最終更新: centaurus20041122 2014年04月16日(水) 22:19:31履歴
6月の修学旅行は関西周遊だった。
小グループに分かれて名所旧跡を巡ったが、とくに感慨はわかなかった。
ただ、「俺が踏みしめているこの土地は、間違いなく明里につながっているはずだ」とだけ思っていた。
しかし、帰ってみたら、そんなことはどうでもいいことが起こっていた。
1週間の修学旅行から帰ってきても、明里からの手紙が届いていなかった。
タイミング的にはもう届いてもよさそうなものだった。
1日、3日、1週間、半月。
気づくと1か月が経っていた。
必ず1か月に一度届いていた、明里からの手紙が来なくなった。
僕は、彼女の身に何かあったのかと思い、もう1通、手紙を書いた。
半月経っても返事は来なかった。
電話しようか。
でも。
できなかった。
彼女の身の上になにかあったのか、彼女の心になにかあったのか。
もしかしたらもう、明里は僕を必要としなくなってしまったのではないか。
手紙が来ない、出さないというのは、その意思表示なんじゃないか。
そうだとしたら、僕はどうすればいいのか。
もしも電話をして、明里から「さよなら」を告げられたら。
そんな最悪なケースを想像して、僕は髪をかきむしった。
もしかしたら、僕は罰を受けているのかもしれない。
神様の存在は信じていないけど、僕は罰せられるに足ることをしていた。
何が起こったのかわからない。
だけど、こんな南の果ての島にいては、なにもできなかった。
東京に。東京に戻らないといけない。
僕は受験勉強に一層逃避していった。
「最近、遠野くん、元気ないね」
澄田が言う。
学校からの帰り、アイショップに寄ったときのことだ。
明里からの手紙が途絶えて、3か月が経っていた。
僕の感情の動きは極度に下がっていた。もう、何にも心が動かなくなっていた。
「そう? そうかな。自分ではわからないけど」
いや、わかっている。どうしようもなく沈んでいる。
だけど、そんなことを澄田にいうわけにはいかない。
「その……おこがましいかもしれないけれどさ、私でよければ、話、聞くよ?」
「ん……ありがとう。でも、本当になんでもないから」
「そう……」
僕は澄田にしたことで罰を受けたんだ。これ以上、澄田に甘えてどうする。
僕は、自分ひとりで立ち上がらないといけないんだ。
僕は強くならないといけない。
明里を十分に守れるくらいの力と、心と。
でも、そもそもその明里からの手紙が途絶えた。
ぐるぐると悪循環に陥っている。
じゃあ、澄田との関係はきちんとすべきなんだろうか。
澄田は僕に何も言ってはこない。だから、僕から何かいうべきことでもない。
澄田は浅黒く焼けた肌を持つ、健康的な美人だ。
そう、十分に水準以上に美人だった。だから、眺めているぶんにはよかった。
だけど、相手は気持ちも感情も持っている人間なんだとわかってはいるけれど。
いっそのこと、澄田が僕に告ってくれたら、スッキリするのではないか?
そんなことまで考えた。しかし、澄田を失えば、ここのところ安定していた高校生活のペースが乱れてしまう、そうも考えた。
結局、僕は卑怯にも、そのままの関係を維持することにした。
あれから、明里からの手紙は来ない。
長い種子島の夏は過ぎ、秋が来ていた。
(つづく)
小グループに分かれて名所旧跡を巡ったが、とくに感慨はわかなかった。
ただ、「俺が踏みしめているこの土地は、間違いなく明里につながっているはずだ」とだけ思っていた。
しかし、帰ってみたら、そんなことはどうでもいいことが起こっていた。
1週間の修学旅行から帰ってきても、明里からの手紙が届いていなかった。
タイミング的にはもう届いてもよさそうなものだった。
1日、3日、1週間、半月。
気づくと1か月が経っていた。
必ず1か月に一度届いていた、明里からの手紙が来なくなった。
僕は、彼女の身に何かあったのかと思い、もう1通、手紙を書いた。
半月経っても返事は来なかった。
電話しようか。
でも。
できなかった。
彼女の身の上になにかあったのか、彼女の心になにかあったのか。
もしかしたらもう、明里は僕を必要としなくなってしまったのではないか。
手紙が来ない、出さないというのは、その意思表示なんじゃないか。
そうだとしたら、僕はどうすればいいのか。
もしも電話をして、明里から「さよなら」を告げられたら。
そんな最悪なケースを想像して、僕は髪をかきむしった。
もしかしたら、僕は罰を受けているのかもしれない。
神様の存在は信じていないけど、僕は罰せられるに足ることをしていた。
何が起こったのかわからない。
だけど、こんな南の果ての島にいては、なにもできなかった。
東京に。東京に戻らないといけない。
僕は受験勉強に一層逃避していった。
「最近、遠野くん、元気ないね」
澄田が言う。
学校からの帰り、アイショップに寄ったときのことだ。
明里からの手紙が途絶えて、3か月が経っていた。
僕の感情の動きは極度に下がっていた。もう、何にも心が動かなくなっていた。
「そう? そうかな。自分ではわからないけど」
いや、わかっている。どうしようもなく沈んでいる。
だけど、そんなことを澄田にいうわけにはいかない。
「その……おこがましいかもしれないけれどさ、私でよければ、話、聞くよ?」
「ん……ありがとう。でも、本当になんでもないから」
「そう……」
僕は澄田にしたことで罰を受けたんだ。これ以上、澄田に甘えてどうする。
僕は、自分ひとりで立ち上がらないといけないんだ。
僕は強くならないといけない。
明里を十分に守れるくらいの力と、心と。
でも、そもそもその明里からの手紙が途絶えた。
ぐるぐると悪循環に陥っている。
じゃあ、澄田との関係はきちんとすべきなんだろうか。
澄田は僕に何も言ってはこない。だから、僕から何かいうべきことでもない。
澄田は浅黒く焼けた肌を持つ、健康的な美人だ。
そう、十分に水準以上に美人だった。だから、眺めているぶんにはよかった。
だけど、相手は気持ちも感情も持っている人間なんだとわかってはいるけれど。
いっそのこと、澄田が僕に告ってくれたら、スッキリするのではないか?
そんなことまで考えた。しかし、澄田を失えば、ここのところ安定していた高校生活のペースが乱れてしまう、そうも考えた。
結局、僕は卑怯にも、そのままの関係を維持することにした。
あれから、明里からの手紙は来ない。
長い種子島の夏は過ぎ、秋が来ていた。
(つづく)
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