雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 続続・モモともも
307 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/16(月) 00:32:15.82 0

げほ、げほ、と立て続けに湿った咳が響く。
それはベッドの上で丸くなったみやから発せられていた。
呼吸を整えようとして吸い込む息に合わせて、みやの喉が悲鳴を上げるようにひゅう、と音を立てる。
せめて辛さが和らげばと背中をさすると、少しだけ背中の筋肉の張りが緩んだようだった。

「……ごめんね、みや」
「ちが、う、から」

みやはそう言うけど、違わないんだ。
ちょっと前にひいてた風邪をみやに移しちゃったのは、ももだから。
しかも、ももの時より症状が重い気がする。
また、みやの体がきゅっと縮こまって咳が二度、三度。
看病といってもできることはあまりなくて、ももにできるのはそばにいることくらい。
歯がゆくて、堪らない。
どうせならもう一回ももに移って、みやはケロッと治っちゃえばいいのに。

「お茶、いる?」
「……ぅ、ん」

そっと立ち上がると、もも達を見ていたモモがきゅう、と声を上げた。

『みやぁ……』

頭のてっぺんの冠羽も今はしょんぼりと閉じていて、モモはモモなりに心配してるらしい。
その様子にちょっとだけ胸が締め付けられて、カゴの隙間から指を差し入れてみる。
いつもなら微妙に嫌がるそぶりを見せるくせに、今日は素直に差し出されるモモの頭。
みやじゃなくてごめんねって頭の中でつぶやきながら、肌触りの良い羽を撫でてやった。

水分を喉に通すと、少しだけ咳は収まったみたいだった。
一時的なものだとは分かっているけど、ちょこっとだけホッとする。

「…オフの日、なのに、ごめん」
「それはもものセリフ」

さっきから、二人して謝ってばかり。
みやはみやで、仕事が休みの日なのにとか、お出かけの約束が立ち消えになっちゃったとか、そんなことを気にしてて。
それより、早く治って欲しい。ももが願うのはそれだけだよ、みや。
お茶を飲むために起き上がっていたみやが、またゆるゆるとベッドに横たわる。
首のあたりとか、ここ数日でさらに細くなったんじゃないかな。
瞼を閉じて、また寝るつもりらしいみやの髪の毛にそっと指を通す。
じんわりと指先に感じる熱は、平常時より少しだけ高い。
しばらくそうしていると、みやの手がゆっくりとこちらに伸びてきた。
どうしたの?って言うつもりで握ってみると、みやが浅い呼吸のまま喋り出す。

308 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/16(月) 00:33:07.73 0

「最近さ、ももがいない時、モモ、めっちゃ鳴くんだよ、ね」
「うん」
「なんか、すごい、優しーの、鳴き方」
「……うん」

繋がった手はそのままに、視線はモモへ。
心なしか、モモの目が丸くなってるように感じた。

「慰めて、くれてんのかな、って」

まあ、うちの気のせいかもしれないけどね、って言うみやの声は、少し寂しそうに響いた。

『気のせいじゃ、ないもん……』

項垂れた様子のモモが、ぽつりとそう呟いた。
ああ、そうか。
この言葉だって、ももにしか届いてないんだ。

「ほら、なんか、ももってたまにさ……モモのこと、うちより、分かってそう、じゃん?」
『みや……』

うちも、もっとモモの言ってることとか分かればいいのにねって。
そんな風に弱々しく笑わないでよ、みや。
そんな風に切なげに泣かないでよ、モモ。

「モモはさ、みやのことすっごく心配してるよ」
「ホント?」
「ホントのホント。小指賭けてもいい」

それはマジだ、ってみやの表情が少し和らいだ。
温かいものがじわりと体に広がって、気づいたら口をついていた言葉。

「……モモの言ってること、もっと知りたい?」
「……え?」

モモと目を合わせると、いいの?ってモモが羽を広げる。
いいよ、ほら。
小さく頷いてみせると、モモがぽつりと鳴いた。

『みやに、早く良くなってほしい』

モモが言うままを口にする。

『それで、またいっぱい、撫でてほしいの』

モモの気持ちも、みやに全部届けばいいなって。

『……みや、大好き』

言い終えると、モモはさっと羽で頭を覆ってしまった。
鳥は鳥なりに照れがあるんだな、なんて考えていたら、熱っぽいみやの手が触れた。

「それ、モモが、言ってんの?」
「そうだよ」
「そっかぁ……」

言いながら、みやがふわりと目を細める。
よかった、ってしみじみと呟くと、繋がっていたみやの指先が更にきゅっと絡まってきた。

309 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/16(月) 00:33:34.06 0

「で、ももは?」
「……えっ」
「ももは、言ってくんないの?」

みやの掠れた声に、ふと自分が何を言ったのかを自覚する。
いや、あれは。
モモが言ったことをそのまま形にしただけであって。
くるくると頭を回る言い訳めいた言葉。
でもきっと、みやが求めてるのはそんなことじゃなくて。

「もも?」
「ぅ、ぁー……」

急かすように、みやの指先に力が強まるのを感じた。

「……ももだって、大好き、だもん」

遅れて耳に届く自分の声に、頬がさあっと熱を持つ。
何言わせるのって思ったけど、ふやけるみやの表情を見てたらそんなことも言えなくなった。

「モモも、ももも、好きだよ」

体調が悪いのもあって、ちょっとだけ潤んでるみやの瞳。
そんなんで微笑むの、ずるい。
背後で、パタパタと小さい羽ばたきの音が聞こえた。

『モモもっ! モモも好き!』
「はは、モモ、喜んでんの?」
「……たぶん」
『みやっ! みやっ!』

みやの言葉に、完全に舞い上がるモモ。
すっかりいつもの調子を取り戻したみたいで、でも……なんかちょっと、面白くない。

「……みや」
「ん?」

まだ無理はさせられないから、みやの脇あたりに腕を回す。
ほんのりとしたみやの体温が、パジャマ越しにも伝わってきた。
そのまま緩く抱きしめると、みやからもやんわりと抱きしめ返されて。

『ちょっとおぉっ』

モモの不満げな声が背中にビシバシぶつかってくるけど、さらりと全部受け流す。
ごめんねモモ、あとでちゃんと構ってあげるから。
心の中でそう言って、みやの体に回した腕に力をこめた。