3-13:K.N.C47年への時間跳躍〜運命篇〜

初公開:2016/12/25

【K.N.C47年 初代wiki図書館付近】
火炎をまとった鎧の兵士は、燃え盛るwiki図書館を背に、オニロたちを迎えていた。

その兵士の名は無口。

きのこたけのこ大戦世界の礎を築き、wiki図書館を創設した傑物である。
両軍を言葉少なくまとめあげる力と、戦闘中では静かに敵を薙ぎ払うその姿は、【静】と【動】を兼ね備えた兵士として、かつて多くの歴史書には
必ずと言ってもいいほどその名が記録されていた。

しかし、今では無口の名を記した歴史書のほとんどは消失し、その名を知る者はもう数少ない。
全て、目の前の初代wiki図書館消失が原因である。

自ら創り上げた書物の激しく燃え上がる様を、なぜ無口は静観していられるのか。
今や貴重な歴史家となったオニロには、不思議でならなかった。

オニロ「無口さん。どうしてwiki図書館の火を消そうとしないのですかッ!ここはあなたが創り上げた空間のはずだッ!これじゃあ、まるで――」

――あなたが、火災の”犯人”みたいじゃないですかッ!

無口にそうあってほしくないという否定した感情と、目の前で書物が焼かれることへの悲壮感。
会議所兵士と歴史家の二面の顔を持つオニロならではの葛藤だった。

しかし、全ての言葉を紡ぎ終える前に、オニロの身体は宙を舞った。
一瞬の斬撃。
オニロが立っていた場所には、既に無口が居た。しかし無口の移動を、剣が振るわれた速さを誰も追うことができなかった。

アイム「オニロッ!」

オニロ「ぐッ!大丈夫だよッ!『わたパチガード』」

事前に展開していた『スーパーカップバリア』のお陰で、オニロは空中へ飛ばされたものの外的な傷はほとんどなかった。
そして、わたパチに包まれ、何かが弾けるような小さな炸裂音とともに、オニロは夜の空に溶けて消えてしまった。

無口「…」

そんなオニロは気にもせずに、無口がアイムたちの方へ顔を向ける。
言葉がなくても、アイムたちには無口の言葉が理解できた。

――次はお前たちだ、と。

アイムは咄嗟に口を開き、口汚い言葉で無口に揺さぶりをかけようとした。
だがしかし、無口がゆっくりと剣を振り上げた瞬間、アイムは肌で無口のオーラを感じた。無口は確実にこの場を無言で支配していた。

スリッパ「くそッ、奴は語る言葉を持たない。二発目がくるぞ、サラッ!」

スリッパの言葉に呼応し、背後に控えていたサラが一行の前に移動し防護壁を張る。

無口が剣を振るう。
空間を斬るように、大地が震えるほどの風切り音をアイムは聞いた。
いともたやすく防護壁は破られ、全員は地面に叩きつけられた。

スリッパ「まさか、サラの魔法が破られるなんて…」

無口は、地面に転がる一行を気にすることなく、眼前のwiki図書館に目を向けた。
木造の建物はよく燃える。ただ、無口はじっと燃え盛る炎を見つめていた。

アイム「どうしてアンタ、ただ見ているだけなんだッ!あんたがこの図書館を創り上げたんじゃないのかよッ!」

無口は答えず、ただwiki図書館一点だけを見つめていた。鎧に隠れて表情は窺い知れない。しかし、その様子に儚げなものはない。
どこか飄々としている。まるで業務のように観察する彼の冷徹さを、アイムは感じ取った。

アイム「このまま終わってたまるかッ!社長、援護しろッ!」

アイムはすっくと立ち上がった。同じように、社長も立ち上がる。

社長「いいぜ。」

スリッパ「待てッ!ここで無口さんを倒したら歴史はどうなるんだッ!」

アイム「安心しろ、ちょっと痛めつけてその後に消火活動に参加させてやるんだよ」

アイムの言葉に、倒れ伏したままのスリッパはやれやれと呟いた。

アイム「おい無口さんッ!あんたが放火魔だろうが、そんなことは関係ない。オレたちをコケにしたツケ、払ってもらうぜッ!」

社長「『おっと 社長が ぶんれいね。』」

社長はその場で詠唱を始めた。途端に、彼の周りに数字の0が表れ出す。社長特有の魔法陣だ。
そして、その場で飛び上がったアイムの周りに呼応するように、瞬く間におびただしい数のバグった社長が現れた。

社長1「あワお〜」

社長2「さあ、吹くわよ!」

社長3「スピード感与えちゃったかな。」

社長4「まけたらバツゲームですよ!」

社長5「だいじょうぶでーす。」


スリッパ「地獄絵図だな…」

あっという間に空を埋め尽くした数千体の社長とその中に埋もれたアイムが、一斉に無口へ向かって一様に突撃を始めた。

無口「…」

量産型社長「ループを勝ち抜くぞ!」

量産型社長「しねばいいんでしょう?」

量産型社長「ンッンッン ひさしぶりだミ」

何体もの社長が突撃しては、見事な無口の剣さばきで斬り伏せられ消滅していく。
空中に浮遊したままの社長群はその数の多さからか、順番待ちをしながら無口に突撃する始末。異様な緊張感のはずなのに、どこか締りがなかった。
さらに社長たちのバグ音声がうるさすぎて、まるで無口の周りは祭の縁日のような賑わいっぷりとなってしまっている。

社長「やはり16×16のドットアイコン群では、無口さんには立ち向かえないのか…」

遠くから事態の推移を見つめる社長は、この瞬間もドット絵アイコン社長を召喚し続けていた。

スリッパ「というか、あの中にアイムが混じってるんだよな?
全部、ダミーアイコンをアイムにしておかないとすぐに無口さんにバレるんじゃないのか?」

社長「あっ」

スリッパ「おめえはよお、考えが甘いんだよ!」

アイム「おらァ!無口さん、覚悟ッ!」

社長の中に混じったアイムの見極めは、無口にとって容易いことだった。
一人だけ異色を放つ緑のバンダナを巻いていたら、ピンクまみれの社長アイコンの中では嫌でも目立つものである。

無口「…」

無口は流れるような所作でアイムの剣を払った。

アイム「クソッ、戦闘術・魂奥義『ストーンエッジ』!!」

アイムから放たれる鋭利な石弾も難なく無口は避け、そしてアイムの一瞬の隙を逃さず――無慈悲にも一突きした。

アイム「ガッッッ!!」

社長「アイムッ!!」

アイムの腹部を、無口の大剣が貫通していた。
アイムの身体は無口の大剣に無残にも支えられ、宙に浮いている。
苦痛の表情に歪むアイム。無口は静かに見つめている。

だらりとアイムの身体が伸びる。

無口は大剣を振り払おうと、ゆっくりと腕を動かそうとした。
大剣でアイムを薙ぎ払えば、その瞬間にアイムの生命も断ち切ることとなる。


―― いざという時に、俺はまた何の力にもなれないのか。

アイムの様子を間近で見ていたその兵士は、消え行くアイムの生命を見ながら、ただ立ちすくむことしかできなかった。

―― 預言書通りにはさせない。あの人から、そう使命を受けたはずなのにこれでは…これでは。

震える膝をむち打ち、一歩。また一歩と無口とアイムの下へ歩き始めるも、とても遅く。
一歩一歩がアイムの拍動と連動するように、その足取りは次第に止まる程遅くなって、再びその兵士は立ち尽くしてしまった。

―― 違う、預言書など関係ない。俺は…俺は目の前の友人すら救えないというのか。
    これではあの時と同じじゃないか。

―― こんなことなら、あの人と一緒に消えてしまったほうがよかった…

死は一瞬で訪れる。
重要で受け止めきれないほどの事実の前に、全員は呆然と無口の死への乱舞を見届けることしかできなかった。
周りにいる誰もがアイムの死を予感した。



アイム「―― 大丈夫だよ、社長」


全員「!!」

頭を垂れていたはずのアイムは、勢い良く両手で大剣を掴んだ。
そして、脂汗と涙にまみれた顔を無口に向け、口角をくっとつり上げた。

アイム「――ようやく捕まえたッ」

無口「!」

瞬間、無口の足元から生えた蔦が腕と身体に勢い良く巻き付き、彼の自由を奪った。


アイム「誰がオレを“本命”だと言った?“頼む、やれッ”!!!」


無口の背後で、ポンとワタパチの弾ける音が響いた。

オニロ「秘策は最後まで隠し持っておくことさ。

     『ネギ流星群』ッ!!!!」

無口の頭上から火を吹いた大量のネギが降り注ぎ、勢い良く爆ぜた。

師である791から教わった窮地を打開する必殺技が、手加減無用の威力で発せられたのである。

爆炎、爆風、そしてそれらによって起こる砂煙はまるで生命の咆哮だといわんばかりに、一瞬で無口を、そしてアイムたちを包み込んだ。


強烈な爆風がスリッパたちを襲った。先程まで無口が立っていた場所は激しい爆炎が巻き起こり、その様子は窺い知れない。

社長「やるねえ!」

スリッパ「それはフラグじゃないのか…」

オニロ「アイムッ!アイムは無事なのッ!」

アイム「あまり耳元で騒ぐんじゃねえ…傷口が広がるだろ」

オニロの足元でアイムは蹲って転がっていた。喋るたびに激痛を伴うのか、息は上がり苦しそうな声色だ。
ネギ流星群が展開される寸前、アイムは自らを貫いていた剣先を瞬時に切断し、後方へ退避し、ネギ流星群を避けていたのである。

アイム「“チームプレイ”…ようやくわかった気がするぜ、魂」

オニロ「喋っちゃダメだ。傷口を塞がないと…」

スリッパ「しかし、お前の師匠譲りとはいえ、ネギ流星群はやりすぎじゃないのか。これじゃあ無口さんもろとも…」

オニロ「いや。あの人が――」

アイム「――この程度でくたばるわけないだろう?」

――コツ
――コツ

足音が響く。

無口「…」

スリッパ「正真正銘の化物だな。あの魔法を喰らって、まだ元気でいられるなんてな」

オニロ「まずい…もう魔法力が残ってないよ…」

アイム「お前の師匠はネギ連発できるんだろう。真似してみせろよ」

オニロ「ボクをあんなバケモ…ゴホッ、英傑と一緒にしないでよ」

無口は腰を深く沈め、大剣を地上と水平になるように、右手を前に突き出すような突きの構えを取った。
その無口の動きに呼応するように、大剣の剣先が機械的に変形し、マスケット銃のような大きな銃口へ変わった。

スリッパ「サラ!」

社長「もうおしまいだあ!」

サラが再び防護壁を貼ろうとするも、無口の剣先の銃口から放たれた白い光束は社長、スリッパそしてサラに一直線に向かい、三人の身体は遠くに投げ飛ばされた。

オニロ「みんなッ!」

スリッパ「立てないが大丈夫だ…だが肋は何本か折れたな…」

竹内「ワシに任せろ!」

それまで隅っこで事の次第を見つめていた老兵竹内は、勢い良く無口の前に飛び出した。

アイム「おい爺さんッ!」

竹内「ワシは初代討伐隊の一番槍じゃ!見ておれ―あり?」

腰に携えた長剣を抜刀しようとするも、長年使われていない剣は錆び、鞘から抜けなくなってしまっていた。
バランスを崩し仰向けに転がる竹内を一瞥すらせず、無口はアイムたちの下へ歩みを進めていく。

竹内「すまん!足を挫いた、誰か助けてくれい!」

オニロ「竹内さん。そこでおとなしくしていてください…」

――コツ

無口は倒れ伏したままのアイムとオニロの前まで来ると、歩みを止めた。
物音一つ出さずに、市場で見つけた骨董品を物色するように、好奇な視線を二人に向けている。

アイム「狙いはオレたちか」

無口は答えない。アイムは覚悟を決めたように、目を閉じた。

アイム「…ヤるならオレ一人にしてくれ。隣のポンコツ魔法使いには手を出すんじゃねえぞ」

オニロ「アイムッ!なに馬鹿なことを言って――」

無口「――これは余興」

鎧の中から発せられた無口の声は、くぐもることなく、透き通るほど全員の耳に届いた。

オニロ「え!?」

パチンと一度、無口が指を鳴らすと、アイムたちの受けた傷はたちまち癒えてしまった。

無口「初めからお前たちを始末するつもりなどない。ただ【確認】しにきた」

アイム「なんだと?」

無口「この世界に堕ちた【救世主】たちを――」

それに、と無口は遠くにいたサラへ視線を向けた。

無口「珍客もいる。その【魔法】は誰にかけてもらった?よくできている」

サラは何も答えず、半身を起こしたばかりのスリッパをかばうように前に出た。
無口の言葉を理解できずオニロを含め全員が眉をひそめた。居心地の悪い、奇妙な沈黙が流れた。

数十秒、あるいは数分も経ったのだろうか。
これ以上の会話は無用と思ったのか、無口はその場で踵を返し、再び燃え上がる図書館に向かい歩き始めた。

スリッパ「待て」

無口「…」

足を止めた無口に、スリッパは隠し事をせずに腹を割って話すことを決めた。

スリッパ「シワは増えたが、知らない顔ではないだろう。この際だから聞こう。この火事は、お前が仕組んだのか?」

無口は困ったように肩をすくめた。スリッパの問いにイエスとも、ノーとも取れるものだった。

無口「“犠牲は超時間的な、超感覚的な、無制限なものと結びついている。それは、たとえ『無駄』であろうと、『無意味』ではない。”」

スリッパ「どこかのきのたけ哲学者の引用か。自身の行為を正当化できるとでも?」

またもスリッパの問いには答えず、無口はオニロたちの方へ逆に問いかけた。

無口「『メルティカース』という魔法を知っているか」

オニロ「…本で読んだことがある。一度詠唱してしまえば、たとえ術者がいなくなっても、半永久的に自律的に起動し続ける永続補助魔法。師匠でも詠唱には苦労するって」

無口「そうだ。その『メルティカース』はいま、起動の準備段階にある。魔法陣は…図書館の遥か下、地下階層に仕込んである」

アイム「まさか…大戦年表編纂室を創っているんですか!?」

大戦年表編纂室がなぜ歴史改変の影響を受けない部屋なのか。
それは、編纂室自体がメルティカースにより生み出された魔法シェルターに他ならないからである。

歴史改変を受けず、時空の潮流に飲み込まれない唯一つの空間。
いまこの時より無口は編纂室をメルティカースにより召喚し続けていたのである。
そして、この図書館の大火の中で、無口は編纂室の召喚の準備を淡々と進めていた。

メルティカースは超高度魔法ゆえ、一度起動に失敗してしまえば詠唱に必要なエネルギーがそのまま術者に跳ね返ってくる。
即ち、周囲にある図書館ごと飲み込み、消え爆ぜてしまうリスクがある。
無口が用意した図書館の大火は、編纂室をメルティカースで創り上げる上で、兵士を図書館に寄せ付けないための策であった。

オニロ「そうだとしても…残った書物が一緒に燃えてしまうなんて、あんまりだ…」

無口「図書の犠牲は無駄であろうと、今後のことを考えると無意味にはならない。それはお前たちが一番よく知っている」

アイム「あんた…まるでオレたちの正体まで知っているようだが。まさか、化けたDBってことはないよなッ」

無口は答えない代わりに肩をすくめた。ナンセンスだ、と答えているようにアイムには感じられた。

アイム「おい。あんたにだから言うが、オレたちは未来からきた。当然、あんたの結末は知っている。
包み隠さずに言おう。この図書館の大火であんたは歴史から消えちまうんだよ」

オニロ「ちょ、ちょっとアイム!まずいよ、未来の事を言うのは!」

アイム「どうせ消える兵士の方だ。ここで歴史改変が起きなければ、無口さんが消えるという事実は変わらない。そうだろう?」

いつもアイムの頭のなかに囁いてくる謎の声は聞こえてこない。
つまり、無口が歴史の表舞台から消えてしまう事実は不変だということの証明だった。

無口「――還りたいか?」

アイム「正確には、帰らなければいけないだな」

無口は暫しの沈黙の後、それならばと語った。

無口「…直に消火活動部隊が正面入口前に到着する。だが、奴らはことの事態に動揺し、力を発揮できん寄せ集め。
【消火活動を手伝い、少しでも書物を残す努力をしろ】。そうすれば、現代に帰れる」

社長「…」

スリッパ「なぜだ。あなたは間違いなく大戦年表編纂室の創設に関わり、未来で起きる騒動も予見している。時限の境界の事も知っている」

ならば俺達がなぜ過去に来ているのかも知っているかも、と続けた上でスリッパは核心をついた。

スリッパ「なぜ、こんな回りくどいことをさせるんだ」

無口「全ては『預言書』にしたがったまで。理由については、そうだな。そいつにでも聞いたらどうだ」

無口はサラを指差した。サラはただ沈黙している。

無口「――時間だ」

再び踵を返し、無口は歩き出した。

アイム「編纂室の準備が完了したってことか。どうやら、あんただけの意志では無さそうだが、後ろには誰が控えているんだ?」

無口は答えずに図書館へ還っていく。

アイム「まあいい。それで、あんたはこのまま消えるのか。随分と無責任じゃないか、消えた後は天から見守るとでもいうのかい」

そこで初めて無口は立ち止まり、静かに肩を震わせた。
笑っている。あの無口が。

無口「【天】か。なるほど、言い得て妙だな。そうか。それじゃあ“俺たち”は【天の上から】事の推移を見守るとしよう」


――大戦に幸あれ


消え入るような声で最期にそう呟いた後、無口の姿は夜の闇に溶けていった。
あとには静寂と、煌々と燃える図書館だけがアイムとオニロたちの前に残った。


【K.N.C180年 会議所正門前】

オニロたちは無事、現代の会議所へ帰還した。
無口が消えた後、オニロたちは無口の遺した言葉通り、消火活動に参加した。迅速な消火活動の末、図書館の火は驚くほど早く消し止められた。
あるいは、早い段階で炎魔法の効力を失うように、無口がコントロールしていたのかもしれない。
結果的に、迅速な消火活動が【歴史改変】と認められ、オニロたちは時限の境界を経て現代へ帰還することができた。

結局は無口により、オニロたちは最初から踊らされていたのである。

無口との邂逅を経て各人がさまざま葛藤する中、DB襲撃の危惧からオニロたちは急ぎ会議所の前まで戻ってきた。

―― 【救世主】は生き残った。

オニロ「…長ッ!」

―― やはり、あの人の予見通り、預言書はただの紙クズと化したのか。

オニロ「社長ッ!」

何やら思案気に顔をバグらせていた社長は、オニロの言葉にハッとした様子で顔を上げた。

オニロ「社長。無口さんが最後に言っていた言葉の意味。あなたなら、何か知っていますよね」

社長「(そうでもないけど)」

オニロ「編纂室に戻ったら教えてください。話せる内容までで結構ですから」

社長「…はいよ」

オニロの真剣な表情に、社長は渋々と言った様子で頷いた。

竹内「すまんのう。ワシはおしっこ行ってくる」

会議所に着いたと同時に、竹内はフラフラとした様子でどこかへ行ってしまった。
その竹内に誰も言葉をかけない辺り、今回の時間旅行で何度同じ場面があったか想像するに難くない。

アイム「しかし、やけに静かだな…」

会議所の受付は昼間だというのに明かりが消えている。ただでさえ古びた受付が薄暗く肝試しに出てきそうな程に寂れて見えてしまっている。
静寂を通り越し生気がないのだ。そして、どこからか立ち込めている生臭い臭いが、先程からアイムたちの鼻をついていた。

加古川「おかえりィ」

ぬっと暗闇の中から出てきた加古川が、満面の笑みでオニロたちを出迎えた。

オニロ「加古川さん、戻っていたんですねッ!DBはまだ襲撃していませんかッ!」

オニロは不思議な違和感を覚えた。
いつもくたびれたような面持ちで皆を迎えていた加古川が、今日はやけに張り切っているように見えたからである。
そして、その目はどこか焦点があっていなかった。

加古川「予想より時間がかかったなァ。拘束ゥ」

オニロ「何を言って――」

なにか様子がおかしい。オニロたちが疑問を抱くよりも前に、加古川の命令はくだされた。
柱の陰に隠れていたsomeoneの放った麻痺魔法は、アイムたちに悲鳴を上げる暇すら与えず、身体の自由を奪った。
全員の身体は硬直し、直立したアイムたちはその場に倒れ伏した。

someone「ヒュー。プッカライトニングが決まると気持ちいいなァ。拘束完了ゥ」

同じく身を潜めていた抹茶も姿を現し、倒れる一行を面白そうに眺めていた。

抹茶「おやァ。一人、兵士が足りないようですがァ」

黒砂糖「あの老人は放っておけェ。単体では何もできんよォ」

アイム「ッ!!」

somoneの麻痺魔法を少しでも破ろうと、必至の努力で顔だけ上げたアイムは、正面から現れた黒砂糖と目があった。
暗闇と同化するほどに真黒な祭服を着込んだ黒砂糖は、驚愕にまみれたアイムたちの顔を一瞥すると、口角をつりあげニタニタと笑いだした。
その笑い方は、まるでアイムたちが追っていた宿敵そのもので――

黒砂糖「それでは“あの方”の下にこいつらをお連れしろォ。お前たちの帰りを今か今かと待っておられたのだ、【その身】で非礼を詫びるんだぞォ」


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Chapter3. 無秩序な追跡者たちへ戻る。

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