中世・近世ヨーロッパ史(だいたい西暦1155〜1857)の歴史の研究および考証(意見・情報交換、議論など)をする研究会のwikiです。歴史の情報共有の場として、あるいは、単なる情報交換の場として。歴史好きの方、お待ちしております。認証されれば誰でも編集可能です。

中世の陸戦戦術と書きましたが、おおまかには古代を通して中世、近世に至るまでの陸戦という陸上で陸軍同士で行われる戦いではほぼ常勝パターンともいえる、フランキング(flanking)について紹介します。flankとは広げた翼のことですが、騎兵が陸上で行われる戦いにおいて、歩兵が隊列を組んで正面からぶつかり合うのに対し、その横から弧を描き覆い包むようにして素早く敵戦列の横あるいは弓弩兵の陣を急襲、挟撃するやり方のことです。横からの一撃、といえば正しいかもしれませんが、とにかく甲冑を着ることも多かった歩兵同士の正面からのぶつかり合いでは、容易に決着が付きません。戦争の戦闘においてゲーム的には味方に被害が出ないうちに勝てるように速時即決で判断を下さなければなりませんから、相手の敵陣をほぼ横に一列並びと考えた場合に、機動力に優れた騎兵を敵陣の横から攻撃するように機動させ、敵陣を横から攻撃する方法がとても有効なのです。こういった動きをフランキングといい、中世ヨーロッパはおろか、古代から中世、近世にかけて行われた陸戦ではほぼ必勝パターンといっていいほどの機動(manuevering)なのです。騎兵を使う限り、機動力を考慮すればほぼ絶対有効なパターンなのですが、マスケット銃や大砲が戦争の戦闘に導入されはじめた16世紀以降のヨーロッパで、結局19世紀の最後まで騎兵(それも白兵用の)が運用され続けたのは、ひとえにそのフランキングがとても強力で、戦場の戦闘においてひとつ切り札が増えるほどの威力を持っていたからなのです。フランキングの技術を中心に見ていくと、特に中世の陸戦において決着を付けるには、1)歩兵同士のぶつかり合いと、弓弩による援護でどちらかが疲弊するまで押し合い続ける。2)騎兵による横からのフランキングで、一気に大勢を決着付ける。3)なんらかの不運で指揮官が負傷するか戦死するなどして、士気が下がり指揮能力を失う。の2つ(+1つ)ぐらいしかありません。括弧+1にしたのは、そもそも指揮官が負傷するか戦死するといったのは、白兵戦主体の戦場においては完全に不確定要素でしかなく、逆に戦略策定上は指揮能力の関係からあってはならないのです。それでも、流れ矢に当たることはあるかもしれませんが、そもそも剣戟矢玉が飛び交う中世の戦場では、目の前の敵以外に指揮部隊を狙うわけにはいきませんからやはり1)か2)の歩兵同士の衝突で決着をつけるか、騎兵によるフランキングぐらいしかなかったのです。16世紀前後に戦場に大砲が導入されはじめてからは(それまではトレビシュットやカタパルト、バリスタなどの投石器が中心でしたが)、多少司令部隊のすぐ横を砲弾がかすめることはあったにしろ、結局軍の主体は歩兵なので、まずは敵歩兵戦列を狙うことが中心になったのではないでしょうか。と、なると攻城以外の目的で戦場に大砲が導入されるのはあくまで歩兵部隊の掩護で、戦況を押すにはしろ一変させるような要素にはなり得なかったと思います。英語では矢も砲弾もmissile(飛翔物)といいますが、あくまで主目的は歩兵部隊の掩護であって、一撃で敵陣を破壊してしまうほどの能力はなかったわけですから(せいぜい鉄球か散弾、榴弾砲になると炸裂弾か焔硝弾。榴弾砲の特殊弾は強力だがやはり砲撃効果からすると一大砲に過ぎない。)やはり主体というか中世の戦場で決着を素早く付ける方法は歩兵での押し合いか、騎兵によるフランキングしかなかったのです。その中でも戦術的パターンからすると、やはり騎兵によるフランキングが有効ですし、歩兵での押し合いで負けるのならそもそも量的にも質的にも勝ち目はなかったと見ていいでしょう。局地戦や遭遇戦などの奇襲や伏兵も考えられますが、そもそも戦場での強さを測るのに局地戦や少数戦を想定していても意味がありませんから、やはり真正面から一対一でそれなりの規模の軍勢同士がぶつかり合った場合に、どうしたらできるだけ少ない損害で総合的な勝ちを導くことができるのか、を考えた場合にやはり一番重要というか有用になってくるのは戦術的運用、その中でも兵種を歩兵、騎兵、砲兵と分けた場合に騎兵によるフランキングが有用になってくることが分かります。ついでいうと、騎兵でのフランキングは歩兵の脅威である敵の弓弩(次から次へと雨あられと矢玉を降らす)を排除できる可能性がある上、場合によっては敵砲兵や司令部隊も直接攻撃できる可能性があります。弓弩兵、砲兵、司令部隊を押さえてしまえば歩兵での押し合いに完全に負けたりしなければ戦局をほぼ決定づけることができるので、馬か歩行ぐらいしか陸上での移動手段がない時代では、それ以上ない切り札、だったのです。ゲーム的には現代のサッカーやアメリカンフットボールでも陣形同士のぶつかり合いという点ではほぼ同じですから、フランキングというのはやはり有用戦術なのです。サッカーで両サイドが駆け上がったり、アメフトでも正面の陣押しよりかはサイドを抜け駆けする方法のほうが画期的な転機になりやすいです。条件としては、1)軍勢同士のぶつかり合い、多くの場合は一対一である。や、2)歩兵や騎兵で戦うのが条件で、機動車両や戦車、飛行機はない。というのがありますが、それでも少なくともフランキングは陸戦においては有用戦術なのです。マスケット銃が登場してからは、剣戟による白兵戦の時代に比べて剣戟になってからの決着が付くまでの時間がだいぶ短くなったであろうことは想像できますが、それもマスケット銃による射撃で多少歩兵同士の陣押しで決着が付くのが早くなり、交戦距離も多少長くなった、こともありまた強さに対する運用人数も増えた(結果的に戦闘が「効率化」することとなった)ので騎兵が絶対的に強くなくなったのか、というと確かにそうかもしれませんが、結局は中世の銃が登場する前の時代でもパイクや槍などで騎兵の突撃を防ぐ方法はありましたし、マスケット銃で武装した歩兵横隊に騎兵で突っ込めば高い確率で甚大な損害を被るであろう(ちなみに、フランス-イングランドの百年戦争のクレシーの戦いやポワティエの戦いのように、あらかじめ構築しておいた陣地、すなわち逆茂木や馬防柵のために騎兵突撃が敢行できず、騎兵中心側が惨敗する例もあった)、ということは想像できますから、やはり歩兵同士で正面から戦って、騎兵はフランキング(迂回)するというのはヨーロッパの中世から近世にかけてはなんら変わりなかったでしょうね、ということは言えると思うのです。マスケット銃(火縄銃)が登場して、確かに歩兵の戦闘効率が上がり、騎兵の存在感は減っていったにしろ、今度はカービン銃で武装した竜騎兵(ドラグーン)やそのあとの時代になると西部劇でよく出てくるようなハンドガンで武装した騎兵も出てきますし、さらにその後の時代になると戦車の時代にもなるわけです。現代までいけば歩兵戦闘車両にまでいきますが、まぁ要は古代エジプトのチャリオット(馬車弓兵)の時代から現代の戦車に至るまで、騎兵の存在感が強いことには、なんら変わりはないのです。なので古代から中世、近世までにかけての陸上戦闘における最大の発明は馬、移動手段だった、ということもいえると思うのですが、それ以上にもっと重要な概念は、相手よりもほんの少し速く動く、機動(manuevering)なのです。歩兵でも弓兵でもそうなのですが、隊列を組んでぶつかり合う以上彼我の力関係はほぼ同じだと仮定して、やはり戦場で重要になってくるのは如何に相手よりも速く動くか、物理的な速さだけではなく決断から指揮伝達までのスムーズさにおいて相手よりも速く動き、戦略的に優位に立つか、ということなのです。人間同士が命がけで戦う以上、できればお互いに内心では負傷したくないし死にたくない、ということは考えているでしょうから、戦争における戦闘といえど方向性としては「できるだけ早く結着を付け、双方ともそこまで死傷者を出さない」、という考え方が重要になってくると思います。そうなると、如何に速く機動して、陣形において相手よりも優位に立つか、が強さと剛健性を両立するには必要になってくるので、やはり戦場では機動というかスムーズな動き、つまり戦術や戦略の両面において柔軟性が非常に重要になってくるわけです。ちなみに、人間の運動でも強さや頑丈性よりも同じ生命体であるということを考えると、柔軟性または巧緻性といいますが如何に最小限の力を上手く使って、出来得る最大限の効果を引き出すか、という仕組みが重要になってくるわけです。というと、強さや剛健性はどうでもいいのか、ということになりますが生命体である、ということを考えるとそもそもそこまで命がけで戦い続けるのは不可能なわけです。生命体は戦うために生まれてきたわけではありませんから、不必要な戦いは一指揮官といえど一兵士といえど一農民といえどやはり避けたいわけです。そうなると、できるだけ損害を少なくしながら上手く勝つ方法を学ばねばなりませんから、やはりスムーズに、思い通りに機動して戦う、というのが両軍とももっとも損害の少ない方法なのです。19世紀のそれまでは、人間が実際に物理空間でそれを試すというか、実際にやってしまう時代が続きましたが、21世紀はそれを電子的にコンピューターの机上でやれる幸せで平和な時代がきました。となるとやはり現代の我々に課されている使命とすれば、あるとすれば戦争含めゲームの仕組みを解明することだ、そうは思いませんか?戦争にしろそのゲームの仕組みを解明できれば、今後物理空間で人間が実際に戦争をする必要はなくなります。すべての人が幸せでいられる世界、それを実現するには戦争であってもゲームで仕組みを解明する、さらにはできれば平時から戦争をしなくて済むようになるような世の中を作っていかなければならないのだなぁ、とつくづく感じて、この項は終わりにしたいと思います。基本的なことをまとめるのなら、歩兵などによる白兵戦中心の中世の戦場では騎兵によるフランキングが有用であった、ということ、もうひとつは時代が変わっても騎兵あるいは機動部隊による側面攻撃(フランキング)は非常に有用であった、ということ。それから、ゲームはどれもゲームが同じなら仕組みは一緒なので、ゲームを解き明かすことが最終的には社会の仕組みを知ること、さらにはゲームは戦争を超えた平和を実現できる可能性のあるツールである、ということについて学んできたと思います。細かいところをいうといろいろあるかもしれませんが、基本的には中世・近世の陸戦戦術というのはこんなところかと思います。

兵科相性概略



騎兵によるフランキングの図



Keith Roberts著「Pike and Shot Tactics1590-1660」の表紙より、パイク歩兵とマスケット兵(大写しはマスケット兵)、及びそのフォーメーション(テルシオ?マウリッツ歩兵?)

〔メモ・追記〕
パイク歩兵、マスケット兵、竜騎兵(ドラグーン)と出てきましたが、結局重要なのは、大抵の場合同じ年代であれば、兵科同士の相性、だったりするのです。兵科といっても基礎は兵隊ですから、結局は一個の人間がいくらか集まって隊列を構成するだけの、「兵隊」なわけです。それを、特定の共通の武器あるいは装備で武装させれば、その「兵科」となるわけです。で、兵科同士の相性といっても、結局はその場で置かれた状況や地形にいくらか戦術的要素は左右されますから、結局は、その場その戦場の配置や状況、その場の地形が非常に重要になってくるわけで、ということはつまりは特に中世・近世を言う場合の歩兵戦闘というものは置かれた状況、その場の状況で勝ち負けが決まる、ということ、また結局はそういうことであれば戦場で最終的に重要になってくるのは用兵・用地、特に用兵の機動、配置が重要になってくるわけです。マニューバーが全て、とは用兵・用地のところで書いた通りですが、結局は兵の動かし方一つで戦場の戦局は自由自在に操れるのだ、ということと、もうひとつは機動そのものが勝敗を完全に分ける重要要素になっているのだ、ということです。結局、どんなにひ弱な部隊であっても、はたまたどんなにより選った精強であったとしても、配置と動かし方さえ間違えなければ、少なくとも戦場では無駄になることはないわけですから、結局機動だけで勝てるのだ、ということです。また、どんなに精強・精鋭であったとしても、位置取りや動かし方を間違えてしまえば、たちまち死地なわけですから、戦場とはそういうものだ、ということをしっかりと頭に叩き込んでおかなければいけないことだ、ということははっきりしていることだ、ということだと思いますね。


TheLordzGamesStudio社のPike And Shotというゲームの表紙より、パイク歩兵及びマスケット兵と、騎兵・ドラグーン(竜騎兵)
ゲーム会社のソフトページに飛びます

〔またまた追記〕
歩兵と騎兵の扱いについては以上のように書きましたが、基本的に歩兵諸々の兵科、あるいは騎兵も混成で特段割と入り組んだ地形で戦う場合などは、(つまり状況が切羽詰まっている、ということです)まずゲームの基本的な動かし方として〈それなりの土地で敵陣自陣それぞれ相応の兵を揃えて向かい合っているとします〉まず味方の戦列陣を一段に設定せずに、二段三段に設定します(本陣入れて四段か五段)現代のサッカーでもそうですが戦列はだいたい四段か五段なので、入り組んだ土地(狭い)で戦う場合などは特に戦列の幅を短くする分戦列陣を二段三段に設定して、陣列を厚くします。そうすることで、狭い土地であれば相手の一面に対して潜在的なものも含め面する戦列陣がだいたい平均で2〜3倍になるので、そうすることで陣列が厚くなるので相手の一面、特に正面を崩しやすくなります。と同時に一列目は歩兵かパイク兵にして、二列目、三列目に近接歩兵(斧・メイス・その他)および弓弩など飛び道具やそれとは別にカタパルトやトレビシュットなどの大型の飛び道具を適度なところに配置します。また地形に応じて適度に騎兵の陣を混ぜておきます。この時騎兵は重装というよりは比較的軽騎兵のほうが好ましいでしょう。乱戦の中で動きがよくなるからです。弓弩や飛び道具の陣であれば二、三列目からでも射撃で支援できますし、斧やメイス兵などの近接歩兵を二列目に待機させておいても最初の一列目の攻撃後に相手がへたったところを重装歩兵で叩けます。大抵の場合戦陣の一列目はパイク(長槍)兵あるいはハルバート(斧槍長槍兵)ですから(槍なのでリーチが長い)近接武器を持った重装歩兵では鎧の分だけ動きも遅いですしそこまで非接触の状態で継戦能力もありません。一度敵に当たれば強い重装歩兵ですが余分に動かされたりリーチ(範囲)の長い武器に翻弄されたりすると意外に早く体力を消耗してしまいそもそも十分に戦列中で戦力を発揮できません。なので一列目の長槍部隊が十分に相手を蹴散らしたところで二列目の近接歩兵や重装歩兵が突撃すれば相手の戦列が二列三列あっても十分に崩せるので、あとは基本的にどちらかの戦場のサイドから攻めるのかを選ぶというか最初に決めておくだけで、十分に敵戦陣を崩すことができるのです。戦場で攻めるサイドを選ぶのは戦列を二段三段以上に設定した場合に全体を一列と考えて押し上げるのは相手にも戦力のあることですし非常に難しいので、複数の段の戦列の場合は必ず戦場のどちらかのサイド(あるいは中央を堅くして戦陣を守るのか)を押し上げるのかを決めておかなければなりません。戦前のプランニングは重要で情報の伝達も当時は基本的に狼煙か伝令なので、事前に決めておく必要があります。逆に複数段の戦列が機能しない例としては同じ兵科ばかりだったり長槍と近接歩兵が逆など武器のリーチを十分に考慮していない場合などで(弓弩部隊の前に防柵や剣盾兵がいない場合もそうです)それでは十分に兵の数が揃っていても機能を発揮できないわけで、そういう意味では戦術家は軍事百科全般に通じておく必要があるのも事実です。複数段の戦列の場合は戦場のどちらかのサイドから攻め上がっていくのを決めておけば、ほとんどの確率で敵の一面の(潜在的なものも含め)戦列よりも陣が厚くなるので、歩兵の陣押しだけでも勝てることになるのです。ちなみにこの類の戦いの場合は騎兵特に重装騎兵は敵の戦列が厚いので容易に突破できないと考えられるので、脇を固めるかもう片方の戦場のサイドを半分騎兵に設定しておいて、片面から敵の戦陣にフランキングをかける戦術を取ることになると思われます。また軽騎兵や弓弩騎兵などはその戦場の片方の騎兵のサイドに混じるか攻め上がる方の(特に軽騎兵などは)戦列の間を行ったり来たりしながら味方の緩くなった戦陣を補佐・保護する役割があるので、そういう意味では複数の段の戦陣による戦いの場合は脇役に回るケースが多いようにも考えられます。弓弩騎兵などもそういう戦場のケースではあまり主戦力にはなり得ないのかもしれませんが、重装騎兵などで片面の脇からフランキングを掛ける方の戦陣に混じって十分に敵戦陣を掻き乱す戦力として期待できます。そういう意味では兵は適材適所で、十分な戦力にもなり得るし逆にどんなに優勢で余裕があったとしてもさぼっていれば死兵にもなり得るのです。城の場合だってそうです。どんなに堅牢な城でも守兵がさぼっていればまさかの一手であっけなく陥ちることもありますし、逆に見かけはどんなに寡兵(少数の兵)でも十分に策を講じて戦術面で有利であれば大軍が攻めるのをだって防げる場合もあるのです。要は、兵はその多寡にあらず、その腕の用い方次第である、というのは古くからよく言ったことですが、見かけの数ではなくその内面、戦いの上手さや戦術の種類の豊富さ、が重要になってくるともいえるのです。ちなみに、平面な戦場であっても戦陣のどちらから攻めるのかは重要で、フランキングの例でもそうなのですがどちらかに数または量をかけることによって相手の面する戦陣より陣容を厚くすることができるので、大抵のゲームでは(スポーツも含む)どんな場合であっても戦陣の必ずどちらか片方から攻めるのが戦場での基本になります。ちなみにそのどちらかからを決めずに両面、つまり戦陣の一列に渡って全体を押し上げようとすると大抵敵の歩兵が十分に準備できていた場合は食い止められてちょっとでも相手が上回っていた場合は逆に押し下げられてしまいますし、逆にその戦列の範囲外から騎兵にフランキングを掛けられてしまいます。そうするとどんなに味方戦陣の数が揃っていても戦術で負けてしまいますので、やはり戦術は用い方、兵は扱い方で戦場では全てが決まってしまう、というのは戦術家であればまず心得ておかなければならないことですね、とは言っておきたいと思います。ここでは以上です。

参照図


〔さらに追記〕
上記の追記の内容は基本的には中世の戦い方を念頭において書かれていますので、基本的にマスケット銃兵などが入っておりません。なので書き加えておきますが、マスケット銃兵などが入る場合は大抵の場合戦陣の一列目あるいはハルバート(長柄斧槍兵)が一列目に敷いて敵騎兵の突撃を防がんとする場合は大抵二列目かちょっと小高い丘あるいは5〜10m下がった範囲でちょっと高いところに布陣します。そうすると味方の頭上から敵騎兵が味方戦陣の前列に突撃する前に近づいた段階で一斉射撃で狙撃することができ、かなり効果的に敵の突撃を潰せます。まぁこれが火縄銃とはいえ銃の威力というもので、一個一個の命中率の低さや装填時間の長さを考えても、数が揃えばかなり効率的に敵戦力を削ることができる、ということがお分かりいただけると思います。一方で、その火縄銃ことマスケット銃兵も二列か三列に敷いて例の三段構えではありませんが撃ったら交代、その間に装填を繰り返す戦法で、少なくとも戦っている間は切れ目なく敵の突撃に対して射撃を仕掛けることができます。弓弩の場合も、銃兵ほどではありませんが二列か三列の複数列に敷いていると考えるのが適当で、その点もやはり装填時間を稼ぐためだとかまとまって集団射撃した場合により密集した矢の雨を敵陣に降らすことができるとか、色々考えられますが、大なり小なり二列か三列に敷くというのは超重要な考え方で、特に戦場が狭まっている場合は、近世のマスケット銃兵は入っていないとは書きましたが、基本的に中世の装備であればまず複数列に陣を敷いたほうが効率よく戦え、ます。さて、そして近世のマスケット銃兵について、ですが当初はパイク兵あるいはハルバートとの併用が続いたものの、ある程度17世紀が過ぎるにあたって装填時間の短縮や銃の精度の向上などがあり、次第にマスケット銃兵中心の戦い方、になっていきます。そうした中次第に登場してきたのが、歩兵横隊、あるいは戦列歩兵というもので、こちらも銃兵が二列三列に敷いて一列の戦陣なのですが、マスケット銃兵中心で戦う以上それの戦陣あるいは戦列をより戦いやすく、より扱いやすく、より機動しやすく、より高い戦闘能力に改良していかなければならない中で、登場してきたもの、なのです〜。つまり二列か三列の歩兵横隊で一部隊、あるいは一個の戦陣として扱う、という考え方、ですが銃兵だけということで割と自由に形を変えて(といっても基本的には長方形の大きさが変わるだけで、四角には変わりはない、のですが)また指揮する方も非常に指揮しやすい(駒みたいに動かし、敵に近づいたら射撃し、弾が尽きたらあるいは頃合いを見計らって剣を抜き払って白兵で突撃する)兵種となったのでより大勢の兵力を同時に同じ戦場で指揮できるようになりました。まぁ、その背景には剣や甲冑を着た騎士あるいは兵士のようにさほど複雑な訓練は要りませんし、素人でも命知らずで敵の前に進み出て平然と銃を構え、そして撃ち、命令があれば剣を抜き払って突撃することができれば、剣の腕前が食い扶持の中世の歩兵や騎士とは違って簡単に前線で使える、というのも相まって徴用しやすかったから、というのもあります。もちろん徴兵という意味では中世の農民兵だって戦場では金きれ同然の農具を持たされて前線に立たされていたことには変わりはありませんが、それでも相手が騎士などであれば当然味方も騎士かそれに準ずる部隊が対処しますし、次第にメン・アット・アームズという職業軍人が出てきたのも事実です。そういう事実を勘案しても広く割と人材にこだわらずに命知らずを(いい意味が悪い意味でか)徴兵できたのがマスケット銃兵に完全に切り替わった近世からの軍制の特徴で、そういう意味ではまさしく消耗戦力(言い方は悪いですが)だったわけです。そのおかげで、というか欧州列強は広く植民地進出することもできましたし、欧州列強同士の戦争でも次第に犠牲者は増えていきました。数の犠牲は垣間見ずともただ兵になるものは増える、という構図でいわば人間が機械扱い、されていたのです。まぁ、戦い方としては同じパラダイムの第二次大戦よりはまだましだったかもしれませんが、それでもただ敵に向かって整然と行進させられて、近づいたら撃つ、の繰り返しではやはり無個性な戦い方と言わざるを得ず、結局のところ指揮しやすい=で同時に兵が死にやすい、ということでもありました。まぁ大量消費時代、というか大量無駄死に時代の象徴的な(?)兵種でもあるのですが、それはおいておいて一個の戦陣としては扱いやすくなった、のも事実で、そういう意味ではもう戦陣というよりは一部隊、あるいは一戦列と数えたほうがよく、また実際にも全体が一列の戦列で戦うこともまれではなかったので、そういう意味ではだんだんと戦闘が効率化する、ということはより一個人が無駄に死ぬ確率も高まった、ということもいえると思います。それはさておき、戦列歩兵が扱いやすくなったのも事実で、様々な地形でも割とそつなく対応できるようにもなり、特に北米の植民地では大きく活躍することとなりました。こうしたマスケット銃兵、戦列歩兵の場合は狭い地形の場合でも二列か三列までの戦陣にとどまることが多く、あまり層の厚い戦陣にするというよりは銃兵ですので味方が前にいる状態で射撃できませんからそれまでよりはなるべく広く広がるように布陣する場合が多かったと考えられます。また、銃の精度が上がって銃中心の装備になっていくにつれてマスケット銃兵の威力はより破壊的になっていきましたから、割と近くであれば一回の一斉射撃で敵戦列を壊滅させられる場合も多く、そこまで二列三列に戦陣を敷く意味も、中世ほどはさほどなかった、と考えられます。一方で、フランキングには弱かったわけですから、騎兵の存在意義もそこにありその騎兵の横からの一撃を防ぐ意味では、特に警戒行軍中など複数列に戦陣を敷いて陣の層を厚くする考え方もできた、わけです。要は剣と甲冑などで装備していて陣の薄いところが味方にとっては致命的だった中世の頃とは違って、近世になるとそれらを突く敵の横槍もあまりそこまで深入りするのが意味を為さなくなってきたこともあり結局のところ陣はだんだんと薄くなっていく傾向にあった、とも考えられるわけです。しかしながら不意打ちへの対策や攻撃の層を厚くすることだけを考えれば当然複数列の戦陣にすることも考えられるわけで(例えば波状攻撃を仕掛ける場合など)、そういう意味では複数列の戦陣にすることは数学的に見ても割と意味のあることではなかったのか、というようにも思えます。例え広く開けた場所での戦闘であっても、全体の戦列を一列に敷くよりはある程度何段かにしたほうがよほど効率よく戦えるので(あまり戦陣が広がり過ぎても今度は中央からの伝令というか命令が行き渡らなくなるため)兵は消耗品であることを考えるとやはり短時間のうちに決着がついたほうがいい、ということも考えると戦列を広げるよりも割と狭い範囲の前線に効率よく次の兵力を送り込むことが重要になっていくので、そういう意味では複数列の戦陣という考え方は非常に重要なものであったのではないか、というように思います。

このページへのコメント

面白いが確かに推敲したほうが良いね

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Posted by ビンゴ 2021年08月07日(土) 08:39:31 返信

陣形と戦術、の項のほうに軍事と方角、その四大元素などの相性についてコメント欄にいっぱいかいておいてたんで、もし興味あったらそっちもよろしく。

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Posted by  skywalker_laurence skywalker_laurence 2017年11月23日(木) 12:47:44 返信

ああ、すみません、コメントなどのおしらせメールをwikiによってわけているものですからながらくまったく気づきませんでした、ごめんなさい。いちおう、ページそのものがひじょうにながくなるので、あえてそうたいてきに改行はさけていたのですが、この文章の特質上文章そのものがくぎりにくいし、そのため改行もむずかしい、というのがありましたね。こんどからきをつけます。おそらく、きづいたうちでははじめてコメントされたかただとおもいます。ありがとうございます。掲示板のほうにひとことふたことのこしてくださると、今度からきづくのがはやくなるとおもいますので、よろしくです。

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Posted by すかいうぉーかー(かんりにん) 2017年11月23日(木) 00:33:09 返信

 こんにちは。
 非常におもしろくわかりやすい内容で感動しました。しかし、同じ段落内で文字が続くためけっこう読みにくいです。
 ちょっと提案なのですが、文章中に行替えをされてはいかがでしょうか。
 

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Posted by ウトバイヌ 2017年10月29日(日) 13:25:31 返信

このように、当wiki(seesaawiki)ではコメント欄の文字数がまともに議論するのには非常に少ない、のでもし議論・提起など文章が長くなる、という方は掲示板の方空いてますので絶賛そちらの方でよろしくお願い、致します。議論板は確か作ってあったと思いますし、なければ適当なところでも結構です。今更ですがこのwikiの仕様ではまともにひとつのコメント欄でコメントするというのは非常に難しい、のでまたがっても気にならない、という方はそのまま書き込んでいただいても結構ですし、面倒くさい、という方は前述の通り掲示板へお願いします〜。では、以後そういうことでよろしくお願いしますね〜。

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Posted by こんなん書いておいて何なんですが…… 2016年09月25日(日) 17:56:11 返信

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