まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

224名無し募集中。。。2018/04/01(日) 21:59:51.370

「あっそういえば引っ越すから」

朝食の途中、思い出したように急に桃子に言われたその言葉が理解できなくて手が止まった。

「はっ?」
「いいところあってさ。ここなんだけど」

立ち上がって引き出しから一枚の紙切れを出して見せてくる。
その間取りと家賃はどこか見覚えのある。
はいっと紙を渡されてすぐに気づいた。

「てっこれ隣の部屋?」
「そう」
「だっ…」

たらここにいればいいじゃん
そう言いかけてすんでのところで飲み込んだ。

「いつ?」
「明日?」
「早くない?」
「えーみや寂しいのぉ?」
「もーうざい」

にやにやと迫ってくる桃子を押しのける。

「…引っ越し手伝おうか?」
「いいよ、荷物少ししかないし」
「そっか」

聞きたいことはいっぱいあるけれど素直にそれを口にできない。
口を開けばそれらが出てきそうで結果、沈黙してしまう。
まるで喧嘩をした時のような静かな食卓。

「みや、時間大丈夫?」

その声に時計を見ると遅刻寸前。

「やばっ。ごめんももあとよろしく」

はーいと気の抜けた声。
ざっと身支度を整えて外に駆け出す。
微かにいってらっしゃいという桃子の声が聞こえた。

225名無し募集中。。。2018/04/01(日) 22:01:20.640

「今日どうしたの?」

昼休憩、珍しく一緒に外に出てきた同僚が席に着くと同時に聞いてきた。

「何が?」
「朝からずっと様子おかしいからさ」

だからかと納得した。
学生時代からの友人でもあるこの同僚はこういう時は絶対に気付く。

「居候が急に引っ越すって」
「幼馴染だっけ?」
「そう、今朝急に。昔からわけわかんないけど今回のはほんとに意味わかんない。だって隣だよ引っ越すの」
「みやそれたぶん嘘だよ」

ほらっと携帯のカレンダーを見せてくる。

「今日4月1日」
「…エイプリルフール?」

すっかり忘れていた。
そういえば桃子が気づいた年だけは昔からしょうもない嘘をつかれていた。
一番直近では一昨年。
あの時は定番すぎてすぐにわかった。
でも考えてみれば引っ越しも定番ネタ。
ぐしゃぐしゃだった頭がスッキリした。

帰宅してすぐに桃子を捕まえる。

「引っ越すのって嘘でしょ?」

へっとポカンとした顔。

「朝、言ってたやつ。今日エイプリルフールってすっかり忘れてたし」

少しの沈黙の後、ようやく思い出したようで納得したかのような表情を見せた。

「あああれね」
「忘れてたの?」
「ごめんごめん」
「本気にしちゃったじゃん」

この時になぜ気づかなかったのだろう。
桃子が肯定も否定もしていない事に。
翌日、帰宅すると本当に桃子は姿を消していた。

236名無し募集中。。。2018/04/02(月) 02:31:42.710

空っぽの部屋に呆然と立ち尽くしたのはどれくらいだったか。
気づいて携帯に電話をしても返ってくるのは無機質な音声だけ。
まさかと時間のことも忘れて隣のインターホンを鳴らすと出てきたのは少し年上の女性だった。

「すみません、間違えました」

反射的にそう言い、すぐに部屋に戻ろうとした背中に声がかかる。

「待って雅ちゃん、ももちゃんのことでしょ?」
「なんで知って…」
「まあとりあえず入って」

招かれるまま見知らぬ女性の部屋にお邪魔する。
引っ越してきたばかりなのか部屋の中はダンボールだらけ。
どうぞと勧められソファに座った。

「ごめんね、まだ引っ越してきたばかりでこんなので悪いけど」

女性は冷蔵庫から出してきたペットボトルのお茶を一つ渡してくるとそのまま横にどさりと座った。

「で、ももちゃんのことなんだけど結論から言うとどこかに引っ越したの」
「どこかって?」
「さあ?私は聞いてないの。ここに住んでる事にしてって頼まれたからたぶんおばさん達も知らないよ」
「なんでそんな…」
「自分を見つめ直すためとか言ってたけどほんとももちゃんはわかんないわ。困った子だよね」
「なにそれ…」

本当に意味がわからない。
見つめ直すって何を?
そんな曖昧な理由で引っ越しなんて。
ヒモ同然の暮らしだったくせに。
怒りがフツフツとわいてきた。

「ももの連絡先知りませんか?」
「知らないの?」

心底不思議そうな顔をされる。
ちょっと待ってと携帯を鞄から取り出した女性はアドレス帳を開き画面を見せてくれた。
そこに表示されているのは自分が知っているのと同じ番号。

237名無し募集中。。。2018/04/02(月) 02:33:38.480

「もも、携帯解約したみたいでこれ以外知りませんか?」
「あの子そこまでしたの?ごめんね」

その言い方になんだかよくわからない苛立ちを感じる。
そういえばこの人は一体何者なのか今更ながらに聞いていない事に気づいた。

「あの、ももとはどういう関係なんですか?」

つい棘のある口調で問うてしまう。

「えっ?うっそ覚えてないの?うわぁ結構ショックかも」

本当にショックを受けている様子の女性に申し訳なくなる。
おそらく知り合い。
全然記憶にない。

「小さい頃よくももちゃんと一緒に雅ちゃんとも遊んだんだけどなぁ」

少しいじけた女性の顔をマジマジと見つめる。
何か特徴をと見て口の下の方を見て気づいた。

「…おねえちゃん?」

うっすらぼんやり蘇った。
桃子の従姉妹だ。

「よかったぁ思い出しくれて」
「なんでここに?」
「ももちゃんに頼まれて。ここら辺に引っ越す予定だったから了承したんだけどね。一昨日になって急にエイプリルフールのネタじゃなくて引っ越すって言い出したの。何かあったの?」

数日前、一本の電話の後に急に部屋に篭って出てこない日があった。
あの電話が原因?
だとしても僅か数日でなんて部屋は借りれない。
嫌な考えが頭をよぎる。

「もも一人で暮らすんですか?」
「それは聞いてないからわからないの」

そう言って苦い表情。
思い出すのは四年前のエイプリルフール。
あれがもし本当だったら?
一昨年のエイプリルフールも。
だとしたらー

257名無し募集中。。。2018/04/02(月) 22:12:39.310

挨拶もろくにできず戻った自室。
いくら考えても答えに近づけない。
それ程に判断材料を持っていなかった。
普段何をしていたかも職業も人間関係も全く知らない。
ただこれまでの行動から嫌な推察だけはできた。
大学進学を理由に家を出た桃子。
桃子が実家を出てから三年間は嘘みたいに全く何も交流がなかった。
それが再びそれまでと同じくらい一緒に過ごすようになったのは四年前の4月1日。
就職をきっかけに一人暮らしを始めてすぐの事。
鞄一つでうちに転がり込んできた桃子。
彼女と暮らせなくなったから住ませてと言って現れた。
笑いながら明るくそう告げる桃子にエイプリルフールの嘘かと結論づけた。
それに桃子の荷物の少なさが余計にそう思わせた。
結果、泊まりに来ただけだと判断して泊めたのが始まりだった。

三年前の4月1日、いつ見ても家にいる桃子に働けといえば在宅ワーカーだと答えられた。
じゃあ家賃払ってと言えば今はないんだよねなんて。
やっぱり無職なんじゃんって言うと夢追い人ですって。
夢が叶うまでの間は養ってよってふざけた事を言う桃子にふざけんなって返しながら内心少し喜んでいた。

二年前の4月1日、珍しく朝帰りしたかと思うと帰宅して早々に彼女ができたと言う桃子。
既に何通か友人から恋人できましたと定番のエイプリルフールネタをもらっていたせいでこいつもかなんて思いつつ少し疑問に思った事を聞いてみた。
彼氏じゃなくてと聞き返すと意外にも真面目な表情で元カノによりを戻そうと迫られたと。
一瞬、本当の事かとドキッとした。
けれどそういえば最初の年も彼女になんて言ってたなと思い出した。
だからなんでいつもネタは彼女なのとすぐ嘘ってわかるよと笑った。
それに薄く笑って何も答えない桃子に半分冗談でももって女が好きなのって聞いたら意地悪く笑ってキスされた。
それも唇に。
呆気にとられているともう一度重なった唇。
そこから始まった曖昧な関係。
始めは軽い触れ合いがいつの間にかベッドを共にするようになっていた。
だから余計に彼女ができたなんて嘘だったと確信した。

259名無し募集中。。。2018/04/02(月) 22:13:57.890

一年前の4月1日、一日中桃子とベッドで過ごした夕方。
冗談にも聞こえるように付き合ってと言ってみた。
どこになんて返された。
はぐらかされたと思ったのは一瞬。
はぐらかすも何も一片たりとも交際を考えていないのが伝わってきた。
痛む心を押さえ込んで笑ってエイプリルフールだってというとやっとそういう事かと納得顔をされた。

それからも変わらず続いた曖昧な関係。
それでも一年前のあの日から同じベッドで過ごす時間は格段に減っていた。
仕事が忙しいせいかと思っていたけれど二年前のあれが本当だったら。
ただ煩わしくなった?
それにあの電話がその彼女だとしたら。
四年前暮らせなくなったとしか言ってなかった。
その時の彼女が二年前の彼女だとしたら。
ただ出て行っただけ。
ただたまたま4月1日だっただけでいつも桃子は嘘なんて言ってなかったとしたら。
引っ越すと確かに桃子は言っていた。
ただ隣というのが嘘だっただけで。
でもだとしたらおねえちゃんの言っていた事とは矛盾する。
それとも今年だけは去年の仕返しにエイプリルフールの嘘をついてみたとか。
結局は何もわからない。
桃子から接触してくれないかぎり何も知りようがない。
ただ性格上、自分を見つめ直すとやらが終わらないかぎり会えない事だけは確実だった。

260名無し募集中。。。2018/04/02(月) 22:15:00.110

そしてまた4月1日。
結局音信不通のまま一年が過ぎた。
おねえちゃんにも連絡はなかった。
もしかしてと桃子と共通の友人に連絡してみても何もつかめなかった。
モヤモヤイライラする日々。
休日だからとおねえちゃんに誘われて飲み明かした昨日の夜。
少し動くのも面倒に感じる程に飲んで泊まればという言葉に甘えた。
僅か数歩の距離を歩いて部屋に入る。

「おかえりー」

聞こえてきた声に思考が停止する。

「久しぶり?ただいま?」

あれ?どれが正解なんて呟く桃子の肩を掴む。

「もも!」

言いたいことは聞きたいことはいっぱいあるはずなのに全部がいっぺんに絡まって出てこない。

「ーっ、あーもーわけわかんないし」
「まぁ落ち着きなって」

やれやれと言わんばかりの態度をとる桃子にイラッとする。

「はぁ?」
「おーこわい。さすが元ヤン」
「それ嫌だって前から言ってるでしょ」

何食わぬ顔でいつものようにからかってくる桃子に少し落ち着きを取り戻す。

「とりあえず座りなよ」

ここみやの家だしと言いそうになるのをぐっと堪える。

「 何から聞きたい?今ならなんでも答えるよ」
「嘘じゃなくて?」
「もう午後だからね」

そう言って笑う桃子。

262名無し募集中。。。2018/04/02(月) 22:16:32.380

「じゃあ五年前うちに来た時から今までの事、全部話して」
「全部って難しい」
「今、なんでも答えるって言ったくせに」
「うーんそれはそうなんだけど…まあ聞きたい事あったらその都度聞いて」

大学二年の時から付き合ってた彼女がいたんだけどねその彼女が年上で同棲してた。
でも大学四年になる春休み急に彼女が理由も言わず一緒に暮らせなくなったって言い出して一週間後には住んでた家を引き払っちゃって住むとこ無くなって。
自分で全部どうにかするからって一人暮らし始めたから実家にも帰れなくてその時、みやの事思い出した。
泊めてくれたらラッキーくらいの気持ちだったんだけど住ませてくれて。
おかげでお金が浮いて助かったよ。
授業料は奨学金があるからどうにかなったけど教科書代とか実習費とか生活費とかどうしようかと思ってたから。

「えっもも大学行ってたの?」
「何それひどい」
「いつも家にいたじゃん」
「四年はほとんど行く必要ないから。それに行くのもちょうどみやが仕事行ってる間の時間だったしね」

話戻すね。
で、夏休み頃だったかな。
また彼女ができたんだけどなんか面倒ですぐ別れちゃったんだよね。
それでまあその後は何事もなく無事卒業はできたんだけど就職が決まってた会社が入社式の前日に倒産しちゃって。
また就活かって思ってたんだけどそこで学生の時なんとなく出した小説が賞にかかったって連絡がきて。
これだって思って小説書き始めたのが四年前。
まあ全然売れなくて参ったけど。
それでも発見されちゃて少しだけ付き合った彼女に。
それで小説のネタにならないかなってちょくちょく会うようになったらまた告白されて。
いつまでもみやのとこに居候してるのも悪いなと思って了承したけどまあみやとあんなことになって。
それでまたすぐ別れたんだけど。

263名無し募集中。。。2018/04/02(月) 22:17:21.840
三年前さみやが付き合ってって言ったでしょ。
そのあとエイプリルフールって言われて付き合ってなかったの?って思って。
私は付き合ってるつもりだったからよくわかんなくなって。
でもよく考えたら好きともなんとも言ってなかったなって気づいて。
確かめるのも怖くて。
それでみやがどう反応するか見たくて去年のエイプリルフール計画立てたんだけど。
その時に書いてた小説が重版かかって。
それでまあ一年ホテルに缶詰になってました。

「以上終わりです」
「最後よくわかんない。だから去年何がどうしたかったの。おねえちゃんに自分を見つめ直すためとか聞いたけどあれは?」
「引っ越したフリしてみやがどう反応するか知りたかったのが最初。だけど直前に重版のお知らせがきて続編書く事になったから逃げました。見つめ直すっていうのは適当な言い訳です」
「はぁ?」

逃げる意味が全く理解できない。

「だってただのセフレだと思われてたら続き書けなくなるし」
「なんで?ってかみやがそういうの嫌いって知ってるでしょ」
「高校卒業した時と雰囲気変わってたじゃん。だからちょっと不安で」
「なにそれ。信じらんない。で続き書けなくなる理由は」
「これの元ネタにしてたから」

おずおずと差し出された二冊の本。
パラパラと流し読むと少し変えてあるけれど確かにそれは自分達の事で。
パタンと本を閉じ桃子に向き直る。

「これの主人公がももってことでいいの?」

神妙な表情で頷く桃子。
これを読むかぎり自分も幼馴染のくせに桃子の事、忘れてたなと少しの後悔。
一つため息を吐くと桃子が少し萎縮するのがわかった。
そんな桃子に二年前と同じ言葉を投げかける。

「ねぇ付き合ってくれる?」
「嘘じゃなくて?」
「午後はもう嘘ついちゃダメなんでしょ」

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