最終更新: centaurus20041122 2014年03月24日(月) 15:56:39履歴
12月1日、学校の掲示板に仰々しい掲示が掲げられた。
「文部科学省指定 全国高等学校共同研究」
なにやら、その研究とやらに我が校が参加するらしい。
スポーツ部門をさらりと覗く。弓道部はとくに関係ないようだ。
文系もとりあえず見ていたが、ある一画を見たときに衝撃が走った。
∞○∞―……―∞○∞―………―∞○∞―……―∞○∞
文科系活動
19XX年 皆既日食共同観測
北海道立××高等学校
栃木県立○○高等学校
和歌山県立▲▲高等学校
∞○∞―……―∞○∞―………―∞○∞―……―∞○∞
そこに書かれていたのは、明里が通っている高校の名前だった。
そういえば、来年の6月に九州の南で皆既日食が起きる。
種子島は皆既日食帯に入っていた。
世界中から、観測者が殺到する。
もう1年も前から一般のホテルは満室で、民宿も埋まり始めているという。
あとは、テントを担いだひとたちが多数やってくるかもしれない。
天文に興味のある僕だったので、そのくらいのことは情報として仕入れていた。
しかし、まさか……。
いや、明里はバスケ部だ。
彼女も皆既日食に興味はあるだろうけれど、直接このことは関係ない。
僕は、そう結論付けて掲示の前から立ち去った。
もうこの島に来て4年になる。東京にいたのも4年だった。もしかしたら、そろそろ親父が転勤するかもしれない。
そんなことを聞いてみたら、「それがわかったら苦労しない」と言われてしまった。
なんだよ、今までさんざん転勤しておいて、種子島がいやに長くないか。
そんなことを僕が愚痴ったところでしょうがないのはわかっているんだけど。
帰宅するとすぐにポストを開ける癖が、煩わしく感じていた。
今までにもらった手紙の文面はすべて覚えていた。
これまでに僕が書いた手紙の内容を覚えている範囲で思い出してみるけれど、何か明里が怒るようなことを書いただろうか。まるでわからない。
下書きもなしに書いていたから、それ以上のことは考えてもわからない。
種子島の冬はそれほど寒くはないけれど、冬は冬だ。
体も心も縮こまる。
時の流れが一層遅くなっているように感じた。
(つづく)
「文部科学省指定 全国高等学校共同研究」
なにやら、その研究とやらに我が校が参加するらしい。
スポーツ部門をさらりと覗く。弓道部はとくに関係ないようだ。
文系もとりあえず見ていたが、ある一画を見たときに衝撃が走った。
∞○∞―……―∞○∞―………―∞○∞―……―∞○∞
文科系活動
19XX年 皆既日食共同観測
北海道立××高等学校
栃木県立○○高等学校
和歌山県立▲▲高等学校
∞○∞―……―∞○∞―………―∞○∞―……―∞○∞
そこに書かれていたのは、明里が通っている高校の名前だった。
そういえば、来年の6月に九州の南で皆既日食が起きる。
種子島は皆既日食帯に入っていた。
世界中から、観測者が殺到する。
もう1年も前から一般のホテルは満室で、民宿も埋まり始めているという。
あとは、テントを担いだひとたちが多数やってくるかもしれない。
天文に興味のある僕だったので、そのくらいのことは情報として仕入れていた。
しかし、まさか……。
いや、明里はバスケ部だ。
彼女も皆既日食に興味はあるだろうけれど、直接このことは関係ない。
僕は、そう結論付けて掲示の前から立ち去った。
もうこの島に来て4年になる。東京にいたのも4年だった。もしかしたら、そろそろ親父が転勤するかもしれない。
そんなことを聞いてみたら、「それがわかったら苦労しない」と言われてしまった。
なんだよ、今までさんざん転勤しておいて、種子島がいやに長くないか。
そんなことを僕が愚痴ったところでしょうがないのはわかっているんだけど。
帰宅するとすぐにポストを開ける癖が、煩わしく感じていた。
今までにもらった手紙の文面はすべて覚えていた。
これまでに僕が書いた手紙の内容を覚えている範囲で思い出してみるけれど、何か明里が怒るようなことを書いただろうか。まるでわからない。
下書きもなしに書いていたから、それ以上のことは考えてもわからない。
種子島の冬はそれほど寒くはないけれど、冬は冬だ。
体も心も縮こまる。
時の流れが一層遅くなっているように感じた。
(つづく)
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