まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

186 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/25(日) 03:31:32.58 0

起きても現実は変わっていなかった。
もうすっかり日は暮れていて薄暗い室内。
息がかかるほどの近さ。
ベッドには変わらず高校生の桃子がいた。
真横で眠る桃子は起きる気配がない。
鋭さの残る顔つきなのに完全に気の抜けたような無防備な幼い子どものような寝顔。
移動中や楽屋で見せる事はなかったそれは自分だけが知っている桃子の表情。
自分よりも後に寝て先に起きる桃子。
それだけに滅多に見ることができなかった。
それが今、目の前にある。
あの頃の桃子なんだと痛感させられる。

「…特別だったなぁ」

他に誰かがいると見せない二人きりの時にだけ見せたこの寝顔。
だから桃子も同じように口にしないだけで自分と同じ気持ちなんだとどこかで期待していた。
だけど違っていた。
あっさりと告げられた別れ。
やっぱりわからなかったよと長い期間ありがとうお疲れ様とまるで仕事の終わりみたいな言葉。
そのせいでまるで別れた実感が湧かなくて。
すぐに背を向けた桃子を引き留めることもできなかった。

「ももにとって少しは特別だった?」

未だに聞けていない。
今も寝ているからこそ口にできた。
小声のはずなのに静かな室内ではやけに音が響いた。
あの頃に引きずられるようにざわざわと感情が揺らぐ。
無意識に桃子の頬に伸びていた手。
これ以上は無理とベッドから出ようとそっと動いた。
懐かしさから感傷的になっているだけ。
そう結論付けたのに。
一つ大きく心臓が脈打った。
伸びてきた手に捕らえられまた朝のように背中から抱きしめられる。

「もも起きたの?」

囁くような問いかけ。
返ってきたのは寝息でホッとする。

187 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/25(日) 03:34:03.94 0

どうにかその腕から抜け出そうとするも少し身動ぎするだけでぎゅっと力がこもって動けなくなる。
諦めて大人しくその腕に収まった。
落ち着かない鼓動。
うるさくてたまらない。
少しズレた体勢。
そのせいか桃子が僅かに身動ぎした。
落ち着く場所を探るように動く小さな手。
それを思わず絡めるように握ってしまう。
今では殆ど触れることのないその手。
懐かしい体温。
愛おしくて苦しい。
間近に感じるその存在を渇望していたのをまざまざと思い知らされる。

「ねぇ、もも。まだ好きだったみたい」

仲間として一番の存在。
そうなったはずなのに。
そういう存在だと思い込んでいたのに。

「なんで今来たの?また諦められなくなるじゃん」

桃子の卒業。
それを機に固く蓋を閉じようとしていたのに。胸の奥で燻っていた気持ちからは目を逸らして。
それなのにあの頃の気持ちに引きずられて眠らせていたはずの感情が揺り起こされて溢れ出す。

「…もも」

会いたくなる。
今の桃子に。
何故か別れた後の方が柔らかく優しくなった態度。
少し見せてくれるようになった弱味。
そのせいで何度も溢れそうになった気持ち。
それでも桃子にその感情を押し付けるような事はできなくて。
困ったような桃子の顔を見たくなくて。
頑張って抑え込んで見ないふりをしていたのに。
気持ちは少しも風化していなかった。
どうしたらいいかわからない。
最後のBuono!のコンサート。
そのせいでまた直接会う機会が増えてしまっているのに。
昨日までと同じ態度をとれる自信が全くなかった。

247 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 00:10:20.24 0

聞き慣れた電子音。
不快なそれが何故かすぐに止まった。
代わりに聞こえてきた人の声。
しつこく呼ばれる名前。
軽く揺すられる体。
うっすら目を開くと至近距離に桃子の顔。

「おはよう」

妙に楽しそうな桃子。
今では見ることのできない表情にすぐに現状を思い出せた。

「今日は仕事?」

「うん」

手を伸ばし時間を確認する。
かなり余裕のある時間。
覚めきっていない頭。
もう一度、瞼が閉じていく。

「いや、みーやん起きようよ」

「まだ時間あるから」

「ふーん。時間あるならいいよね」

ギシッとベッドが鳴った。
瞼越しに感じていた朝日が遮られたのがわかる。
抗い難い眠気。
いつもなら確実に二度寝。
でもそうはならなかった。
プチプチと外されるボタンに目を開けその手を捕まえる。

「こういう事、やめてって言ったよね」

「理由がないからいやなんだよね?だったら私がいる間だけ付き合おうよ」

あまりにも軽い調子。
それがいやでも思い出させた。
何のこだわりもなくただそこにいたから付き合おうと言われたあの日を。

「無理、いや」

言下に否定するもわかっていたのか全く変わらない表情。
むしろうっすらと笑ってさえいて桃子の考えていることがわからない。

248 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 00:11:56.83 0

「えー大人になったみーやんも…」

それなのに声だけ不満そう。
ロクでもない言葉が続きそうな声は途中で途切れる。

「そうだった。今はみーやんのほうが年上なんだ」

まじまじと見つめられた後に小さく呟かれた。
何故か居住まいを正す桃子に首を傾げる。

「夏焼さん?雅さん?どちらにした方がよろしいですか?」

「急に何?」

「私が知ってるみーやんと今、目の前にいる夏焼雅さんはある意味別人のようなものでしょう?ですから…」

「やめて気持ち悪い。みーやんでいいから。それと敬語もやめて」

そう言うとあっさり元の口調と呼び方に戻した桃子。
すっかり目も覚めてベッドから起き上がる。
身支度している間、じっとこちらを見ている桃子。
やめてと言っても曖昧に笑うだけで見るのをやめてはくれなかった。
パンと飲み物だけの簡単な朝食。

「ももは今日はどうするの?」

「できることもないし…まあ適当に」

苦笑と共に返ってきた当然の答え。
それで気づかされる問題。
下手に外に出すわけにはいかない桃子には直近の昼食でさえ問題で。

「とりあえずこの部屋では自由にしていいから外には出ないで。今のももの知名度は高いから」

「へぇ。じゃあ大人しくみーやんが帰ってくるの待っとくよ。あれ借りていい?」

部屋の片隅に置かれたパソコン。
それに頷くと早速、起動させる桃子。

「ところでみーやん、まだ時間大丈夫?」

指差された時計に一瞬、動きが止まる。
いつの間にかもう家を出るべき時間で。
手早く身支度を整えた。

370 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/27(火) 00:09:47.40 0

「できるだけ早く帰ってくるから」

靴に足を通し、振り返る。
いつの間に来ていたのか思ったより近くにいた桃子に動きが止まる。

「うん、いってらっしゃい」

ちゅっと可愛らしいリップ音。
あまりに自然な流れに呆気にとられる。
唇に残る感触。
普通、頬じゃないのとか見当違いな事が現実逃避のように頭を過る。
そんな事を考えていたせいか今度は頬に。
我に返りぐいっと桃子を押し退ける。

「だから、こういうのはやめてって」

ついキツくなる口調。
それでも全く堪えた様子はなかった。

「えーいつもしてるのにこれもダメ?」

作られたようなわざとらしい拗ねたような動きと口調。

「こんな事したことないでしょ」

どんなに記憶を探ったところでこんな新婚みたいな事はしたことがない。
それどころかそんな甘い空気になる事さえ滅多になかったはず。
第一、まだ当時は二人とも実家。
そもそもありえない。
本当に何がしたいのかわからない。
考えるそぶりを見せる桃子をじっと見つめる。
大げさなまでの思いついたとばかりの仕草。

「あれだよ。パラレルワールドってやつじゃないかな?過去から来たけど少し世界がズレてるのかも」

嘘くさい。
丸め込む為に小難しい事を口にしたとしか思えない。

「何それ。よくわかんないんだけど。なんでもいいけどもうしないで」

「えー少しくらいいいでしょ?愛情表現じゃなくて挨拶みたいなものだと思えば。ほら行かないと遅刻するよ」

まるで誤魔化すようにグイグイと背中を押され出ていく事を促される。
ドアから出る寸前、いってらっしゃいと笑顔で手を振る桃子。
バタンと背後で閉まったドア。
それに背をつけてズルズルと座り込んでしまう。
あの頃の桃子はこんなに恋人みたいな事をしてきただろうか。
いくら桃子とはいえ高校生相手にバカみたいに動揺している。
こんな調子でやっていけるのか自分が不安になった。

371 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/27(火) 00:11:02.90 0

ギリギリで間に合った仕事。
幸いにも桃子とは会わないはずで実際、そのまま帰れば会う事はなかった。
忘れ物に気づいて事務所に引き返しさえしなければ。
廊下の端に見えた桃子。
いつも通りにしようと軽く上げた手は中途半端なところで止まった。
すっとまるで気付かなかったかのように一番近くの部屋に入っていった桃子。
でも気のせいでなければ目を逸らされた。
そんなちょっとした事なのに気分が落ちた。

思っていたよりは遅くなってしまった帰宅時間。
中に入ると何故か明かりのついていない薄暗い室内。
不思議に思いながら明かりをつけた。
桃子の姿が見えない。
少なくとも見える範囲には。
突然現れたように突然消えたのか。
そうだったらいいのにと思いながら寝室を覗く。
こんもりと盛り上がった布団。
それを剥ぐと小さく丸まって眠る桃子。
淡い期待はあっさりと潰えた。
まだ寝るには早いけれど昼寝では遅すぎる時間。

「もも起きな」

容赦なく叩き起こす。
ぼーっとこちらを見る桃子。

「あぁそっか…おかえりみーやん」

一瞬の無表情の後、ぱっと笑顔を見せた。
少しぎこちない感じのそれ。
よく見れば若干、顔色もおかしい。

「体調悪いの?」

桃子の額に手を当てる。
伝わってくるのは少し冷たいくらいの体温。

「違うよ。お腹が空いてるだけ」

冷蔵庫空っぽだったよと苦情を言いながらリビングに出ていく桃子。

372 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/27(火) 00:12:52.90 0

明らかにお腹が空いているだけなわけがない。
ただこの桃子が素直に言うはずがないのもわかっていて。
それでもつい言ってしまう。

「本当に体調悪くなったらちゃんと言ってよね」

「もーみーやんったら心配性なんだから」

茶化すような物言いにため息も出ない。
気をつけて見てればいいかと結論づけて買ってきた物を取り出す。
テーブルの上に広げられる出来合いの惣菜。
いつもの感覚で買ってきたのは間違いだった。
今の桃子では考えられない量を平然と食べる桃子。
話す間もなく黙々と食べる様子に本当にお腹が空いていただけなのかと思わされた。


「そーいえばみーやん本借りに行きたいんだけど」

片付けも終わりこれからどうするか話を切り出す前に言われた言葉に唖然とする。

「借りるの?買うんじゃなくて?」

「だってお金ないし。みーやんからお金借りても返しようもないから。図書館行きたいんだけどみーやん時間ある?」

「ちょっと待って」

タブレットを持ってきて桃子に手渡す。

「何これ?」

不思議そうな桃子にざっくりと使い方と電子書籍の存在を教える。

「でもこれ結局お金かかるよ」

「お金は気にしなくていいから」

その日はタブレットの使い方の説明だけで終わってしまった。
タブレットに夢中になっているおかげで無闇にちょっかいをかけてこない桃子にほっとしながら明日こそちゃんと話そうと決意をして眠りについた。

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