ギャングスターパラダイス公式wiki - プロローグ
「――突然ですが、悲しいお知らせがあります。」

久々の兄弟集合を喜び、 酒場を貸しきって騒いでいた矢先、
いきなり入って来た、スーツにシルクハットの”いかにも紳士風”な男は、
俺達に向かってそんなことを言い始めた。

「今、 あなた方の”ボス”が殺されました。」

俺達は少し静かになった後、鼻で笑い、
「本当か?」と、静かに銃を向け、尋ねた。

「ええ、本当ですとも。」

その言葉と同時に、兄弟たち全員の携帯が鳴り響いた。
どれも”親父”の死を伝える部下からの電話だった。

「どういうことだ」「お前がやったのか」
激昂するもの、困惑するもの、なおも冷静なもの、
それぞれ反応は違ったが、皆同じく撃鉄をカチリと下ろし、再度尋ねた。

「ボスは、亡くなられることを予期しておられました。
 明確な時刻と場所まで知った上で、なお、死地におもむかれたのです
 ――全ては”家族”を守るため。あの方最後の”交渉”でございました。」

以前に俺は親父から、大きなヤマが来ていると聞かされていたが、
まさか、親父自身の命を使ってまでの、ヤマだったとは。

「幹部であり、最愛の家族であるあなた方に、ボスから遺言があります。
 ”俺の座っている椅子は、一つ、お前らでわけ合え”と。」

――いずれはその日が来る。
そう思っていたが、どうにも、今日がその日らしい。

”俺達が悪党である限り、
 平等で平和的な分けあいなど存在しない。
  あるのは勝者への配当のみ”

親父がいつも俺達にいっていた言葉だ。

どうやら他の兄弟たちも、解ったようで、
親父が死んだというのに、どこか笑っているように見える。

面倒な、なかよしこよしの家族劇も、今日で終わりだ。

死んだ親父に”乾杯”を告げて、
俺達は酒場を立ち去った。


「さてさて、始まりましたね。兄弟争い。
 順調に、問題なく、事は運んでいますよ。ボス……。」