まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

668 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/02(金) 17:29:09.98 0

2016/8/25 …日本武道館


「Buono!」コールが武道館に響き渡る。
3時間にも及ぶライブを終えた私たちは、余韻もわずかに、未だ熱気に包まれた武道館を後にした。
冷えた風が火照った体を吹き抜けた。夏が終わろうとしている。火照りは切なさへと変わって行く。

「みやー!愛理ー!じゃあねー!」

そう言って足早にタクシーに乗り込んだももを、愛理と一緒に見送った。
何か用事があったのだろうか、呼び止める暇もなく走り去っていくタクシーをただただ見つめる。

「みや、どうする?わたしは1回事務所に戻るけど…乗っていく?」

愛理からそんな誘いを受けたが、雅は無言で首を横に振った。
そもそも、雅には今日、どうしてもやらなければいけないことがあった。
半年前から決めていた。鳴らなかったケータイを、今度は自分の手で鳴らすと。

705 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/03(土) 05:44:10.41 0

愛理の乗り込んだタクシーを手を振り見送る。
窓から覗く愛理の顔はあからさまに心配そうで、そんなにひどい顔をしているのだろうかと、少し不安になった。


結局、雅はその後強制的にタクシーに乗せられるハメになった。
当たり前のことだが、夜中、こんな場所に1人で居ることが許されるはずもなく、
半ば押し切られるような形で、スタッフさんが呼んだタクシーに押し込められた。

夜のネオンが窓の外を筋になって流れてゆく。
「降りたら、今日の朝に戻ってたらいいのに」
そんなことを呟いてみたが、戻るはずもなく、声はため息へと変わり、夜へと消えて行った。


気付いた時には、タクシーは既に家の最寄駅に到着していた。
どうやら、何度も声をかけてくれていたらしい。運転手さんが心配そうにこちらを見ている。
急いで財布を出そうとしたが、スタッフさんがある程度お金を出してくれていたらしく、
お釣りだけを受け取って雅はタクシーを降りた。

時計を見る。…23時13分
あと少しで8月25日も終わり、といったところだ。
残念ながら時間は戻らなかったらしい。大きなため息をひとつついた後、雅は家に向かって歩を進めた。

706 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/03(土) 06:25:37.51 0
「…そうだ、電話しなきゃ」
ひとつかふたつか、歩を進めたところで我に返った。
センチメンタルな気分に溺れてすっかり忘れていた。急がないと、今日が終わってしまう。

あわててカバンからケータイを取り出す。
電源を入れると、公演後、皆それぞれにお祝いメッセージを送ってくれたらしく、待ち受け画面は祝福の言葉で埋まっていた。
だが、読んでいる暇はない。急いでロックを解除すると、電話アプリに目を遣った。
通知が数件。どうやらそのうち1つは留守録のようだ。念のため再生してみたが、中身は何も録音されていなかった。

「無音…?あれ、そもそも誰からのメッセージだっけ。」

画面を見返す。

「…もも?」

そこには「もも」の二文字。どうやら帰ってから何度も電話をかけてくれていたらしい。他の通知もすべて桃子からの電話だった。
よっぽど必死だったらしく、電話は数分ごとに掛かってきていた。何か忘れ物でもしたのだろうか?
おおよそ雅が期待しているような用事ではなさそうだったが、ともかく、電話をかける言い訳ができた事は雅にとっては喜ばしい事だった。
通話ボタンを押す。数回呼び出し音が数回鳴った後、思いの外より早く桃子は電話に出た。

709 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/03(土) 10:10:18.99 0
「もしもし?みや?」
「もー…何回かけても出ないんだもん!みや、今どこ?」

気のせいか、電話の向こうの桃子は少し息が切れているような気がした。

「…今もう家に帰るとこ。」

さっき電話をかけた勇気はどこへやら。
いざ桃子の声を聞くと、沢山あったはずの言葉はすっかり頭の中から抜けてしまっていた。
そんな雅の様子などまるで気付いていないのか、桃子がまくしたてるように話を続ける。

「え?じゃあもう駅出ちゃった?もも今ね、ちょうど…あっ待って待って!みやそこ動かないで!」

気のせいだろうか。後ろの方から聞き覚えのある声が雅を追いかけてくる。
振り向くと、駅の階段を必死で駆け下りてくる桃子の姿が見えた。

「っ…なんで…?」

あっけにとられているうちに桃子はどんどん雅の方に近づいてくる。
遠目ではわからなかったが、桃子の格好は武道館で別れた時と同じ格好だった。
ただひとつ違うことといえば、バッグの他に、桃子は白い大きな紙袋を抱えていた。

「もー、みや探したよ!マネージャーさんにみや引き止めといてってお願いしてたのに、いつのまにかみや帰っちゃったっていうんだもん!」
「え…でも、うちスタッフさんが用意してくれたタクシーに乗ったし…。それに、ももが先にさっさと帰っちゃったんじゃん。そんなの知らないよ。」

なぜ自分が責められているのだろう。そう思うと雅は急に怒りが込み上げてきた。

「ちょ、みやそんな怖い顔しないで。もも、今日どうしてもみやとしたいことがあったから、準備のために先に帰ったの。
 だから、準備が終わてももが戻って来るまでまでみやを引き止めてもらっとこうって。ダメだったみたいだけど。」
「…何?したいことって。」

桃子にも何か事情があった。そんなことくらいは雅だってわかっていた。
ただ、今日が何でもない日であるかのようにさっさと帰ってしまった桃子が許せなかったのだ。
ところが、帰ったはずの桃子が今ここにこうして居る。雅には訳が分からなかった。
だが、そんな雅の様子などお構いなしに、桃子が話を続けた。

「ここじゃ言えない!ね、せっかくだしみやの家、行っていい?みやの家についたら、話してあげる。」

そう言いながら桃子がイタズラっぽく笑った。思わず雅の心が緩む。

「…いいよ。おいで。」
「本当?やったー!久しぶりだねみやの家行くの!」

思わずOKしてしまったことに少し後悔したが、桃子の嬉しそうな笑顔を見ると、
先程までのもやもやと一緒にそんな気持ちはどこかに飛んで行ってしまった。

715 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/03(土) 16:21:34.50 0

家までの路を二人で歩く。冷えた風が、今では少し心地よい。
緩く結んだポニーテールを揺らしながらスキップするように歩く桃子を後ろから見つめていると、
―このままずっと家に着かなければいいのに― そんな考えが頭をよぎった。

「みやー!はやくはやく!」

桃子は変わらず興奮した様子で雅を急かす。一体今からどちらの家に帰るのやら。
いつもの雅ならイヤミの一つも言うところだが、今日に限っては腹から何も出てこなかった。

気が付くと、雅の家が目前に迫っていた。
家の明かりは消えている。どうやら、パパとママは先に寝てしまったらしい。
桃子はというと、家主をさし置いてさっさと家の門をくぐろうとしていた。

「もも、待って!今鍵開けるから」

雅がそう言うと、桃子はこちらを向いて、「遅い!」とでも言いたげな顔をして、立ち止まった。
ももが早すぎるんじゃないか…心の中で文句を言いながら、雅は足早に桃子の方へと歩みを進めた。

716 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/03(土) 17:06:33.14 0
そっと鍵を開ける。
家の中は静まりかえっていた。。針が時を刻む音だけが微かに聞こえる。
2人は、音をたてないように、そっと2階の雅の部屋へと上がった。

「いやー、みやの部屋久しぶりだね。」

部屋に入ったとたん、勧める間もなくベッドの下からクッションを一つ取り出し、桃子が腰を下ろす。
数年前、よく雅の家に遊びに来ていた桃子のために買ったクッション。覚えていてくれたことが雅には嬉しかった。

「ねえみや、ももちょっと疲れて喉渇いちゃった。飲み物もらってもいい?」

桃子が上目遣いでたずねてくる。そういえば、いつもこうやって飲み物を入れさせられてたっけ。
なんだか懐かしい感じだ。雅の顔から思わず笑みがこぼれる。

「え、みやどうしたの?急に笑って。ももそんなに面白い事言った?」

桃子が不思議な顔をして雅を見つめる。
「なんでもない」とだけ言い残して、雅は台所へと降りていった。

717 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/03(土) 17:25:22.84 0
1階は相変わらず静まり返っていた。月の光がカーテンの隙間から差し込み、台所をぼんやりと照らす。
冷蔵庫を開き麦茶を探したが、運悪く切らしていたらしく、中には牛乳しかなかった。

「…アイスティーにしよう。」

そう呟くと、戸棚から紅茶の葉を取り出し、慣れた手つきでお湯を沸かす。
抽出時間を計ろうと時計を見ると、ちょうど23時30分になったところだった。
しかし、ももは一体何をしに来たんだろう?氷を取り出しながらそんなことを考える。
大事そうに抱えていた袋の中身も気になった。プレゼントはリハーサルの時に貰ったので、プレゼントではないはず…
色々と考えてみたが、ピンとくる答えは浮かばなかった。

5分ほどして、アイスティーが出来上がった。
考え事をしながら作ったせいか、なにやら少し甘ったるい気もするが、このくらいなら許してくれるだろう。
台所をきれいに片づけると、雅は桃子の待つ2階へと階段を上った。

728 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 00:30:01.19 0
2階へ上ると、閉めたはずのドアが少しだけ開いていた。
桃子が何かイタズラでも仕掛けたのだろうか?アイスティーを零さないよう、雅は慎重にドアを開けた。


ドアを開けると、桃子の姿はなかった。代わりに、テーブルの上に大きな箱が1つと、メッセージカードが置かれている。
メッセージカードには桃子の字で大きく 「箱を先に開けてね。ももより。」 と書かれていた。
部屋の中を見渡すが、やはり桃子の姿はない。黙って帰ってしまったのだろうか?
箱の中身よりも桃子の行方が気になったが、何度探しても桃子の姿が見当たらないので、雅は仕方なく箱を開けることにした。


それにしても、人に飲み物を入れさせておいて帰っちゃうなんて、ひどくない? ぶつぶつと文句を言いながらアイスティーを一口飲む。

「…甘い。」

やはりもう少しシロップを少なめにすればよかっただろうか、切ない甘さが喉に沁みる。
雅はコップを乱暴に置くと、さっきまで桃子が使っていたクッションの上に腰を下ろして、箱に手を伸ばした。

772 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 01:18:33.24 0
「ゴンッ!!」
雅が箱を開けると同時に、鈍い音が部屋に響いた。

「あ…はは…ごめんみや…頭ぶつけた…。」

声がする方を振り向くと、そこには涙目でベッドの下から這い出してきている桃子の姿があった。
どうやら、さっきクッションを取り出してできた隙間に隠れていたらしい。その手にはクラッカーを持っている。
雅があっけにとられていると、桃子は手に持っていたクラッカーを勢いよく鳴らし、雅の目を見つめながら、こう続けた。

「みや、ハッピーバースデー!」

807 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 01:46:04.94 0
あまりに突然の出来事で状況が理解できない。
なんでそんな所に隠れていたのか、そのクラッカーは一体どこから、そもそも帰ったんじゃ…
固まる雅などお構いなしに桃子が続ける。

「いやー、みやの驚く顔が見たくてさ!ももちょっと頑張っちゃった!」

桃子の顔はいつになく自慢げだ。

「ね、ね、それよりみや、見てよ!机の上!プレゼント!」

桃子が興奮気味に喋る。机の上に目を戻すと、そこには色とりどりのフルーツが盛られたすこし小さめのケーキが置かれていた。
上に乗ったハートのチョコプレートには「だいすきなみやへ、24歳のお誕生日おめでとう」と書かれている。


「すごいでしょ!もも、今日頑張ったんだから。そのプレート、ももが書いたんだよ。」

確かにプレートに書かれているメッセージは桃子の字だ。
でも、いつの間に?今日は朝からリハーサルでそんな暇はなかったはず。
雅が不思議な顔をしていると、桃子が少しはにかみながら続けた。

「みや。今日、もも先にタクシーに乗ったでしょ?あれ、帰ったんじゃなくて、このケーキを取りに行ってたんだ。みやと一緒に食べたくって。」
「半年くらい前、ももをGREENROOMに呼んでくれた時した話、覚えてる?今度ケーキを食べる時は呼んでねって、みや言ってくれた。」
「本当はももの誕生日にも一緒に食べたかったんだけど、お仕事があって、電話できなくって。だから、今日、みやの誕生日に一緒に食べようって決めてたんだ。」
「だからみや。ケーキ、一緒に食べよ?」

そして、雅の正面に座り、もう一度、今度は雅の目をしっかりと見つめて、言った。

「みや、ハッピーバースデー。」

823 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 02:02:25.90 0
「いやー、ホントびっくりしたからね。心臓に悪い!そもそも隠れなくてもいいじゃん!本当に帰っちゃったかと思ったんだから!」

ケーキを頬張りながらそうこぼす。

「だってさ!ここまでやったんだからサプライズしたいじゃん!そもそもね、本当はみやを迎えにきたタクシーの中にももが乗ってる予定だったんだよ!」
「なのにみやったら勝手に帰っちゃうんだもん。ビックリだよ。」

「だから!それはスタッフさんがって言ったじゃん!」

口を開けばお互い文句ばかり。でも、そんなやり取りが楽しい。
ももはどうやら、日が変わる前にケーキを食べたかったらしく、必死にみやが行きそうな場所を探していたらしい。
よほどお腹がすいていたらしく、雅の誕生日ケーキなのに半分以上を桃子が食べてしまった。

「甘っ!!みや何これ!!ケーキにこのアイスティーは甘すぎだよ!!」

「仕方ないじゃん!ケーキがあるなんて知らなかったんだから!」

まるで昔に戻ったようだ。また自分の部屋で桃子とこんなふうにおしゃべりできる日が来るなんて。
今なら何でも素直に話せる気がした。

840 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 02:27:34.16 0

時間はいつの間にか0時を過ぎていた。

「ね、もも。」

雅が切り出す。
桃子も真剣な雰囲気を察したのか、頬張りかけたケーキを置き、雅の方へ向き直る。
空気が張り詰める。雅はぐっと涙をこらえ、次の言葉を紡ぎだした。

「あたし、やっぱりももの事諦められない。」
「Berryz工房が活動停止しちゃって、お互い仕事が別々になって、会えなくて辛い日が続くくらいなら別れようって、わかる。わかるけど。」
「でもきっと、それでもこんなに辛くない。会えないより、こっちの方がよっぽど辛いよ、もも。」

雅の目から涙があふれる。
武道館のエンディングではぐっとこらえたのに、今はこらえられる気がしない。

「半年前、ももの誕生日、本当はずっと待ってた。何も言わなかったけど、待ってた。一緒にケーキ食べようって。」
「結局何の連絡もなくて。だから、今日はみやから誘おうと思ってた。結局誘えなかったけど。」
「でも、いまこうやってももとケーキ食べてる。ねえもも、ももはどうしたいの?今日あんなにみやの事探してくれて。でも一緒にはいられなくて。」
「わかんない、わかんないよもも…。」

涙で視界が曇る。桃子が今どんな表情をしているのかもわからない。
桃子はただ沈黙貫くばかりだ。雅は震える声を抑えて、言葉を何とか絞り出そうとする。
だが、その言葉が発せられることはなかった。

845 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 02:57:04.24 0

どのくらいだっただろうか、桃子が雅から離れる。
少しして、桃子にキスされていたことに気付いた。

「…もも?」

涙をぬぐって桃子の方を見ると、桃子も少し涙目になっていた。
沈黙が部屋の中を満たす。しばらくして、桃子が口を開いた。

「ももだって辛かったよ。だから、今日こうやって来たの。」
「みや、きっと今、ももたち同じこと考えてる。」

桃子は雅の手をそっと握って続けた。

「ももたち、やり直そう。」

848 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 04:13:39.29 0

「ダメかな…?」

黙っていると、桃子が不安そうな目で見つめてくる。

やり直したい。今年になって、ますますその気持ちは強くなっていた。
カウントダウンコンサート、GREENROOM、会うたびももはあの頃と同じような態度で接してくる。
その度期待したが、行き場のない自分の気持ちに苦しむだけで、結局何かが変わることはなかった。

そこから考えると、今のこの状態はまるで夢のようだ。
桃子が自分と同じ気持ちであった事が嬉しい。だがいざそうだとわかると、今度は認めるのが少し照れくさくなった。

「…ま、ももがそう言うなら、より戻してあげてもいいけど?」

「えー!何よさっきまであんなに泣いてたくせに!」


最初に付き合う時も、こんなやり取りをしたっけ。
あの頃の思い出が蘇る。
雅は、これから2人で歩む未来を想い、微笑んだ。

20160825 side:Momoko

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