今は亡き耳かきコリッの避難所

私はプロの耳掃除屋になった。
今のストレスあふれる社会で、
人を癒すものは多々あれど、
耳掃除ほど人を恍惚とさせるものはないだろう。

たとえば、歯垢は毎日とらなければならない、
しかし、耳垢は毎日とらなくても良いというのに、
気持ちいいから、つい取ってしまう。
歯の根元にこびりついた歯垢は気持ちの悪いものである。
それと同じように、耳の穴の表面にこびりついた耳垢も、
痒くて痒くて取りたくなるものだ。

ガサガサと乾燥した耳垢は耳の穴の中で膨張して邪魔になることがある。
また、ある程度湿った耳垢は汗を含んで耳の穴の表面に張り付き、
風呂あがりの時に、一段と痒さを増す。

…なんとかこの耳垢を気持ち良く取り除く方法はないだろうか?

私は新しい耳かきを開発した。
それは、銀で出来た超極細の耳かきだ。
先はスプーンのような形をしている。
手で持てる太さ(ボールペンくらい)の柄にくっつけて使う。
遠目で見れば、ペンの先に針が付いているようだ。

特殊な「手術器具にも似た耳かき」を使って、
耳垢を耳の穴の中から掻き出すのだ…

私の前には椅子に横向きで寝かされている客がいる。
客の耳たぶは、器具で固定され押さえつけられているので、
耳の穴が間近に覗き込める。
小型ライトを耳の穴に当てると、たくさんの耳垢がごっそりと見える。
部屋にはかすかな香りがしている。

私が耳の中に耳かきを差し込むと、ヒヤリと冷たい感触がしたのか
客は「ヒッ」と一瞬身震いした。
だが、カリカリコリコリと掻き出していると、
それは快感の身震いに変わってゆくだろう。

「気持ちイイでしょう?お客様」
「イエ、これ程度ではまだまだ。」
客は相当、耳掃除を「し慣れて」いるようだ。
しかし私の手にかかれば、どんな客でも恍惚とさせる自信がある。
ふふ、いくら強がっていてももだえ喜ぶのだ!

「…なんですか?」と、客。
「いや、なんでもないです。続きをしましょう。」
さっきは、耳の穴の手前をくすぐった程度だ。
これからが本番だ。

コリコリコリコリ..
まず、耳穴の入口の毛の上から。
コリコリコリコリコリ...フケのような垢が出てくる。
耳かきの先端の部分が小さいので、
毛の根元の皮膚をコリコリとするという感じだ。
コリコリコリコリ...毛穴に詰まっていた僅かな脂肪分が
小さな塊となって出てくる。

次は、一番垢が溜まっている部分だ。
ここは耳穴の入口付近、一帯だ。
ポロッ、早速大きな耳垢が転がり落ちた。
コリコリコリコリコリコリコリカリカリカリカリカリカリ...
層のように重なりあっているから、何回ほじくっても出てくる。
水分を適度に含む耳垢が、何個も何個も……
カリッ! やっと皮膚にたどりついたようだ。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリ..皮膚を細かく耳かきで掻く。
コリコリコリコリコリコリコリコリ...

一番奥の部分に挑む。
ここは一歩間違えば鼓膜を傷つけかねない危険な部分だ。
ガリッ、とてつもない大きな硬い塊があるようだ。
大きな塊が皮膚に吸着している部分を狙った。
コリッコリッコリッコリッ..少しずつ…塊と皮膚をつなぐ部分を離していく。
ボロッ、とれた!

「お客様?」…ヨダレ、垂れてますよ。

このページへのコメント

このキャラ好きだなぁ…

耳垢以外にも脂肪分が取れるなんて良いなぁ…

Posted by 風継 2012年12月19日(水) 15:44:42

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