冒頭、金鰲島内の物陰で、上着を脱いだ黄天化が左脇腹に受けた呪いの傷の悪化に苦しむさまが映る。
そこから回想に入り、ようやく9話以来正体不明のままだった、謎の傷を負った経緯を明かす。
この回想内で語られる、趙公明の召使いの一名にとどめを刺したときに砕け飛んだ剣先が天化に呪いをかけた、という流れは原作11巻の通りなのだが、この傷を訝った太公望が「太乙(真人)に診てもらえ」と命じて天化を趙公明の居城から離脱させると、ほぼ間髪入れずに
満身創痍になった天化が自身の師匠・道徳真君の元に帰還し息も絶え絶えに治療を求めている場面が続く。あのカスリ傷が移動する間に一気に悪化して両碗や両足にもダメージを与えたとでも言うのだろうか?
だが問題の左脇腹は無傷ではないか?一体何が起きたというのか???
とても つらい(左脇腹以外)
これは上述した原作11巻の呪いの傷のシーンの直後に、覇穹ではカットされた、原作7巻にて魔家四将との戦いで敗北するもすぐ再戦を挑もうとする黄天化の別の名シーン(8巻)を連続させているからである。原作既読者でなければこれは余りに難解、いやあるいはひょっとするとアニメだけ観ている者でも
「太乙に診てもらえ」と太公望に言われたにも関わらず天化は道徳真君に助けを求めているせいで別々の回想かもしれないと理解できる者が1357名中1人くらいはいるかも知れないが、かなり厳しい。
どうやら太公望が戻れと指示してから崑崙山に画面が変わる間に、金鰲島の苦しむ天化に場面が一瞬戻るので、ここが回想の継ぎ目であり、また別の回想が始まる、と制作側は表現したいらしい。だが次の崑崙山側のシーンでは道徳真君の「オレは
その時、筋トレをしていた。」という、太公望との会話の中で使われた原作由来のセリフが第一声で発生される。これでは前後関係から登場人物同士の会話でなく視聴者に向けたナレーションとしてしか聞こえないので、これら2つの場面が時間的に連続しているとしか思えず、大変に分かりづらい。
さらに、金鰲島内でひとりの天化、という現在時点から回想が始まっているのに、何の前触れもなく「オレは」という別の主語が示され、その場にいないはずの
道徳真君の視点からの回想に切り替わってしまうところも分かりにくさに拍車をかけている。
また、このアバンタイトルの開始部分である半裸の黄天化は、上記原作13巻の、趙公明戦後に周軍の野営テント内で、彼がひとりこの傷の恐ろしさを認める印象的な一コマがこの場面の元になっている。
だがこれを金鰲島内でのシーンとして映してしまうのはどうか?現在、金鰲島内の天化は父の黄飛虎と共に行動中なのだから、いきなり1人で負傷に苦しむ姿を映しては飛虎がまるで天化のことを気にかけていないように見えないだろうか。9話で彼らがいきなり金鰲島内に現れたときの飛虎のセリフにもあるように飛虎は既にこの傷のことを知らされ、かつ父親らしく具合を心配しているのだから、その後の場面として天化がまるで飛虎から隠れるようにして痛がっているさまはどういう状況なのか想像しにくい。
例えば飛虎が周辺を偵察している間か何かの出来事だった、飛虎の前では強がっているが次第に耐えられなくなってきた、などと想像で補うことも可能だろうが、そうであればそのための会話などを一つくらいは挟むべきだろう。
なお、この回想の語り出しにおいて、
金鰲三強の一人、趙公明。その召使いたちと戦ったときだった。
という天化のセリフによって、今まで明言されていなかった趙公明の部下たちとの戦いが、ようやく覇穹封神演義でも
「アニメ本編では描かれなかったが起きていたこと」として確定した。
だが、ちゃんと起きていたことだったならば、
これまで頑なに趙公明編の痕跡を出したり出さなかったり、ハッキリさせなかったのは何故なのだろうか。
7話にて彼の妹・雲霄三姉妹が登場した際も言及は無かったし(だが趙公明の変わり果てた姿=鉢植えには「お兄様」と書かれていた)、「趙公明」という名が劇中に初めて登場したのはこのwikiでも述べているように元始天尊の回想が流れた17話である。
そうかと思えば以後に方針転換するわけでもなく、原作16巻にて禁鞭を防御した太公望を見て聞仲が「
趙公明と戦って器が広がったか。」という感想は同じ場面の覇穹19話にて「
器を広げてきたということか。」という具合に意図的に趙公明の名を消すような改変を行っており、まるで軸が見えない。
企画段階から最も丁寧に描写したかったであろう仙界大戦編の始まる7話でさえ、竜吉公主が撃った崑崙山の元始砲が想定外のエネルギー不足で金鰲島のバリアを破れなかった場面にて、その原因が全く不明のまま話が進んで行ったが、これも原因は事前の太公望と趙公明との戦いによるもの。まだ百歳にも満たない太公望が数千年を生きる大仙人・趙公明の力に追い付くため、ある宝貝を使って崑崙山のエネルギーを大量に吸収しパワーアップしたという経緯があったからである。
結局こうなるのであれば、最低でも一気に作品内時間が飛んだ6話で何がしかの説明を入れておくべきだったろう。