新海誠監督のアニメーション「秒速5センチメートル」の二次創作についてのサイトです。

種子島へ出発の日は大変だった。

6月特有の、迷走台風が関東の南をうろうろしていて、そのために鹿児島行の飛行機が「天候調査中」となっていた。そんな表示はテレビニュースの中だけでしか見たことがなかった。

まさか、自分の乗る飛行機がそんなことになるとは。


それでも1時間遅れで羽田を無事離陸した飛行機は、1時間半後に鹿児島空港に到着した。
種子島へ飛ぶ飛行機の接続にはギリギリ、なんとか間に合った。
ここで合同観測をする北海道と和歌山の人たちと合流することになっていた。

台風は太平洋上に抜け、天気もそれほど悪くはなかった。
鹿児島から乗った飛行機はプロペラ機で「YS-11」というそうだ。
2年の浅倉くん(撮影担当)によると「ゼロ戦を作った人たちが設計した、戦後日本が作った初めての旅客機」だそうな。


もうすぐ、夏至になる。

一番日の長い時期の、南の島に、私たちはたどり着いた。

時間は12時半。太陽は高く、草のかおりが風になびいていた。

そして。

私が踏みしめている、この大地を、貴樹くんも踏んでいる。

そう思うと、胸が締め付けられる。

いまさらながら、どうして連絡しなかったのか、後悔した。
そうしたらきっと、貴樹くんのことだから、空港のロビーまで迎えに来てくれてたはず。あと数分で、彼に会えたはず。

それなのに。

私はそんなチャンスを放棄してしまった。

引率の先生は一年目ということで、私から見てもあまり頼りにならなかった。
理子がすべてを仕切っている、そんな感じだ。

ロビーに出ると、中種子高校の生徒会と歓迎委員という人たちに声をかけられ、用意されたワゴンバスに乗せられ、宿舎に連れていかれた。


そこは民宿だったけれど、こざっぱりとした感じ。海岸へ降りる中腹に建てられていて景色がよかった。

もっとも、この島にはそれほど高い建物はないから、空が広く感じた。


空気が、澄んでいる。


昼食後、機材をワゴンに積み込んで、私たちは中種子高校へと向かっていった。

(つづく)

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