第1種放射線取扱主任者が放射能とは何か、人体に対する影響は、法令はどのようになっているのか、についてわかりやすく解説します。マスコミやネット上の間違ったり、偏った情報に流されまくっている状況に憂慮しています。何か質問がある場合、掲示板を利用してください。気づいたら分かる範囲内でご解答します。

緊急時の措置編集する

最終更新： marsh_p marsh_p 2013年06月09日(日) 01:25:02履歴

放射線を取り扱う施設において発生する緊急事態は、1)放射線の漏洩による外部被ばくの増大、2)放射性物質による放射能汚染とそれに伴う内部被ばくの増大、の二つに分けて考えることができます。
これらは作業者のみでなく一般公衆にも大きな影響を与えるので、災害防止のための予防措置がもっとも重要です。緊急時の中には、作業者のみに影響を与える程度の状況が圧倒的に多いので、緊急時の対応としては、それらの影響を事業所外まで拡大させないような措置をとることも大切です。
また、緊急事態が生じた場合においても対処できるような適切な対応があらかじめ決められていることも必要であり、かつそれらを実行できるよう教育訓練が十分なされていることが重要です。

放射線事故時の対応

予防措置
放射線事故を防ぐのに有効な予防措置を以下に示します。

放射線事故を防ぐのに有効な予防措置
  1. 事故時の処置の検討およびマニュアル化（安全教育の徹底）
  2. 施設・設備の管理状況の定期点検等（無用な放射線被ばくや放射能汚染の防止対策の実施）
  3. 放射性物質の厳重な保管・管理（放射性物質の紛失。盗難の防止）
  4. 発火性、引火性、爆発性物質等の持ち込み制限（災害の拡大防止）
応急措置
放射線障害のおそれがある放射線事故が発生したときには、あらかじめ決められた対応手順に従って冷静に行動することが重要です。基本となる考え方が放射線事故対策の３原則といわれるものです。
放射線事故対策の３原則
�＾汰簡飮�の原則・人の生命および身体の安全を第一に考え、人命救助を優先します。
・物的損害は第二です。
��通報の原則・近くで作業している者に事故が起こったことを知らせます。
・火災等現場の状況が危険でない場合、管理担当者の指示を受けてから行動します。
・現場が危険な状況では、事故現場から直ちに退避します。
�３搬臻瓢澆慮饗�・事故の状況に応じて危険の程度を判断し、線源の始末や汚染拡大の防止措置を行ないます。
・汚染発生原因を除去します。
・汚染地点の密閉・閉鎖を行ないます。
・現場への立入禁止、汚染物品の持出禁止を実施します。
・眼、外傷などの除染措置を行ないます。
・緊急作業時での適切な保護具を着用するとともに、被ばく時間の短縮に努めます。
応急措置は、この３原則ですべてではありません。さらに、作業者からの事故状況の聴取、現場のモニタリングなどが必要です。
その際、線量当量の評価は安全側に行なう必要があります。これを過大評価の原則といいます。前述の放射線事故対策の３原則と併せて、応急措置の４原則と呼ばれています。
事故発生の原因調査を行なった後、再発防止の措置を講ずることはいうまでもないが、異常事態が発生した場合には、法的規制にしたがって原子力規制委員会などの関係官庁へ、通報・報告等を行わなければなりません。

火災、地震時の対応

放射性物質は危険物の一種であるので、火災や地震などの災害と重なると大きな被害を被害を与えます。このためには一般危険物と放射性物質を別の場所に収めるようにするなどの細かい注意が必要です。
予防措置
放射線施設における火災、地震時における放射線事故防止のための予防措置があります。
火災、地震時のための予防措置
  1. 発火性、引火性、揮発性薬品、溶媒の適性・厳重な保管・管理
  2. 強酸、強アルカリ、有機溶媒等の分別貯蔵
  3. 防護具、非常口、電気・ガス等の定期的点検（非常口の確認は重要）
  4. 消火器等の種類、数量および設置場所の適正化
  5. 設備・備品等の転倒防止、地震・火災同時発生時の対策
  6. 鉛ブロック、コンクリートブロック等重量物の転倒防止
  7. 棚の各段に桟をつけるなどの落下防止措置
  8. 非常口への通路等退避路の確保
非密封RI施設における消火設備は、放水による汚染拡大の恐れがあるので、慎重に検討する必要があります。
設備の充実のみでなく、作業者の自覚も重要な要素です。定期的な防災訓練を実施し、作業者の行動を各自が十分把握していることが必要です。
応急措置
火災、地震時においても、放射線事故時の応急措置の４原則が重要です。
火災時における応急措置
  1. 初期消火を行なうとともに大声で近くの作業者に通報します。
  2. 人命尊重の原則は忘れてはなりません。避難とともに人命救助についても考慮しておきます。
  3. 火元に近い放射性物質、発火性物質については、初期消火の前に可能なら遠ざけて起きましょう。
  4. 電気を切り、ガスの元栓を締めます。余裕があれば消火活動を行ないます。
  5. フード内の消火は排気ダンパを閉めてから行ないます。
  6. 容器に入った線源についても、できるだけ火元から移動させます。（線源保管容器に用いられている鉛は融点が327度であり、溶けて線源が露出する場合があります。また、α、β線源では窓が薄いので、密封性が破れる場合も考えられます。）
  7. 移動した線源は、盗難等の防止のため、縄張り等をしたうえで見張り人を置き、安全に管理します。
  8. 消火は、消化砂、二酸化炭素消火器、粉末消火器などを用います。（非密封RI施設では、散水による消火はできるだけ避けます）

地震が活性した場合は、以下の措置をとることが必要です。
  1. 初期微動が収まったら、できるだけはやく火災発生の防止措置をとります。
  2. 線源等の転倒、他の物品による破壊等を防止するため、移動等の措置をとります。
  3. 物品の転倒などで非常口等の退路をふさがれる恐れがあるので、非難します。
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