まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

29名無し募集中。。。2018/03/01(木) 21:11:16.200

・・・

「気に入ってくれたみたいだね、その椅子」

頭の方から声がして、ミヤビは慌てて飛び起きた。
懐中時計を見るともう昼を回ろうとしていた。随分と長く眠り込んでしまっていたらしい。

ミヤビのすぐ隣には黒髪と大きな目が特徴的な女性がにこりと笑って立っていた。
マーサ。彼女は長屋の頃、ミヤビ達家族の右隣に住んでいた。

「マーサ……!!」
「その椅子、私が作ったんだ。長いベンチがほしくてさ。そうだね、7人くらいは余裕で座れるかな」
「元気だった? 他のみんなは?」
「たっぷり寝たら、次はお腹が空いたんじゃない? よかったら何かご馳走するよ」
ちょうどよくお腹がギュルルと鳴った。
マーサが話を逸らしたような気もしたが、面倒見のいい性格は変わっていないようで何だか嬉しくなった。

「じゃあ……お言葉に甘えて」
「うん。といっても作るのは私じゃないんだけど」
「別に誰か作ってる人がいるの」
「うーん、まだ寝てるかもしれない。起こしてくるからここで待ってて。あ、奥の畑で生ってるのとか食べててもいいからね」
マーサはミヤビを残したまま丸太小屋に戻ってしまった。


マーサが言っていた畑は丸太小屋から少し離れたところにあった。家庭菜園と呼ぶには随分と大きい畑だ。
人参や白菜、長葱などが育てられているが、なぜか赤茄子の場所だけは杭と水糸で囲いがされていた。

野菜以外にも、木苺や黒すぐりなどの小さな果実もたくさん生っている。一粒食べてみると、甘酸っぱくて瑞々しく、歩き疲れた身体に染み渡るようだった。

ふと見渡せば、辺りには野菜や果実だけでなく、色とりどりの花が咲き乱れていた。一番多いのは蒲公英のようで、白い綿がふわふわと風に舞っている。
耳を澄ませば鳥の囀りも聞こえる。想像とは正反対の長閑で穏やかな世界にミヤビは内心ホッとしていた。
 

「おまたせ。ごめんね、寝起きの悪いのがいてさ」
しばらくしてマーサが畑まで迎えに来てくれた。手招きに誘われるように丸太小屋に向かった。

扉を開けて待っていてくれた小柄な女性は「ようこそ」と微笑んだ。
随分と大人っぽくなっていて一瞬わからなかったが、声を聞くとすぐにサキだとわかった。

「……久しぶりだね。なんだか大人っぽくなったんじゃない?」
「さ、こちらへどうぞ」

ユリナもマーサもサキも、なぜかミヤビの話を避けているような印象があるのが気にかかる。
何か話せない事情でもあるのか。
もしかしたら他の誰かに見張られている可能性もある。
見計らって聞いてみる必要がありそうだとミヤビは思った。

30名無し募集中。。。2018/03/01(木) 21:13:57.950

・・・

丸太小屋の中は見たことがないほど広くて立派だった。
玄関には運動靴や長靴が何足も散乱していたが、ミヤビの背より大きい姿見や、靴が何足も入りそうなほど大きな靴箱も設置されていた。

部屋の中には手作りと思われる木製の家具や小物がたくさん置かれていて、大きな食卓には椅子が向かい合うように三つずつ並んでいる。

食卓の目の前には、家庭用にしてはかなり大きな台所があった。まるで食堂の厨房のようだ。
いつのまにかユリナがそこで食器洗いをしていた。おそらくみんなでここに住んでいるのだろう、とミヤビは思った。


「こんなものでごめんなんだけど」
マーサが運んできた大きな丼ぶりには、たくさんの野菜と牛酪、それから麺と汁が入っていた。

「こんなものって言わないでよ」
「あー、ごめんよリーちゃん」
階段下の柱の影からひょっこりと顔を出したのはリサコだ。マーサの言葉に少し拗ねたような表情をしているのがとても可愛らしい。

リサコとは長屋の頃、実の妹のように接していた。お世話係としてお風呂に入れてあげたこともある。
そんな末っ子もすっかり大人っぽくなり、お化粧もしているようだった。そのうえ料理まで作れるようになっているだなんて、ミヤビはその成長ぶりに涙腺が緩んだ。

「リサコ、リサコの作ったご飯が食べられるなんて思ってなかったな……」
「お野菜たっぷりのバター入りラーメン、美味しいよ。…多分」
「すごいね。これ全部ここで採れたお野菜でしょう?」
蕎麦やうどんとは違う新しい麺に舌鼓をうっていると今度は甲高い声が聞こえてきた。

「ラーメンは飲み物なんだよ!スープまで残さず飲み干してね!」
眩しい笑顔と小麦色の肌は相変わらず。子供の頃から長かった手足も成長とともに更に長くなったようだった。

「チナミ!」
「お味は、いかがですか?」
チナミは若干棒読みで尋ねてきた。寝ぐせのついた毛先がぴょんと跳ねている。
「美味しい。初めて食べたけどすっごく美味しい!何杯でもいけそう」
チナミは照れたように笑うと「なんか恥ずかしい」と言って両手で顔を隠してしまった。

その後、「それ本当は昨日のお夜食の残りなの」と口を滑らせ皆に咎められてしまうところも相変わらずで、ミヤビはやっとみんなのところに来ることができたのだと実感した。

31名無し募集中。。。2018/03/01(木) 21:16:18.180

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ラーメンを食べ終えた後は、畑で採れたという果物を一緒に食卓を囲んで食べた。
みんなはお揃いの作業服を着ていた。色違いで、胸元には北斗七星の刺繍が施されている。
けれど、なぜかモモコだけは一度も姿を見せなかった。


ユリナが淹れてくれた冷やし抹茶を飲みながら一息ついた頃、先ほどからずっと気になっていたことを投げかけてみることにした。

「あのさぁ、さっきからなんか、ミヤの話聞き流してるよね」
一同はきょとんとした表情で見つめ合うと、何やらこそこそと小声で話し始めた。
かと思えばサキが突然「せーの!」と声を張り、「ミヤ、おかえりー!」という5人の声が小屋の中に響き渡った。

「え? 何? どういうこと?」
「ごめん。久しぶりだったから驚かせようと思って。敢えて知らんぷりしてみたの」とサキは悪戯っぽく笑った。
「ホント? 誰かに脅されて何も言えないとかそんなんじゃないのね?」
「違う違う。よく来てくれたね、ミヤ。ずっと会いたかったんだよ」
滅多に泣かないマーサの目には涙が浮かんでいた。

「もうマーサ泣かないでよ。ていうか何? みんなミヤがここに来ること知ってたの?」
「実はそうなの。村の様子がわかる場所があって……だからウチが迎えに行ったってわけ!」
ユリナは得意げな顔をした。

「そうなんだ、そんなこともわかるんだ。凄いね。でも、モモは? いないの?」
急に全員がバツ悪そうな顔をした。

「……モモのことは、後でちゃんとわかるから」
何か事情があるのだろう。サキにそう言われるとそれ以上突っ込むことができなかった。

「そう……ならいいけど。でも他にもいろいろ聞きたいことがあるんだけど」


聞かなければならない。
どうして突然村からいなくなったのか。
村に戻ることはできなかったのか。
マイハが聞いたという声は本当なのか。
ミヤビが今日ここに来るまでの数年間、何をして過ごしていたのか。
問い詰めるつもりはないが、自分だけ共有できないものがあることをもどかしく感じていた。

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