覇穹封神演義検証wiki - 十一話 虫
◆脚本:大草芳樹 ◆絵コンテ:竹之内和久 ◆演出:山口頼房 ◆作画監督:遠藤大輔・井本美穂・山中いづみ・高井里沙

玉鼎真人が死を賭して救出した楊戩。
しかしその体は、王天君の宝貝によって衰弱しきっていた。
一旦、崑崙山へ戻り作戦を立て直す太公望。
「かたき討ちだ」と激しく憤る十二仙たちを制し、チーム分けして潜入することを提案する。
その頃、金鰲島では、密かに潜入していた武成王と天化たちが、
十天君・董天君の「風吼陣」内に迷い込んでいた。
一方、楊戩の症状の報告を受ける太公望。
楊戩を救うには、王天君を倒すしかないと判明してーー。

(アニメ公式サイトから引用)



共感し難い仙人たちの神経


「玉鼎真人のために!」と覇穹オリジナルの合い言葉を唱和して仇討ちの気勢を高めたのも束の間、すぐにくじ引き大会で楽しげにハシャぐ十二仙たち。
一応原作でも、この作戦会議での大まかな流れは同じなのだが、それぞれがやたらゴキゲンにガラポンを回すシーンが大幅に増量されているため、全員が全員とも玉鼎真人の悲劇など一瞬で忘れてしまったかのような奇怪なムードを放っている。
この僅かな時間でも十二仙の名称の紹介や、くじ引きに対するリアクション等で各人の個性の描写等に充てられなかったのか。
あと前回同様、みんなして玉鼎真人に冷たくないか。

なお今回11話が初登場となる、楊戩の治療を行っている雲中子という名の仙人は、原作では怪しい実験を繰り返す等の奇行で他の仙人から「変人(スプーキー)」のアダ名で呼ばれるマッドサイエンティストなキャラクターなのだが、上述の通り「常識人」たちから常識が窺えないマッドなシーンが映された後の登場では、変人なはずの雲中子の方がよほど言動や心情に納得できる常識人のようにさえ見えるだろう。

原作設定半ネタバレ

天化たちに無反応な太公望


貴重な戦力であるはずの天化や3姉妹一行がいないことに太公望は気づいていないのかスルーしている。

天化の腹の傷や三姉妹に関しても太公望はどこまで知ってるかは不明ではあるが、天化たちが下界謹慎中であっても、あの目立つ3姉妹がいないことに気づかない太公望は何ともおそまつでは。

急に出てきた火竜鏢


董天君を倒すために天化は今まで一回も使ってない宝貝、火竜鏢(かりゅうひょう)を使用した。
もちろんこれまで通り、宝貝の説明はまったく無い。

無論、初めて使われる武器なので、この戦いでの文字通りの”一投目”が失敗して飛刀が熱がっているさまから「このブーメラン型の武器は高熱を出す」という描写を原作漫画を知らずにアニメの画面だけで完璧に理解できた者は相当な集中力の持ち主であろう。
従って、なぜ二投目を黄天化が柱の底に手裏剣のような武器で縫い付けると董天君が柱にしがみついていられないほど熱がって墜落したのか・・・という今回の頭脳戦の核心を理解できた者もあまり多くはないと思われる。

問題点と原作の火竜鏢

急に出てきた鑚心釘


鑚心釘(さんしんてい)。原作8巻、魔家四将の一名・魔礼青の剣技に一度は敗退した黄天化が、師匠の道徳真君から怪我の応急処置と合わせてリターンマッチのため授けられた小刀型の宝貝。棒手裏剣のように投擲して使う。

覇穹では魔家四将編が削除されたので黄天化が所持する理由も無く、どう登場させるか既読の視聴者間で注目が集まっていたが…特に工夫も無くシレっと登場させられた。
まあこちらは見た目通りの武器なので、黄天化が元から持っていたことにしても大きな問題はないが……

急に出てきた飛刀


覇穹では丸々カットされた趙公明編で入手する(仲間になる?)剣の妖精「飛刀」もいつのまにか所持している。
10話ではもっていなかった気がするが一体どこから出したのだろうか。
こちらも上記二つ同様事前に何の説明も無いのだが、単なる武器ではなく妖精というキャラクターとして喋るので、原作未読者からすればいつの間にか持っていた剣が唐突に喋り出すというホラーな展開になっている。

しかも飛刀に言及する黄飛虎の台詞を原作そのままの形で使ってしまっている。一言どういった存在であるか説明するだけでも大分マシになると思うのだが、
ずっと反応が無ぇからてっきり死んだと思ったぜ!
などと、たった4分前に初めて画面に映ったばかりの存在に向かってこんな台詞を言わせているようでは黄飛虎の頭がイカれてしまったようにしか見えない。

勝利の余韻も無い

たまには下も見ねーと、こうなるってことさ。

見事、董天君を撃破した黄天化、勝利のキメ台詞でバトルをシメた・・・かと思いきや、
「こうなるってことさ。」と言い終わるが早いか、編集失敗を疑いたくなるほど画面の暗転等の演出も無しにコンマ数秒ですぐ仙人界上空の遠景へと場面が転換してしまう。

ただでさえ出番を減らされてしまったのだから、こういうときくらいもう少し余韻を与えてやれないものか。
まったく黄一族に厳しいアニメである。

「誰だおぬしは!!?」→


→「その名もトウセンギョクという美少女よ!!!!」


左(下)から土行孫、蝉玉、木吒、金吒

という原作初登場時の台詞が再現される幕など無く、唐突に先週まで不在だった蝉玉がCパート終盤にて突如出現。

以前も触れているが彼女は金鰲島出身の道士であり、当初は聞仲側のスパイだったが太公望側に寝返った人物である。
なお言うまでもなくその部分はカットされている。

その後も彼女は趙公明の部下と戦ったり(覇穹では対趙公明という展開自体カット)、楊戩救出時には金鰲島のガイドをしたり(蝉玉の存在のみカット)、と仙界大戦前半辺りまではそこそこ活躍する。
しかし今回以降はあまり目立った出番が無い。これまで存在を抹消していたというのに今更出して一体どうしようというのか。


見間違いだと願いましたか?残念、22分50秒ごろにもバッチリ慈航道人の左側に映ってるぞ!


同時に、九話「神経衰弱」で孫天君が彼女の人形の姿で現れたのは一体どういうわけなのか?
本来ならばあの人形は蝉玉自身が不用意に参加したゲームに負けて変身させられたものである。
しかし当アニメにおいてはそういった描写は一切なく、孫天君を封神しても彼女が人形から元に戻るようなことはなかった。
その為原作読者からは、カットされたキャラクターを限定的に登場させる、いわば原作ファンへのサービス的な描写であると解釈されていた(そんなことで喜ぶ人がいたのかはともかくとして)。
しかし今回の描写で、蝉玉は覇穹の崑崙山陣営に実在する登場人物だと証明されてしまった。ならばあの人形はなんだったのか?
孫天君が蝉玉に興味をもって勝手に縫いぐるみを自作しておもちゃコレクションに加えるようなストーカーじみたキャラだったのか?それとも彼女は覇穹の仙人界ではグッズが作られるような有名人になっているからとでもいうのだろうか?
ましてや身内にあそこまでソックリな格好の人形が敵になって登場したのにも関わらず、太公望は最早当然としても玉鼎真人やスープーまでもが何の疑問や不審も抱かず無反応だったのだから揃いも揃って鈍感すぎではないか。
これほどまでにお粗末な矛盾点の数々を産み出せる制作陣の仕事ぶりは驚嘆に値する。一人ぐらい気付いて止めろ!

当該話では出番をカットし後から登場させるつもりであったのなら、人形の見た目は変更するのが当然である。というよりそのまま使う理由がない。
新規にデザインを起こしたくないor起こす余裕がない以外には。

なんの説明も無しに新キャラ・新アイテムが登場したり数多の原作の要素がカットされている当アニメにおいても、ひときわ意味不明で脈絡のないただ視聴者を混乱させるだけの唐突な登場であった。

原作仙界大戦編ネタバレ

「F班」映らず


本作のキャラクターカップリングでも人気の「ドドメチーム」こと太公望&普賢真人は、この班分けで最後の「F班」に分けられる。
だが覇穹では班分け結果がAからEまで連続して字幕で映ったにも関わらず、最後のF班についてだけ字幕が現れない。
原作では普賢真人が同じ台詞を喋っている背景に[F班]の字幕がコマ左上に書かれているのだが、これは単に絵コンテ担当が描き忘れたのだろうか。
それとも原作の場面を入れ替えて王天君が他の十天君らに檄を飛ばす金鰲側のシーンを敢えてこの崑崙側の班分け結果に割り込ませたので、つながりが悪いと考えて削ったのだろうか?
あまり効果的な編集とは言い難いが。