まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

151 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/04(日) 20:43:00.79 0

ハウスキーパー雅ちゃん〈5〉

「ももが『最終兵器』だって千奈美が言ったんだけど」
雅がそう言うと、モモは頭を抱えてテーブルに突っ伏した。「千奈美……あの子は……」

「宇宙と戦争になるんだよ!」と千奈美は興奮しながら言った。
「え何言ってんのかよくわかんないんだけど」
「ももは宇宙人にトドメを刺す係なんだよね」
「……どういう戦争なの」
「でも宇宙人にバレたらまずいじゃん。あと他の国も対策練ってるからももの存在がバレて抜け駆けされたら困るわけ。手柄取りたい一部のエライ人たちがももを匿ってんの」
「えっと……ももの記憶ってその宇宙戦争に関わってるの?」
「記憶?それは知らない」と千奈美は言った。

「あの子の言うこと真に受けないで……」モモは弱々しい声で言った。
「いくらなんでもだよね……。違うの、なんか危ない子雇ってんのかなとちょっと心配になっちゃって」
「危ないっていうか……」モモは頭をカリカリと掻いた。
「ごめん、機密とか言われると気になっちゃって、つい千奈美に聞いたりしたのは謝る」
「まあそりゃみーやんが気になるのはわかる。でも千奈美に聞くってのが、想定外だったわ」よく見ると、モモは笑いを堪えていた。「千奈美面白いなぁ」と呟くのが聞こえた。
「宇宙人っているのかな」
「いないよ」
「やっぱいないよね」
「何が在ってもおかしくはないけどね。もし宇宙人がいて、もし地球を侵略しよう!なんて考えてて、もし本気で戦争なんて仕掛けてきたら、太刀打ちなんかできやしないよ」
「こわ」
「草刈り機で一瞬で雑草刈るみたいに、根こそぎやられておしまいだよ」
とモモは言った。
「……どこまでほんとなの」
「何が。いいよ、機密以外ならなぁんでも答えてあげる」
「車道にセキュリティかかってるって」
「ほんと。でも出て行く分には関係ないよ、あのさ、もう帰りたいっていうなら、その時はそう言っていいんだよ。日割りで報酬も払うし、円満に契約解除だよ」
雅の胸が痛んだ。そんな簡単に契約解除なんて言って欲しくなかった。
「私に帰って欲しいの」
勝手に口から滑り出ている。言葉にしてから、何を言ってるんだろうと雅は思った。これではまるでただ拗ねているだけみたいだ。
「みーやんには居て欲しいよ。とても新鮮。新しいものをくれる」
モモは立ち上がると「そろそろ寝よう」と言った。

二階まで上がってくると、モモは立ち止まり、振り返った。
「まあさには全部内緒ね」
「うん」
「みーやんが機密を知りたがったことも、千奈美の囈言もね」
モモは手を伸ばすと、雅の頬に触れた。雅はドキッとして動けなくなった。空気の色が変わって、何か逃げ出せないものに取り巻かれたような気がした。

152 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/04(日) 20:48:38.06 0

家事も慣れてくれば緊張感も薄れ、効率よくこなせるようになってきた。その分空き時間が増える。
モモは遊びに誘うと出てくるようになった。距離を置いておきたいという理性は、モモの顔を見るとすぐに飛んでいってしまう。

誘われたカードゲームは雅が負け続けた。雅が凹むほどにモモはテンションが上がり「みーやんとカードするのがこんなに楽しいなんて知らなかった」などと言ったので雅はカードを投げつけた。
カラオケしよう、とモモがマイクを持ってきたのには吃驚した。
雅もそこそこ自信はあったが意外やモモも歌が上手くて「歌手になれんじゃない」と言ったら「みーやんプロになったらいいのに」と言われ、ふたりで「バカにしてんの?」と言い合った。
雨の日に「宇宙人侵略祭り」とモモが銘打った映画鑑賞大会は、家事を一切サボって行われた。ポップコーンとフライドポテトを大量に作り
サイダーを飲みながら何本ものSF映画を延々と見続け最後は寝落ちした。モモの寝顔を初めて見た。

外界と切り離された平穏な生活。まるで夢のような日々。長いと思っていた一ヶ月は既に半分を過ぎていた。
「社会復帰できるかわからなくなってきた」アイスティーを飲みながら雅は言った。シアタールームのソファ。ふたり並んで音楽を聴いていた。
「言ってもなんだかんだ、規則正しく家事やってるじゃん。みーやんなら大丈夫だよ」
「気分の問題」
「なるほど。みーやんみたいな子はもっと都会を恋しがるかと思ったよ」
「恋しくないわけじゃないけど」
「戻ったら次の仕事探すの?何するの?」
「アパレルはもういいかな。家事向いてるって思ってきたから流れでサービス業もありかも」
心を通さなければ、いくらでも嘯けた。この日々がいずれ終わるという事実に目を背けながら、言葉を上滑りさせた。

「恋愛もしたいなあ」そう言ったらモモが食いついてきた。
「みーやんってどんな人がタイプなの」なんだその顔は。と雅は思った。ウズウズしている。
そうか、あったとしても恋愛の記憶など一切ないわけだ。きりっとしていれば大人の女性の佇まいなのに、中身は恋に恋する乙女なのかな。そう思ったら無性に可愛くなった。
「タイプかぁ……やっぱ優しい人じゃないとダメ」
「そう?冷たくされて萌えるとかないんだ」
「冷たくされたら悲しいし」
「わかった。じゃあ優しくするよ」
「……」
モモの顔が間近にあって引いた。「その顔なに」モモがクスクス笑う。からかってきているのだ。
「やめてほんと、びっくりするし」顔を逸らして崩れた体勢を立て直そうと、雅はテーブルに手をついて起き上がろうとしたが、目測を誤ってその手が抜けた。慌てて体を返したが間に合わない。
モモの手が咄嗟に伸びてきて、テーブルにぶつかりそうになった雅の頭を庇う。そのまま抱き合うようにソファの下に擂り落ちた。
息を呑むような音「怪我なんてさせない」そう聞こえた。
瞑っていた目をそっと開けると、至近距離にモモの目があった。その色に戸惑った。モモは躊躇うような吐息の後、雅の唇にキスしてきた。宇宙人より信じられない、と雅は思った。

188 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/04(日) 23:19:42.25 0

唇を離すとモモは欲情に濡れた目でじっと雅を見下ろしてきた。雅は完全に怖気付いていた。再びモモの顔が近づいてきた時、雅は思わず手を出し、キスできないようにモモの鼻から下をすっぽりと覆った。
モモは眉根をピクと動かし、目を細めた。
雅は野生動物を宥めるような気持ちで、その姿勢のまま時間が過ぎ行くのを待った。
思ったよりすぐに、モモの目からは力がなくなり、視線が横に逸れた。雅はそっとモモの口許を覆っていた手をはずした。
「キスくらいいいじゃん」とモモは言った。
「よ……よくはないよね」
「私のこと好きな癖に」
雅は返事に詰まった。モモに対して持て余している感情は確かにあった。あった筈だが、キスされた瞬間の〈イケナイ匂い〉による危険信号はそれまでの淡い想いを粉砕するだけの力があった。
溺れるのが、怖い。

モモは立ち上がると「ごめんねみーやん」と、それだけ言って、シアタールームを出て行った。雅は暫くそのまま動けなかった。
やがて、漸く体を起こすと、雅は自分の唇に触れた。拒否したことでモモを傷つけていませんように、と雅は願った。それ以上の自身の傷には気付かなかった。

翌朝、いつも通りにダイニングに現れ、欠伸を噛み殺しながら「おはよう」とモモが言った時、雅は泣きそうになった。どうしてこみ上げてくるのかわからなかった。
「おはよう」
「朝ご飯なあに」
「おかゆ炊いたのとお魚とお味噌汁」
「なんでおかゆ」
「優しいのが食べたいかと思って」雅がそう言うと
「仕事が大詰めで、少し緊張してるかもしれない」とモモは珍しく言い訳めいたことを言い、ダイニングの椅子に腰掛けた。

そういえば、ここのところモモは籠りがちだった。雅が呼べば出てきていたが、それ以外で見かけることが少なかった。
モモの仕事のことはまるでわからなかったが、その所為で少し興奮気味だったのかと雅は自分の気持ちを落ち着けた。モモが「いただきまーす」と言って、穏やかに朝食は始まった。

〈6〉へ続く

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