覇穹封神演義検証wiki - 五話 二つの道
脚本 高橋ナツコ/演出 立仙裕俊/絵コンテ 竹之内和久/作画監督 遠藤大輔 山中いづみ 塚越修平 

武成王一行を救出するため駆け付けた太公望たち。
その前に立ちはだかる聞仲の放った刺客・九竜島の四聖。
太公望と高友乾、哪吒と李興覇、楊戩と王魔と、次々に戦いの火蓋が切られる! そんな中、禁城では申公豹が聞仲の元を訪れていた。
「四聖は西岐まで攻撃するつもりですよ」という申公豹の忠告に、
戦地へ赴く聞仲ーー。
ついに最強の敵、殷の太師・聞仲までが動くことに……。
(アニメ公式サイトから引用)



唐突なゴマダンゴ


冒頭に脈絡もなく、仙界大戦の普賢と太公望がゴマダンゴを食べるシーンが入る。
今回の話とはまったく関係ない。ただの既読者向けサービスシーンだと思われるが、ただでさえカットが多いアニメなのにやる必要があるのか疑問が残る。
さらに初視聴者にとっては普賢が敵に見えるようなシーンになっている。

妙に好戦的な太公望


元々、漫画版の太公望は戦いを好まない性格で、戦いが避けられそうに無い状況でも口八丁でなんとか切り抜けようと企む性格である。
本来、ここで高友乾との戦いに自ら加わろうとした理由も、原作漫画5巻で合流したばかりの、まだ太公望という人物をよく知らない武成王一族や黄天化らに「あんたいつも偉そうにしてっけど本当に強いさ?」などと指摘されて実力を疑われ、集団内での求心力が失われつつあった状況の中で自分の強さを見せつける必要が生じたから、というものであった。
そして四聖の方でも、太公望の戦闘力や打神鞭の性能が未知数だと考えていたので、はじめから全員で襲って来ずに、高友乾と一対一にさせ他三名が様子見をすることになったのである。

覇穹ではこういった経緯が省かれているので、突然太公望が好戦的になったように見え、四聖の三名も戦闘開始から暫くの間ただボーッと見ているだけになっている。

仙界伝でのフォロー

王魔がまだ何もしてないのに告げ口に向かう申公豹


原作漫画(5巻、第40回)では、申公豹は王魔が西岐上空で楊戩と臨戦態勢に入ったのを見届けてから、朝歌の聞仲の元に飛び、王魔が命令違反を犯して西岐市街もろとも攻撃しようとしていることを告げる。

だがこの5話では、まだ王魔が高友乾らと共に居るうちから、まるでこの後に命令が破られることを知っていたかのように聞仲の元に向かっているため、時系列がおかしくなっている。

哪吒戦がカットされる


四話で新装備を取得してパワーアップした哪吒だが、まるまる哪吒の戦いはカットされた。
哪吒が考えて戦うことを覚えた大事なバトルなのと、妲己二姉妹を倒した強いキャラクターの一人が描写もなく退場になった。

今後の哪吒

全体的に宝貝の説明がカットされる


一話の妲己と同じように各宝貝の解説がなくなっている。中でも高友乾の混元珠から出る水が海水であり飲み干せば塩分の過剰摂取で死ぬとの解説が無いため、視聴者は何故太公望がわざわざ顔を覆った水を仙桃で酒にして飲んだのかわからないままになっている。

一枚絵で誤魔化すバトル


機動戦士ガンダムシリーズのファンネルを彷彿とさせる王魔の回天珠は、アニメ映えする派手なアクション演出が期待されていたが、期待に応えられないどころか、なんと静止画3枚の切り替えで誤魔化される始末である。

動画ファイルへのリンク

太公望のコナミコマンドで水を避けるシーンも一枚絵であった。
これ以外にも前からスライドばかりで迫力のないバトルになってしまってる。

「上上下下左右左右BAっ!」


太公望のセリフ「上上下下左右左右BAっ!」、いわゆるコナミコマンドを叫ぶ場面自体は原作漫画にもあるギャグ。
混元珠の水の攻撃に襲われる太公望が、乗っている四不象へ矢継ぎ早に回避方向の指示を伝え、その指示の細かさがエスカレートして行きこのようなギャグになってしまうという展開である。

だが覇穹では太公望が避ける前から他の指示も無しに突然この台詞のみを言い出すので視聴者を困惑させるだけに終わっている。少年誌の、つまり子供にも理解できるギャグのはずなのだが。

太公望、驚異の肺活量


高友乾から水の玉をとばされ、太公望は頭全体を水で覆われ呼吸を止められてしまう。
このシーンでは、太陽の位置は高く正午過ぎほどと思われる。
場面がここで一旦聞仲に切り替わり、再度元の場面に戻ってくる。この時すでに夕方になっているが、まだ太公望は水に頭を覆われたままあがいている。
つまり、太陽の位置が大きく変わる間(約3時間ほどだろうか)、ずっと太公望は息を止めたままあがいていた事になる。
太公望が一般人の肺活量と同じくらいと考えるのであれば、数分のうちに太陽の位置が変わらなければならず、
明らかに時間経過の描写がおかしい事になっている。

謎の回復


高友乾は肉体的ダメージを負ってないが、回復を楊森に頼む。
おそらくは宝貝を使った気力ダメージ回復だと思われるが…。

原作との差

仙桃や上上下下〜の場面同様、対応する台詞を無理やり省いてしまったがために起承転結が壊れている。

メタル楊戩

動画ファイルへのリンク
楊戩が王魔に停戦を呼びかける場面では、楊戩が武器の三尖刀を肩に担ぐと「ガタコン」といった感じの金属音が鳴る。
言うまでもないが楊戩は金属の鎧を着込んでいるデザインのキャラクターではない

楊森の謎のポーズ


動画ファイルへのリンク
原作では両手を合わせる、大地に手をつくなど簡素なポーズが滑稽なものに変更された。
無駄な改変で動いてるシーンが圧倒的に少ないために異様なシーンで、視聴者から不満が出た。
ここ以外に動いてるシーンは、ただジャンプして着地するシーンのみだった。

いきなり夜になる


聞仲が登場するとそれまで明るかった背景がいきなり夜になる。
原作該当シーンの第43回「夜と共に・・・」の副題通り、聞仲の登場と同時に夜になる事自体は漫画の展開通りなのだが、覇穹ではそれまでに漫画にはあった、戦いの最中に日が沈んでゆくさまを全く描写していないのであまりに唐突。

聞仲の謎の台詞

─児戯だな

登場とともに出た台詞だが、聞仲に対してなんのアクションもしてない太公望たちにとって謎の台詞になった。

原作との差


このように5話は、5話単体の脚本の中だけでも複数の破綻が目立つ。
ちなみに今回の脚本はシリーズ構成の高橋ナツコ氏本人である。アニメ制作における「シリーズ構成」とは脚本チームの監督を務める者の肩書なのだが、監督される部下たちよりも話を理解できていないのは一体どういうことなのか。

子供まで攻撃する聞仲



─反乱鎮圧には宝貝を使えば早いのでは
人と闘うときは人として相手をするのが戦の礼儀

第1話にて黒麒麟の助言にこうのたまっていた聞仲だったが、覇穹では仙人でも道士でもなくまだ子供の黄天祥まで宝貝の鞭で薙ぎ倒して詫びも入れない。

ちなみに原作でも該当シーンはほぼ同じ構図のコマなのだが、黄天祥の位置にいるのは下画像のように黄天化であった。
覇穹でも同じ場面に黄天化は居合わせているのでそのまま描けば良いはずなのだが、なぜ改変して聞仲のキャラまで歪める結果にしているのかは謎。

引きの作画の全体的にクオリティが低くなる




微妙に真円球でない李興覇の拌黄珠

遠景の人物のクオリティががくっと下がった。
特別番組が入ることになり、現場は相当切羽詰まってるようだ。

楊戩のキャラクター改変


─やっぱり心を預けるに足る人…

「あの人なら僕を分かってくれる、信じてくれる、かも…」
という台詞を初対面の太公望に吐いた楊戩だが、今回も聞仲との戦いで傷ついた仲間を風の壁で守る太公望に対して、依存心の強い台詞が追加されている。

原作の楊戩はプライドが高く、ナルシストだがアニメではこのような台詞を追加した事によって、依存心の強い精神的に不安定なキャラクターに改変されてしまった。

またこのあと聞仲や四聖に自分を含め味方全員が殺されてもおかしくない危機的状況の中で、今後太公望に対して心を預けられる人物なのかという事を考える事自体かなり不自然な思考回路である。