退廃的文明開化

そしてエロゲは日常になる。おすすめできる作品です。

	endless rain re:incarnation
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	85	90	80	80	80	82	Ｃ
	雨を司る神のニエである少女と神と少女の住まう森へ迷い込んできた少年が、永劫に降り続く閉じられた雨の世界で出会い心を通わせる和風伝奇ノヴェル。神の人形として生きてきた少女に芽生えた想いはどんな未来を描くのか。総プレイ時間は5〜6hほどと短いながらも前を向いて歩む確かな強さを描ききった本作は温かな気持ちになれる情緒的なテキストが特長。またカットインも全編にわたって豊富にあり動きを克明に感じられる点は、テキストやBGMと相まって良質な世界観を作り上げてくれる。スキップが遅い割にフラグ管理が難しいためすべての√を見たいなら公式ページにある攻略チャートを見ることをオススメする。

	MYTH-ミス-
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	85	85	85	60	90	80	82	Ｃ
	遠い未来。人々が影をなくした合理社会で生きる主人公。ある日、影のない世界で出会った影がある少女と脳内に響く『謎の声』に連れられ影が生活する不思議な世界へと足を踏み入れる。複雑怪奇な世界で生き、物語の謎を解く影探しADV。複数の視点を交錯させながらも"答え"へと収束させるプロットと、チャプタージャンプや人物相関図などの「どうぞ考察してください」と言わんばかりの充実したシステムは商業でも中々お目にかかれない。非常に考察しがいのある作品だが、難解なためある程度の覚悟を持ってプレイすることをオススメする。

	冬のポラリス
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	85	80	95	80	80	65	82	Ｃ
	本作は奇病により人類が消えてしまった世界で出会った不死者を名乗る少女と退廃世界を旅する「Winter Polaris」と平和な島に流れ着いた際に記憶をなくした少女が持つオーバーテクノロジーの謎を解明するため、遠く離れた島に向け小さな舟を漕いで海を旅する「Sweeper Swimmer」の2編を交互に読み進めていく中短編作品。ライトではあるがSF要素もありぐっと引き込む世界観が魅力。ボイスがBGMと比較して小さくバランス調整が難しい点やボイス再生が遅い点、BGMの音割れが気になる点などシステム面での不満がいくつか見られたが物語に隠した仕掛けや生きることに対する葛藤、他者との関りが作る想いを描く点は非常に良かったし文字が主役のステージ☆ななにおいてはそれで良いのだとも思う。プレイ時間は5〜6時間ほど

	サナララＲ
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	80	85	80	90	80	82	Ｃ
	あなたは人生で一度だけ願いを叶えることが出来るチャンスシステムに選ばれました――神の代行者としてシステムの説明と執行を行うナビゲーターと願いを叶えてもらう対象者によって紡がれるちょっとふしぎでハートフルな物語。サナララのリメイクで5章から7章を追加した計7章＋おまけで構成されており、各章ごとに主人公やヒロインが変わるオムニバス形式となっている。作風にあったBGMも素晴らしいが、立ち絵に合わせて心情描写を補佐するエフェクトがつく点は見ていて非常に楽しい。複数ライターの宿命だが、章ごとに好みがわかれる可能性があるためプレイの際は注意を。

	この世界の向こうで
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	95	90	75	80	65	82	Ｃ
	両親が逃亡したことで多額の借金を背負わされた不幸な主人公があの世とこの世の狭間にある「後悔堂」にいざなわれ、幸福な未来を対価に「余命3か月の少女を救う」という依頼を受ける。ヒロインを救い、運命を変えるために奔走する物語。ともすれば重たい設定に雰囲気も暗くなりがちだが、ヒロインたちとのテンポのいい掛け合いと豊富なパロディネタゆえの軽妙洒脱な文章に、どのキャラクターも個性的かつ行動原理が明確なためストレスなく読めるのも魅力的。プレイ時間は10時間ほどと手軽にプレイできる良作。

	Ｑｕａｒｔｅｔｔ！
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	70	85	85	85	90	90	82	Ｃ
	雪の降る聖夜。ヴァイオリンが結んだ縁で名門の音楽院に編入することになった主人公。時にぶつかり時に寄り添いながら四人と気持ちを重ね合う。その音色が何かを変えられると信じて。穏やかさと厳かさ、綺麗さと汚さ、感傷と理性。対極にある二つの描写を調和させた世界観が非常に秀逸で、丁寧で動きのあるＣＧ演出を軸にほとんどを会話文で成立させた本作はノベルゲームをプレイしているにも関わらず一作の映画を見ているような気持ちにさせる。個人的にはノベルゲーム初となるオートプレイ推奨作。

	神樹の館
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	85	75	90	80	90	65	82	Ｃ
	卒業論文の資料探しのため、山の奥にそびえ立つ洋館『真珠邸』へと向かう主人公たち。大雨で下山できなくなったことにより、古紙の香りを帯びたメイドや、奇妙なほど所作が一致しているロリ双子、一切姿を見せない主人の住む館に滞在することになる。現代に於いて忘れ去られ時代遅れとなった価値観などの旧懐を擽る主題を掬い上げて、文学的な筆致・耽美な雰囲気・幻想的なBGMで融和させた伝奇モノの秀作。

	黒曜鏡の魔獣
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	90	80	75	85	75	82	Ｃ
	侵略大国ニフルヘイムにある巨大な闘技場で行われる試合のため呼び出された、黒曜の剣を操る召喚獣『法の獣』。世話役のエルフメイドと補助役の闘技奴隷と共に様々な思惑が渦巻く闘技場で生きていく。ギャグテイストな掛け合いと魔術や剣技による熱い戦闘描写や各ヒロインの強さと脆さのバランスがとても上手い。また、魔術を顕現させたような存在である召喚獣や皇帝を守護する十騎士など、筆者を含む一部層の心をくすぐる設定もさることながら、目まぐるしく転換するCGやSEなどを駆使した演出が魅力の作品。

	向日葵の教会と長い夏休み
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	80	85	85	90	70	82	Ｃ
	幼少期を過ごした自然豊かな海辺の故郷に8年ぶりに帰ってきた主人公は、取り壊しを予定されている向日葵が咲く教会で、仲間たちと最後の夏休みを過ごす。情緒溢れる背景や温かみのあるBGMで表現する変化の少ない田舎町に浮かぶノスタルジックな情景と、変化していく自己と他者の関係を主題とした物語とを丁寧に対比させる「希望」のおとぎ話。テキスト・ビジュアル・BGMが三位一体となっている非常に良質な雰囲気ゲー。

	サクラノ詩
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	85	75	85	90	75	82	Ｃ
	世界的芸術家である主人公の父の葬式から物語はスタートする。物語の構成が抜群にうまく個別ルートも巻き込んで一つのエンディングを導いている様が秀抜である反面、いい意味でエロゲである意味をあまり感じない作品でもある。幸福の先への物語をテーマに緻密に計算された美しい骨格と軽快なテキストに見事な根拠で描かれる主人公のかっこよさ、学問的で難解な引用は読み手を惹きつけ魅了する。批判も覚悟であえて言おう。この作品は「芸術」である。

	時計仕掛けのレイライン-黄昏時の境界線-
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	90	90	80	80	85	82	Ｃ
	「魔術」をエッセンスとし、様々な事象が引き起こされる中で特殊用語が飛び交うが、段階を踏んでの丁寧な解説やリマインドが意識されており展開の巧みさを感じる。またムービーやSEをはじめとした演出の細かさや、キャラクター造形が上手く面白い掛け合いや相互扶助が見られる魅力的で居心地のいい関係などシナリオ以外でも世界観への没入を後押しする。レイライン世界への入門編として非常に良く出来ている作品。

	天使の羽根を踏まないでっ
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	85	80	85	90	75	82	Ｃ
	17年前に起きた大崩壊を機に神の実在が証明された世界でその隣席に座し、願いを届ける事ができる存在「μ」が選ばれる聖ソルイルナ学園に入学した主人公は、昔特別な時間を過ごした友人たちと再会する。これは神という絶対的な存在に縋って起きる奇跡は決して描かずに、人の強さに着目した神を×す物語。多くの葛藤や苦しみの中でも惚れ惚れするほど魅力的に描かれたキャラクターに情緒的なテキスト、美しい背景やCG、荘厳なBGMが秀麗な世界観を支える名作。

	見上げてごらん、夜空の星を
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	80	85	95	85	85	82	Ｃ
	星を観ない天文部員である主人公が約5年ぶりの幼馴染との再会や気の合う仲間たちとの出会いを経て、もう一度夜空に輝く星を取り戻す青春物語。専用ソフトを使って描き出した美しい星空と丁寧に自然と街の調和を描いた背景、雄大かつ荘厳で臨場感に溢れるBGM、星の瞬き等の息を呑むような演出の数々は、まるでプラネタリウムで星を眺めながら神々の恋物語に思いを馳せているかのような不思議な感覚をも呼び起こす最高峰の雰囲気ゲー。星の解説や知識も多分に含まれているが文体の軽さのおかげで非常に読みやすい良作。

	銀色、遥か
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	80	80	85	95	85	82	Ｃ
	「中学編」「学園編」「アフター編」の三部構成で10年の恋愛を描く大作。幼少期のトラウマから早熟してしまった主人公は子供らしい感情の起伏が薄く夢も見つけられずにいた。そんな中でヒロインと出会い恋をして歩幅を合わせ共に成長しながら同じ夢を掴む物語。現実的な辛さはほぼ存在しない優しい世界観が特徴だが反面、退屈に場合もあるため心が磨り減った時など自身のモチベーションをよく考えて適切な時期にプレイすることを推奨する。

	グリザイアの果実
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	90	75	80	85	75	82	Ｃ
	クールな主人公とクセのあるヒロインのテンポのいい掛け合いが面白く旧時代的なエロゲの良さを踏襲している。強い個性と若干の電波を感じるヒロインたちからは考えられないほどの重たい過去が隠されているのも特徴。力のある最強主人公ならではの重厚で壮大な個別ルートも魅力的でヒロインとの間に芽生えた愛情が生きる目的を失った主人公に新たな希望を生みだしていく。フロントウィングの傑作。

	真剣で私に恋しなさい！
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	95	80	80	80	80	82	Ｃ
	武芸をたしなむヒロインたちと個性溢れる友人グループを中心としたドタバタコメディ。あり得ないほど豪華な声優陣によって演じられる登場人物たちは全員どこかおかしくて面白い。面白いが、豪華すぎて何言ってんだウソップ・・・みたいになる。エンディングの数の多さも魅力的。ヒロインが主人公より格段に強いためHシーンはなんだかエロ同人のようになっていて男の夢がつめ込まれている。

	暁の護衛トリニティコンプリートエディション
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	70	100	80	85	80	70	82	Ｃ
	資産家令嬢と彼女らを守るボディーガード訓練生が通う憐桜学園を舞台に超人主人公と個性的なキャラクターが織り成す最高峰ギャグゲー。シナリオの起承転結、特に「結」のクオリティは決して高くないものの、ベッドでもバトルでも最強且つ冷淡な主人公に安心しながら、程々に臨場感のあるテキストは評価できる。心を無にして主人公のカッコ良さを楽しみつつ、頻繁にギャグの起点となる尊やツキとの掛け合いに腹を抱えて笑うのが、本作におけるおすすめのスタンスである。

	世界でいちばんNGな恋
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	85	90	80	75	80	70	82	Ｃ
	駆け落ちした母親を待ちながらも一人で大家代理として古びたアパートであるテラスハウス陽の坂を守る推定中◯生の美都子を支えるうちに美都子を含むヒロイン達と絆を深めていくホームコメディ。ぱっと見はさえない主人公だがヒロインの個別ルートに入っても行動原理に必ず「美都子のため」があり好感が持てる。世界でいちばんNGな恋に苦悩する姿を丹念に描写した傑作。

	AIR
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	90	85	80	60	90	75	82	Ｃ
	倒錯的に言えば夏版SNOWでもある。不思議な力で古びた人形を操ることが出来る主人公がたまたま訪れた海辺の田舎町で、現代に残る悲しい運命に巻き込まれていく伝奇モノ。死生観について強いメッセージ性がある。また、シナリオはKeyの中でもかなり難解で考察のしがいがあるのも特徴。ＯＰ曲である「鳥の詩」はとあるオタク界隈では国歌と呼ばれ、今でも親しまれる名曲。

	Memories Off 2nd
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	85	85	75	80	85	70	82	Ｃ
	既にメインヒロインと付き合っている状態で物語が始まる非常に珍しいシナリオ構成。エロゲ的な理想に反する予定調和のない本物のラブストーリーを追求することで、より現実味のある別れや葛藤の表現が特徴的な作品である。恋に悩み傷つき迷いながら、すれ違いや理不尽と向きあって正しい選択をする難しさを十分に描くことによるメインルートのカタルシスは見事だが、その真髄はメインヒロイン以外のルートをプレイすることによってこそ発揮される。メモリーズオフシリーズの最高傑作。

	木洩れ陽のノスタルジーカ
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	80	85	80	90	80	81	Ｃ
	西暦2488年、自律思考を持つヒューマノイドと人間とが共存する世界。学園に通う主人公たちは偶然校内に隠蔽され朽ちかけていた自律思考を持たない旧型のヒューマノイドしねまを発見する。しねまを修繕し共に過ごしていくため再び行動を共にするようになった幼馴染6人組は、そこから巻き起こる様々な困難を乗り越えていく過程の中で心について再定義していく。過去を生きたしねまが未来に導く小さな夢と約束の物語。特に歌曲が素晴らしいが、どこか懐かしいメロディで奏でられるBGMや美しい未来都市を描いた背景には一層ノスタルジーを感じられることだろう。

	SEVEN-BRIDGE
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	85	90	80	85	65	81	Ｃ
	向かうは黒死病の蔓延と異教徒との聖戦で死に絶えたヨーロッパ。黒の切符を手にしたものは超えてゆけ。七つの橋のその向こう。見果てぬ望みを掴むために。これは寝台列車に揺られながら旅をする大いなる運命と約束の物語。BGMや背景など雰囲気作りは流石の嘘屋。裏切らないクオリティで物語へと誘うが、そこかしこで言われているように中盤から終盤にかけては駆け足気味である。一本道でルート分岐もなく途中パートボイスになるが、設定とヒロインに惹かれた方には是非ともプレイすることをおすすめしたい。

	Aster
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	80	80	75	95	75	81	Ｃ
	季節が巡るように人が生きる環境の何もかもが、変わらずにはいられない。悲しみは何の前触れもなく訪れて、そこに奇跡は起こらない。これはチープで安易な『救い』には一切頼らず、どこまでも丁寧に辛い現実を描きながらも、その裏で見えづらくなっている美しい側面に一筋の光を照らす物語。複数ヒロインではあるが選択肢はなく、各ヒロインに連動し主人公が４人いる珍しいシステムになっている。また、ＯＰ・ＥＤやそれらのアレンジＢＧＭの完成度は妙妙たるもので非の打ちどころがない。

	120円の春
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	85	85	75	70	90	70	81	Ｃ
	「無数とも思える巡り合せの中で『出会い』と呼ばれるものがあるなら、きっと、誰かと誰かが知り合うチャンスは無限な筈で。だけど俺の知り合いは６０億人もいない訳で。」――そんな中で、１２０円の奇妙な縁が紡ぐ、ほんの些細な、けれども奇跡と呼んで差し支えないような出会いが生んだ、現実の息苦しさからの脱却の物語。シナリオ・登場人物の心情描写なども素晴らしいが、ＢＧＭは特に情緒的で美しい。４つの季節を舞台にしたオムニバス形式の短編集で総プレイ時間も５時間程度であるため、しょうがないだらけの現実に疲れたのなら、少しだけ立ち止まって手に取ってみてはいかがだろうか。

	一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	90	80	75	85	60	81	Ｃ
	寂れた建物の中で目を覚ますと、何かで拘束されたように身体を動かせなくなっていた。そこに通りがかった少女は人間同士の戦争によってあらゆる動植物が滅んだ世界で罪を償うために、戦争が起こり現在に至るまでに起きた全ての哺乳類の死を追体験することが神から与えられた使命だという。死んだような身でありながら生を求める主人公と生きている身でありながら死を求める少女。そんな二人が、共にいきたいと、そう願うのは罪を重ねることなのか。滅亡世界を二人で旅しながら、初めて出会う他者を定義し人間の生を考える。プレイ時間は3〜5ｈと短いながらも強烈に登場人物たちの想いを訴えかけてくる名作。

	わんことくらそう
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	90	85	75	80	70	81	Ｃ
	犬や猫などの特徴を持ち高い知能で人間とコミュニケーションをとることができる人型動物が、人と寄り添って生きていく世界。主人公が雨の夜、路地裏に打ち捨てられた一匹のわんこを拾い、新しい関係を結んでいく中で複雑な過去や環境により形成された心を癒していく。そんな「ペットの傍で人間がどのような変化をしていくのか」を主題とした物語である。人間たちのシビアな価値観とペットたちのシンプルな行動原理が絶妙な温かみを持つ良作。

	水葬銀貨のイストリア
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	85	85	80	80	80	60	81	Ｃ
	人魚姫の呪いによって人々が涙を失った水の都アメマドイ。様々な思惑や数々の凄惨な事件に巻き込まれた主人公は失った多くのものを補うためより深い悪意へと足を踏み入れていく。ご都合主義を排し、登場人物たちに悪意にも不幸にも目を逸らさせずに向かい合わせ、選択に潜む責任の重さを問いかけるシナリオ展開は陰惨ながらも強いメッセージ性を持っている。数多の不条理に直面しながらも登場人物たちは思想や信念や他者との関係性を捉えなおし、痛みを伴いながら成長していく。

	メモリーズオフ -Innocent Fille-
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	90	75	80	80	75	81	Ｃ
	過去に起きたとある事件を契機に離れ離れとなった幼馴染たちの通う高校へと転入してきた主人公。様々な再会や出会いの中で前へと進み真実に近づいていく。1999年から続くメモリーズオフシリーズの最終作で、心に潜むトラウマ・嫉妬・後悔などといった負の感情からの脱却をテーマとし「かけがえのない想い」を見つけるADV。前作ゆびきりの記憶で好評を博したサスペンス要素を、よりメモリーズオフらしさを残したまま取り入れた、まさに集大成と言える作品。過去作と変わらずシリーズ未プレイでも十分に楽しめる。

	漆黒のシャルノス〜What a beautiful tomorrow 〜
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	85	80	85	85	75	81	Ｃ
	20世紀最大級の繁栄を誇る大英帝国の中心都市ロンドン。大量の蒸気が雲のように空を覆う狂った世界で起きる、忘れられたおとぎ話の顕現に巻き込まれた主人公は「諦めず」にいられるか。…けれど、文明と同じく、人間の精神もまた変容を免れぬのだ。優れた世界観、ビジュアル、音楽で作り上げる希望を描いたスチームパンクシリーズの3作目。

	LOVESICK PUPPIES〜僕らは恋するために生まれてきた〜
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	90	70	80	80	80	81	Ｃ
	世話焼きでおせっかいな主人公がヒロインを蝕む問題に正面から対峙し並び立って解決する様式美を持ちながらも、自己を確立させる客体との関わり方を非常に丁寧に描写していく貴重な作品。ヒロインの抱える問題の多くは恋愛を通じて浮き彫りになり、恋愛を通じて解決していく。この純愛ゲーはそんな自家撞着のような、恋の病の処方箋である。また、支え合うことで維持される強固な自己を持ったブレない主人公は安心して見ていられる。

	Re:LieF 〜親愛なるあなたへ〜
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	75	80	90	90	75	81	Ｃ
	社会からドロップアウトしてしまった人のために用意された、外界から隔絶された美しい景観を保つ夢のような楽園で一度学園生活を送りながら『外』の世界に向けて一歩を踏み出す物語。どうしようもなく残酷な社会の中で疲弊して摩耗してどうしようもなくなって、希薄になる人間関係の中で本来なら修復できたはずの心の傷が癒せなくなって、様々な不幸が、理不尽が、天災のように襲いかかる時代になった。親愛なるあなたに、そんな今だからこそプレイしてほしい作品。

	Kanon
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	90	80	85	60	90	70	81	Ｃ
	言わずと知れた泣きゲーの始祖的存在。雪の降る、どこか懐かしい街で起きるたったひとつの奇跡の物語。古いゲームシステムと独特の絵柄でビジュアル面に問題はあるものの、それを補って余りあるシナリオ展開に脱帽した不朽の名作。こと感動を描くことに関しては流石のKey作品である。名雪がとってもかわいい。

	月に寄りそう乙女の作法 -LimitedEdition-
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	90	80	80	80	80	81	Ｃ
	夢を追うために上流階級の子女が通う服飾専修機関「フィリア女学院」に身分を偽りメイドとして通うことを決意した主人公が個性的なヒロインたちと生活を共にするうちに心までも女性になっていく様を描いた意欲作（？）ルナ様が最高に美しく主人公のような強さを備えた理想的なご主人様であり、主人公もハイスペック奉仕メイドであるため主従関係が綺麗なのが特徴だ。服飾という珍しいテーマを描きながらも飽きさせないテキストは流石。

	恋愛0キロメートル
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	70	100	85	75	80	70	81	Ｃ
	お隣同士だが男だらけの矢崎家と女だらけの木ノ本家と真逆の家族構成の両家は三ヶ月という期間限定でそれぞれ一人ずつ家族を交換する約束をする。そこで白羽の矢が立った主人公はキャラの濃すぎる木ノ本家へ行く事になり翻弄されながらも仲を深めていく。登場人物の全員が一癖も二癖もあるバカゲーで常にハイテンションで物語が進んでいく。ギャグに振り切った共通ルートは会心の出来。

	MINDCIRCUS
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	90	80	90	70	65	80	Ｃ
	アル中医学生の主人公がクレジットカード会社の抽選に当たり、南国のリゾート地へと招待される。宿泊先のホテルで起きる不可解な連続殺人事件の謎を解き、外界から切り離された孤島から脱出するクリック探索式のサイケデリックサスペンス。90年代を想起させるビビッドな色合いのイラストと陰惨なシナリオ展開はフリーゲームとは思えないほど蠱惑的だが、反面システム面は使いづらい。恒常的に起こることではないだろうが、バグにより日付のワープが起こりバッドエンドの回収ができなくなったため、プレイされる際はこまめにセーブすることを強くオススメする

	ルーシィ〜彼女が望んでいたもの〜
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	80	80	85	80	80	75	80	Ｃ
	無感情で機械的なアンドロイドが氾濫する社会に馴染めない主人公は、ある日廃棄場に打ち捨てられているアンドロイドと出会う。彼女は人間のような情緒と夢を持っていた。家庭内不和を抱える主人公がこれまで形成してきた自己に基づく価値観を覆すようなアンドロイドの存在に苦悩しながらも未来への決断を下していく。韓国語から日本語訳しているため多少の違和感はあるが機械とのハートフルな話が好きな方には是非おすすめしたい。

	Flyable CandyHeart
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	80	85	85	85	75	80	Ｃ
	『Flyable Heart』『君の名残は静かに揺れて』のスピンオフ作品で前作でのシナリオを踏まえながら根幹の仕掛けをリファインし、FHシリーズのどの作品よりも優しい世界でヒロインたちとの「その後」とサブヒロインの追加シナリオを描いた最終作。特にメイン二人のルートにはシリーズを通して伝えたかったメッセージが集約されている。また、ユニゾンシフト過去作のキャラクターを登場させたおまけシナリオもある。こちらはプレイしなくても物語進行に影響はないが、該当する過去作をやらなくてもある程度楽しめるため、気が向いたら読むといいかもしれない。

	なついろレシピ
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	80	85	85	80	80	80	Ｃ
	自身の父に宛てた、娘と名乗る少女からの手紙を受け取った主人公は、突如現れた妹に困惑しつつも高原の山村・白珠村へ向かった。緩やかに変わる田舎の山村で、食を通じて過去や思いを発見し、再構築していく過程を丁寧に描いた異例の飯テロ作。故人と向き合い、大切に扱った上で前を向いていく姿は感慨深い。PULLTOPらしい美しい背景やCGに穏やかなBGMは作品への没入感を一気に高めてくれるが、中盤以降はほとんどお腹を空かせる役割となってしまっていた。

	見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYS
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	70	85	80	90	85	80	80	Ｃ
	オムニバス形式でメインヒロイン4人のアフターストーリーとサブヒロインだったニート先生と吉岡さんの個別ルートを収録している。本作は無印での雰囲気作りを重視した作風というよりも、無印で不足していたキャラクターの内面や可愛さに触れていく作品となっておりキャラ愛の深いファンは必見。反面、音楽や売りだった星空がほぼ引き継ぎで作風の変化からか心を震わせるような演出も少なくなっているが無印を上手く補っている良FD。

	SNOW-Portable-
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	90	80	85	70	75	75	80	Ｃ
	万年雪の龍神村で営む温泉宿に住み込みで働きに来た主人公が、過去の記憶を紐解きながら、長く続く悲しみを終わらせる物語。冬版AIRとか色々と言われているほどKey作品の様々な部分に似ているため、オリジナリティは薄いもののシナリオはしっかりとしていて見比べても十分面白い。陵辱ゲーメーカーとして知られるスタジオメビウスが一体何を思ったのか制作した泣きゲーであり傑作。

	乙女理論とその周辺-Ecole de Paris-
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	75	85	80	80	80	85	80	Ｃ
	月に寄りそう乙女の作法の続編であり恋仲にならなかった場合から物語が始まる。舞台は同じく「フィリア女学院」だが日本ではなくパリである。物語は主人公のお家問題にも発展していくため前作つり乙よりも壮大になっているため、前作も含めた一連のシナリオのトゥルーエンド的な役割がある。また前作のアフターストーリーも特典としてついてくる。下の兄愛溢れるりそなは素晴らしい妹

	キミトユメミシ
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	70	90	75	90	85	70	80	Ｃ
	他人が見ている自分の夢に入れる能力を持った主人公が、夢を通じてヒロインの隠された性癖や悩みを知っていくエロコメディ。ハイセンスなギャグとハイテンポなシナリオに気づけば夢中になっているが、コンビニの肉まんくらいにほんのり温かい良い話に纏っている。グラフィックが綺麗でキャラクターの可愛さを引き立たせる。おまけも充実しているため非常に満足度の高いラプラシアンの処女作。ただし修正パッチは必須。

	水月 〜Portable〜
	シナリオ	キャラクター	世界観	ビジュアル	音楽	システム	総合評価	ランク
	90	75	85	80	80	65	80	Ｃ
	記憶喪失の主人公から始まる独特の雰囲気が魅力で記憶の曖昧さを考えさせられる。のどかな田舎町で起きる不思議な現象はそうした世界観をより印象づける。「過去」に存在した明確な悪を乗り越える伝奇モノではなく存在確立の不安定さや過去が水面に広がる波紋のように影響しあう「今」に重点を置いた作品。伝承による民俗学観と概念や認識論的な哲学観の入り交じる考察ゲーでもある。