まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

651 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/16(火) 15:26:55.29 0

あれからあてどもなくただひたすら歩いていた。
夕方まで完全に空けていた予定はぽっかりと空いてしまった。
予定がわからなかったから本当は一日丸ごと空けるつもりだった今日。
しかしそれは絶対に来るようにと鬼気迫る表情の店長に阻まれていた。
誕生日祝いを店でするからと。
おめでたい気分なんて微塵もない。
それでも行かなければいけないことに重いため息が。
休日のせいかどこもかしこも人で賑わい落ち着かない。
家に帰るかと方向を変えたけれどその足は途中で止まった。
雅の気配を色濃く感じるあの家。
今帰ると余計に憂鬱になりそうで。
目に入った小さな公園。
片隅に置かれていた古いベンチに腰かけた。
何をするでもなく漫然と視界に入る道行く人々を眺めていた。
きゃーきゃーと甲高い子ども特有の声。
人気のなかった公園。
いつの間にか増えていた子どもの姿。
今は少し辛く感じるその存在にベンチから立ち上がった。
ポコンと何かが足にぶつかる。
足元に転がるピンク色の柔らかいゴムボール。
拾い上げて走ってこちらに来ている女の子に手渡した。

「ありがとうございます」

にこっと笑顔を浮かべてお礼を言う少女。
礼儀正しさとは無縁そうな外見の少女からのお礼に少し驚く。
すぐに背を向けまた走り出した少女。
目線の先には友達なのか姉妹なのか少し不安そうな目をしている年下に見える少女。
どことなく重なって見えて頭痛がする。
切り替えるように目を瞑り頭を軽く振る。
時計に目を落とすと昼を過ぎていた。
また目的もなく歩き出す。
時間のせいか公園に入る前よりもっと増えている出歩く人々。

652 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/16(火) 15:28:01.47 0

背の高い女性を見ればくまいちょー。
明るい髪色の少し派手な見た目の女性を見れば雅。
遊んでそうな少しきつめな見た目の女性を見れば遊んでもらったお姉さん達。
視界に入ればちらつく彼女達の姿。
どこに行っても何をしても頭によぎりそうで。
居る場所がなくて困る。
まだ随分と早い時間。
結局、どこにも行き場はなくて足は自然と店の方へ向いていた。
ただでさえ普通は徒歩で行こうなどとは思わない距離。
それをわざと倍はかかる人通りの少ない道を選んで延々と歩いた。
お姉さんや雅、くまいちょー。
頭に浮かぶのはそれぞれの泣く姿。
一体、どうすればよかったんだろう。
良かれと思った行動は全て裏目に出た。
皆、傷つけただけ。
自分は何がしたかったんだろう。
どこに行き着きたかったんだろう。
益体も無い考えばかりが頭をめぐる。
最初から自分の行動は全て間違っていたのだろうか。
やはり、人と関わるべきではなかったのかもしれない。
悔恨の情に駆られる。
気づけば見慣れた通り。
すっかり辺りは薄暗くなっていた。
店の前に着くと貸切の札。
わざわざ貸切にしてある事に首をかしげる。
扉を開けようとしても鍵が掛かっていて入れなかった。
店長に電話を掛けるとすぐに中から足音が近づいて来た。
中に入るとさっとドアを閉められる。
パンパンパンとうるさい音とともに紙吹雪と紙テープに視界を埋め尽くされた。
身体中にかかるそれら。
急な事に呆気に取られる。
それが面白かったのか小さな笑い声が横から聞こえた。
店長とよく見知った店長の友人達と雅のご両親。
それと自分の両親。
久しぶりの両親。
その顔を見た瞬間に全てリセットする手軽な方法が頭に浮かぶ。
当初、両親が思い描いた通り一緒に海外に行こうかな。
きっと喜ぶ。
そんな思いが胸の内に渦巻いた。
気づけば全員の視界から遮るように目の前にいた店長。

653 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/16(火) 15:30:09.34 0

「ももちゃん驚きすぎ」

声も顔も笑っているのに目だけは全く笑っていない店長。
頭に着いた紙吹雪を払ってくれる。
目が合うと口パクで一言。

ひどいかお

慌てて笑顔を作った。
一つ頷くとさっと店長は離れていく。
その時、すっと右手の薬指から指輪が抜かれた。
店長のおかげで妙な心配をされずに済みそうでほっとする。
内心で店長に感謝していると嬉しそうな父の声。
驚いただろと得意げに言う父に合わせる。
本当はやはりとしか思わなかったけれど黙って頷いておいた。
口々にかけられるおめでとうに笑顔で返す。
渡される卒業祝いと兼ねているらしいプレゼント。
外の包装からして高そうなそれらに戸惑う。
最後のとどめはスーツケース一杯の海外土産。
似合うと思ってと次から次へと出てくる服や小物。
好きだろうからとこれまた出てくるお菓子。
使いきれない食べきれない。
あまりの親バカぶりに頭が痛くなりそうだった。
周囲の微笑ましい物を見ているような生温かい視線に気恥ずかしくなる。
父のテンションが一旦落ち着いたところで仕切り直し。
自分を除けば全員成人。
当然のように出てくるお酒。
その中で一人だけソフトドリンクで乾杯。
テーブルいっぱいに広げられた料理。
意外にお腹は空いていたらしく出された端から黙々と皿を空けていく。
ケーキが出た頃には大なり小なり皆それなりに酔っていた。
食べ終わったことに気づいたらしい父。
ここぞとばかりに普段の生活について聞いてくる。
便乗するように残りの親三人も話題に入ってきた。
当然のように雅の事にまで及ぶ話の内容に徐々に表情が強張っていくのがわかる。

654 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/16(火) 15:32:12.37 0

それに気付いたのかそこに入ってきたのは意外にもいつもフニャフニャしている店長の友人。
いつの間に仲良くなっていたのかあの妙なテンションで話題の中心になっていた。
自分から話題が逸れた事にほっとする。
雅の話題が出るまでは束の間、忘れられていた暗い気持ち。
また一段と笑顔を取り繕うのがしんどくなる。
ガラスにちらっと映った自分の顔は見事に表情が抜け落ちていた。
盛り上がる他の面々を尻目にいつもの習慣で空いた皿を下げていく。
店長はちらっとこちらを見て苦笑い。
どうやら見逃してくれるらしい。
一人の空間にすこし落ち着いていると呼ばれる声。
渋々顔を出すとお酒臭い父に即座に捕まった。

「ももーパパ達と一緒に暮らそうよー」

正しくさっき考えていた事でドキッとする。
以前なら即座に一蹴していた言葉。
それが今は反射的に頷きそうになる。
それでもそんな事をしてしまったら不審に思われてしまいそうで。
どう応えるのが正解なのか。
言葉に詰まる。
それをどう捉えたのかいきなり涙ぐみ始めた父。

「そんなに雅ちゃんとの二人暮らしは楽しいのかぁ?」

また答えられない。
そこに割って入ったのは母だった。
また始まったと言わんばかりの対応。
そこからは一気に解散の流れになった。
親達は仲良くタクシーで帰って行った。

655 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/16(火) 15:34:06.88 0

片付け始める店長の友人二人。
手伝おうとすると拒まれた。
二人とも臨時で度々、手伝いに現れるせいか手慣れた様子で片付けられていく。
まだ早い時間。
いつもならまだギリギリ働いている時間帯。
洗い場から追い出され、戻ると広げられた海外土産をスーツケースにしまっている店長の姿。
背を向けていた店長の肩を叩くとその作業を代わるいつもの友人。
ポケットから何かを取り出す店長。

「そろそろちゃんと決めな」

優しいけれど嗜めるような声音。
手を掴まれその上に店長の手が置かれる。
掌の上。
カチリと金属のぶつかる音。
くまいちょーとのペアリング。
幼い頃に貰った雅の指輪。

「決めた答えがどんな情けない答えでも中途半端な今よりはマシなの」

はいと店長の友人から渡される一纏めにされたプレゼントとスーツケース。

「今日はもう帰る事」

「雅ちゃんならお友達のところに行くらしいからかえってこないとおもうよー」

なんとも読めない表情で告げられどう捉えたらいいのかわからない。
持って帰るのが大変だろうからと呼ばれていたタクシー。
話しかけてくる運転手を無視しているとラジオのボリュームが上がった。
甘やかされていると今日嫌という程に思い知らされた。
このまま逃げてもきっと許される。
流れる景色を見るともなしに眺めているとあっという間にタクシーは見慣れた場所に着いていた。

792 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/18(木) 00:49:20.28 0

リングスタンドにかけた二つの指輪。
どちらもどうしたらいいかわからない。
机の上のそれをぼーっと眺める。
耳の奥でくまいちょーの言葉が何度も繰り返される。
あれがくまいちょーとの関係の終わりの言葉になるとは思ってもいなかった。
最初の頃に考えていたものとは大幅に違う終焉。
くまいちょーから感じていたのはどちらかというと憧憬。
狭い世界の中で生きているからこその弊害。
その結果の恋のような何か。
少なくともくまいちょーが高校を卒業する頃には間違いなく解消される関係。
本当の恋人ができるまでの練習台のようなもの。
そう認識していた。
女子校特有の甘酸っぱい青春の記憶の一部。
くまいちょーに彼氏ができて終わる。
そうなると思っていたのに。
中途半端な事をした結果がこの様。
くまいちょーを傷つけるという最悪な結果。
付き合うという選択は間違いだった。
雅と上手くいくといいという言葉。
どんな想いでこの言葉を言ったのか。
そんな事を言わせてしまうほど露骨だったのだろう自分の行動。
心が締め付けられる。
恐らくバレたのはクリスマスの日。
クリスマスの夜の光景が蘇る。
雅は自分と違って次に進んでいた。
というよりも本来いるべき場所に戻った雅。
だからくまいちょーの上手くいけばいいというのは心からの言葉だったとしても付き合うという意味においてはもう無理で。
良好な親戚関係を築くのも少なくとも今の自分にはできそうにない。
そう思うと雅の時も選択を間違えた。
変に距離を置いたり近づけたりするからいけなかった。
最初から親戚として線引きした関係を築けばあんな勘違いを起こすことはなかったかもしれない。
いつまでもしつこく頭に残る雅の告白。
あれが燻っていた心にまた火をつけた
雅から向けられた本気のように見える好意。
それに賭けたい気持ちもあった。
できなかったのは結局、自己保身。
雅が男と歩く姿。
それを見た時、やはり想いに応えなくて良かったと心底思った。

793 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/18(木) 00:50:53.47 0

例えその時が本気でもあれが絶対に自分の元に訪れる最終的な光景。
それを見せつけられた気分だった。
そうなるとわかっていたのに。
あっさりと次へ進んだ姿を見たくなくて雅を避けた。
自分も次に進んで普通に向き合って仲のいい同居人になればいい。
そう思うのに想像するだけで心が軋む。
できそうもない。
何も決められない自分に苛つく。
嫌でも目につく二つの指輪。
衝動的にリングスタンドごとゴミ箱に投げ捨てた。
雅との思い出もこんな風に捨てられたらいいのに。
たかが幼い頃の約束。
いつまでも初恋を引きずっているのが悪い。
両親の元へ行くという選択肢が一層魅力的なものに思えてきた。
きっとすぐに了承してくれる。
自分のことだけを考えればきっと最善の選択肢。
そう思うのに。
何故か指は通話を押すのを躊躇う。
画面を見つめ続けてどのくらいだったのか玄関からの物音にはっとする。
もう時刻は日付の変わる少し前。
ドアの開く音と聞き覚えのない人の声。
恐る恐る玄関に行くと雅と恐らく友人の女性。
半分寝ているような状態の雅を抱えている。
明らかに酔っている雅。

「あっどうも。夜遅くすみません」

こちらに気づいた女性に声をかけれた。
正面から目が合う。
その声と顔。
どことなく見覚えがある気がする。

「みや、どこに運んだらいい?」

考え込んでいたのか痺れを切らしたような声で尋ねられる。
慌てて雅の部屋に誘導した。
久しぶりに入る雅の部屋。
一見何も変わらない。
願望か。
一先ず雅をベッドに寝かせ部屋を出た。

794 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/18(木) 00:52:24.90 0

「ご迷惑おかけしました」

どこか見覚えのあるその女性に頭を下げる。
何故か無言。
顔を上げると難しい顔をした女性。
一つため息をついて口を開いた。

「文句の一つでも言ってやろうかと思ってたけどやめとくわ」

その言葉に首をかしげる。

「熊井ちゃんの行動無駄にしないであげてよ」

思わぬ言葉に目を見開く。
予想外の繋がり。
目の前の人物が誰か思い出した。

「…りーちゃんのママ」

「いや、ママじゃないから」

苦笑と共に否定される。
最初会った時も似たようなやり取りをした記憶。
従姉妹のお姉さん。
改めてちゃんと紹介された時確かそう言っていた。
くまいちょーともすごく仲が良かった覚えがある。
まさかの人物に茫然としてしまう。

「素直になりなよ」

帰って行く後ろ姿をただ見送った。

再び雅の部屋に入る。
久しぶりにしっかりと見る雅の姿。
寝苦しそうな様子に雅の服を緩める。
簡単に乱れる心音。
相変わらず未練がましい。

「素直に…か」

素直になったところでふられるだけ。
無駄にするなと言われた事が突き刺さる。
ふられてけじめをつけるのも一つの誠意かもしれない。
今まで除外していた雅への告白。

795 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/18(木) 00:53:45.55 0

寝ている雅。
目尻に見える涙の跡。
約半年前の光景が頭に浮かぶ。
涙を流し問われた言葉。
ダメじゃない。

「…ずっと好きでした」

掠れて震えたひどい声。
そっと唇にキス。
これが最後。
ひどい罪悪感。
寝ている相手に一体何をしているのか。
急ぎ足で自室に戻った。
おかしいくらい手足が震えていた。
起きている雅に告白なんてできそうもない。
あまりの情けなさに自分自身に呆れた。

翌朝、うるさいくらいの着信音。
画面を見ると父から。
出ると見送りに来てくれないのかと苦情の第一声。
飛行機の時間を聞くとまだまだある時間。

「わかったから、すぐそっちに行くから」

嬉しそうな父の声。
ついでに直接、海外行きを打診するのもいいかもしれない。
財布と鍵を片手に立ち上がる。
バンと突然ドアが開いた。
そのまま部屋に入ってきた雅に慌てる。

「また掛け直す」

返事も聞かずに電話を切った。

「どうしたんですか?」

「話したい事があるんだけど」

そう言われ身構える。
自分にとっていい話だとは到底思えない
深刻そうな顔。
流れる沈黙。
とりあえず雅に椅子を勧めて自分はベッドに座った。
なんの話かは見当もつかない。
それでも可能性として頭に浮かぶのはここから雅が出て行くことぐらい。
彼氏と同棲するから出て行くとか。
一番あって欲しくない可能性。
それを気づけば口にしていた。

「結婚でもするんですか?」

雅の顔色がさっと険しく変わった。

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