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  • 128名無しの天狗 - 18/07/27 17:40:55 - ID:RDSFIzoSpA

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    「分かるように、なったと思いますよ。」

     飾りのオレンジはへたの周囲が歪だったので切っておいた。ついでに反対側をギザギザ
    にしてみた。濃く煮出した紅茶は十分に冷やしてある。オレンジピールは砂糖を多めにして
    ブランデーに漬けておいたものを使い、ミルクは一般的なのらショットよりも少なめ。

     これが良いと思う自分だけのレシピ。必要はないちょっとした遊び。そもそも不合理の
    塊であるのらショット。私は今、この時間を楽しんでいる。

     首飾りとしてぶら下がる真空管を軽く掌で包み込む。内部には頼み込んで貰い受けた
    彼女の一部が保存されている。彼女はもう私達の戦場に立つことは無いが、こうして私の
    ことを見守ってくれている。

    「感謝していますよ。ありがとうございます。」
    「それなら待っていてくれてもいいんじゃないかな?」

     ノック後間も無く部屋に入り込んできた人物は別に無礼者でも不法侵入者でもない。
    呼んだのは私で、待ち侘びていた私の親友だ。

    「私を待たせたのですもの。それとも何もせずただ待てとでも?20分。」
    「素直にごめんね。すぐそこで“紅茶狂い”に捕まっちゃってね。連絡入れるよりも来た
    方が早かったの。…そう拗ねないで、ねっごめんね?」

     特別拗ねているわけではなく、反応を見るための演技も入っている。それでもしっかり
    乗ってくれるので、その他愛もない応酬に頬が緩んでしまう。

     私は彼女のグラスを用意し、自分と同じものをつくる。こちらはミルクを多めにしておく。

    「アクセントにこの真空管を入れてみるのはどうですか。オレンジの装飾とはまた違った
    雰囲気を味わえると思いますよ。」
    「それ私の一部だから。ある意味分身だから。のらショットは浴びるように飲みたいと
    思ったことはあるけど浸かりたくはないよ…。」

     彼女は戦闘部隊からは離れて別拠点で雑務をこなしている。コアの損傷が原因で視野や
    動体視力などが軒並み減少してしまい、それの再生ができない状態なのだ。破棄する必要も
    ないため後方へ送られる時に、彼女が渡してくれたものが私のお守りとなって今もここに
    あるというわけだ。今水没の危機に瀕しているが大切なものである。

     真空管を入れられないように二つのグラスを握り締め、それはそれとして分離物の違い
    を観察している彼女は相も変わらず元気そうで何よりだ。

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