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三重 大手スーパー 本屋
PM18:30:30

かずき・ウィジェッタ
終了条件1 スーパーからの脱出
小目的 武器の入手
──────────
かずき「う…なんだ?」

生きてる…?

かずき「さっきのサイレンは何なんだ…」

──【フッヒャア】──

かずき「うっ…頭が痛い」

さっきのは…?

わからないことづくめだ。

ともかくみんなが心配だ。

かずき「……圏外」

地震の影響だろうか。携帯は使えそうにない。

かずき「直接確かめに行くしかないか」

周りを見回しながら私は携帯をポケットにし舞い込み、ここを出る為に動き出した。

「うああああああああ」

かずき「なんだ!?」

下の方から叫び声が聞こえると、直ぐ様下を覗き込んだ。
吹き抜けになっている二階から一階の様子はよく見えた。

かずき「おいおい嘘だろ……」



「アヒャッヘハァ!!!」

「助けてく……」

グチャリ……

かずき「うっ……」

思わず目を背けてしまう。こんなの隊長じゃなくても怖いっての……!
……男が持っていた包丁が他の人の心臓に刺さり込んでた……。

つまり……殺してたってことか。

かずき「地震に乗じたにしてはタチが悪すぎんだろ……!」

自分の身にも危険を感じつつ、私はその場を後にする。

かずき「武器がいる……自分を守るための武器が」

隠れつつ、何とかスポーツコーナーまで辿りつけた。

かずき「思ったらスポーツコーナーって武器の宝庫だよな」

バットにゴルフクラブ、テニスラケット……はちょっと威力がないか。


かずき「金属バットにしよう」


適当に一本引き抜くと軽くスイングしてみる。

ブンッ!!!

かずき「ナイショット」

野球なんてしたことはないけど自分を守るためだ。

かずき「後で返せたら返しに来る!」

誰もいないカウンターに一礼した後スポーツコーナーを出る。

ウィズッターC──【コッチニオイデ〜】──

かずき「うっ……またかよ」

誰かの目線が頭に過る。

かずき「地震のせいで超能力に目覚めちゃったのか俺」

試しに目を瞑り、一階にいるであろうさっきの男の視界を見ようとしてみる。

ウィズッターE──【ケェッケェッケェッ……】──
かずき「見えた……本当に」

何でかはわからないけどどうやら他人の視界を盗み見ることが出来るらしい。

かずき「一体どうなってんだよ……」

かずき「ぴゃー……みんな」

無事でいてくれよ……!

それからも隠れながら何人もさっきの様な男を見た。
警察は何やってんだ! こんな時の為の警察だろ!

かずき「って言っても電話も出来ないし…いざとなったら俺も…」

やるしかない。

殺されるなんてごめんだ。

でも命乞いをして……変なことされるのも嫌だ。
俺は皆をまとめる隊長だ、みんなの前では強がってるけどやっぱり怖いものは怖い。
体が無意識に震える…けど、
それでも怖がってたらいいようにされるだけだ…。

かずき「来るなら来い…私も容赦しない」

ゴルフクラブを握る手が一段と強くなった。

かずき「エレベーターは…まずいか」

音がなるし…下に参りまーすって言ってるようなもんだしな。

かずき「ということはエスカレーター…または階段だけど」

エスカレーターは中央にありすぎて降りた時に目立ち過ぎる。
なら階段か…。

かずき「階段は…こっちか」

どうやら二階にはいないらしく一階から見えないよう二階の吹き抜け部分にかけられている手刷りから離れて少し屈みながら歩く。
手刷りの下は白いガラスになっている為あっちから見られることはないだろう。

かずき「……」ビクッ

かずき「なんだ……」

階段に差し掛かった時、一瞬体が震えた。

かずき「もしかして……」

私は静かに目を閉じる。


ウィズッターD──【ハア……ハア……また怒らレチャッタ……死ねばイイノに……あんなヤツ】──


かずき「いる…」

目線から階段が見えた…ってことは多分正面のレジ辺りにいるのだろう。
言葉を聞く限り正気とは思いづらい。というよりここにいる人達はみんな信用出来ない。
下に居たってことはさっきの叫び声も聴いてるはずなのに…何の焦りも感じられない。
ってことは奴らの仲間か……。

かずき「わかんないけど早く逃げた方がいいな…。警察とかにこの事を伝えないと」

このスーパーの近くに交番があった筈。
まずはそこに駆け込もう。

かずき「さて…下のやつをどうするか」

ウィズッターF「服をタタミマショウネーイソガシイイソガシイ」

ウイーーーーン

ウィズッターF「!!!?」

エレベーターが動いているのに気付いたのか急いで駆け寄る。

ウィズッターF「降りてラッシャアアアアアアアい」

↓のボタンを狂うように連打しまくるF。

上の文字盤は2から1へ。そしてつきましたよと言う合図、ポーンという間抜けな音がした後、ゆっくりと扉が開いた。

F「アハハハハハ!!!」

勢い良く乗り込むものの、そこには誰もいない。
しかし、エレベーターの鏡に写った自分を他の誰かと勘違いしたのだろうか、ハンガーを振りかぶり襲いかかる。

F「キャエエエイ!!!」

バリンッ

ガチャン───

そうしてエレベーターの扉は閉まり、上に向かった。

かずき「行ってらっしゃい」

かずき「さて、早く行かないと。しかし便利だな〜これ」

かずきは片目を瞑ったままでいる。
その瞑った片目にはさっきのFの視界がジャックされていた。
こうすることにより動きながら視界をジャック出来るとかずきは気付いたのだ。
それを利用し、Fの様子を見ながら階段を降り、階段の隣のエレベーターに夢中になってるのを見て扉を閉めたのだ。

かずき「あはははバカだな〜それじゃ上がっちゃうだろ」

ひたすら上のボタンを連打しているFを後目に、かずきは出口を目指した。

それからも視界ジャックを駆使し、相手が見てない内に後ろを通ったりを繰り返した。

かずき「何人いるんだよ……しかも全員目から……あれ血か?」

信じられないけど……どうやらとんでもないことになってるのは確かみたいだ。

かずき「まともな人間はいない……いたらさっきみたいに殺されてる? 何かの病気か……映画じゃあるまいし」

いくら考えても答えは出ない。たかだか十数年生きただけの私には引き出しが少なすぎる。

かずき「勉強しとくんだったな……」

こんな時に思い出すのはやはりみんなの顔だった。


「ウヒャアアアアアアアアア!!!!!!」

かずき「しまっ……」

見つかった!!!

凄い速度でこっちに来る!
よく見るとそれはさっきの包丁を持った男だった。

かずき「クソッ」

自分のノロマさに悪態をつきながら出入口に走る。

騒ぎを聞き付けた同じような奴等が次々と追いかけるのに参加しているようだ。
視界を盗み見るまでもない。後ろに感じる気配でわかる。

かずき「ヤバいヤバいヤバいヤバい」

前からも来たッ!

??「サカナァ……」

かずき「ど……、けえええっ!」

魚を持った野郎どもを容赦なく金属バットで殴りつける。

かずき「正当防衛ってことでよろしくゥ!」

そのまま出口から一目散にスーパーを出ると私は急いで交番に走り込んだ。


終了条件達成



愛知 ぴゃー宅 ぴゃーの部屋
PM18:30:00

ぴゃー
終了条件1 ぴゃー宅からの脱出
──────────

ぴ「おさまった…?」

机の下からひょこっと顔を出すと辺りをリスの様に軽快に確認する。

ぴ「凄い地震だったな…。ああっ、本棚がぐちゃぐちゃ…」

ぴ「ってそんなことよりみんなが無事かを確かめるのが先だろう!」

散乱した本を退かしやっとの思いで携帯を見つけるも圏外。

ぴ「こんな時は災害コールセンターに電話だ!」

プープープー

ぴ「その災害地の真っ只中にいるの忘れてた…。かけられる側だろ私は」

地震の時に聴こえたあのサイレンの音…何だったんだろう。

──【フフ、ぴゃーちゃんゴハン作らなきゃ……】──

ぴ「な、なに? ママの声が……」

──【ダンッ! ダンッ! ダンッ! 中々切ナイいわねぇ…………】──

ぴ「なに…………これ……」

──【ぴゃーちゃんが待ってルノニ……】──

ぴ「ママ……何切ってるの……」

──【キレナイワネェ……】──


(一部を省略しました)

ぴ「パパ……ママ……隊長……」

会いたい。かずき隊長に。

怖かったろ? って慰めてもらいたい。

ぴ「逃げなきゃ……。そして隊長のとこに行くんだ」

そう決めた瞬間、頭のブレーカーを入れ直し、物事を冷静に考える。
隊長に会うためにはここで死ぬわけにはいかない。


しかしこの能力は便利だ。相手の視界を盗み見ることが出来るらしい。
だがこんなアニメじみた能力があること自体異常だ。
つまり……

ぴ「もしかしたらもう……私は……」

よそう、そんなことを考えるのは。今はとにかく隊長やみんなの安否が心配だ。
携帯が使えない今直接会いに行くしかない。

ぴ「家を出るには下を抜けなきゃ……でも下には包丁を持ったマ……人がいる」

ぴ「窓からは……無理だ。とてもじゃないけど降りられない」

ぴ「下を抜けるしかない……」

ゆっくりと部屋のドアを開けると、階段を覗き込む。ギィィィィ・・・・

ぴ「……」

そして目を静かに閉じた。

──【ウフフ……出来タ……ハヤクぴゃーチャンに持っテ行っテアゲナイト……】──

鍋で煮た腕をお椀によそいおぼんの上に置いている。

ぴ「まさか……こっちに来る?!」

慌てて隠れる場所を探す。
いっそのこと飛び降りた方が助かる見込みはあるか、元はママなんだから話せばわかってくれるんじゃないか、なんてバカみたいな提案が頭の中で立案されては却下されて行く。

トス……トス……トス……

スリッパが階段を噛む音が聞こえる……!

ぴ「ここしかない……!」

私は一番隠れられそうな所に身を滑らせた。

ぴママ「ぴゃーちゃん、ゴハンよ」

(一部カットしました)

ぴ「今は……ご丁寧にさっき破いた服を縫ってる……。ママなのかママじゃないのか……」

さっき殺そうとしたんだ、ママだろうがママじゃなかろうが危険には変わりないか…。

ぴ「台所じゃなくなったぶん逃げやすくなったな……」

台所の勝手口から逃げればすぐ外だ。

ぴ「これで準備はよし……!」

鞄に食べ物や飲み物を詰めておく。きっと律は何も考えなしに外に飛び出してるだろうからな。
お腹が減ってたりしたら大変だ。

ぴ「…………」

念入りにママの視界を盗み見る。

──【ぴゃーちゃんの服カワイイワァ………】──

相変わらずミシンで私の服を縦横無尽に縫っている。こうなるともう頭がどうかしたとしか思えない。

ぴ「夢なら覚めてよ……」

そう呟いた後、私は静かに階段を下った。

階段の壁際から肉眼で覗き見る。
ママは背を向けたままリビングでミシンを縫っている。

ぴゃー「(よし……)」

今だとばかりにゆっくりと屈みながら台所に行き、勝手口に手をかける。

ぴ「(あれ……スリッパがない。いつもならここにあるはずなのに…)」

こんな非常自体だ、靴下だけでも何とかなるだろうとドアノブを回そうと……

ガチャ

ぴ「えっ」

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