最終更新: centaurus20041122 2014年03月24日(月) 15:58:46履歴
ワゴン車は中種子高校の敷地に入っていった。
かなり広い敷地に施設が点在している、という感じ。
機材を降ろして、校舎の一室に設けられた仮置き場に運んでいく。
グラウンドは校舎の向こう側にあるという。
機材の数を確認しつつ望遠鏡を組み立て、ファインダーの調整をし、赤道儀の動作確認を終えたら、もうやることがなくなってしまった。
ついに、貴樹くんの通う学校に来てしまった。
意味もなく心臓がドキドキしている。
ここの、同じ空気を今、彼も吸っているのかしら。
そんなことを考えていると、生徒会の人がやってきて歓迎式典の話を始めた。
最初は生徒会や歓迎委員の人たちだけが出席することになっていたんだけど、「えらい人たち」も出席するので、急に中種子高校の生徒全員が参加することになったと告げられた。
「え、全員!?」
思わず私は聞き返した。
「それって、1年から3年まで、全員、ですか?」
冷静に理子が聞いている。
「ええ、そうです……、みなさんは、こちら側が整列したあとでここから出てくださるタイミングでいいですから」
こちらが聞き返したのが「整列する時間が長くなるのに、こんな暑いなかずっと外で待ってるの?」っていうニュアンスで捕えられたみたいだった。
でも、そんなことはどうでもよくて。
全員っていうことは、貴樹くんも?
貴樹くんもいるってこと?
生徒会の人が立ち去ったあと。
頭がくらくら、足ががくがくしてきた。
「明里、しっかりしな」
理子が震えている私を見かねて言ってきた。
「だって……」
「探す手間が省けたかもしれないじゃない? それに、後輩男子の手前もある」
「ん……」
「ま、なるようになるから。ここまできたらいまさらジタバタしても始まらない」
校内放送が入り、生徒がグラウンドに集まり始めた。
朝礼台から見ると、左側に中種子高校生徒が、右側に全国から来た観測隊が並ぶ、ということだった。ただ、その整列は朝礼台に向かってではなくて、20メートルほど開けて、お互いに対面する形にするという。
私たちは言われるがまま、動くしかない。
窓からじっと見ているけれど、さすがに300人以上もいるわけだから見つけられるわけもなく、もしかしたら今日はお休みしているかもしれないし、などと由無いことをぐるぐると考えていた。
「そろそろ、お願いします」
歓迎委員の女の子がやってきた。黙ってついていく。校舎を出て、校庭に出た。
南国の暑い空気と陽射しが一斉に襲ってきて、肌を焼いていく。
私たちは、中種子高校の人たちを左に見ながら、校庭の中ほどへ進んでいた。
不意に。
空気がぐぐぐっと動いた気がした。
そして、
ざざざっという、土を蹴る音がしたかと思うと。
「明里っ!!」
聞き覚えのある声が、私の名を呼んで。
声のした方に向くと……私たち観測隊と中種子高校生徒の間の、ちょうど真ん中あたりに一人の男の子が立っていた。
貴樹くんだった。
(つづく)
かなり広い敷地に施設が点在している、という感じ。
機材を降ろして、校舎の一室に設けられた仮置き場に運んでいく。
グラウンドは校舎の向こう側にあるという。
機材の数を確認しつつ望遠鏡を組み立て、ファインダーの調整をし、赤道儀の動作確認を終えたら、もうやることがなくなってしまった。
ついに、貴樹くんの通う学校に来てしまった。
意味もなく心臓がドキドキしている。
ここの、同じ空気を今、彼も吸っているのかしら。
そんなことを考えていると、生徒会の人がやってきて歓迎式典の話を始めた。
最初は生徒会や歓迎委員の人たちだけが出席することになっていたんだけど、「えらい人たち」も出席するので、急に中種子高校の生徒全員が参加することになったと告げられた。
「え、全員!?」
思わず私は聞き返した。
「それって、1年から3年まで、全員、ですか?」
冷静に理子が聞いている。
「ええ、そうです……、みなさんは、こちら側が整列したあとでここから出てくださるタイミングでいいですから」
こちらが聞き返したのが「整列する時間が長くなるのに、こんな暑いなかずっと外で待ってるの?」っていうニュアンスで捕えられたみたいだった。
でも、そんなことはどうでもよくて。
全員っていうことは、貴樹くんも?
貴樹くんもいるってこと?
生徒会の人が立ち去ったあと。
頭がくらくら、足ががくがくしてきた。
「明里、しっかりしな」
理子が震えている私を見かねて言ってきた。
「だって……」
「探す手間が省けたかもしれないじゃない? それに、後輩男子の手前もある」
「ん……」
「ま、なるようになるから。ここまできたらいまさらジタバタしても始まらない」
校内放送が入り、生徒がグラウンドに集まり始めた。
朝礼台から見ると、左側に中種子高校生徒が、右側に全国から来た観測隊が並ぶ、ということだった。ただ、その整列は朝礼台に向かってではなくて、20メートルほど開けて、お互いに対面する形にするという。
私たちは言われるがまま、動くしかない。
窓からじっと見ているけれど、さすがに300人以上もいるわけだから見つけられるわけもなく、もしかしたら今日はお休みしているかもしれないし、などと由無いことをぐるぐると考えていた。
「そろそろ、お願いします」
歓迎委員の女の子がやってきた。黙ってついていく。校舎を出て、校庭に出た。
南国の暑い空気と陽射しが一斉に襲ってきて、肌を焼いていく。
私たちは、中種子高校の人たちを左に見ながら、校庭の中ほどへ進んでいた。
不意に。
空気がぐぐぐっと動いた気がした。
そして、
ざざざっという、土を蹴る音がしたかと思うと。
「明里っ!!」
聞き覚えのある声が、私の名を呼んで。
声のした方に向くと……私たち観測隊と中種子高校生徒の間の、ちょうど真ん中あたりに一人の男の子が立っていた。
貴樹くんだった。
(つづく)
コメントをかく