最終更新: centaurus20041122 2014年11月08日(土) 18:35:52履歴
「花苗、電話よ」
テレビでお笑い番組を見ていた花苗が母親に呼び出される。
「誰?」
「サッちゃん」
珍しい。なんだろうな、と思った。
「もしもし?」
「あなた、今日サボッたでしょ」
クラスメイトのサチだった。
「なんていうか、かったるいし……その、いい波だってメール入ったのよね」
「そんなことはどうでもいいのよ……」
普段は冷静なサチがなんだか熱くなっていて、花苗は少し不思議に思った。
「明日、ガッコに行ったら……嫌でも耳に入ると思うから、教えておこうと思って」
「何? なにがあったの?」
「遠野くんのこと」
そう言われて、ずしんと嫌な予感がした。
「なに……?」
「遠野くんの彼女が来た」
「え?」
その言葉の意味が一瞬わからなかった。
とおのくんのかのじょ?
「どういう、こと?」
言葉が、震える。受話器を持つ手も、脚も。
「日食の観測隊で来た人の中に、遠野君の彼女がいたの」
そう聞いて、くじけそうになる心をなんとか正常に保ちながら、反論というか、疑問をぶつけてみる。
「どうして、それがわかったの?」
「聞いたら、かなりショック受けると思うけど」
「……どういうこと? とにかく教えて」
花苗はサチから、その日の午後にグラウンドでどのようなことがあったのか聞いた。
あの、クールな遠野が走り出して叫んだこと。
「俺が好きなのはお前だけだ」と。
そうしたら、相手の女の子が駆け寄ってきて、抱き合ったこと。
全校生徒が見ている前で。
相手の友人らしい人が「二人は初恋同士で、5年ぶりに再会した」というようなことを説明したこと。
「遠野くん自身もその人が来ることは知らなかったみたいだけど。でも、花苗がその場にいたら……」
その言葉をさえぎって花苗は言った。
「教えてくれて、ありがと。もう、いいよ」
そして、電話を切った。
私がその場にいたら、きっと頭がおかしくなってる。
目からはもう、どくどくと涙が溢れ出ていた。
だって、今だって。
心のリミッターが外れそうになってる。
大声で叫びたいのを必死にこらえる。
不意に思った。お姉ちゃん!?
遅い夕食を取っていた姉のところへいく。
「お姉ちゃん、今日のこと、」
ちょうど、たくわんをつまんで食べようとしていた姉が言う。
「あんたサボッてたでしょ」
「そんなことじゃなくてっ!!!」
仁王立ちになり、大きな瞳からとめどなく涙を流している妹に、姉は勤めて冷静に、諭すように言う。
「あんたは、遠野君の、なに?」
「え」
「つきあってるの?」
「……」
「遠野君に、なにか言われた? 好きだ、とか」
「………」
花苗には何も言えなかった。
そう、私は遠野くんの「なにものでもない」。
「好きでいるのはかまわないと思うけど。でも、私が見るかぎり……あの二人は本物だと思うな。あんたもそこそこかわいいんだから、次の恋を見つけたら?」
尊敬する姉にそう言われて、花苗は泣き崩れた。
(つづく)
テレビでお笑い番組を見ていた花苗が母親に呼び出される。
「誰?」
「サッちゃん」
珍しい。なんだろうな、と思った。
「もしもし?」
「あなた、今日サボッたでしょ」
クラスメイトのサチだった。
「なんていうか、かったるいし……その、いい波だってメール入ったのよね」
「そんなことはどうでもいいのよ……」
普段は冷静なサチがなんだか熱くなっていて、花苗は少し不思議に思った。
「明日、ガッコに行ったら……嫌でも耳に入ると思うから、教えておこうと思って」
「何? なにがあったの?」
「遠野くんのこと」
そう言われて、ずしんと嫌な予感がした。
「なに……?」
「遠野くんの彼女が来た」
「え?」
その言葉の意味が一瞬わからなかった。
とおのくんのかのじょ?
「どういう、こと?」
言葉が、震える。受話器を持つ手も、脚も。
「日食の観測隊で来た人の中に、遠野君の彼女がいたの」
そう聞いて、くじけそうになる心をなんとか正常に保ちながら、反論というか、疑問をぶつけてみる。
「どうして、それがわかったの?」
「聞いたら、かなりショック受けると思うけど」
「……どういうこと? とにかく教えて」
花苗はサチから、その日の午後にグラウンドでどのようなことがあったのか聞いた。
あの、クールな遠野が走り出して叫んだこと。
「俺が好きなのはお前だけだ」と。
そうしたら、相手の女の子が駆け寄ってきて、抱き合ったこと。
全校生徒が見ている前で。
相手の友人らしい人が「二人は初恋同士で、5年ぶりに再会した」というようなことを説明したこと。
「遠野くん自身もその人が来ることは知らなかったみたいだけど。でも、花苗がその場にいたら……」
その言葉をさえぎって花苗は言った。
「教えてくれて、ありがと。もう、いいよ」
そして、電話を切った。
私がその場にいたら、きっと頭がおかしくなってる。
目からはもう、どくどくと涙が溢れ出ていた。
だって、今だって。
心のリミッターが外れそうになってる。
大声で叫びたいのを必死にこらえる。
不意に思った。お姉ちゃん!?
遅い夕食を取っていた姉のところへいく。
「お姉ちゃん、今日のこと、」
ちょうど、たくわんをつまんで食べようとしていた姉が言う。
「あんたサボッてたでしょ」
「そんなことじゃなくてっ!!!」
仁王立ちになり、大きな瞳からとめどなく涙を流している妹に、姉は勤めて冷静に、諭すように言う。
「あんたは、遠野君の、なに?」
「え」
「つきあってるの?」
「……」
「遠野君に、なにか言われた? 好きだ、とか」
「………」
花苗には何も言えなかった。
そう、私は遠野くんの「なにものでもない」。
「好きでいるのはかまわないと思うけど。でも、私が見るかぎり……あの二人は本物だと思うな。あんたもそこそこかわいいんだから、次の恋を見つけたら?」
尊敬する姉にそう言われて、花苗は泣き崩れた。
(つづく)
このページへのコメント
なんか、かわいそうですね。
花苗ちゃん
どうしていいかわからないというのが、正直な感想です。
ただ、たぶん これくらいもてるのなら 花苗ちゃん以外にも 言えなかったけど あこがれていたとか
実は 好きだったとか 花苗ちゃん以外にも 何人かいそうですよね。
ある意味 貴樹は 罪人ですよね。
はっきりさせないと 他の人にも迷惑がかかる。
とは、いってもなかなか 好きか嫌いかまでは わからないので むつかしいですね。