814名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/12(火) 01:28:46.140
降りて来た穴を必死で登り、私たちはポッドへと戻った(落とされた時には気がつかなかったが、穴の内壁には細い金属棒のハシゴがついていた)。
時折窓から差し込むサーチライトを警戒し、二人とも床に座りこんでいる。
「ダメだ、ジャミングかけられてる」
いつもの電子ペーパーをキッチンの引き出しから取り出し、それを触りながらみやがひとりごちる。
「ねぇ、これからどうするの?」
「とりあえず移動する。アテがあるの。そこならネットが使えるはずだから」
「……ここに隠れてちゃダメ?」
「船に近過ぎる。熱探査かけられたら一発で見つかっちゃう」
みやはそう言って首を振った。
816名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/12(火) 01:31:10.810
この日の彼女は金髪に近い茶色の長い髪の毛をサイドでポニーテールにしていた。私はその軽い毛先が浮き出た鎖骨の上をさらさらと流れるのを見ながら、黙って頷いた。
と、突然みやは電子ペーパーを脇に置き、無造作に服を脱ぎ始めた。薄ピンクのノースリーブニットとブルージーンズを景気良く脱ぎ捨て、下着姿になったところで、ずい、とこちらへ身を乗り出して来た。
「わ、な、なに」
後ずさりした私の後頭部はシンクの下の扉へとぶつかった。
もう逃げ場がない。
818名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/12(火) 01:33:04.460
しかし、伸びて来たみやの右腕は私の顔の横を通り過ぎ、蒸し器が入っている扉をパン、と開いた。
その奥から取り出されたのは、目の覚めるような真っ赤な色をした全身スーツだった。
みやは手慣れた様子でそれを身につけ、同時に取り出した黒いロングブーツに両足を差し込んだ。右足首、左足首、うなじ部分にそれぞれついているボタンを押しこみ、身体にフィットさせる。
キュ、キュ、と関節の動きを確かめたみやは、さらにその奥から金属製の四角いバックパックを取り出し、頷いた。
「よし、行こう」
819名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/12(火) 01:37:07.400
再びシェルターへ降り(もちろん今度はハシゴを使って降りた)、あたりを警戒しながら崩れた瓦礫を伝って地上へと顔を出す。途端、サーチライトに照らされ私たちは頭を引っ込めた。
「大丈夫」
そう言ってみやが顔を出したのを見て、私も恐る恐る顔の上半分を出した。
それはまるでそびえ立つビルのようだった。
みやが「船」と呼んだ宇宙船は無数の四角い窓がついていて、そこから同じように黄色い光を放っていた。私たちのポッドは真っ白だが、「船」は薄汚れて錆のきた古い鉄板をいくつもいくつも重ねて作られているようだった。
何より、地面をつたって響いてくるエンジン音が、あれが「船」であることを証明していた。
呆気にとられている私の左手を、みやがつかむ。そして、目を合わせて頷きあった私たちは「船」に背を向け、走り出した。
降りて来た穴を必死で登り、私たちはポッドへと戻った(落とされた時には気がつかなかったが、穴の内壁には細い金属棒のハシゴがついていた)。
時折窓から差し込むサーチライトを警戒し、二人とも床に座りこんでいる。
「ダメだ、ジャミングかけられてる」
いつもの電子ペーパーをキッチンの引き出しから取り出し、それを触りながらみやがひとりごちる。
「ねぇ、これからどうするの?」
「とりあえず移動する。アテがあるの。そこならネットが使えるはずだから」
「……ここに隠れてちゃダメ?」
「船に近過ぎる。熱探査かけられたら一発で見つかっちゃう」
みやはそう言って首を振った。
816名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/12(火) 01:31:10.810
この日の彼女は金髪に近い茶色の長い髪の毛をサイドでポニーテールにしていた。私はその軽い毛先が浮き出た鎖骨の上をさらさらと流れるのを見ながら、黙って頷いた。
と、突然みやは電子ペーパーを脇に置き、無造作に服を脱ぎ始めた。薄ピンクのノースリーブニットとブルージーンズを景気良く脱ぎ捨て、下着姿になったところで、ずい、とこちらへ身を乗り出して来た。
「わ、な、なに」
後ずさりした私の後頭部はシンクの下の扉へとぶつかった。
もう逃げ場がない。
818名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/12(火) 01:33:04.460
しかし、伸びて来たみやの右腕は私の顔の横を通り過ぎ、蒸し器が入っている扉をパン、と開いた。
その奥から取り出されたのは、目の覚めるような真っ赤な色をした全身スーツだった。
みやは手慣れた様子でそれを身につけ、同時に取り出した黒いロングブーツに両足を差し込んだ。右足首、左足首、うなじ部分にそれぞれついているボタンを押しこみ、身体にフィットさせる。
キュ、キュ、と関節の動きを確かめたみやは、さらにその奥から金属製の四角いバックパックを取り出し、頷いた。
「よし、行こう」
819名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/12(火) 01:37:07.400
再びシェルターへ降り(もちろん今度はハシゴを使って降りた)、あたりを警戒しながら崩れた瓦礫を伝って地上へと顔を出す。途端、サーチライトに照らされ私たちは頭を引っ込めた。
「大丈夫」
そう言ってみやが顔を出したのを見て、私も恐る恐る顔の上半分を出した。
それはまるでそびえ立つビルのようだった。
みやが「船」と呼んだ宇宙船は無数の四角い窓がついていて、そこから同じように黄色い光を放っていた。私たちのポッドは真っ白だが、「船」は薄汚れて錆のきた古い鉄板をいくつもいくつも重ねて作られているようだった。
何より、地面をつたって響いてくるエンジン音が、あれが「船」であることを証明していた。
呆気にとられている私の左手を、みやがつかむ。そして、目を合わせて頷きあった私たちは「船」に背を向け、走り出した。
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