雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 甘やかし検定三級
347 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/10/12(水) 00:29:16.10 0
突発的に書いたものだけど
少しでも楽しんでもらえたら嬉しい

(1/5)
嫌いな食べ物とか、苦手な人とか、憂うつな出来事とか。
大人になればもっと、色々なことが平気になると思っていた。
いまは困難に思える問題だってきっと大人ならすぐに解決できるんだ。
つらいのはきっと自分が子どもだからで、大人ならこんなことなんでもないんだろうな。
…なんて。

ところが現実はどうだ。
体だけが大人になったところでなにが変わるわけではない。
嫌いな食べ物は相変わらず嫌いだし、苦手な人はかえって増えたし、曇空が続くだけでも憂うつな気分になる。
毎日は思うようにならないことばかり。
ハタチの頃はそれでも、これは自分がまだ本当の大人になれていないせいなんだなんて思ったこともあった。
それから数年が経ったいま、子どもの頃に思っていたような大人なんて、ほんとうは存在しないのかもしれないと気づきかけている。
何でも知ってる。
何でもできる。
そんな大人には、自分はきっとなれないんだろう。

それでもせめて彼女を守る力があればいいのに。
どうして自分はこんなに無力なのかと涙が出そうになるのを、ぐっとこらえる。
そんなところだけ大人みたいで、情けないやらおかしいやら、思わず笑ってしまう。
笑ったところで諦めがついて、大人になれない大人なりに、どうにかするしかないなと覚悟を決めた。
決めた勢いでドアをノックし、華々しい空気に満ちた楽屋に単身乗りこむ。

「お疲れさまー。ちょっと、もも借りるね」
後輩たちは少し驚いた顔をしただけで、快く『ももち先輩』を送り出してくれる。
ももだけは困惑と迷惑の中間のような表情を浮かべているけれど、気づかない振りでそのまま引っぱり出す。

348 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/10/12(水) 00:32:47.49 0

(2/5)
「ねぇ、みや。どうしたの?もも達いま今度のイベントの相談してたんだけど」
特に会話もないまま空き部屋に連れ込んだところで、ももが口を開いた。
その声を無視して、質問で返す。
「ねえ、もも。最近どうなの?」
「どうって?べつにー」
ももは拍子抜けしたような顔で、適当な返事をする。
あまりにどうでもよさそうな態度にかちんときて、つい口調が強くなってしまう。
「ちゃんと食べてる?なんか痩せたよね?」
「もー、なぁに?みや、ママみたいだね」
苦笑いするもも。
その顔にちょっとした陰が見えて、胸がきゅっとする。
「ちがうけど。あーでもよく見たら二の腕ぷにぷに」
「ちょっと!」
二の腕を触ろうとのばしかけた手は、容赦なくはたき落とされた。

「…ていうか、冗談じゃなくてさ」
「うん?」
「なんか、顔色悪いし」
「そうかなー?もも、色白だからー。美白すぎる?」
「そういうのいいから。ちゃんと休んでるの?もう若くないんだからね」
「失礼だな!もも、まだぴちぴちですからー」
「だからそういうのいいから」
「もう!みや、なんなの?今日なんか変だよ」
「変なのはももでしょ」
「え?」
「うち、そんなに頼りないかな?」
「みや、話が見えないよ。何の話?」
「だから、もっと甘えてって言ってるの!」
思わず大きい声がでてしまう。
それにびっくりしたわけではないのだろうけど、ももは目を見開いたまま固まった。

349 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/10/12(水) 00:34:58.54 0

(3/5)
「……もも、そんなに無理してるように見える?」
しばらくの間の後、ももがつぶやくように口を開く。
「見える」
「えぇ…」
思わず即答すると、ももが露骨に傷ついたような顔をするものだから、慌てて訂正する。
「いや、他の人には見えてないと思うよ。でも、うちには見える」
「…もー、ほんとにみやはもものこと好きだなぁー」
口調とはうらはらの、複雑な表情を浮かべるもも。
ちゃかそうとして失敗するなんて、らしくない。

「うん。好き。だからうちのお願い聞いて?」
視線を合わせてきっぱりと言うと、ももはさっきよりもさらに目をまん丸にした。
「え…と。え?なんて?」
ももは、動揺を隠さずに目をぱちぱちさせる。
「だから。好きだからお願い聞いて」
「んん?それって何かつながりが変じゃない?」
考え込みそうになっているももに、だんだんイライラしてくる。
人がこんなにお願いしてるのに、その態度はなんなの?
「なに?嫌なの?」
思わずイラッとした気持ちが言葉尻に含まれてしまう。
「いや、そうじゃないけど…ていうか嬉しいけど…でもお願いってなに?」
ももが途方に暮れたような顔をするものだから、いじめているような気持ちになってくる。
怯みそうになる心を、なんとか奮い立たせる。

350 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/10/12(水) 00:38:12.91 0

(4/5)
「うち、ももを甘やかしたい」
「へ?」
「ももがだめ人間になる寸前まで甘やかしたいの」
「ちょっと、なにそれ」
「ねーもも、お願い」
「だめだめ、そんなの困る」
「みやのお願い聞いてくれないの?」
上目遣いで見つめてみる。
ももは少しだけ動揺を見せたけれど、すぐに立て直して首を振る。
「可愛い顔したって、それはだめ」
「なんでだめなの?うちが頼りないから?」
内心舌打ちしそうなのを隠して食い下がる。
「そんなことない。気持ちは嬉しいよ。でも」
「ももは甘えたからって折れたりしない」
ももが続けようとするのを遮る。
どうにか思いが伝わらないかと祈るような気持ちで。
言葉と一緒に涙が溢れそうになるのをなんとかこらえ、強く手を握る。
「……みや」
ももの視線は、ゆるゆると下へ落ちてゆく。
「弱音を吐いたって、ももは折れたりしないよ」
ももが俯いたままなにも言わないので、言葉を続ける。
「じゃあわかった。だめ人間になる寸前までじゃなくていい。間をとって、今夜一晩だけ甘やかさせて」
それならいいでしょ!と結論づけようとすると、ももがあきれたような声を上げる。
「それで間って、だめ人間になるまであっというまだね!?」
あきれながらもその声には微笑みが混じっていたから、安心してまた涙が出そうになる。
「そりゃあね、うちはこう見えて甘やかし検定三級だから」
「なにそれ。すごいんだかそうでもないんだかわかんないね」
2人で顔を見合わせて笑う。
それだけで、くすぐったいような誇らしいような気持ちになる。

351 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/10/12(水) 00:39:44.98 0

(5/5)
大人は全然万能じゃなくて、子どもの頃に思っていたように全てうまくはいかないけど。
それでもやっぱり、大人になってよかったと思いたい。
少しだけ大きくなった手は、大切な人を暖めることができる。
そんなちっぽけな事実だけでも、意外とできないことなんてないような気さえしてくる。
子どもっぽい発想かもしれないけれど、そんな気分も味方につけて、もものことを考える。
一晩でいかに甘やかし倒すか。これは難題だな。
なんて考えながら、スキップでもしそうな気持ちを抱えて、帰り道を急ぐ。

今夜ももが家にやってくるまで、時間はそうない。
急いで準備にとりかからなければ。
でも絶対に、一晩で、これでもかってくらいに甘やかしまくってみせる。

きっと大丈夫。
だって夜は長いから。

なぜって、秋だし。
それに2人とも大人だし、ね。