まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

92名無し募集中。。。2018/01/01(月) 03:50:01.870

知らなかった。涙ってこんなにもキリがないのか。
確かな温かい体があった。その肩に頬を擦り付けていると後から後から熱い涙が溢れ出してきて
ももは、胸の奥から沸き出すそのまんまに、みやの肩に嗚咽を落とした。

あの時、パウダールームでやなみんに会った。
タオルを持ってきたやなみんは、声を潜め、何をして欲しいか訊いてきたのだ。
着ていた服一式、みやのスニーカーも含め、探してきて欲しいと頼んだ。
そして、みやを送り届けたと聞いたときに
みやが無事だとわかったときに
ももは、泣いた。どうして涙が頬を伝ったのか、わからなかった。

「私たちのことはどうぞ、ご心配なく」と、やなみんは言った。
「この度のことは梨沙ちゃん参謀による計画であり、お母さんを救い出すため
まずは城主の本当の小性を小部屋に閉じ込め私が成り代わろうとしたわけなんですが
思いっきり通りすがりに見咎められてしまいまして。
どうしようかと焦ったのですが、協力していただけました。その、茉麻さんに」

最新版の召還アプリをインストールしてから、得意げにパウダールームを出ていくやなみんの
その上気した微笑みは知っていた頃より随分大人びて
あの子たちは大丈夫。そう思ったらまた涙が出てきて
ももは混乱した。
らしくない。

愛って、悪魔が弄ぶための、ニンゲンの大いなる勘違いなんだよ。
じゃあ、今、ここにあるものは何だろう。
知らず知らす、ももの指先は首の下を叩いていた。

ももにだって感情はある。その感情には正直にずっとやってきた。
思うままに生きていればよくて、悪魔らしくあろうなんて、考えてみたこともなかった。
そんなこと考えなくたって、ももは悪魔なんだから。
なのに今、らしくない。そう思う。取り乱してるのはわかってる。
こんな涙を、知ってしまった。いや

悪くはないだろう。そうももは思った。

ありがとう。
らしくなくても、いいのかな。

そしたらもう、みやのことだけ、考えててもいい?

背中に、みやの手が回ってきて、やっぱり信じられないと思う。
こんな風に、抱き合っている事が。
躊躇うような、みやの吐息が聞こえた。
「ももに会えたら、言いたかったの」
震えるような声に、ももは頭を上げた。

「もものことが、好き」

93名無し募集中。。。2018/01/01(月) 03:54:22.280

ちょっと、急いで言い過ぎたかもしれない。と、みやは思った。
腕の中で、泣き止んだももがフリーズしていた。

「あの」
「ごめん、今の、気にしないで。いや気にして欲しいんだけど
帰ってからちゃんと説明する。今は」
「みや、こんなこと言っても、みやは喜ばないかもしれないけど」

何を言われるんだろう。
やっぱり、早まった。
みやは息を殺し、ビクビクしながら、続く言葉を待った。

「みやって、悪魔バスターだからってことに縛られるんじゃなくって
でも悪魔バスターとして、いつだって自分を生きてて、真っ直ぐ前向いてて
そういう、かっこいいみやを見てるから、ももだって、悪魔でいられる。
どんな環境だって、どんな形でも、ももは悪魔としてやっていけるって、ずっと……力もらってたんだよ」

みやは何て返事をすればいいのか、わからなかった。

最初はずっと、ももを人間にしたいと思ってた。
それができたら一歩前へ進める。そう思ってた。
だけど今は。
悪魔として、ももが見ているものを教えて欲しい。

それを知ることが、みやの探してる世界に繋がっている気がするから。

「みや全然わかってない」
「えっなに、なにが」
「みやより、ももの方が、想ってる」
そう言って少し体を離したももが、間近にじっと見つめてくるのを
みやは信じられない思いで見つめ返した。
「ももは……みやのこと、愛してるの」

俯いてしまったみやに、ももが寄りかかるように抱きついてくる。
背中に腕を回し、そっと抱き返した。
やっと、会えたの。もう、二度と、離されたくない。そう思う。

みやの腕の力に合わせて体を寄せてきたももの、ため息が聞こえた。
「もも……このままニンゲンになっちゃいそう」
「えっ。ダメ」
思わずそう言うと
「ちょっと……なんでよ」と、ももが拗ねた声で呟いた。



94名無し募集中。。。2018/01/01(月) 03:57:13.720


epilogue

おうちに帰ってから、少しだけ一緒に眠った。
「何も考えなくていいよ」とももが言って
繋いでいる手の力から伝わってくる、確かなものに安心して、子どものように眠った。

クリスマスの朝。
ももは庭へ出て、小さいゲートを開き、そこに何通ものクリスマスカードを投げ込んだ。
「それで届くの」
「届くよ」
「ちゃんとみんなに書いたの?」
「みんなって」
「もものこと思ってるみんな」
そう言うと、ももは苦笑いした。
「そうだね」

クリスマスツリーのライトを点した。
色が変わっていくLEDを、ももは飽きずにずっと眺めている。
みやはぶつぶつ言いながらカウンターの食器を仕舞い直していた。
ふと思い出して、一番下の薄い引き出しを開ける。
そこにぴったり収まっている、白いケースを取り出した。
蓋を開ける。銀のカトラリーは、まだ数本残っている。
「貼付けてきなよ」
不意に後ろから声がして、みやは振り返った。
「家主のお部屋の奥の窓。それ貼付けとかないとね」

みやは一瞬迷った。
「もう、これつけなくてもいいかもしれないって」
「え、どして」
「ねえ」
「ん?」
「こんなものなくても、もう、ももは出て行ったりしないんだよね」
「全部はずしたらダメだよ。このおうちは今それなりに悪魔避けになってんだから」
「それなり……」
「あ、ううん違うの、あの、なかなかのもんだけど、うん」
「……奥のお部屋は、あのままにしとく」
みやは、ケースの蓋を閉じた。そうしておけば、もう言われたりしない。
出て行けないからだなんて、言われたりしない。

「よし。鶏焼いてパーティーするよ!」
引き出しを閉め、立ち上がった。

「2人っきりのラブラブクリスマスだね。みや」
ももがそんなことを言ったので、みやはカウンターを叩いた。
「は?何言ってんの?ニムロドさんのお誕生日パーティーでしょ」
ももは顔を引きつらせ、ワナワナと唇を震わせた。
あとでいっぱいキスしてあげよう。
みやはそんなことを考えながら、ふふんと笑って、ももの肩を小突いてやった。

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