雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 迷いの森のミヤビ 6
220名無し募集中。。。2018/03/18(日) 13:48:40.810

・・・
 
「ねぇミヤ。もう一つ食べてもらいたいものがあるんだけど、いいかな?」
サキはなぜか若干呆れたような含み笑いをした。

ミヤビが快く引き受けると、マーサとユリナは食卓の奥に見える部屋へと消えてしまい、チナミとリサコは丸太小屋の外へ行ってしまった。

「何? 何が始まるの?」
「それは見てのお楽しみ」
サキは今度は楽しげに笑った。
 

やや暫くして、正装をしたユリナが再び食卓に現れた。

「これから本日限定のスッペシャルメニューをお持ちいたします。
食材はたった一つなんですが、焼き加減をお選びいただけます。
よく焼き、半ナマ、ナマ、どちらがよろしいですか?」

あまりに突然のことに驚き、言葉が出ない。
何が出てくるのかわからないが、慣れない土地で火の通っていないものを食べるのは怖い。お腹を壊してしまっても困る。

「じゃあ、よく焼きで」
「かしくまりました!」
「くま?」
ユリナは再び奥の部屋へと戻ってしまった。サキは笑いをかみ殺している。
 
目の前の台所には誰もいない。
今調理をしているわけではないようだが、マーサとユリナがいる奥の部屋からは物音と一緒に話し声が聞こえる。
「一体何が始まるの?」
サキは「まぁまぁ。見ればわかるって」と宥めた。

 
数分後ユリナが再び食卓に現れ、「おまたせいたしました」と元気のいい声が部屋の中に響いた。

あちらをご覧ください、という声に従い奥の部屋を見ると、ユリナと同様に正装をしたマーサが、おもちゃの木馬に腰かけたモモコを押しながらミヤビの前で立ち止まった。
 
「こちら、スッペシャルメニューの“焼きももち”です」
マーサとユリナが声を合わせると、モモコは木馬から降り、ミヤビの真正面の席に座った。

「ごゆっくり」
 
サキが言うと、3人とも小屋の外へと行ってしまった。

221名無し募集中。。。2018/03/18(日) 13:51:36.650

「はっ?」

あまりに唐突でミヤビは混乱した。
だが、同時に久々に見るモモコの姿に思わず見惚れていた。
陶器のような白い肌。濃く長い睫毛。すっとした鼻。可愛らしい唇。どれもこれもモモコそのものだ。
それでいて穏やかな落ち着きのようなものを身につけたようにも感じる。

当の本人はどこかのお姫様のような服装をして、静かに目を伏せていた。
どうやらモモコの方から声を発するつもりはないらしい。

「久しぶり」
「……うん」
「モモの服すごく可愛い。お姫様みたい」
モモコは眼を泳がせると、小さく「ありがとう」と呟いた。耳が真っ赤に染まっている。

「食べ物が出てくるんだと思ってた。その、焼きももちって。焼きもちのこと?」
「……スッペシャルメニューだってば」
「何かあったかな。だって何年も会ってなかったわけだし」
「ミ…ミヤのバカっ! ミヤはモモに会えなくて平気だったんでしょ」
「そんなわけないじゃん、ミヤだって会いたかったよ?」
「それはみんなに、でしょ! モモはその一括りじゃんか」

そんなことないよ、と言いかけたが思いとどまった。久しぶりに会えたというのに、しかも、モモコは先程までずっと席を外していたせいでまだ会話らしい会話もできていないのに。
なぜかモモコは機嫌損ねている。いや、焼きももちになっている。
膨らませて割ってやるべきか、そのまま食べてやるべきか。

 
わざわざあんな演出をして他の5人が席を外したということは、モモコのこの状態を知っているということだ。どうにかしてくれ、という意味なのかもしれない。

「どうしてモモは一括りだなんて思うの?」
「だってミヤ、さっきみんなとすごく楽しそうだったもん」
「見てたの? そうだね、久々だったからすごく楽しかったかな」
「ほら、やっぱり。モモなんていなくてもミヤは楽しいんだもんね」
モモコは口を尖らせた。何故ここまでややこしいことになっているのか全然わからない。

「さっき、モモは毎日鏡のところ行ってるって聞いたよ」
「それはさぁ……ミヤのことが気になるからに決まってんじゃん」
モモコは机をどんと叩いたあと、でも、と続けた。
「鏡の向こうにいるミヤはモモの知らない子と楽しそうにしてた」
「えっと、モモはミヤが楽しそうにしてるのが、嫌なの?」
「嫌っていうか……」
そう言うと、そのままごにょごにょと語尾を濁らせた。

 
焼きももちと名乗って自ら出てくるのだから妬いているのも自覚しているのだろう。
先程の話からするとどうやらモモコはミヤビが自分以外の人と楽しそうにしているのが気にかかるらしい。

222名無し募集中。。。2018/03/18(日) 13:53:55.960

率直に面倒くさい、とミヤビは思った。
村でも楽しいことは少なからずあったし、ここに来てからの時間もとても楽しかった。
でもそれは、モモコがその場にいるかどうかに左右されることではない。本当はきっとモモコも理解しているはずだ。

だから今モモコに必要なのは正論を突きつけることではなく、焼きももちになっているモモコ自身をそのまま受け入れることだろう。
 
「妬いてるモモ、すっごくかわいい」
「……バカにしないで」
「してないよ。ホントに思うの。ねぇ、ミヤがここに来ようとしてるって、モモがみんなに教えてくれたんでしょう?」
「……ぅん」
モモコはこくりと頷いた。
「それ聞いた時すっごく嬉しかった。忙しくても毎日鏡のところまで行ってるって話も嬉しかったんだよ?」

モモコは俯いたままちらりとこちらを見た。黙ったままだが、ミヤビの次の言葉を待っている様子だ。
これなら行ける、とミヤビは勢いをつけた。

「ミヤがこの森に来るのずっと待っててくれたんでしょ?いつ来てもいいように毎日鏡のとこ行って。
来るってわかったら迷わないようにユリナのお迎えまで付けてくれたんだよね」
「……そーだよ」
「ミヤが早く森に来ないから。モモの焼きももちがこんなに膨らんじゃったんだね」
「…うん。遅いよミヤ。モモちゃん待ちくたびれちゃった」
「ごめんね」
モモコは柔らかく笑った。

そのまま立ち上がると、「何? ぎゅーしたいって? 仕方ないなぁ」とにやけながら抱きついてきたので、そのまま抱きしめ返した。

 
こんなに甘えん坊だっただろうか。
他の5人がお化粧をしたり背が伸びたりして大人になったなと感じた分、モモコは化粧っ気もなければ身体もさほど大きくないので余計に幼く見えるのかもしれない。

223名無し募集中。。。2018/03/18(日) 13:56:59.680

そんなモモコが何やらとても愛おしく感じて掻き抱いた時、ごつんと窓を叩く音が聞こえた。
その音がする方を見やるとチナミとリサコが気の抜けた顔をしていた。

取り繕う間もないまま、5人が小屋の中へと戻ってきてしまった。
「はいはい。ごちそうさま」
マーサはパンと手を合わせた。
「えっやだ。みんな見てたの」
「ぜーんぶ見てたよ。…ねぇモモいつまでミヤにくっついてんの」
「ははーん。さてはチーちゃん、羨ましいの?」
モモコはミヤビの腕に絡みつき頬を擦り寄せた。
「はぁ? そんなんじゃないし!」

チナミはぷいと横を向くと、「ねぇ!アレ完成させに倉庫いこ!」と声を上げた。
「いいね! じゃあ、よーいどん!」
モモコの掛け声に、サキとミヤビ以外の5人が一斉に小屋を飛び出して行ってしまった。

 
「えっ走るの?!」
ミヤビも一緒に駆け出そうとしたが、体がついていかなかった。

一気にいろんなことがあって随分と前の話のような気がするが、今日は夜中から森の中を歩き回っていたのだ。
早くも筋肉痛が身体中を襲っていた。

「いいよ、無理しなくて。疲れてるでしょ。
あの人達元気すぎるの。モモなんてスカートのままだし」
ミヤビは呆気にとられていたが、サキは平然としていた。こういうことには慣れているのかもしれない。

そのままミヤビはサキと一緒に歩きながら倉庫のある場所へと向かった。
 

「チナミが言ってたアレって何?」
「家の外に看板あるんだけど今は仮置きなの。
いつかミヤが森にきたら完成させようって本物は倉庫にあるんだ」

サキの話を聞いて、ミヤビは急に涙が出そうになった。
いろんなところでみんなに我慢をさせてきてしまったような気がする。
ずっとみんなを待っていたようで、実はみんなを待たせていたのだとひしひしと感じた。