Pretty Liar > 第5話 Here's Looking at You
奏と楓は、クランクアップとこれまでの共同生活に
乾杯をする。本当を見てほしいと言いながら、
着飾りたくて嘘をつく面倒な女。それが自分たち。
互いに隠していた心と嘘を見られ、見てしまったから
こそつける嘘がある。一緒にアイドルという美しい
嘘をつこうと話す奏に、楓は深く頷くのだった。
乾杯をする。本当を見てほしいと言いながら、
着飾りたくて嘘をつく面倒な女。それが自分たち。
互いに隠していた心と嘘を見られ、見てしまったから
こそつける嘘がある。一緒にアイドルという美しい
嘘をつこうと話す奏に、楓は深く頷くのだった。
撮影中 | |
---|---|
楓 | 『きっと、あれでよかったのでしょう。だって…… こうして私たちは、かけがえのない家族になったのですから |
監督 | はい、オッケー!楓ちゃん、最後まで完璧だったよ! これで全シーン撮影終了。お疲れさまでした。 |
アパート | |
奏 | 長いようで短かったけれど……。 この部屋とも、これでお別れね。 |
楓 | ええ、そうですね。 目を閉じれば、いろんな思い出がよみがえってきます。 振り返りながら、軽く一杯……。 |
奏 | 荷物、ある程度纏めておきましょう。 出発直前になって慌てるのは、嫌だもの。 |
楓 | 奏ちゃんは……本当に頼りになりますね。くすん……。 |
奏 | ……ま、こんなものかしら。 帰りに、事務所へのお土産を買っていかないとね。 |
楓 | 荷物がなくなると部屋の印象が変わって…… 私たち、この部屋に慣れていたんだなって、そう思いますね。 |
奏 | ええ。 最初は正直、不安だったし……途中いろいろあったけれど。 楓さんとの生活、悪くなかったわ。 |
楓 | ふふ、ありがとうございます。 さ、奏ちゃん。今度こそ……少し、お買いものに出ましょう。 |
奏 | 買い物? ……って、ああ、そういうこと。 グラスだけ荷物から出して、仕方ないわね。つき合うわ。 |
楓 | 私は……嘘つきだったみたいです。 |
幻想を抱かれることに疲れていて…… ありのままを見せたい。それが私の表現なのだと、 そう思っていました。 | |
けれど、実際の私は、失望される覚悟さえ、できていなかった。 | |
奏 | それは……やっぱり貴女が、アイドルだということでしょう。 ファンの期待に応える、それがアイドルにとって、 失くしてはならない一番の芯だもの。 |
その結果、この撮影だって、完璧にこなしてみせた。 悔しいわ。私よりよっぽど、貴女の方が綺麗に嘘をつく。 | |
いいじゃない。非力にみせて、弱ったふりをして、純情ぶって。 自分でついた嘘さえ忘れて、これが本音だと言ってしまう。 ……ああ、貴女って、本当に魅力的な女。 | |
楓 | それは、褒めてもらえたのでしょうか? |
奏 | ええ、もちろん。 やっぱり貴女は……私が憧れた、高垣楓。 |
楓 | 奏ちゃん……。 |
奏 | ……本当は、私にだってあるのよ。 ハダカの自分を見せて楽になりたい。 さらけ出して、理解されて、屈服したいっていう欲望が。 |
でも、プライドが邪魔をするの。 本当に自分に呆れるわ。 でも、それはきっと、貴女も同じ。 | |
私も貴女も、誰にでも肌を許すような安い女ではないでしょう。 だから、せめて着飾るのよ。美しい嘘を。 いつか、暴かれる日を待ちながら、ね。 | |
楓 | 奏ちゃん……案外、ロマンチストなんですね。 |
奏 | ええ、そうよ。 実は私、夢見る少女なの。 |
フランス最終夜 | |
楓 | まずは、クランクアップと。 ここまでの共同生活に、乾杯。 |
奏 | ええ、乾杯。 |
奏 | 本当を見てほしいと言いながら、着飾りたくて嘘をつく。 私たちは、どこまでも面倒な女。 |
楓 | ここでの毎日の中で、いっぱい見られて、見てしまいました。 お互いが隠していた心と、嘘を。 |
奏 | ええ。貴女の弱さと怠惰は、私が見ている。 |
楓 | 奏ちゃんの憧れと純情は、私が見ています。 |
奏 | だからこそ……ねぇ、楓さん。 |
楓 | はい、なんでしょう? |
奏 | 一緒に嘘をつきましょう。アイドルという、美しい嘘を。 私と……ユニットを組んでくれますか? |
楓 | ええ、よろこんで。 |