない」とか思つたといふのに、さすがの軍師にもこればかりは防ぎやうがなかつたのか、玄徳と貞姫は出会つてしまふ。しかも、玄徳は、貞姫を見て「淑玲……」とか云ふし。貞姫に「淑玲つてたれ」とか問はれて、「妻です」つて答へる玄徳には例によつて照れたところは微塵もない。いつそうらやましいくらゐまつすぐだ。

場面は切り替はつて、夕暮れの船着き場で再会する玄徳と孔明。孔明は、玄徳に貞姫のことでは「ゆめゆめお心を乱されませぬやうに」、といふ。ここでは描かれてゐなかつたけれど、貞姫と会つてしまつた、といふことを孔明が知つたときは、もしかしてあのピアノのがーんといふ音が鳴つたりしただらうか。

玄徳に気をつけるやう云はれて、「もう二度と落ちたりはいたしません。この魯粛殿がしつかりと守つてくれまするゆゑ」とか答へる孔明の云ひ方がイヤミでいいよね。それを受けて「おまかせください」と、魯粛は答へるんだけれども、いまひとつ信用ならないんだよなあ、魯粛は。でも、人形劇の魯粛はなんだかいい人つぽいから、つい、ね。

再三再四親書を送つてひきのばし策を取つてゐるくらゐだから、曹操の水軍の強化は付け焼き刃ではあるまい、と、孔明はいふけれど、親書をやりとりする時間くらゐで本格的な強化つてできるのだらうか。ここでは「親書を送つてひきのばし策を取るくらゐだから」といふ理由は不要ぢやないかな。

ここで紳助竜介の長江の説明。長さと流域面積。信濃川の十倍長く、利根川より九十倍広いのらしい。

曹操の大いなる悪もいいし、蔡瑁の小悪な感じもいい。

秘密基地ができるまでのあひだ、試しにちよつと戦つてみつか、といふので、曹操軍がやつてくる。ここのBGMが、曹操のテーマによく似てゐるのだが、なんとなく大河つぽいイメージの曲でよい。

「曹操軍には七千艘以上の舟があるはずなのにー」とかいふ孔明に、「曹操が云ひふらすことの半分は大嘘だといふことを孔明殿は知らんのか」と、大見得を切る周瑜がイカす。
それに対して、「たしかに、嘘のこともあります。しかし、それもあの男の戦法のひとつ。嘘と思つて手ひどい目にあつた例も多いのです」と、「自分はちがふもんねー」といひたげな孔明のセリフもいい。

水戦。
うまく撮つてるよなあ。どうやつて撮つてるんだらう。舟は馬のやうに、コンピュータ制御で動かしてるのかなあ。

楽人をつれて舟遊びと見せかけて、といふのは、本来は周瑜がやるんだがなあ。だいたい、さういふ藝事つぽいことつていふか、優雅なことつていふかは、周瑜にぴつたりなはずなんぢやが……。
人形劇の孔明はちよつと眠たそーな顔して眠たそーに喋るから、さういふところがなんとなくかういふ「遊び人風」なこともうつるやうに見えるのかもしれん。
川を流れてきた徳利を拾ひあげる孔明の手が、さういへばなんとなく優雅であつた。

曹操に褒められて、おもねる蔡瑁。いいぞいいぞ。
そこに楽の音が。

曹操軍の水上大要塞を見て、驚愕する魯粛。おしつぶしたやうな聲で、「なんといふ……なんといふ、おそろしい……」といふセリフの云ひやうが、またいい。ほんとにおそれてゐるやうすがよく出てゐる。

曹操軍の見張りに見つかつて、文字通り飛ぶやうに戻る舟の上で、顔を見合はせるだけの孔明と魯粛。この、顔を見合はせるだけ、といふのがまたなんとも効果的。

金持ちの舟遊びでせう、と報告する物見。けれども、「孔明」と、つぶやくやうに云ふて、「おそらくそれは孔明にちがひない。楽人を乗せここまでさぐりにくるやうなやつは、あやつのほかにはをらん」と、つづける曹操。
や、だから、ほんとは周瑜なんだつてば。
まあ、人形劇三国志では孔明なんだけれども。それはあつてるんだけれども。
やつぱり、曹操は、孔明を過大評価してゐる気がする。曹操がこんなだから、「孔明つてすごい!」といふ刷り込みが発生したのではあるまいか。
いや、孔明がすごくないつていふんぢやないんだけどさ。

べつにバレたつてどうつてことないのでは、といふ許攸に、「許攸、相手が孔明ならうかつに攻め込まうとはしないだらう」つて、ほんと、曹操ほど孔明を高く買つてる人はほかにゐないよ。

かく云ひながらも、「しかし、まだ手はある」と、余裕をかます曹操。「敵の首脳陣を切り崩すのだ。戦ふ前にな」とか、もう、謀略をめぐらすのが楽しくて仕方ないつて感じ。

ちやんと大要塞に見えるんだよなあ。「レッドクリフ」では、舟の数が多過ぎて、なんだか川がちやちく見えたのに。

孔明は「九分九厘」が好きだよな。口癖なのかも。
左手を白羽扇にあててるところとか、これまた優雅でいい感じだ。

「策士策に溺れるのたとへ」つてのがよくわからないぞ、孔明。その策が功を奏すれば、別段溺れたことにはなるまいと思ふんだが。それとも、「でも私がゐますからね」つてことなのかな。すでに曹操の策くらゐ、見切つてゐる、といふ自信がさう云はせてるといふか。
「こちらの大将を引き抜きにかかります。成功すれば大変な収穫ですし、たとへ失敗しても、敵の大将が処罰されるやうにしむければ、おのれに被害はない。曹操が好んでする策謀のひとつです」つて、それは曹操でなくても、ちよつとした策士ならみんな好きなんぢやあるまいか。だいたい、孔明だつて、それを逆手にとつておんなじことしやうとしてるわけなんだし。

それにしても。
そもそも、周瑜に目をつけるつてあたりが、曹操の策の失敗だつたのではなからうか。まちつと、ちがふ人物を選んでおけば、と思ふんだがなあ。
たとへば、今の状況で魯粛がゐなくなつたら、玄徳と孫権の同盟はくづれるだらうから、曹操軍にとつては願つたりかなつたりだと思ふんだがどうだらうか。
まあ、魯粛だつて、曹操の策略にひつかかるかつて云はれたら、そんなことはないだらうと思ふんだけど。

「わしを昔の友達がたずねてくるなど、絶えて久しくなかつたこと」つて、友達少ないのかなー、周瑜。
「孔明殿、どうもあなたの智恵は突飛過ぎて、そこまでいくと、とてもついていけないな」つて、いつそ楽しげな周瑜。

とか云ふてゐるところに、古いおともだちの蒋幹とやらが、やつてくる。
「殿、なつかしい男がたずねてきましたので、暫時失礼を、古いともだ……」と、云ひかけて黙る周瑜。
ここの無言の間がまたいい。

どんぐり眼の蒋幹、めうに明るすぎるぞ。かへつてアヤシいぞ。
着てる服もサテンつぽい牡丹色つていふのが、アヤシい。

楽しさうだな、周瑜ー。
周瑜も目の閉じないカシラだから、寝たふりが大変。

「孔明の策で」、といふことになつてゐるが、うーん、別に孔明の策などなくとも、周瑜ひとりでも、なんとでもなつたんぢやあるまいか。

で、早速曹操はたぶらかされて、蔡瑁を斬つちやふし。
あーあ。

曹操にむかつて、「確かにいづれはおまへの首をはねてやるつもりだつた」といふ蔡瑁。さうだつたのか、蔡瑁。単に逆ギレしただけにも見えるがな。
そして、許攸によつて、孔明に謀られたことを知る。
ここでまた、ピアノのがーんといふ音とともに曹操の顔の大写し。これはめづらしくはまつてたな。

それにしても、孔明の受けた傷はいつのまにか治つてたな。
矢傷つてそんなにかんたんに治るものなのだらうか。
それとも、なんかアヤシげな薬とかを持つてゐたのか。
そんなことも気にしつつ、次回、いよいよ赤壁前夜。

脚本

小川英
四十物光男

初回登録日

2013/01/20

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