飼われ犬
最終更新：
creamcaramel39 2014年10月05日(日) 01:13:21履歴
クソ生意気なだけの犬の話です。
田舎の農家とかでさ、やたらマヌケな顔してるくせに妙にえらそうにつったってる柴犬。
気がつくと脱走して一匹散歩してるような犬。いますよね。
あいつら何を考えてるか、本当に分からない。
そんな創作物です（Twitterより再掲）
遠くから見かけるたびに、実を言うと『羨ましいな』と、思っていたんだ。
居慣れた家屋の匂い。自分だけの庭先。
そういうものがあるってことにね。
アイツもソイツも、
なんだか一生懸命な顔をして、自分の庭にがっしり立って。
こっちを警戒しながら、自分の陣地を守ってる。
『よしよし、いいこいいこ』と撫でられて、なんだか満足そうに誇らしげにしてる。
なんだかそういうの、羨ましいなと思ってたんだ。
その頃の僕は、一人で居るのに飽きてたのかもしれない。
ただ寂しかったような気も、退屈だったような気もする。
刺激に餓えてたような気もするしね。
もしかしたら本当に飼い主が必要だったのかもしれないけど。
それは今でも分からないね。
とにかく縁あって、ついに僕も「一人前の番犬」になれる日がきたんだよ。
よく考えると、少し浮かれていたかもしれない。
うん。
飼われ犬になるってことに、ちょっと誇らしげな気持ちがあったのは否定しないよ。
飼い犬になることは悪いことだとは思わなかったし、
今でもそれ自体は悪くないと思ってる。庭先は心地いいしね。
安心して、油断しきってごろりとしてしまうような事もあった。
そんな時に飼い主に腹を撫でられて驚いたりして。
思い出すと、ちょっと顔が笑っちゃうよね。恥ずかしいような照れくさいような。
そういうわけで、やっぱり僕も
なんだか一生懸命な顔をして、誇らしげに立ってたんじゃないかな。
ただ残念なことに、あんまりそんな気持ちは長く続かなかったんだよ。
正直なところを言うと、物足りなくなっちゃって。
「ごっこ遊び」がしたかっただけなのかもね。
「楽しそうだしやってみたいな」って、思っちゃったんだと思うよ。
もちろん、今だからそう思うだけで 当時の僕にはそんなつもりはなかったよ？
だから問題が起きたんだよね。
飼い犬になるってのは、おしまいって言って、止められるものじゃない。
でも、物足りなくて。
ああ、馬鹿なことをしたとは後悔してないよ？
飼い主の事も大切にしている。必要ではあるよ。
それは前置きしておこう。
まあとにかくそういうわけで
僕はそれ以来、自分の庭先を抜け出して遊ぶようにしてるんだ。
そうじゃないと、本気で飽きちゃいそう。
番犬だからね、本当に居なくなるわけにはいかないでしょ。
うん、庭先に縛られたフリをする遊びも悪くない。
最近は ちょっとそう思えるようになった。
わざと、おとなしいフリをしてみたりもしてる。
うん、本当に悪くないよ、そういうのも。
「いい子になったね、ようやく落ち着いたかしら」なんて、言われながら。
本当はこっそり抜け出したりしてること、いつまでバレずにいられるかな、なんて。
ちょっとスリルを味わってみたりね。
そういえばこの間、逃げ出した先で昔の僕みたいなのを見たんだ。
あいつ、楽しんでるといいな。
そんなの考えながら、庭先で寝てるのは結構楽しい。
今夜は何しようかな。とりあえず、今は寝ておこうっと。
（おわり）