まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

649 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/07(水) 08:12:13.22 0

ダンスレッスンが終わったのと、携帯電話が震えたのは同時くらいだった。
振動のパターンで発信者が誰であるかを察し、桃子は急ぎ廊下へと走り出た。

「もしもし?」
「おー、出た出た」

電話の向こうから届いたお疲れ、と労う声が、柔らかく心地よく耳に触れる。
にやけそうになる頬を手で覆いながら、桃子はありがと、と返事をした。

「で、どうしたの、みーやん」
「ケチャップ、そろそろ切れそうでさ」

そこで途切れた言葉の合間に、息を継いだ気配がした。
そのわざとらしさに苦笑しながら、桃子は雅が待っているであろう言葉を口にする。

「……買って帰れって?」
「そういうこと」

お願いしてもいい?と許可を求めるような体裁を装いながら、一方で桃子には頷く以外に方法がない。
だったら最初からそう言えばいいのに、と桃子の中でじわりと悪戯な感情が沸き起こった。

「どうしよっかなー、今日疲れてるしなー」

別に、ケチャップくらい買って帰ることはやぶさかでない。
ただ、少しだけからかってみようと思っただけ。
だがそれも、続く雅の一言で、一瞬にしてひっくり返された。

「えー、せっかくももちゃんの好きなオムライス作ってるのになぁ?」
「へっ?」

桃子の脳内で、ふんわりとした卵に覆われたシンプルなオムライスが踊り始める。

「でも、ももちゃんがいらないっていうならいいよ? チキンライス分くらいは」
「か、買って帰るっ」

650 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/07(水) 08:13:44.58 0

からかうような雅の語尾を待たず、桃子は急いでそう答えていた。
ケチャップのかかってないオムライスなんて、もみの木だけのクリスマスツリー、ロウソクのないバースデーケーキ。
なくてはならないわけではなくとも、なければないで寂しすぎる。

「ありがとっ! よろしくー」

こうなることまで想像していたかのように、雅の声には余裕が滲んでいた。
少々悔しさも覚えたが、ここは負けを認めざるを得ない。

「はいはい、分かりましたよーだ」
「はは、ももちゃん唇尖ってるでしょ」
「と、尖ってないもん」

誰に見られているわけでもないのに、桃子は思わず口元を隠していた。

「ほ、他には? 何か切れてるものあったっけ?」
「んー、たぶん大丈夫。それよりさ」

——早く帰って来てほしいなぁ?

寝床の上で愛の言葉を囁くような真剣さで、少し低くなった声が体の末端にまで及ぶ。
受話口を耳元に当てているせいで、それはいつもよりもはっきりと近い距離で聞こえた。
今度こそ本当に完敗だ、とくとくと走り始める心臓がそれを物語っていた。

「ももー? おーい、大丈夫?」
「……大丈夫、だけど」

ずるくない?なんて言ってしまえば、自分がどんな状態か雅に伝えるようなものだった。
分かったから、切るよ?と言った後、耳に届いた自分の声はひどく慌てているように響いた。

「……もー、敵わないなあ」

廊下の空気にひんやりと頬を撫でられて、ようやく自分の熱を自覚する。
ケチャップを手にいれて、早く家に帰ろう。
レッスン室に戻りかけて、桃子はふと動きを止めた。
あまりにもひっそりとした空気に、直感が不自然だと告げる。
ドアノブに手をかけたところで、桃子はその不自然さのわけを理解した。
完全に閉まり切っていなかったドアと、隙間から溢れる蛍光灯の明るさ。
もうレッスンは終わっていたし、解散の号令もかけたはずだった。
だが、電話の最中に帰宅する後輩の姿を少しでも一瞥しただろうか。
答えは、否だ。

やらかした。

耳の奥で、一斉にセミか何かが鳴き出したようだった。
きっと扉の向こうにはまだ後輩たちが居残っているだろう。
面倒なことになりそう、と深い深いため息を吐きながら、桃子はドアノブに改めて手をかけた。

このページへのコメント

2人とも可愛すぎます。ニヤニヤが止まりませんでした。みやもも最高です。

Posted by スイッチ 2017年08月12日(土) 01:28:16

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