雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - ヤキモチをください!
190 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/05(水) 19:31:49.37 0

みやなんて知らない。
今度の今度こそ、知らないんだから。

渾身の力を込めて壁に投げつけたクッションは、思いのほか軽い音を立てて床に落っこちた。
形の崩れたクッションが、くったりとしてて可哀想だなってちょっと後悔。

「……早く帰るって、言ったじゃん」

この日は私もみやも仕事が終わる時間が早めだねって会話をしたのは、いつだったっけ。
確かにちょっと前のことだけど、でも忘れちゃうほど前じゃないと思う。
なのに、なのにさ。
飲みの予定入っちゃったーなんて、呑気なメール送ってくるとかさ。しかも、今日のお昼だよ、お昼。

「もう、知らない」

今度こそ、本当に知らない。
別に、常に私のことを優先しろって言いたいわけじゃない。
でも、でもさ、たまに時間が取れそうな時くらい、その時間を確保してくれたっていいじゃんか。
床にうなだれたクッションがじんわり滲んで、あーもういいやって思った。
どうせみやはしばらく帰ってこないし、遠慮することなんてないよね。

ベッドにころんと転がったら、朝バタバタしてて脱ぎ捨てられたままになっていたみやのパジャマが目に入った。
ふんだ、脱いで放っとく方が悪いんだから。
それをぎゅってしてみたら、みやの香りが鼻を通り抜けた。
あーだめだ、これ。

「……ぅ、……ぐ」

一回こぼれてしまったら、もう後は止められなかった。
お腹の底からじわじわと湧き出る感情は、胸のあたりを締め付けて、指先を冷たくさせる。
いいもん、みやのパジャマで拭いてやるんだから。
顔を埋めたら、もっとみやの匂いが強くなって、同時に背中のあたりを肌寒さがよぎる。

みやは今、どこで誰といるんだろ。
何をして、どんな会話をしてるんだろ。

こんなことなら、平気なふりして返事なんかしなきゃよかった。
ちょっとくらい、わがまま言えばよかった。
きっとわがまま言ったら、みやはちゃんと考えてくれたはず。
だから、行ってらっしゃいって言った時点で私にも、ちょっとは責任がある。
でも、さ、みやにはみやの時間があるわけで。
そこに、どれだけ踏み込んでいいか分からないのも事実。
面倒な女だって思われたいわけじゃ、ないんだもん。

191 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/05(水) 19:32:24.26 0


「——も、もも、おーい、もも」
「ん……ぅ?」
「はは、ヘンな顔ー」

うっすらとした視界で、私の感情とは正反対って感じの楽しげな笑顔が見えた。
状況を認識するまでに5秒くらいはかかったかもしれない。
くしゅん、とくしゃみをした後で、寝ちゃってたんだ、とようやく気付く。

「どしたのもも、うちのパジャマなんか握りしめちゃって」

そんなに寂しかったのー?って言うみやは、いつものふざけたノリだった。
ちょっと舌ったらずなみやは、これぞ酔っ払いって感じ。
それが無性に感情を逆なでしてきて、ぐっと奥歯を噛んだ。

「……別に」

あえてそっけないふりで、持っていたパジャマをみやに投げつける。
それから、さっさと寝よ?って言いながら、腕で目を覆った。
泣いてたってこと、みやに気づかれるのもなんか癪だから。

「本当に?」
「うん」
「そっかぁ」

言いながら、みやにぐいっと引き寄せられる。
みやの思わぬ行動に思わず目を見開いたら、そのままちゅって優しく触れるだけのキス。

「……ごめんね?」

全部見透かしたような表情で、そんなことを言うなんて。
ずるすぎるよ。

「……ホントね」
「寂しかった?」
「……それ、聞くの?」
「はは、ごめん」

みやにきつく抱きしめられて、温かさが身体中に満ちた。
今夜くらいは、引っ付いたままでいさせて、なんて。

少し頑張って素直になってみたら、良いこと、あるかな。