第1種放射線取扱主任者が放射能とは何か、人体に対する影響は、法令はどのようになっているのか、についてわかりやすく解説します。マスコミやネット上の間違ったり、偏った情報に流されまくっている状況に憂慮しています。何か質問がある場合、掲示板を利用してください。気づいたら分かる範囲内でご解答します。

体内に取り込まれたRIからの被ばくを内部被ばくといいます。これに対し、対外に放射線源があって、それからの被ばくを外部被ばくといいます。

内部被ばくの原因

自然放射線源からの内部被ばく
ヒトの体内にも少量ではありますが放射性核種が存在しています(自然放射線源)。そのう40Kは全身の細胞内液にほぼ均等に存在し、年間0.18 mSvの被ばくをもたらします。
この値はヒトの自然突然変異の誘発にも寄与しているとされています。
ラドン(222Rn)およびその娘核種による内部被ばくも高くなっています。ラドンガスは地殻やコンクリートなどから発生し、空中に娘核種とともに存在しています。
吸入により肺に沈着しますが、娘核種からはα線が放出されるため、被ばくは局所的に非常に高まっています。
それ以外の原因による内部被ばく
自然放射線源以外からの内部被ばくには、職業被ばく、医療被ばく、核実験。原子力産業の事故などによるものがあり、放射線障害をもたらした例も報告されています。
ラジウム鉱山の鉱夫がラドンガスを吸入したことで発生した肺がんやラジウムを摂取した夜行時計文字盤工における骨腫瘍の増加は有名です。
医療被ばくで障害の発生した例としてはトロトラストがあります。トロトラストは二酸化トリウム(ThO2)からなる造影剤で、第二次世界大戦前から大戦中にかけて主に軍隊で使われていました。この造影剤の血管注入を受けた患者ではトロトラストが肝臓などに沈着し、トリウムから出るα線のために慢性の肝臓障害、さらには肝臓がん等が高率に発生しました。

RIによる内部被ばくの特徴

内部被ばくによる生物影響も外部比なくの影響と差はないが、内部被ばくには次のような特徴があります。
RIの摂取経路
RIは消化管、呼吸器、皮膚、粘膜などから吸収され体内に入りますが、RIの化学的性質が吸収を左右します。一般に水溶性、脂溶性のものは消化管から吸収されやすいです。
呼吸器から取り込まれるものとしては222Rnや133Xeなどのガス状のもの、および粉じん状のものがあります。
131Iも揮発して気道から吸収されやすくなるので、注意が必要になります。
239PuO2のような粉じん状のものは気道粘膜に沈着しやすくなります。
RIの分布
RIが体内に摂取された場合、核種や化学形によってその体内分布は違ったものになり、主として被ばくする組織・器官も異なることになります。
トリチウムはトリチウム水(HTOまたはT2O)の状態で摂取されると体内組織にほぼ均等に分布し、被ばくも全身に均一となります。突然変異などがその影響として現れます。
セシウムは筋肉や全身に分布し、白血病や不妊の原因になります。
ヨウ素が甲状腺に選択的に取り込まれるのは、甲状腺ホルモンの合成にヨウ素が必要となるからです。こうして甲状腺の被ばくのみが高くなり、甲状腺がんや甲状腺機能低下となります。
鉄は骨髄に集積します。
ラドンやその娘核種は肺に沈着しやすくなっています。
ストロンチウムなどはCaと代謝が似ていて骨への沈着が多くなります(骨親和性元素)。
可溶性のプルトニウムが粉じんとともに吸入されると肺に沈着します。

核種と体内の集積部位およびその影響
3H (HTO)全身突然変異など
14C全身突然変異など
32P白血球減少、(白血病は可能性のみ)
40K全身突然変異など
45Ca白血病
59Fe骨髄白血病
60Co肝、脾、下部消化器肝がん
65Zn肝、骨肝がん、骨腫瘍
90Sr骨腫瘍、白血病
131I甲状腺甲状腺がん、甲状腺機能低下
137Cs筋肉、全身白血病、不妊
222Rnおよび娘核種肺がん
226Ra骨腫瘍、白血病
232Th肝、骨、肺肝がん、骨腫瘍、肺がん、白血病
238U腎、骨、肺骨腫瘍、肺がん、白血病
239Pu肝、骨、肺肝がん、骨腫瘍、肺がん、白血病
241Am骨腫瘍、白血病
RIの物理的性質
体内に摂取された核種から出る放射線の線質(α線、β線あるいはガンマ線のうちどの放射線を放出するか)、そのエネルギー、物理的半減期も被ばく線量に大きな影響をもたらします。
α線を出す核種は体外にあれば全く被ばくの危険性はありませんが、体内に取り込まれると、α線のLETおよびRBEが大きいので、取り込んだ細胞に大きな影響を与えます。
実効半減期
体内に取り込まれたRIは血流によって移動します。その分布は核種によって異なります。また、排泄の経路も腎からの尿、消化管からの糞便、呼吸器からの呼気、あるいは皮膚からの汗などさまざまあります。甲状腺におけるヨウ素、骨におけるストロンチウムなどは長く沈着して排泄されにくくなっています。
体内量の実際の減少は次式で表される実効半減期Teff、有効半減期)に従います。
1/Teff = 1/Tp + 1/Tb
実効半減期に関与するものとして、物理的半減期(Tp)と生物的半減期(Tbがあります。
生物的半減期はある組織や臓器中のRIの量が、代謝、排泄などのために最初の値の1/2に減少するまでの時間を示しています。
摂取時の処置
種々の核種を体内に大量に摂取した場合には、それに適した薬剤の投与によって排泄を促進する努力がなされます。
たとえば、3Hの摂取に対しては利尿剤、131IにはKI、226Raの経口摂取には下剤、239Puにはキレート剤(DTPA)の静脈投与といった処置がなされます。

RIの変換効果

[3H]チミジンはDNA合成を行っている細胞(S期にある細胞)のみに取り込まれ、DNAを構成する塩基の1つとして入り込みます。
このようにRIが細胞内とくにDNAの構成元素として取り込まれた場合、その原子はいつか放射性壊変を起こして他の原子となるので、その時点でそれをもったDNAは損傷を受けることになります。このような元素の変換に基づく化学変化によって損傷が起こることを元素変換効果と呼びます。
また、取り込まれたRIの崩壊による放射線照射と元素変換効果によって細胞死にまで至った場合を自殺効果といいます。
元素変換によりDNAに生じた損傷、あるいはその修復に際しての修復エラーなどにより突然変異が生ずることがあります。RIの壊変によるこのような突然変異をとくに変成(壊変)突然変異といいます。

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