機能集約・廃止が検討されている神奈川県立図書館・神奈川県立川崎図書館に関する情報をまとめます。

相原高広議員(県政会)の質疑

相原委員

次に、県立図書館についてお伺いします。緊急財政対策で、当初、いろいろな考え方が出されました。私自身は緊急財政対策で県立図書館に焦点が当てられたということは、非常に良かったことだと思っています。それ自体は妥当な指摘であったと評価しているところです。その後、緊急財政対策のときから比べると現状は変化もしているのですが、それはそれでいろいろな理由があったと思います。私は、図書館の社会教育価値というのは十二分にあると思っておりますが、問題は神奈川県立図書館としてどのようにするのかということは、図書館一般の議論とは別の議論が必要だと考えております。最初にお伺いしたいのは、把握している範囲で結構ですので、参考までに他の都道府県で、県立図書館を見直した事例について、把握されていることがあれば教えてください。

生涯学習課長

他県における県立図書館の見直し事例は、二つ把握しております。一つは、奈良県で二つあった県立図書館を閉館し、機能を集約して新たな場所に図書情報館という名前で開館した例です。もう一つは、埼玉県で現在三つ図書館がありますが、耐震上の問題、それぞれの館の利用状況、また市町村立図書館の設置状況を踏まえて三つのうちの一つをこの3月末をもって廃止する予定とする。その2事例を把握しております。

相原委員

先ほども申し上げましたように、図書館の社会的価値は高く評価するのですが、都道府県立図書館というものをどのように考えたらよいのか。当然、主な論点として出てくるのが市町村立図書館との役割分担ですが、本県の県立図書館を見ますと、利用者が当然図書館のある地元の自治体にお住まいの方に偏っているようにも思えます。そこで、市町村立図書館との役割分担、すみ分けについてはどのようにお考えなのでしょうか。

生涯学習課長

委員からお話がありましたとおり、現在の県立図書館の利用者を見ますと、図書館カードを持っている方の住所分布でいくと、76%が横浜市民です。市町村立図書館とのすみ分けという点では、やはり県立図書館の生い立ちから少し時間の流れで整理していく必要があると思います。県立図書館が開館した昭和29年というのは、市町村立図書館も余りなく、県立図書館が本来の図書館法の役割を担ってきたという経過があります。その後、昭和50年代に市町村立図書館がどんどんできはじめて、その時点から都道府県立図書館と市町村立図書館との役割分担という議論が進められる中で、市町村立図書館は市民の方、町民の方に文化的な素養を高めていただきます。また、本に親しんでもらうといった観点から、小説や娯楽、趣味といったものを中心に収集しているという印象があります。一方、県としてはそういった時代の変化を捉えて、やはり市町村立図書館とのすみ分けという観点では、市町村立図書館が持っていない図書を中心に集めはじめようということで、今、専門図書を中心に約130万冊の図書があるという現状です。公立施設の場合、往々にして所在している市町村の住民が多く利用するのではないかという意見は出ますが、やはり施設の生い立ちを含めて、今、市町村立図書館との役割分担をきちんと見極めながら、運営をしているところです。

相原委員

横浜市民が相当数を占めているということですが、県内33市町村がある中で、県立図書館が事実上、横浜市の分だけが重複性が強くなっているわけです。ここをどういうふうに考えるのかというのが、私は重要な論点だと思っています。先ほど申し上げましたように、図書館としての社会的機能は、横浜市の図書館と県の図書館が合わせた形で機能を果たせばよいのですが、県の部分が低下すれば市の部分が増加をして、トータルが変わらなければそれでよいし、むしろ一つの方がすっきりする場合もあるわけです。図書館の問題は、税負担を中心に負担をする人と、図書館サービスを受ける受益者が、かい離が大きい政策分野です。例えば、県立高校は県内あまねく存在しているわけですから、負担と受益の関係というのは特段議論にならないのですが、図書館が川崎市にも一応ありますが、横浜市にどんとある関係で、受益と負担の関係が相当かい離しているのが実際のところです。そこで、細かいことでお伺いしますが、県立図書館の運営にかかる経費はお幾らなのか。また、利用者一人当たりに換算するとどのくらいの経費をかけていることになるのか、御報告をお願いします。

生涯学習課長

平成25年度の決算ベースで申し上げますと、人件費を含めた県立図書館の運営経費は約7億7,600万円です。平成25年度の利用者が20万4,000人でしたので、利用者一人当たりで単純に割り算をしますと、一人当たり約3,800円という計算になります。

相原委員

図書館のこれからの最終的な詳細な姿というのはまだはっきりしていないのですが、緊急財政対策の取組で最初に出された考え方、その後、閲覧、貸出しを継続するという方向に戻ったわけですが、その流れ、そして今後、全体を見渡してどのようにお考えなのか、教えてください。

生涯学習課長

緊急財政対策では、県有施設についてゼロベースに立ち返って見直しをするという全庁的な方針の下、県立図書館については当初、閲覧、貸出しの機能は廃止する方向で検討するという方針を示しました。これは、図書館全体をやめてしまうということではなく、幅広く市町村立図書館を経由して本を貸し出している、広域図書館としての役割を果たしていたことから、県立図書館の図書を身近な図書館で閲覧・貸出しすることで利便性の低下は防げるのではないかという発想があったと考えております。こうした方向性を検討するに当たって、様々な意見を聞いた中で、おおむね反対の意見ばかりでした。具体的には、市町村からは県立図書館の本について市町村立図書館を経由するという選択肢しかないということは、図書館の本を入手するまでに時間がかかってしまう、あるいは利用者への連絡はどうしたらよいのか。その間、本をどう管理したらよいのか。そういった御意見を頂きましたし、県民の方からは、そもそも閲覧、貸出しをしない図書館はあり得ないといった、かなり厳しい御意見も頂きました。そういった御意見を総合的に勘案する中で、方針変更という形で閲覧、貸出し機能は継続するということで、その延長線として再整備を検討しているところであります。委員お話しのとおり、横浜市にあって横浜市民が享受している部分が大きいということもありましたが、県立図書館は広域図書館として身近な市町村で本を入手できるような形で、今、KL−NETを充実しております。土地の属性から考えられる弊害を解消するために、幅広く県民の方々に県立図書館の本を読んでいただくという仕組みも構築しておりますので、今後、県立図書館につきましては、専門図書館としての役割、それから市町村立図書館を支える広域図書館としての役割、この二つをしっかりと整理した上で、今までなかった機能も検討しながら、取り組んでまいりたいと考えております。

相原委員

生涯学習課長のお言葉で言えば、土地の属性による弊害を最小化していくというお話は当然のことだと思いますので、そこは期待をしたいと思います。どうしても立地が伴う政策、施設というのは、立地によって受益と負担の差が大きく出てしまいます。これはもう仕方ないのですが、もちろんその最たるものは県庁の所在地であろうが、県庁の所在はそう簡単に動かせませんのでよいとして、図書館に関してもそういう性格が強いので、是非そこはよく検討していただければと思います。過去、現在と利用されている方からすると大変有り難い施設であり、今後も使いたいという思いをされるのは当然の話で、これは議論を待たないことですが、神奈川県内、地理的に見るとほぼ利用できない方も相当数いるのも事実であります。私自身も人生の中で県立図書館を使ったことは一度もありません。今後も使わないと正直思う。県議会議員になって視察で行ったときだけです。川崎市立の図書館は使いますし、国立国会図書館に行くこともあるわけですから、そういう観点も是非考えた上で、今後の県立図書館を具体的に決めていっていただければと思います。とにかく、図書館という社会的機能を担う県立図書館が、図書館に求められている社会的機能のうち、どこまで担うべきなのかという重要な基本的な観点をしっかり整理しないと、これは今後も問題を引きずりかねないので、よく考えていただければと思います。図書館という社会的機能は重要ですが、それを県立図書館がどこまで担うのか、ここの線引きをしっかりと行っていただいて、今後の県立図書館について対応していただければと思います。

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