ただし、一人で来い。
と言いつけて通信を打ち切る王天君。格納庫内のワープ宝貝を見つけた太公望はすぐ乗り込もうとするスープーを「これは罠だっつーの!」と言って制し単独で乗ろうとするが、明らかに罠の予感があるならば、尚更バカ正直に敵の言う通りに動くのは危険ではないのか?
いくら指示に従わねば人質の楊戩が危ないとはいえ、十天君との戦いが待っていると分かっているなら、重要な戦力の玉鼎真人をどうにか一緒に連れていけるよう、何かの策を講じるのが玉鼎も言う「崑崙で最高の頭脳をもつ」者のとるべき行動ではないのか。
それとも、前回のアバンタイトル部分にて明かされたように、水面下でグルになった太公望と王天君が芝居で玉鼎を罠に誘導しようとでも言うのだろうか。
もちろんそんな悪意は無く、王天君の「ただし」の後に続く
「そいつは一人乗りだ」という大事な条件を述べていた原作の台詞を雑に削ってしまったから妙な流れになっているのである。
行方不明だった楊戩が人質にされたことが判明し、その居所は分からず、ワープ宝貝も全員が乗り込んでは動かない仕組みにされている、という不利な状況だからこそ、仕方なく太公望は敵の言う通りにしようとするのだ。
仙界大戦編の始まった7話以来、序盤よりもだいぶストーリーの進行スピードが落とされているので、描写したい内容に対する持ち時間には余裕があるはずである。にも関わらずこういう短くも意味の大きい台詞を削るあたり、依然として脚本チームの読解力は信用ならないと言わざるを得ない。
加えて太公望の、
わしらを一人ずつ、確実に殺す作戦に変更してきおったわ。
と口にして王天君の戦略を推理する理由も、この「そいつは一人乗りだ」という台詞で制限された状況を作られたと察したからこそである。
だが覇穹の「一人で来い」と言われて素直に一人で行こうとしているこの状況では、太公望側が勝手に王天君の言うがままになっているだけにしか見えない。皮肉なことに前回のアバンタイトルで先出しした内容がうまく効いている。