まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

189名無し募集中。。。2018/04/01(日) 15:58:50.480

・・・

茂みの中を歩き始めて数分が経った頃、サキが一つ聞いてもいい? と問いかけてきた。

「どうぞ」
「モモと6年越しの仲直り、できた?」
「あ……知ってたの?」
サキは遠くを見つめながら、そのくらい見ればわかるよ、と呟いた。

「モモ、ウチらには言わなかったけど、あの日に喧嘩したことずっと気にしてたみたいでさ」

モモコが周りに言わないのも、サキがそれに触れないのも、二人らしいなとミヤビは思った。

「だからミヤがこっちに来るってわかった時すっごく喜んでたの。だって走って帰ってきたからね。
でも村での様子も知ってたから、急に自信なくなっちゃったんだろうね」

 
モモコは当初誰よりも張り切っていたのに、突然もういいと言い拗ね始めたという。
それから数日は畑仕事も瓶詰めの仕事もせず、ずっと部屋に引きこもっていたらしい。

そんな状態のモモコがあのような登場の仕方をよく受け入れたなと感心していると、サキは違うの、と首を振った。

「モモも自分でわかってるんだよね。子供っぽいことしてるなってさ。だから照れ隠しのためにモモが自分で考えたのが、さっきのアレなわけ」
サキは小石を蹴りながら「面倒くさいなって思ったでしょ」と笑った。

「まぁ、ちょっとはね。でも羨ましいかも。そういう感情って普通隠したくなるじゃん。でもみんなに話して前向きに消化できるのはモモのすごいところだと思う」
「確かに真似できないね。でも良かった、ちゃんと仲直りしてくれたみたいで」
「ごめんね。サキも大変だったよね」
「そのくらい平気。あ、ここが倉庫だよ」

 
サキが倉庫と呼んでいる建物は、随分と古ぼけていた。
屋根には雑草が生い茂っているし、引き戸は一度蹴りを入れないと開かないくらい錆びついていた。

「これは建て替えないの?」
「見た目は悪いけど、使い勝手はいいんだよ?」

サキに案内されて中に入ると、意外にも綺麗で、見た目よりもずっと広く感じた。

190名無し募集中。。。2018/04/01(日) 16:02:18.950

「もー、ミヤ遅いよ」

いつの間にか作業服に着替えたモモコに腕を引っ張られて、作業台まで連れて行かれた。ちょうど完成したところらしい。

看板と思われるものは、黒い布で覆われていた。

「なんで隠してるの?」
「ただの看板じゃないんだよ、これは」
マーサは感慨深そうに言った。
「どういう意味?」
「この看板を立てたら、ウチらはちゃんとした組織になるの」

看板を立てたあと登録申請書を向こうの世界に提出すると、公認の銘柄として認められ、商品を売る際に箔がつくらしい。取引の値段も格段に変わるという。

「そんな大事なもの……ミヤが一生来なかったらどうするつもりだったの」
「それは……考えたことなかった」 モモコは目をぱちくりとさせた。
「きっといつか来てくれるって信じてたし」
モモコが当然というような表情で他の5人に同意を求めると、それに合わせて皆が頷いた。

「でも、お商売してるなら利益とか」
「お金のことなら平気!モモが交渉していいお値段で流通させてるから、かなり儲かってるよ」
「いいお値段っていうかぼったくり価格だけどね」
ユリナは嬉々としていたが、チナミは苦笑していた。

「ねぇ、今思ったんだけど銘柄つけなくても儲かるなら別に看板いらなくない?」
サキが思いついたようにぽつりと呟いたが、ミヤビは即座に制止した。
「せっかく待っててくれたんだし、立てようよ」
「そうだね。じゃあやっぱり立てよっか」
サキの唐突な無頓着がすんなりと解消されて、ミヤビはホッとした。

「ねぇ、看板がどんな感じなのか、見たい」
「もちろん、いいよ。エルダーの人達も自分達で看板を作ってたんだ」
そう言うとリサコは自ら考えたという看板の原案図を見せてくれた。
「どうかな」
「可愛い。リサコ昔から絵が上手だったもんね、虹が要なんだ」
「虹は7色だから」 リサコは照れ笑いをした。

 
チナミは「ミヤの繋ぎも用意してあるんだよ」と紫色の作業服を渡してくれた。
「ね、ミヤも着てみて」
ユリナに促され、今着ている服の上から作業服を着た。
みんなとお揃いの作業服。やっと一員になれたような気がした。

「7色揃ったね。じゃあみんなで看板立てに行こっか」
サキの仕切りで、今度は来た道を引き返し、丸太小屋の方へと向かった。

仮置きの看板は丸太小屋のすぐ側に立っていたことをミヤビは思い出していた。

191名無し募集中。。。2018/04/01(日) 16:07:37.420

小屋に戻ってきた頃には既に陽が落ち始め、辺りは夕焼けに染まっていた。
ミヤビの長い長い1日が終わろうとしていた。

みんなで古い看板を取り囲むと、マーサが手を掛けた。
ここに来た時には特に気に留めてもいなかったあの古びた看板は、何年もここでみんなを見守ってくれていたのだろう。

けれどマーサは「じゃあ抜いちゃうよ」とあっさりと引き抜いた。
「なんか呆気ないね……」
「まぁこれはその辺の板とかで作ったやつだからね」
マーサはなんて事のないような口ぶりで言った。

それにしても、とミヤビは思う。
申請書を出すとはいえ、本当に看板を立てるだけで、正規な組織になれるのだろうか。
だが、この妙に浮世離れした世界なら、どんなことでも有り得る──そんな気もする。森の向こう側の世界に住んでいるという人たちも、ニンゲンとは別の新しい生命体なのかもしれない。
 

「今更なんだけどさ、銘柄にするのに看板って必ず必要なの?」
「絶対条件だよ。あと組織名もね。組織名と絵柄を商品に付けてもらうのに看板が必要なんだ」
マーサは「まぁ、それが銘柄になるってことでもあるんだけど」と付け足した。
看板は向こうの世界における製造者や生産者の顔にもなるので、非常に重要な位置づけだとも言っていた。

看板はチナミとユリナが運んできてくれた。
覆っていた黒い布を取り去ると、虹が描かれた鮮やかな看板が現れた。
立ててみると、倉庫で見た時より何倍も迫力がある。
「すごいね……」
サキもその迫力に圧倒されているようだった。
「私が描いた絵が看板になるなんて」
リサコの顔は達成感に満ち溢れていた。それをチナミとユリナが嬉しそうに見つめている。

 
マーサが言っていた“組織名”は、看板に記されていた。

「これがウチらの名前…か」
ミヤビは虹の上に書かれた白抜きされた文字を見つめた。夕日に照らされたその看板は、眩しいほど輝いている。
「そうだよ」
いつの間にかミヤビの隣にいたモモコはそう言うとミヤビの手を取った。
「モモ達にぴったりでしょ?」
「そうだね」
「ねぇ、ミヤ。ずっとずっと、ずーっとここにいてくれる?」
「うん。だってここ出口がないっていうし?」
「あ、そう。そーゆーこと言うんだ。言っちゃうんだ」
ミヤビのからかいに、モモコはわかりやすくむくれた。

「うそうそ。ミヤはずっとここにいるよ」
モモコの小さな手をぎゅっと握り返した。
「もう焼きももちにはさせないから……さっきのお返し」
そのまま抱きすくめると、他の5人からヒューヒューという冷やかしが上がった。
腕の中でされるがままのモモコの体温がじわりと熱くなるのを感じた。

「ミヤ、みんな見てるし……恥ずかしいよ……」
「さっきもみんなに見られてたじゃん」

大きく息を吸うと、モモコのやわらかい匂いが鼻をかすめた。
トクン、と鼓動が高鳴る。
ミヤビは胸の奥に再び芽吹いたジャムのような甘ったるい愛おしさに気づき始めていた。


<おわり>

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