初公開:2014/10/26
??「―――――――。」
―――声が聞こえる。
これは、わたしの一番古い記憶?
何も、見えない。
そこは、暗闇の中―。
けれど、音は聞こえる。
―男と女が、いることが分かる。
男と女が何かを話している。
男「――――――」
女「――――――」
男「――――――」
ただ、何かを話しているようではあるけれど。
それは、わたしの中にある記憶の、一番底にあるもの?
何かを話している、というものはわかるのだけれど、何を話しているのかは分からない。
そして、その声はだんだん小さく――。
―――。
暗闇から光が―――。
夢の中の海―記憶の海から、浮かんでゆく。
光の射す水面へと浮かんでゆく。
??「鈴鶴(すずる)様、おはようございます」
ゆさゆさと身体を揺らし、わたしを呼ぶ声。
鈴鶴(すずる)とは、私の名前のことだ―。
鈴鶴「ああ、おはよう……」
わたしは、目をこすりながら、その声に答える。
わたしを起こしたのは、わたしの乳母(めのと)のような存在であり、わたしの姉のような存在の女性。
けれど、彼女は人に在らざるものである。
人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、狗にて狗ならず、
足手かしらは人であり、左右に羽根はえ、飛び歩くもの―――。
つまり、天の狗―。
彼女の名前は、闇美(ヤミ)―。
わたしがこの世に生まれたときに、ここに命からがら逃げてきた天の狗。
妖殺しという集団に、仲間を皆殺しにされて、ここまで逃げてきた、と彼女は語っていた。
だから、身体中に傷跡がある。
そして、右目と、左手の中指の半分と、左手の薬指と小指を全て失っている。
ヤミ「鈴鶴様、寝覚めでも悪かったのですか?」
ぼーっとしていると、ヤミが声を掛けてくる。
鈴鶴「いいえ、ちょっと夢が気になるところで終わったから」
ヤミ「あら、それはお邪魔でした?」
ヤミが、わたしを見つめて言う。
鈴鶴「ううん、それほどでもないから」
ヤミ「では、布団から出ましょう」
わたしたちは、ただの庶民。
貴族でもなければ、王族でもない。
竹を取り、それを様々なことに使うのが生業の、ただの庶民。
わたしの父と、ヤミと、わたしの三人で生きている。
わたしの母は、わたしが生まれたときに亡くなったのだそうだ。
―いつもの通り、作業をし終わる。
もう、空も赤く染まった―。
いつもの通り食事、禊を行って。
それが、終われば、もう月は海から浮かび上がる時刻になる。
もう、あとは眠るだけ―というわけではない。
わたしの父は、わたしの母の形見だという、太刀の稽古に行く。
その太刀の腕は、竹にも、動物にも、一発で切り落とす腕―。
それを、毎日の鍛錬で、限界に―あるいは、限界を超えるために鍛錬をしている。
父「では、稽古をしてくる」
父は、太刀を携え、山の中へと向かう。
住処の中には、わたしとヤミだけが―。
ふたり、寝床の中に佇む。
けれど、そのまま眠りにつくわけではなく―。
わたしとヤミは、寝床の中で互いを抱き合う。
着ている服をずらし、首筋をあらわにして。
互いの首筋に、その歯を立て、互いの身体に流れる血を吸い、飲む―。
もっとも、これには理由がある。
わたしが赤子の時の習慣が、今もなお続いてしまっているだけだ。
母が死んでしまい、母乳のあてがなかった。
そこで、ヤミが、自分の【血】で補ったことが、この行為の始まり。
けれど、【血】は、その中に特別な力を宿すものであり―。
その習慣は、いつしかヤミが、わたしの【血】を吸うほどになっただけなのである。
鈴鶴「ん……」
わたしは、ヤミの首筋に唇を合わせ、血を飲む。
いつもの習慣でも、やはりこれをするときは緊張する。
ヤミ「鈴鶴様、どうぞ」
ヤミは、やさしく私を見つめて、微笑んでわたしを見つめる。
まるで―といっても、実際その行為の代わりなのだけど―母が赤子を見つめるように。
鈴鶴「んくっ…くっ…くっ…」
粟、稗、獣、山菜……数々のものを食べてきても、やはりこの【血】の味は格別だ。
ついつい、夢中になって飲んでしまう。
ヤミ「ふふっ、鈴鶴様のこのお顔、ほんとうにかわいらしい」
そんなことを言われて、我に返って、わたしは赤面して――。
ああ、この人は。
なんて恥ずかしいことをすぱっと言うのか。
けれど、わたしはこの人とずっと一緒にいたいと思ってしまうのも事実であり―。
鈴鶴「ヤミ、わたしの血、吸っていいよ」
わたしも、血を捧げる。
ヤミは、やさしく歯を立てた。
ヤミ「鈴鶴様、だいじょうぶですか?」
わたしを気づかいながら、その血を吸い取ってゆく。
その息遣いは、甘く、そしてくすぐったい。
ヤミ「ん……はぁ、はぁ…」
わたしの身体に抱き込む力が強くなる。
そして、ヤミは舌で歯を立てたところを舐めて。
ヤミ「鈴鶴様、美味しゅうございました」
ヤミは、わたしの首筋から、唇を離した。
服の乱れもそのままに、わたしたちは二人抱き合って、寝床の中に―――。
ヤミ「鈴鶴様、ずっと、一緒にいましょうね」
抱き合いながら、ヤミは優しく―けれど、固い意志が含まれた言葉を囁いた。
いつしか、わたしたちは、眠りの海に――。
こうした日々が何日も、何月も、何年も過ぎる―――。
わたしの父に、太刀の使い方を習い、その稽古をするようになったり。
ヤミに抱っこされて、いろいろなものを見に行ったり。
あるいは、ヤミと天の狗のやっていた修行をやってみたり。
―月日は流れる。
川を流れ行く水のように、空を流れ行く雲のように―――。
鈴鶴(すずる)
・生年月日:792年10月12日
・髪色 :黒
・目の色 :黒
・血液型 :B型
・利き手 :両利き
・一人称 :わたし
ヤミ(闇美)
・生年月日:782年5月6日
・身長 :170cm
・体重 :60kg
・スリーサイズ:72-62-78
・髪色 :黒と白(ブラック・ジャックのような感じ)
・目の色 :青
・利き手 :右
・一人称 :わたくし
天の狗
羽を背中に持ち、風を操る人ではない存在。
寿命は200歳程度。成長期は15歳ぐらいまで。
老化が始まるのは100歳ごろから。
??「―――――――。」
―――声が聞こえる。
これは、わたしの一番古い記憶?
何も、見えない。
そこは、暗闇の中―。
けれど、音は聞こえる。
―男と女が、いることが分かる。
男と女が何かを話している。
男「――――――」
女「――――――」
男「――――――」
ただ、何かを話しているようではあるけれど。
それは、わたしの中にある記憶の、一番底にあるもの?
何かを話している、というものはわかるのだけれど、何を話しているのかは分からない。
そして、その声はだんだん小さく――。
―――。
暗闇から光が―――。
夢の中の海―記憶の海から、浮かんでゆく。
光の射す水面へと浮かんでゆく。
??「鈴鶴(すずる)様、おはようございます」
ゆさゆさと身体を揺らし、わたしを呼ぶ声。
鈴鶴(すずる)とは、私の名前のことだ―。
鈴鶴「ああ、おはよう……」
わたしは、目をこすりながら、その声に答える。
わたしを起こしたのは、わたしの乳母(めのと)のような存在であり、わたしの姉のような存在の女性。
けれど、彼女は人に在らざるものである。
人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、狗にて狗ならず、
足手かしらは人であり、左右に羽根はえ、飛び歩くもの―――。
つまり、天の狗―。
彼女の名前は、闇美(ヤミ)―。
わたしがこの世に生まれたときに、ここに命からがら逃げてきた天の狗。
妖殺しという集団に、仲間を皆殺しにされて、ここまで逃げてきた、と彼女は語っていた。
だから、身体中に傷跡がある。
そして、右目と、左手の中指の半分と、左手の薬指と小指を全て失っている。
ヤミ「鈴鶴様、寝覚めでも悪かったのですか?」
ぼーっとしていると、ヤミが声を掛けてくる。
鈴鶴「いいえ、ちょっと夢が気になるところで終わったから」
ヤミ「あら、それはお邪魔でした?」
ヤミが、わたしを見つめて言う。
鈴鶴「ううん、それほどでもないから」
ヤミ「では、布団から出ましょう」
わたしたちは、ただの庶民。
貴族でもなければ、王族でもない。
竹を取り、それを様々なことに使うのが生業の、ただの庶民。
わたしの父と、ヤミと、わたしの三人で生きている。
わたしの母は、わたしが生まれたときに亡くなったのだそうだ。
―いつもの通り、作業をし終わる。
もう、空も赤く染まった―。
いつもの通り食事、禊を行って。
それが、終われば、もう月は海から浮かび上がる時刻になる。
もう、あとは眠るだけ―というわけではない。
わたしの父は、わたしの母の形見だという、太刀の稽古に行く。
その太刀の腕は、竹にも、動物にも、一発で切り落とす腕―。
それを、毎日の鍛錬で、限界に―あるいは、限界を超えるために鍛錬をしている。
父「では、稽古をしてくる」
父は、太刀を携え、山の中へと向かう。
住処の中には、わたしとヤミだけが―。
ふたり、寝床の中に佇む。
けれど、そのまま眠りにつくわけではなく―。
わたしとヤミは、寝床の中で互いを抱き合う。
着ている服をずらし、首筋をあらわにして。
互いの首筋に、その歯を立て、互いの身体に流れる血を吸い、飲む―。
もっとも、これには理由がある。
わたしが赤子の時の習慣が、今もなお続いてしまっているだけだ。
母が死んでしまい、母乳のあてがなかった。
そこで、ヤミが、自分の【血】で補ったことが、この行為の始まり。
けれど、【血】は、その中に特別な力を宿すものであり―。
その習慣は、いつしかヤミが、わたしの【血】を吸うほどになっただけなのである。
鈴鶴「ん……」
わたしは、ヤミの首筋に唇を合わせ、血を飲む。
いつもの習慣でも、やはりこれをするときは緊張する。
ヤミ「鈴鶴様、どうぞ」
ヤミは、やさしく私を見つめて、微笑んでわたしを見つめる。
まるで―といっても、実際その行為の代わりなのだけど―母が赤子を見つめるように。
鈴鶴「んくっ…くっ…くっ…」
粟、稗、獣、山菜……数々のものを食べてきても、やはりこの【血】の味は格別だ。
ついつい、夢中になって飲んでしまう。
ヤミ「ふふっ、鈴鶴様のこのお顔、ほんとうにかわいらしい」
そんなことを言われて、我に返って、わたしは赤面して――。
ああ、この人は。
なんて恥ずかしいことをすぱっと言うのか。
けれど、わたしはこの人とずっと一緒にいたいと思ってしまうのも事実であり―。
鈴鶴「ヤミ、わたしの血、吸っていいよ」
わたしも、血を捧げる。
ヤミは、やさしく歯を立てた。
ヤミ「鈴鶴様、だいじょうぶですか?」
わたしを気づかいながら、その血を吸い取ってゆく。
その息遣いは、甘く、そしてくすぐったい。
ヤミ「ん……はぁ、はぁ…」
わたしの身体に抱き込む力が強くなる。
そして、ヤミは舌で歯を立てたところを舐めて。
ヤミ「鈴鶴様、美味しゅうございました」
ヤミは、わたしの首筋から、唇を離した。
服の乱れもそのままに、わたしたちは二人抱き合って、寝床の中に―――。
ヤミ「鈴鶴様、ずっと、一緒にいましょうね」
抱き合いながら、ヤミは優しく―けれど、固い意志が含まれた言葉を囁いた。
いつしか、わたしたちは、眠りの海に――。
こうした日々が何日も、何月も、何年も過ぎる―――。
わたしの父に、太刀の使い方を習い、その稽古をするようになったり。
ヤミに抱っこされて、いろいろなものを見に行ったり。
あるいは、ヤミと天の狗のやっていた修行をやってみたり。
―月日は流れる。
川を流れ行く水のように、空を流れ行く雲のように―――。
鈴鶴(すずる)
・生年月日:792年10月12日
・髪色 :黒
・目の色 :黒
・血液型 :B型
・利き手 :両利き
・一人称 :わたし
ヤミ(闇美)
・生年月日:782年5月6日
・身長 :170cm
・体重 :60kg
・スリーサイズ:72-62-78
・髪色 :黒と白(ブラック・ジャックのような感じ)
・目の色 :青
・利き手 :右
・一人称 :わたくし
天の狗
羽を背中に持ち、風を操る人ではない存在。
寿命は200歳程度。成長期は15歳ぐらいまで。
老化が始まるのは100歳ごろから。
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2014-07-27