投げっぱなしなSS放置倉庫です。倉庫が2代目だったりします(オイ)

テーマ:「みにくいアヒルの子が、もし 本当は白鳥じゃなくてやっぱりアヒルのままだったらどうするの」 です。
ツイッターで 5連・黒絵本として投稿したものを 再掲しています。

好きな作家さんの「げんふうけい さん(三秋縋 さん)」が、ツイートした内容をテーマに、創作。
お題を貰ったわけではなく、刺激されてというか。…こういうのってどうなんですかね(ドキドキ
念のため、創作のきっかけになったツイートを貼っておきます。問題があればご指摘ください…。。。





醜いあひるがいた。
白鳥が、その子があひるであると気付いた時にはもう、自分があひるだと言うことに本当は気付いていた。
優しい白鳥は、それでもいいと笑ってくれた。あひるは耐えた。

その優しさを持たない自分が、やはり白鳥とは違うのだと実感して。
ただ耐えていた。

せめて白鳥の為に生きたかった。恥をかかせたくなかった。
暖かな羽の柔らかさと、美しい造形に憧れた。

自分に手に入らないものだから、せめてその美しさを引き立てる物になりたかった。
あひるは甘えた。
周囲が『身の程知らず、白鳥もお人好しね』と囁く声が好きだった。
白鳥はいつも微笑んでくれた。

そんな日常にあひるは満足していた。
本来なら無かったはずの希少な生に、少なからず感謝をしていた。
自らを褒められる事がなくとも、自分の好きな物が輝く世界は幸せだった。
あひるはその世界を愛していた。

報われないと同情された事もあったが、本心から状況を喜んでいたのだ。


『渡り鳥』。

あひるは混乱した。
必死で生きてきた。ただ頑張ってきた。夢中だった。見えていなかった。
違うものだと知りながら、何が違うのかに気付けていなかった。

悲し気な目をした白鳥。
渡らなければならない白鳥。
優しく暖かな首を絡ませて、泣いてくれる白鳥。

そこが、境界線だった。

『僕は大丈夫』。
『あひるだから』。
『このままここで、生きていけるよ』。
『ここに居られない君より、よほど強く生きられるんだよ』。
『あひるはね。醜いかもしれないけど、儚くはないんだ』。

あひるは笑う。
優しい白鳥に、最後には甘えて笑う。

『またね』。

空を白く霞めていく景色を見ながら、あひるは白鳥に産まれなくてよかったと初めて思った。
美しくて暖かくて、優しい生き物。

もしもそんな物に産まれていたら、生きる意味を見失った時にはきっともう、続けていけなかったから。
あひるはあひる。

醜いあひるは、あひるだから、生きていられる。

(おわり)


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