◆qqtckwrihのSSのまとめです。完結した作品および、新作告知、Wiki限定連載等を行っております(ハル SS Wiki)

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――――【 夏休み3日目 北港村 】


…ザッ!

乙女剣士「う〜んっ…!着いたぁっ!」ノビノビッ

魔法士「うひゃあ〜…暑いっ!」ジリジリ


馬車商人「ははは、お疲れ様でした。」

馬車商人「僕はここで別れるけど、また見かけたら声でもかけておくれよ」


乙女剣士「はいっ。ありがとうございました!」

魔法士「ありがとうございましたっ」



 
 
 
 
馬車商人「じゃあ、またどこかで」ニコッ

パカッ、パカッパカッパカッ………

………



乙女剣士「…」

魔法士「…」

乙女剣士「……うん。ツイてたとえいえば、ツイてたね私たち」

魔法士「うんうん。予定より全然早く着いたしね!」

乙女剣士「…でも、あの時のはやっぱり情けなく思っちゃう」ハァ

魔法士「あの人も言ってたけど、成長の糧なんだよきっと」



 
 
 
乙女剣士「それはそうなんだけどね…」

魔法士「それに、僕から見たら乙女剣士の行動は凄いし、少しかっこいいと思うよ」

乙女剣士「そ、そっかな?」

魔法士「うん。僕がああいう状況でも、動けたかどうか…。乙女剣士は凄いよ!」

乙女剣士「そ、そっか……」


魔法士「今はパーティなんでしょ。だから、色々気にしないで前へ進もうよ」

魔法士「…って、いつもの乙女剣士なら言うかなきっと!」


乙女剣士「む…」

乙女剣士(…最初乗り気じゃなかったのに、一歩踏み出したら魔法士が凄いイキイキしてる)



 
 
 
魔法士「…で、これからどうすればいいんだろう?」

乙女剣士「あ、とりあえず…。船の受付があるはずだから、そこ探さないと」

魔法士「港村って言っても、人多いし、船も結構数があるなぁ…」キョロキョロ

ザワザワ…ガヤガヤ……


乙女剣士「村っていうのは昔の名残で、今は人口も倍以上になってるし、街ってほうが正しいかも。」

乙女剣士「…船の技術の発展で、港の有用性があがって、ここから世界各地への船も出るようになったし」


魔法士「へぇ、そうなんだ」


乙女剣士「そうなんだって……。」

乙女剣士「学校の授業で、歴史について北港村のこと習ったはずなんだけど…」



 
 

 
魔法士「歴史は苦手だから…へへ……」

乙女剣士「…」

魔法士「そ、それより船を探そうよ!このチケットに、船の名称も記載されてるはずだし」

ゴソゴソ……

乙女剣士「そうね。出発が何時か先に調べないと…。」


魔法士「えーとね……」ペラッ

魔法士「……13時に、港のDエリアから発航する船みたいだね」


乙女剣士「Dエリアって、向こう側か…。」

乙女剣士「まだ10時過ぎだし、3時間は暇な時間ってことか」
 



 
 
 
魔法士「何かして時間つぶさないとね」

乙女剣士「う〜ん…」


タタタタッ……ドンッ!!


魔法士「うわっ!?」グラッ

乙女剣士「きゃっ…!?」ヨロッ…


通りすがり「……ってぇな、人が多いんだから気をつけろ!」

タタタタタッ……

………



魔法士「あっ!す、すいません……」

乙女剣士「ちょっと、ぶつかったのはそっちで……!」

魔法士「……も、もう姿が見えないよ」

乙女剣士「…むぅ、治安が悪い」



 
 
 
魔法士「はは……」

魔法士「…」

魔法士「…って、アレッ!?僕のチケットがない!!」


乙女剣士「えっ!?」

魔法士「い、今さっきまで手に持ってたチケット!」バババッ

乙女剣士「落ちてないの!?」

魔法士「な、ないよっ!あれっ……!」


乙女剣士「…」

乙女剣士「……い、今の男じゃない!?」


魔法士「!」


 
 
 
乙女剣士「…行くわよ!完全に見失う前に、探そう!」ダッ!

魔法士「う、うんっ!」ダッ!

乙女剣士「ここで諦めたら、全部が無駄になっちゃうんだから…!」

魔法士「絶対に見つけないと…!」


タッ…タタタタタッ…!!

………
……




 
 
 
 
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――――【 港の路地裏 】 
 

通りすがり「…へへ、ラッキーラッキー」ペラッ

通りすがり「このチケットなら、割と高値で売れるな……。」

通りすがり「冒険ブームか知らないが、冒険者者気取りの若いガキが増えて、商売もしやすくて……」


乙女剣士「…しやすくて?」ボソッ

魔法士「はぁ…はぁ……」ゼェゼェ


通りすがり「うおっ!?」ビクッ!


乙女剣士「や、やっと見つけた……。」ゼェゼェ




 
 
 
通りすがり「て、てめーらどうして俺の場所が!」


魔法士「…そのチケット、僕の魔力が強く付いてたから…ある程度分かったんだ」

通りすがり「は?」

魔法士「僕は魔術師だから、自分の魔力を追うくらいのことならできるんだ」ヘヘッ

通りすがり「はぁっ!?」

魔法士「さすがに時間がたったらダメだけど、すぐに追いかけたから見つけられたんだよ」

通りすがり「…んなバカな」


乙女剣士「…その辺の人のものなら盗めただろうけど、私たちからは逃がさないんだから」

魔法士「でもなんか、盗賊やらに縁があるなぁ……」アハハ…



 
 
 
 
通りすがり「…」


乙女剣士「この狭い路地だけど、魔術師と剣士の私二人は相手に出来ないでしょ」チャキッ

通りすがり「逃げても魔法で撃たれる…ってか?」

乙女剣士「そういうこと。さっさとチケットを渡してくれる?」


通りすがり「…」

通りすがり「くはは……」ニヤッ


乙女剣士「…なに笑ってるの」

通りすがり「そりゃ、普通の相手だったらな!」ダッ!

ダダダダダッ!!

乙女剣士「む、向ってきた!?」



 

 
通りすがり「ほら、チケットは返すぜ!!」バッ!

ヒラヒラッ……


乙女剣士「魔法士、拾って!」

魔法士「う、うんっ!」

タタタッ…


通りすがり「…っと、隙ありぃっ!」

乙女剣士「えっ…」

通りすがり「…」ニヘラッ

…サワサワサワッ…

乙女剣士「……っ!!」ゾクッ!

乙女剣士「きっ…!きゃあああっ〜〜!?」



 
 
 
通りすがり「チケットはいらないが、別のモン受け取ったぜバーカ!」

乙女剣士「へ、変態〜〜っ!!このぉぉぉっ!!」ビュッ!

…ヒョイッ!


通りすがり「これでも元拳闘家の端くれ、そうそう当たらねぇよアーホ!」

乙女剣士「なっ…!」

通りすがり「じゃあな、冒険者気取りの間抜けさんたちっ!」


タァンッ!タァンタァンッ…!


タタタタッ……

………
… 
 

乙女剣士「……さ、触られたうえに逃げられたぁ〜〜!!」ヘナッ

魔法士「で、でもチケットは取り戻したよっ!結果おーらい!」



 
 
乙女剣士「…っ!」
 
…ゴチンッ!

魔法士「」

乙女剣士「それはそれでいいけど、そういうことじゃないぃ!」

魔法士「り、理不尽な…」ズキズキ

乙女剣士「うぅ〜…」グスッ


魔法士「そ、それにしてもみんな盗人って身軽なんだねぇ」

魔法士「壁同士が狭いとはいっても、壁蹴りで凄い速度で消えていったよ…」



 
 
 
乙女剣士「落ちぶれた冒険者が、技術を悪用するのなんて珍しくないからね…」

乙女剣士「だけど、またため息が……」ハァ…


魔法士「…ま、まぁまぁ!元気出していこうよ!」

乙女剣士「うん、元気出す……」グスッ…

魔法士「…うんっ」

乙女剣士「…」ハァ


…………
……




 
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――――【 Dエリア前のレストラン 】


魔法士「なんだかんだで、13時まであと1時間だね」

乙女剣士「30分前には乗るから、このレストランであとはのんびりしてようか」

魔法士「だね」


乙女剣士「…」

乙女剣士「……最初は、冒険者っぽい旅行的なものかなって思ってたんだけどね」
 
乙女剣士「なんか、人助けしたり盗まれたり、さ、触られたり……」ドヨーン

乙女剣士「冒険者より冒険らしい冒険になってきた気がする…」


 
 
 
魔法士「本当の冒険者になったら、こんなこと日常茶飯事なのかなぁ」

乙女剣士「ココより治安が悪い場所や、魔物が渦巻くフィールドだってあるしね」

魔法士「うぇ……」


乙女剣士「冒険学園で技術学んでたから、結構やれるんじゃないかって思ってたけど…」

乙女剣士「どっちの盗人に対しても、私は完敗しちゃったし…」

乙女剣士「実際に、既に色々してる人らには敵わないんだなぁって思い知らされた感……」


魔法士「まぁね…。出会った二人はどっちも冒険っていうか、どっちも経験値が違うんだろうね」

乙女剣士「経験値かぁ…」

魔法士「僕らは冒険学園の中でしか知らないことも多いし、今回のはいい経験になりそうだね」

乙女剣士「…魔法士は、次からチケット盗まれないように」

魔法士「あう……」



 
 
 
トコトコトコ…

ウェイター「…失礼します。コーヒーの無料サービスをやっております。」

ウェイター「よければいかがでしょうか」ペコッ


乙女剣士「あ、それじゃお願いします」

魔法士「じゃあ、僕も」


ウェイター「かしこまりました。それではー……」

ウェイター「…」

ウェイター「……げっ!?」


乙女剣士「…」

乙女剣士「……あっ!」ハッ!



 
 
 
魔法士「ど、どうしたの?」

乙女剣士「こっ、このぉぉぉっ!!」バッ!

…グイッ!

ウェイター「ぐえっ!く、くるじぃ……!」


魔法士「ちょっ、どうしたの乙女剣士!?」

乙女剣士「どうしたの、じゃない!この顔を忘れたの!?」


魔法士「え?この顔って……」

魔法士「……あっ!」ハッ


ウェイター(通りすがり)「へへ…。ひ、久しぶりっすね……」



 
 
 
乙女剣士「こ、こんな場所で働いているなんていい度胸〜……!」

乙女剣士「さっきのお返し、させてもらおっかなぁぁ…」ゴゴゴゴッ


ウェイター「…こ、ここでやめてくれ!騒ぎ起こしたらクビになっちまうって!」

乙女剣士「クビになるような騒ぎを起こしたのは、アンタでしょーが!」

ウェイター「悪かったって!マジで俺、クビになるわけにはいかねーんだよ!」

乙女剣士「じゃあ、ここでの食事代をアンタの財布から出して無料にする?」

ウェイター「は…」

乙女剣士「それじゃなかったら、ここでさっきやったこと全部大声で叫ぶけど」ギロッ

ウェイター「……わわ、わかった!わかったって!」

乙女剣士「本当に?」

ウェイター「わかったっつーの!だから離せって、他の客が見てるだろ!」



 
 
 
乙女剣士「…今すぐ、支払い分出して」

ウェイター「し、仕方ねぇな!」ゴソゴソ

…チャリチャリンッ!

乙女剣士「…」

ウェイター「こ、これだけありゃ足りるだろ!」

乙女剣士「…よろしい」

ウェイター「じゃあ離してくれ!」

乙女剣士「あと謝って。私と魔法士に…」ジロッ


ウェイター「…っ!」

ウェイター「……わ、悪かったですゴメンなさいでした!」


 
 
 
乙女剣士「…よろしい、離してあげる」パッ


ウェイター「うおっ、げほげほっ…!」ゴホッ…

ウェイター「な、なんて女だよ……」


乙女剣士「人の盗んで、触って、それがいうセリフ…?」

ウェイター「そんなに触られたの根に持ってるのかよ」

乙女剣士「当たり前でしょっ!」

ウェイター「触られた触られたっつーけどね、お前は発展途上と言うべきか、それほど感触が」

乙女剣士「うるっさぁぁあい!!!」ビリビリ!



 
 
 
ウェイター「……おぉ怖い。退散退散」クルッ

タタタタタッ……


乙女剣士「…もう、なんなのアイツ!ムカっつく〜〜〜!!」

魔法士「発展途上って何のこと?」

乙女剣士「あ、アンタもうるっさぁぁい!!今からなんだから放っておいてっ!」グスッ


…ゴチンッ!!


魔法士「」


ドサッ…!


…………
……





 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして Dエリア出港受付所 】

ガヤガヤ……


魔法士「えーと…受け付けはここかな」

乙女剣士「私たちは買わなくていいから、チケットだけ見せればいいのかな?」

魔法士「わかった」

トコトコトコ……

魔法士「すいませーん」


受付「どうかされましたでしょうか?」



 
 
 
魔法士「これは北方大地行きの船で間違いないですか?」

受付「北方大地にあります、氷結漁港行きの船になります」

魔法士「えっ?」

受付「…どうかされましたか?」

魔法士「えっと、これは北方大地行きのですよね?」

受付「そうですが…」

魔法士「今、氷結漁港行きと……」


乙女剣士「…ちょっと待って魔法士、北方大地が港名とかだと思ってたりしないよね」

魔法士「…えっ?」

乙女剣士「…うそでしょ」

魔法士「え……?」



 
 
 
受付「えーと……」


乙女剣士「あ、すいません。チケットは既にあるんですけど、これはどこで見せれば?」

受付「あちら側に見えます船の前にいる添乗員へお渡しください」

乙女剣士「ありがとうございます」

受付「いえ」ニコッ


乙女剣士「じゃあほら、行くよっ!」

…グイッ!

魔法士「わわっ、引っ張らないでよ!」


…………
……




 
 
 
 
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――――【 北方大地(氷結漁港)行きの船の部屋 】
 

…ドサッ!

魔法士「ふわぁ〜!いい部屋だねえ!」

乙女剣士「ペアチケットだったから分かってたけど、やっぱり一緒の部屋かぁ」

魔法士「…嫌だった?」

乙女剣士「嫌とかじゃないけどさ」

魔法士「…」


乙女剣士「…それより、魔法士!そこにちょっと座りなさい」

魔法士「はい」

トコトコ…ボスンッ


 
 
 
乙女剣士「まさか、歴史だけじゃなく地理もダメだったとは思わなかった…」

魔法士「あぁ、さっきの……」

乙女剣士「…いい?今後のためにもしっかり覚えといて」

魔法士「うん?」


乙女剣士「私たちが住んでいる王都は、中央大地…セントラルランド」

乙女剣士「そして今から行くのは、北方大地…ノースランド」


魔法士「うん」


乙女剣士「それに、東、西、南のイーストランド、ウェストランド、サウスランドがあるわけ」


魔法士「うん」




 
 
 
乙女剣士「その大地それぞれに、首都が存在しているの」

乙女剣士「中央大地なら、王都。北方大地なら、大雪国。」

乙女剣士「東、西、南はそれぞれ太陽国、月下国、砂漠国…みたいにね」


魔法士「う、うんっ」


乙女剣士「だから、北方大地っていう国は存在しない。わかった?」


魔法士「うん…」


乙女剣士「私たちが住む王都は、その東西南北の中心に位置しているから、賑わってるワケ」

乙女剣士「……覚えた?」


魔法士「う、うん……」



 
 
 
乙女剣士「そういう話の中で、ちょっと私が危惧してることが1つあるんだけど…」

魔法士「何?」

乙女剣士「紙幣価値のこと…。」

魔法士「紙幣価値?」

乙女剣士「今、私たちの世界はゴールドっていう単価でお金を扱ってるでしょ?」

魔法士「そうだね」


乙女剣士「それは一部を除いて、世界共通なんだけどさ」

乙女剣士「やっぱり、国ごとに紙幣価値が違うの。例えば、料理一品1万ゴールドの国だってあるし…」


魔法士「そ、そんなに!?」

乙女剣士「逆に、全く価値の持たない国もあるのは知ってる?」

魔法士「あるの…?」



 
 
 
乙女剣士「はぁ、やっぱり知らないか…。」

乙女剣士「例えば1つあげれば、砂漠国がそれに当て嵌まるかな。」

乙女剣士「あそこは、お金じゃなくて水のほうが貴重なの。だから、紙幣価値は全く皆無って感じ」


魔法士「じゃあ、僕みたいな魔術師が水魔法を使えば儲かるってことじゃ!」

乙女剣士「それは無理」

魔法士「そうなの?」

乙女剣士「砂漠国は、極端に水魔力が少ないから…。水魔法自体が難しいはず」

魔法士「あ…!」

乙女剣士「っていうか、魔法に関してはアンタの方が知ってるはずなんだけど」


魔法士「そ、そうだった…。」

魔法士「火の強い場所では水魔力が、水の場所では火の魔力が大気中に少ないから発動できないんだ…」



 
 
 
乙女剣士「…そういうこと。私は疎いけど、魔術師のアンタなら感じ取れるんでしょ?」

魔法士「一応ね。魔力を感じるのはきちんとできないと、その場に応じた魔法使えないし…」

乙女剣士「さすがに色々苦手でも、そこだけは大丈夫か…」

魔法士「はは…。」


乙女剣士「ま、お話はこんな感じかな。とにかく、国と大地については覚えといてね」

魔法士「うん」

乙女剣士「この船は、北方大地の氷結漁港行きだから、博物館までは少し歩くはず」

魔法士「また歩くんだ…」

乙女剣士「それと、北側は寒いから服も買わないとね〜…」

魔法士「お金が…」

乙女剣士「だから紙幣価値も心配してるの…。北側は詳しくないから」



 
 
 
魔法士「僕らの目的の槍のある、博物館はどこにあるの?」

乙女剣士「北方大地の首都。"大雪国"ね」

魔法士「!」

乙女剣士「さすがに馬車か何かは出てると思うけど、近いなら歩くから」

魔法士「だよね〜…」


乙女剣士「幸い、さっきの盗人から食事代は貰えたし、馬車に乗ってもタダだったから、」

乙女剣士「ここまでお金は使ってないから丸々あるけどさ……」

乙女剣士「向こう側で何かあったら、戻ってこれなくなっちゃうし」

乙女剣士「出来るだけ、温存しておきたいの」


魔法士「…乙女剣士ってば、僕と同じ冒険初心者なのに…色々と考察力もあって凄いね」

乙女剣士「普通だと思うんだけど…」



 
 
 
魔法士「はは…そっか……」

乙女剣士「…ま、今は休もっか。到着まで2日はかかるから」

魔法士「け、結構遠いんだなぁ……」


乙女剣士「まぁね〜」

乙女剣士「…」

乙女剣士「…あっ、その前に船の中に確か、販売所あったよね?」バッ


魔法士「確か、ロビーの近くにあった気がする」

乙女剣士「そこで先に、大雪国の服売ってないか見ちゃおうか」

魔法士「大雪国っては言うけど、今は夏だよ?そんなに違うもんなのかなぁ?」



 
 
 
乙女剣士「…私たちの王都は季節もあるけど、それぞれの地方じゃ季節がないのは珍しくないから」

魔法士「あぁ、確かに……」

乙女剣士「向こう側に行って、いきなり猛吹雪だったら嫌だし…。」

魔法士「じゃあ、販売所を見に行こうっか」

乙女剣士「うんっ」


………
……






 
 
 
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――――【 物品販売所 】

ガヤガヤ……


魔法士「わっ、結構広いね」

乙女剣士「人もそれなりに多いし…」

魔法士「防寒具どこかな」キョロキョロ

乙女剣士「えーと…」


販売員「…何かお探しですか、お客様」ペコッ



 
 
 
乙女剣士「あ、えっと…。大雪国へ行くので防寒具を探しているん…で……」

乙女剣士「…」

乙女剣士「…はいっ?」ピクピク


販売員(通りすがり)「…あっ」


魔法士「あっ」


乙女剣士「なっ…!」

乙女剣士「なんでアンタがココにいるの〜〜っ!!」


販売員「いや〜…。俺、あの港に住んでるんだけどバイトで食いつないでるんだよ」ハハハ


乙女剣士「ハハハじゃなぁいっ!」



 
 
 
販売員「まぁまぁ。もうさっきのはさっきので終わったし、いいじゃないか」

乙女剣士「う〜…!」

販売員「それよか、二人ともこの船に乗ったのか」

乙女剣士「関係ないでしょ!」

販売員「で、目的は何?二人でデート旅行?って、冒険者モドキだっけ?」

乙女剣士「は、話しを聞いてない」ピクピク


魔法士「博物館に、魔法の槍を見に行くんですよ〜」

販売員「へーっ、そういやそんなのあったな」


乙女剣士「ふ、普通に話するな〜〜っ!」



 
 
 
魔法士「だって、さっきのはさっきで終わったっていうし、いいかなって」

乙女剣士「そういう問題じゃないでしょっ!」


販売員「ははは…、嫌われたもんだ」

乙女剣士「変態盗人に仲良くしたいとは思わないでしょ普通!」

販売員「ひでぇ」

乙女剣士「はぁ……」


販売員「…えーっと、君のほうは魔法士くんと言ったか」

魔法士「なんですか?」



 
 
販売員「君は、その優しい性格はいいが少し冒険者気取りでは問題があるな」

魔法士「ふえ?」

…ポンッ

販売員「…今、君に触れた瞬間。これで君は終わりだよ」

魔法士「え?」

販売員「……ほら」スッ

魔法士「え、あっ…!?ぼ、僕の財布っ!」

販売員「ははは、本当なら盗むところだけどー……」

…ゴチィンッ!!

販売員「」プシュウッ…




 
 
乙女剣士「…イタズラだろうがなんだろうが、しないでくれる」プルプル


販売員「ってぇ〜……!」ズキズキ

販売員「おいおい、お前のカノジョ怖いな…」ボソボソ


魔法士「か、カノジョじゃないですよ…!」

販売員「え、マジ?」

魔法士「えぇ…。」

販売員「すげぇな、愛人か?」

魔法士「ち、ちがっ…!」



 
 
…ゴチゴチンッ!!

販売員「」プシュプシュゥ…


乙女剣士「魔法士に変なこと吹き込まないでくれる!」


販売員「いってぇなぁ……!」

販売員「この野郎、だまってりゃ少しは可愛いくせに…手ェ出し過ぎだ、バカ!」


乙女剣士「…その微妙な褒め、やめてくれない」

販売員「あれ?可愛いっていうと顔赤らめるって話じゃないの?」

乙女剣士「アンタに言われても、嬉しくないの!」

販売員「あぁ、魔法士くんに言われて欲しいか」



 
 
 
乙女剣士「な、なんでそうなるの!」

販売員「お?おやおや…顔が少しずつ赤くなってきたぞぉ〜、図星かぁ?んんっ?」

…ゴチンッ!!

乙女剣士「それ以上言ったら、殴る」

販売員「既に殴ってる…」ズキズキ


魔法士「あはは…。お、乙女剣士、最初の目的忘れてるよ…」

乙女剣士「あっ…」

魔法士「あの、えーと…店員さん。何て呼べばいいでしょうか」

販売員「ん、俺か…」

魔法士「はい」



 
 
 
販売員「…」

販売員(拳闘家)「……拳闘家、でいいかな。んで、何だっけ?」


魔法士「拳闘家さん、防寒具がほしいのですが……」

拳闘家「ああ、防寒具な。それなら、あそこの棚の向こう側にあるから行くといい」

魔法士「ありがとうございますっ!」

拳闘家「いやいや。一応、販売員だしな」


魔法士「じゃあ乙女剣士、行こうよ」

乙女剣士「う〜…」


 
 
 
拳闘家「またね〜」フリフリ

魔法士「はいっ」ペコッ

乙女剣士「ふんっ……」

トコトコトコ……

……



拳闘家「…」

拳闘家「……いかなる時も、油断しちゃダメってね」

拳闘家「あいつらの二人の財布から抜いた、1,000ゴールドずつ。」

拳闘家「あわせて2,000ゴールド。これくらいなら、許してくれるだろ」ハハハ


……………
………





 
 
 
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それから二人は、財布から抜かれたことを気付かずに防寒具を購入。

部屋へ戻ると、深い眠りへと落ちていった。


そして、船は進み―…………

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