最終更新: centaurus20041122 2014年04月16日(水) 22:53:50履歴
学園祭当日、午前のステージ。
第一回のミスコンテスト本選が体育館で開催された。
1年3組の島村静香は華道部に所属。おしとやかな感じで大人っぽい容姿が人気だ。
当日は振りそでで登場!!。
2年2組の国府田久美はアニメ研究会に所属。華やかなキュートさがあり、コスプレイヤーとして何度も雑誌にも掲載されたことがあるという。オタク系男子の本命!!。
そして、3年1組の篠原明里。これまでずっと地下水脈のごとく、しかし確実に人気のあった清楚系美少女がついに表舞台に!
配られているチラシに目を通して、なんだかこそばゆい感覚のある明里だった。
今までこんなふうに直截的に「かわいい」だとか「清楚」だとか「きれい」だとか自分のことをポジティブに言われたことがあまりない。
「好きだ」とは言われたことはあるけれど、そのあとにすぐ「ごめんなさい」と返事をしてしまう明里なので、その人が自分のどこに惹かれたのかは知らないのだ。
午前中に3人がステージに集まっての質疑応答。そして、特技の披露。
そのあと1時間で投票。午後までに開票して、閉会式の時に初代女王の発表、というプログラムになっていた。
投票ができるのは学校の生徒のみ。投票用紙は生徒手帳の提示で配られる。その際に手帳の所定の場所に投票済みの目印を入れることで、二重投票を防ぐという。これらの仕組みは委員長の原口が考案したものだった。
11時から始まったトーク・ライブはアンケートの形を変えた質疑応答だった。
「篠原さんは初恋の人が今の彼氏ということだそうなんですけど……」
「はい、知り合ったのは10歳のときです。でも、恋なんだって気づいたのが11歳のときでした」
「つきあいはじめたのは?」
「13歳、中1です。そのときはもう私はこっちに転校していたし、彼も東京から鹿児島へ転校することになっていて、もう永久に会えないかもしれないから、とわざわざ会いにきてくれたんです」
「13歳で東京からここまで来るのは確かにちょっとした冒険ですよね」
「ええ……それでそのときに好きだという気持ちを伝えました」
「どんなふうに伝えたんですか?」
「……彼の目の前に立って、目を閉じました」
会場がざわつく。
「あ……つまり、篠原さんからその……キスを求めた……と」
「そうです。あのときはもう、永久に会えないかもしれないって思ってたので……」
他の二人が無難かつ適度にオーディエンスに媚びる発言をするなか、マイペースに明里は彼氏がいますというスタンスを崩さなかった。明里の目的はミスコン女王になるのではなく、あくまで「自分には彼氏がいます」という告知なのだ。
そのあとは特技披露。1年の島村は華道部らしく、いけばなの「早生け」。
10分で作品を仕上げた。
2年の国府田はコスプレイヤーの実力を発揮。過激な衣装を着てアニソンに会わせたダンスを披露し、オタク系男子の視線を奪う。
「さて、最後は篠原さん。歌を歌ってくれるそうですが……」
「今年の夏に5年ぶりに彼に会ったときに、自分の気持ちにぴったりだということで彼氏の前で歌った曲です」
「では、どうぞ。中山美穂さんの曲で、You're My Only Shinin' Starです」
明里は選択科目で美術を取っていた。音楽を取ろうと考えたのだが、希望者多数で抽選となり、外れてしまったのだ。
鼻歌を歌うだとか、学校の帰りにクラスメイトとカラオケに寄る、ということもなかったので、学校の誰もが明里の歌声を知らなかった。
歌声が響きはじめると観衆は静まり返った。、
その透明感のあるソプラノは、冷涼な、高原を吹きわたる風のように会場を流れ、男子たちを魅了した。せつせつと恋心を語る歌詞は、恋に悩む女性陣の後押しをするかのごとく力づける。
10年ほど前にヒットしたラブソングが新鮮な感覚で高校生たちの心に沁み込んでいく。
最後の音が鳴り、明里が深くお辞儀をすると、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
会場の片隅で見ていた理子が「本番に強いな……これ、もしかして、もしかするかも」とつぶやく。
新企画のミスコンテストや、軽食系の屋台数を大幅に増やしたこともあり、その年の学園祭は大盛況だった。地元の人たちもたくさん立ち寄り、委員長の原口は鼻も高々に閉会式でのあいさつを行い、理子がしかめつらをしている。
閉会式はグラウンドに作られたステージで行われており、明里たちは出番待ちで袖につくられた楽屋代わりのテントの中にいた。
「理子、あまりそんな顔してると眉間にしわができるわよ」
明里が軽口を叩く。
「それにしてもあんた緊張しないの? もうすぐ結果発表だっていうのに」
「とくに。それよりこれで終わると思うとホッとするほうが大きいかな」
「さて、みなさん。いよいよ、第一回ミスコンテストの結果発表です! まずは候補者の入場です」
司会者があおって、出場者の登場を告知した。
「じゃあ、あとで」
明里がトントンと袖階段を上っていった。
(つづく)
第一回のミスコンテスト本選が体育館で開催された。
1年3組の島村静香は華道部に所属。おしとやかな感じで大人っぽい容姿が人気だ。
当日は振りそでで登場!!。
2年2組の国府田久美はアニメ研究会に所属。華やかなキュートさがあり、コスプレイヤーとして何度も雑誌にも掲載されたことがあるという。オタク系男子の本命!!。
そして、3年1組の篠原明里。これまでずっと地下水脈のごとく、しかし確実に人気のあった清楚系美少女がついに表舞台に!
配られているチラシに目を通して、なんだかこそばゆい感覚のある明里だった。
今までこんなふうに直截的に「かわいい」だとか「清楚」だとか「きれい」だとか自分のことをポジティブに言われたことがあまりない。
「好きだ」とは言われたことはあるけれど、そのあとにすぐ「ごめんなさい」と返事をしてしまう明里なので、その人が自分のどこに惹かれたのかは知らないのだ。
午前中に3人がステージに集まっての質疑応答。そして、特技の披露。
そのあと1時間で投票。午後までに開票して、閉会式の時に初代女王の発表、というプログラムになっていた。
投票ができるのは学校の生徒のみ。投票用紙は生徒手帳の提示で配られる。その際に手帳の所定の場所に投票済みの目印を入れることで、二重投票を防ぐという。これらの仕組みは委員長の原口が考案したものだった。
11時から始まったトーク・ライブはアンケートの形を変えた質疑応答だった。
「篠原さんは初恋の人が今の彼氏ということだそうなんですけど……」
「はい、知り合ったのは10歳のときです。でも、恋なんだって気づいたのが11歳のときでした」
「つきあいはじめたのは?」
「13歳、中1です。そのときはもう私はこっちに転校していたし、彼も東京から鹿児島へ転校することになっていて、もう永久に会えないかもしれないから、とわざわざ会いにきてくれたんです」
「13歳で東京からここまで来るのは確かにちょっとした冒険ですよね」
「ええ……それでそのときに好きだという気持ちを伝えました」
「どんなふうに伝えたんですか?」
「……彼の目の前に立って、目を閉じました」
会場がざわつく。
「あ……つまり、篠原さんからその……キスを求めた……と」
「そうです。あのときはもう、永久に会えないかもしれないって思ってたので……」
他の二人が無難かつ適度にオーディエンスに媚びる発言をするなか、マイペースに明里は彼氏がいますというスタンスを崩さなかった。明里の目的はミスコン女王になるのではなく、あくまで「自分には彼氏がいます」という告知なのだ。
そのあとは特技披露。1年の島村は華道部らしく、いけばなの「早生け」。
10分で作品を仕上げた。
2年の国府田はコスプレイヤーの実力を発揮。過激な衣装を着てアニソンに会わせたダンスを披露し、オタク系男子の視線を奪う。
「さて、最後は篠原さん。歌を歌ってくれるそうですが……」
「今年の夏に5年ぶりに彼に会ったときに、自分の気持ちにぴったりだということで彼氏の前で歌った曲です」
「では、どうぞ。中山美穂さんの曲で、You're My Only Shinin' Starです」
明里は選択科目で美術を取っていた。音楽を取ろうと考えたのだが、希望者多数で抽選となり、外れてしまったのだ。
鼻歌を歌うだとか、学校の帰りにクラスメイトとカラオケに寄る、ということもなかったので、学校の誰もが明里の歌声を知らなかった。
歌声が響きはじめると観衆は静まり返った。、
その透明感のあるソプラノは、冷涼な、高原を吹きわたる風のように会場を流れ、男子たちを魅了した。せつせつと恋心を語る歌詞は、恋に悩む女性陣の後押しをするかのごとく力づける。
10年ほど前にヒットしたラブソングが新鮮な感覚で高校生たちの心に沁み込んでいく。
最後の音が鳴り、明里が深くお辞儀をすると、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
会場の片隅で見ていた理子が「本番に強いな……これ、もしかして、もしかするかも」とつぶやく。
新企画のミスコンテストや、軽食系の屋台数を大幅に増やしたこともあり、その年の学園祭は大盛況だった。地元の人たちもたくさん立ち寄り、委員長の原口は鼻も高々に閉会式でのあいさつを行い、理子がしかめつらをしている。
閉会式はグラウンドに作られたステージで行われており、明里たちは出番待ちで袖につくられた楽屋代わりのテントの中にいた。
「理子、あまりそんな顔してると眉間にしわができるわよ」
明里が軽口を叩く。
「それにしてもあんた緊張しないの? もうすぐ結果発表だっていうのに」
「とくに。それよりこれで終わると思うとホッとするほうが大きいかな」
「さて、みなさん。いよいよ、第一回ミスコンテストの結果発表です! まずは候補者の入場です」
司会者があおって、出場者の登場を告知した。
「じゃあ、あとで」
明里がトントンと袖階段を上っていった。
(つづく)
コメントをかく