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「プロデューサー、質問したい事があるのですが、大丈夫ですか?」

とある芸能プロダクションのプロデューサーである俺が事務仕事に勤しんでいると、後ろから声を掛けられた。
振り返れば事務椅子に座る俺と、それ程変わらない高さの所に少女の顔がある。
幼いながらも理知的な表情、成長すれば凛とした美しさを備えた美女になる事は想像に難くない顔立ち。
俺の担当アイドルの一人、橘ありすがすぐ脇に立っていた。

「ありすか、ちょっとしたお喋り程度なら問題無いぞ、どうした」

質問を促すと、ありすは周りをきょろきょろと伺い、俺の耳元に口を寄せてくる。
子供の内緒話に耳を傾ける大人、傍から見ればなんて事の無い風景。


「その…プロデューサーは、私のお尻でもセックス出来た方が、やっぱり嬉しいですか?」


その質問の内容は正気を疑う物だったが。
もっとも、これを聞いた俺は別に慌ても驚きもしない。

何故なら、ありすがこんな異常な行動を取るのは俺が彼女に対して――催眠術を掛けたからだ。


ある日突然、俺は超能力に目覚めた…あるいは、習得した。

一週間ほど前、深夜に自宅のPCで何となくネットサーフィンをしていた時に、間違えて広告リンクをクリックしてしまった。
その先のページには目につく文字で『これでアナタも、好きなあの子を好き放題!?』なんていう頭の悪いキャッチコピー。
すぐにページを閉じようとしたが、ふと目に入ったスクロールバーの小ささに驚いた。どれだけ長いページなんだ。
ページを最後まで飛ばしてみてもアドレスの送信欄も無く、途中を何ヶ所か見てみたが、ただ催眠術の掛け方の説明が記載されているだけだった。
有りがちな広告ではない仕様に興味を惹かれた俺は、暇つぶしにはなるだろうと思い、軽い気持ちで読み始めた。

説明の合間に挿しこまれる、怪しげなgifアニメーションの影響か、はたまた読ませる文章として秀逸なのか、気付けば俺は取り憑かれたように読み進めて行く。
気が付くと全ての説明を読み終え、一種の充実感に包まれた俺は、心地よい気分で眠りについた。

先程読んだ説明を頭の中で無意識に反芻しながら。

次の日、目が覚めても催眠術の説明は一言一句頭の中に残っていた。
履歴からそのページを辿ると、そのページは削除されていた。

事務所に出勤して仕事を始めても、昨日の催眠術の事が頭から全く離れない。
自分でも全くバカバカしいと思いながらもどうにもならず、ならばいっそアイドルの誰かにでも試してみようと思い立った。
それで何も起きなければ綺麗サッパリ忘れられるだろう、そう思った俺はたまたま傍を通りかかった担当アイドルの橘ありすに声を掛けた。
時間に余裕が有るという彼女と、事務所の仮眠室に二人で入り、ベッドに腰掛けさせて、説明の通りに手順を実行する。

ありすは見事、催眠術に掛かってしまった。

目の前には、催眠状態に陥り、虚ろな目でベッドに座る、無防備な少女。

己の中の僅かなどす黒い欲望が燃え上がるには、それで充分だった。

**

さっそく催眠術で命令をしようと思った矢先、一つの疑問が俺の中に湧き上がった。

今のありすを見る限り、この催眠術はある程度の効果があると思って間違いないだろう。
だがその効力の強さは、そして持続する期間はについては全く分からない。
もしもこの力を悪用して、いざ事に及ぼうとした時に効果が切れたりでもしたら、その瞬間に俺の人生の破滅が確定してしまう。

(ありすを淫らに、スケベにして、いざと言う時に最悪の事態を回避できる催眠…)

しばし思案し、催眠内容を決めた俺は催眠状態のありすに質問した。

「ありす、質問をするから正直に答えてくれ」
「…はい、分かりました」

ゆっくり目に、大きすぎない声でありすに語りかける。
ありすは、ぼーっとしたまま、こちらの言葉にはゆっくりでは有るが、しっかりと反応した。

「貴方は、担当プロデューサーに、異性としての好意を持っていますか」
「………はい」

充分に間を置いて、返事が返ってくる。ありすの頬はほんのりと赤くなっていた。

「時々頼りない時もありますが、それでも私の事を大切に想ってくれている、プロデューサーの事が、大好きです…」

催眠状態でも恥ずかしいのか、僅かにもじもじと身を捩らせながらている。
どうやら多少の感情は機能しているらしい、この状態の時に手を出すのは止めておいた方がいいと脳に刻む。

まだ頬が少し赤いままの、俺の事を慕ってくれている幼い担当アイドル。
これからその気持ちを悪用する事に、俺は僅かな罪悪感と今まで味わった事の無い背徳感を味わっていた。

「ありす、貴方のそのプロデューサーを想う気持ちは…」


『これから、私が指を鳴らす度に、どんどん大きくなります』

ありすの心に働きかける催眠術を発動しながらパチンッ、と指を鳴らす。
少女の身体はビクっと小さく震えた。

「……あっ」

効果を確認しながら、ゆっくりと、しかし何回も指を鳴らす。

『貴方の中の、プロデューサーを好きだという想いが、大きくなっているのが分かりますか』

パチンッ、パチンッ…

「っ、…っぁ…はっ、はいぃ」

ありすの呼吸がふぅふぅと荒くなる、身体をもじもじとくねらせて忙しない。

『プロデューサーの事が好きになる…大好きになる…もっと、もっと…』

パチンッ、パチンッ、パチンッ…

何十回と指を鳴らし、ありすの俺への想いを極限まで高める。
そこからさらに、催眠状態のありすの心へと囁きかける。

『プロデューサーと話をするだけで、貴方はとても幸せな気分になります』
『プロデューサーの事を考えるだけで、貴方はとても幸せな気分になります』
『プロデューサーにどんな事をされても、貴方はとても幸せな気分になります』
『プロデューサーにどんな事を言われても、貴方はとても幸せな気分になります』

催眠術で心を歪められている少女は、まるで過酷なレッスンをこなした後の様に、真っ赤な顔で、肩で息をしていた。

「ふーっ、ふーっ♡」

その呼吸は、はしたない程の興奮を孕んだ物だったが。
ありすの様子を見ながら、問いかける。

「ありす、貴方は以前、プロデューサーに待てますか、と問い掛けました。覚えていますか」
「も、もちろんですっ…忘れたりする訳、ありません」
「そうですか、しかし…困った事になってしまいましたね」
「……?」

『今ではもう、プロデューサーを好きすぎて、貴方の方が待てなくなってしまいました』

ありすの身体が、ビクンと、大きく跳ねた。

『貴方はこれから、プロデューサーに今すぐに結婚したいと、お願いするでしょう』
『それでも結婚しようとしてくれないプロデューサーに、貴方はこう告げます』
『私がえっちな女の子になって、プロデューサーを満足させられる大人の女性になったら結婚してくれますか、と』
『するとプロデューサーは、貴方がそんな風になれる訳がないと思って、条件を呑んでくれました』
『さあ貴方はこれから、大好きなプロデューサーの為に、えっちな女の子になる為の特訓をします』
『いっぱいえっちな事を調べて、プロデューサーに相談して、とてもえっちな女の子になりましょう』
『そして一ヶ月の間に、プロデューサーをえっちに誘惑して、悩殺して、貴方の虜にしてしまいましょう』

『ですが、注意しなければならない事があります、それは貴方の気持ちや、この特訓の事を、他の誰かに知られてしまう事です』
『我慢出来なくなってしまった事を、他の人に知られてしまったら、それはとても嫌で、とても恥ずかしい事です』
『だから、プロデューサー以外の人達の前では、いつも通りに振る舞って、絶対にバレないようにしましょう』

催眠術でありすの内の常識を、思考を――心をこれでもかと改変する。

「ありす、質問に答えてくれ…これから、貴方がする事は何ですか?」
「わ、私のする事は…」

はぁはぁと息を荒げながら哀れな少女、橘ありすは口を開いた。

「…まずは、プロデューサーさんにお嫁さんにして貰える様、お願いをします」
「その後は、プロデューサーさんに相応しいお嫁さんになる為に、他の人にばれない様に気を付けながら、えっちな特訓を沢山します」

催眠術が問題無く作用しているのを確認して、俺はほくそ笑んだ。
これなら、時折状況を確認するだけで、一ヶ月後にはありすは性交を行うに充分な思考状態になってるだろう。
仮に短期間で催眠が解けたとしても、これなら様子を見れば一目で分かる筈だ。
その後はこちらが催眠前と同じように接して、有耶無耶にしてしまおう。
万が一の場合でもフォローを怠らなければ、最悪でも俺が捕まる事は無い筈だ。

俺は手をパンッと叩いて、ありすの意識を催眠状態から覚醒させた。

***

催眠状態から目覚めたありすは、己の内の偽らざる『偽りの気持ち』を俺へと打ち明け、結婚を懇願してきた。
そうして俺は、前もって掛けておいた催眠通りの条件を、ありすへと付きつける。

――――私…立派にえっちな女の子になってみせますから、そうなれたら、約束通り結婚してくださいねっ!

こうして、ありすは俺と結婚する条件の為、卑猥な行為に積極的な少女となった。
さっきの質問も、アダルトサイト巡りの果てにその行為を知って、俺へ確認をしてきたのだろう。
以前の彼女なら、そんな事は興味が有れど決してしなかった筈だ。
だが今のありすは俺のお嫁さんになる為に必死で、例え無修正の動画とて視聴する事に躊躇いは無い。

「何だ、3日前にようやくクリトリスでイク事が出来ました、って喜んでたのに随分と飛ばしてるな」

周りに聞こえては大問題な言葉を、ありすと同じように内緒話で会話をする。
ちなみに最初にありすの性経験を尋ねてみた所、むっつりだと思っていたが実行はした事は無かったそうだ。
特訓を始める前までは、自慰に興味は有ったが、忌避感を感じていたらしい。

「プロデューサーのお嫁さんになるんですから、その位は出来て当然です」
「そ、それに…プロデューサーのお、おちんぽ…挿れたい方へ、挿れさせてあげたいじゃないですか」

それが今では、男性器を排泄の為の器官へ挿入する事さえ、俺が望めば喜んで受け入れると言うのだから催眠術とは恐ろしい。
まるでそうするのが当たり前だとでも言う様に、ありすは俺に菊門の開発をするべきかを尋ねてくる。
異常な能力の、異常な程の効力を実感しながら、ありすの耳元から顔を離して語りかける。

「その心意気は嬉しいけど、無理する必要は無いよ…ありす」
「あ、…っ♡わ、分かりましたぁ♡」

先程まで話していた内容はともかくとして、そこだけ切り取れば何て事の無い受け答えに、しかし彼女の頬が朱に染まり、瞳が潤む。
今のありすは、俺にされる事全てが至福の喜びとなっている。
それが俺に名前を呼ばれた事で、泣きたくなる位の歓喜を味わっているのだろう。

「『テスト』まであと3週間だ、ちゃんと合格出来るように、しっかり訓練するんだぞ」

本当ならもっと淫猥な言葉を、耳元で囁いて煽り立ててやりたが、ぐっと堪える。
催眠が解けた時、あまり変態的な事を言われた事をありすが覚えていれば彼女からの心証が悪くなる。
そうならない様、言動は『浮かれたありすに合わせてあげている』様に見える、ギリギリのラインに留めておきたいからだ。
…クリでイッた何て口走ってる時点で、手遅れかもしれないが。

「…そ、そんな事、言われるまでもありません。私のスケジュール管理は完璧です、子供扱いしないで下さい」

恍惚となりかけた表情を一瞬でいつも通りに戻し、普通の受け答えをする。
『他の人にばれない様に今まで通りに振る舞う』という催眠も、問題無く機能しているようだ。

催眠術の効果を確認して一人頷いていると、ありすは再び顔を寄せて内緒話を始めた。

「…あの、もし時間があるのでしたら、今ここでプロデューサーを誘惑しても良いですか?」

語りかけてきたありすの表情を見る。そこには小学生とは思えない、妖艶な笑みを浮かべた少女がいた。
他の人に見られれば即座に不審に思われるだろうが、ありすの立ち位置は絶妙で、この表情を拝めるのはこの部屋で俺だけだ。

今までありすは、質問や相談は何回もしてきたが、俺をこんな風に挑発してくるのはこれが初めてだ。
この場で、というのが僅かに引っかかったが、『周りにばれてはいけない』という催眠が効いているなら大した事は出来ない筈だ。

「良し、それじゃあ俺はどんな風に誘惑されちゃうのかな」

ありすの耳元で許可の言葉を紡ぐと、彼女はより一層淫らに微笑み、俺の耳元で囁き始めた。

「私、最近の朝食はバナナしか食べてないんです…もちろん普通には食べません、えっちな特訓の為です♡」
「まずはバナナを一本、最初に全部皮を剥くんです」
「そしたらそのバナナを、大きく口を開けて、噛まない様に口の中に入れるんです」
「それをベロでたくさん、たーくさんっ♡舐めしゃぶりながら、ぬぽっ♡ぬぽっ♡って抜き差しするんです」
「今の私の朝食はフェラチオ…おちんぽしゃぶりの練習の時間なんです♡」

子供とは思えない艶を帯びた声音が、目の前の男を雄に豹変させんと挑発を仕掛ける。

「いやらしく音を立てながら、テーブルマナー違反で死刑になっちゃうくらい、はしたなくバナナを何本も食べるんです♡」
「一本目のバナナは、ナメナメしながらヌポヌポして、唇で削り取って全部食べるんです」
「そんな小学生アイドルのスケベ口マンコに、勃起おちんぽ♡挿れたらどうなっちゃうんでしょうね♡」
「次の二本目のバナナは、先端からベロベロ舐めしゃぶって、こそぎ落して、全部食べちゃうんです」
「このベロで、プロデューサーの、お・ち・ん・ぽ♡しゃぶられたら、とーっても気持ち良いと思いませんか♡」
「最後に三本目のバナナは、バキュームフェラとか、お下品なフェラサウンドの出し方の特訓です」
「ありすのひょっとこフェラ顔、今すぐ私をお嫁さんにしてくれるなら、すぐにプロデューサーのおちんぽ、しゃぶってあげますよ♡」

○学生とは――否、良識を持ち合わせていれば大人の女性でも使う事の無い淫語を並べ立て、俺を挑発してくるありす。
そう言って最後に、小さなお口を目いっぱい開けて、その中の可愛らしい舌をねろねろと淫猥に躍らせる。
ありすが声を出さずとも、真っ赤な舌をくねらせる度にその口内からは、にちゅにちゅねちゃねちゃといやらしい音が零れ落ちた。

「…っ!」

ここまで過激な物は予想していなかったとは言え、そのいやらしさに無意識に唾を飲みこむほどに魅せられた。
その口内に己の逸物があったなら、瞬く間に精液を搾り取られる事を確信させる舌使い。
もしこれが今、俺の部屋だったら、そうでなくともどこかの空き部屋で、ありすと二人きりであったなら、間違いなく押し倒していただろう。
急いたありすが、ちひろさん達がいる事務所で俺に仕掛けてくれたおかげで、そうはならなかったが。

「うーん、興奮はしたけど、プロデューサーが担当アイドルに手を出すには、まだまだかな」
「…むぅ、残念です。私とプロデューサーの今までに築き上げた関係が、踏み止まらせてしまいましたか」

適当な事を言って誤魔化すが、ありすはそれを真に受けて返答する。

「まあ、良いでしょう。今ので興奮したのは本当みたいですし♡」

そう言ってありすは、俺の股間を見つめて、嬉しそうに目を細めた。
視線の先には、ズボン越しでも一目で分かるほどに屹立した男性器。

「私、絶対プロデューサーのお嫁さんになってみせますから」

ありすはそう囁くと、普段と何ら変わらぬ顔で事務所を後にした。

ありすがいなくなって程無く、ちひろさんが近寄って話しかけてきた。
普段と変わらぬその様子を見るに、ありすの行為については何も見てはいないだろう。
ついでに俺の勃起も、こちらは座っている為、机の下に隠れている。

「プロデューサーさんとありすちゃんのお喋り、随分と長かったですね、何をお話していたんですか?」

以前ならば、俺とありすが内緒話でやり取りし合うなんてしていなかったのだから、気になるのは当然だろう。

「色々ですね、俺が質問に答えたり、ちょっとからかったりしてただけですね」

聞かれても正直に答えられるはずも無く、当たり障りのない返答をする。
それでもまだ気になる様で、我らが事務員の興味はいまだこちらに向いたままだ。

「ふーん…でも前よりずっと仲良しになりましたよね。何かあったんですか?」

どういった物かと考えて、ふと思いついたので、正直に答えてみる事にした。

「んー…ありすに催眠術を掛けました。距離が縮まったのはそのせいですよ」

俺の突拍子もない言葉に、ちひろさんはきょとんとした後、思わず笑みを零した。

「…ふふっ、確かにシンデレラの魔法の上から、更に催眠術を掛けられたら女の子は一たまりもありませんね」

面白い返事が聞けて少しは満足したのか、ちひろさんは再び自分のデスクに歩いて行く。
やはりどんな時でも正直なのは良い物だな、とふざけた事を一瞬思う。
最後に一言、ちひろさんも冗談めかして俺に釘を刺してきた。

「ありすちゃん、催眠術にすごく弱そうですけど、変な事を命令したらダメですよー?」


安心して下さいちひろさん、俺の方から変な事をしたのは最初だけです。今は向こうが勝手にしてきてますけど。
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