第1種放射線取扱主任者が放射能とは何か、人体に対する影響は、法令はどのようになっているのか、についてわかりやすく解説します。マスコミやネット上の間違ったり、偏った情報に流されまくっている状況に憂慮しています。何か質問がある場合、掲示板を利用してください。気づいたら分かる範囲内でご解答します。

放射線管理に用いる測定器としては、環境における放射線レベルを評価するためのサーベイメータおよび設置型モニタ、ならびに、個人被ばく線量を測定するための個人モニタがあります。
種々の測定器が開発されていますが、ここでは、一般的に使用されている機器について、主に測定器としての性質を述べます。

サーベイメータ

a) 電離箱式サーベイメータ
低線量率では感度が低いので、線量率の高い場の測定に用いられます。壁材を空気等価物質で作成したものは照射線量率(または空気吸収線量率)の測定に用いられます。γ(X)線が測定対象になります。(主な表示単位:Sv/h)
b) GM計数管式サーベイメータ
1 cm線量当量のエネルギーレスポンスが電離箱式サーベイメータ、および、エネルギー補償型NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータに比べて劣ります。
分解時間が長いので、計数率が高くなると数え落としが顕著になります。表面汚染測定用に多く使用されます。β線、γ(X)線が測定対象になります。(主な表示単位:cpm, Sv/h)
c) NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータ
エネルギー補償したものはq cm線量当量のエネルギーレスポンスはよく、エネルギー補償をしていないものは低エネルギーで感度が高くなり、1 cm線量当量のエネルギーレスポンスが劣ります。
エネルギー・カットオフレベ(50 keV付近)ル以下では応答しません。γ(X)線が測定対象になります。(主な表示単位:cpm, Sv/h)
d) 中性子線用サーベイメータ
BF3比例計数管、3He比例計数管などを検出器としたサーベイメータで、熱中性子線が測定対象になります(cpm)。
適当な形状をしたポリエチレン等の減速材でこれらのサーベイメータを覆った構造をもつものは中性子レムメータと呼ばれ、中性子エネルギーの広い範囲にわたり1 cm線量当量率に近似した値を示します。
e) その他のサーベイメータ
β線を測定対象としたものに、プラスチックシンチレーション式サーベイメータがあります。α線を測定対象とし、薄い(< 1 mg/cm2)入射窓をもつ、比例計数管式、あるいは、ZnS(Ag)シンチレーション式α線用サーベイメータがあります。
3Hおよび14Cからの低エネルギーβ線を対象として、薄い(0.15 mg/cm2)入射窓をもつガスフロー比例計数管を用いた3H/14Cサーベイメータがあります。
ベリリウム等のうすい入射窓とNaI(Tl)シンチレータを用いた125Iサーベイメータが開発されています。125I以外のエネルギーの大きいγ線による影響を少なくするため、シンチレータを薄くします。

方向特性
放射線がどの方向から検出器に入射するかにより指示値が変化します。とくに、GM計数管式サーベイメータでは電離箱式サーベイメータ、NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータと異なりγ線が検出器の長軸方向から入射すると感度が幾分低下します。

時定数
GM計数管式サーベイメータなどの計数率計で放射線を測定する際、測定レンジに応じて適当な時定数が自動的に設定されるようになった機種が多いですが、測定器によっては時定数を設定する必要があります。
時定数を大きくすると、計数率が変化した場合、計数率計の応答が遅くなります。逆に、時定数を小さくすると応答速度は速くなりますが、計数率が低い場合、針の動きが激しく指示値が読み取りづらくなります。したがって、一般的には、計数率が低い場では時定数を大きく設定して、時間をかけて測定し、計数率の高い場では時定数を小さくして測定します。

個人モニタ

a) フィルムバッジ
測定範囲はおよそ0.1〜50 mSv
対象とする放射線の種類、エネルギーにより次のように分類されています。
X線用フィルムバッジ(20〜80 keVのX、γ線が対象)
γ線用フィルムバッジ(0.1〜3 MeVのX、γ線が対象)
広範囲用フィルムバッジ(20 keV〜3 MeVのX、γ線、およびβ線、熱中性子が対象)
高速中性子用フィルムバッジ(高速中性子が対象)
現像・定着処理後、濃度計(デンシトメータ)による黒化度の測定を行て線量評価します。
b) 熱ルミネセンス線量計(TLD)
測定範囲はおよそ0.01 mSv〜10 Sv
再使用が可能で、高原子番号の素子は感度が高いので個人モニタとして用いられています。低原子番号の素子は人体軟組織等価に近いのでファントムを用いての線量測定に使用されます。
c) ポケット線量計
電離箱構造であり、壁材として空気等価物質が使われているので照射線量に対するエネルギー特性が優れています。測定値が直読できます。
測定範囲は0.01 mSV〜5 Sv程度。通常は最大目盛1 mSv程度のものがよく使用されています。γ(X)線が測定対象。
d) 半導体式個人モニタ
デジタル表示で直読します。測定範囲はおよそ0.01μSv〜100 mSv
Si半導体が使用されています。γ(X)線が測定対象。エネルギー・カットオフレベル(50 keV付近)以下では応答しません。
e) 蛍光ガラス線量計
測定範囲はおよそ0.01 mSv〜10 Sv
1 cm線量当量に対するエネルギー特性は0.01〜1 MeVの範囲で比較的平坦(+10%)です。
γ(X)線、β線、熱中性子線が測定対象

設置型モニタ

施設に固定して使用するモニタには、線量率測定用、空気または水中放射能濃度測定用および表面汚染測定用とがあります。
モニタは一般的に検出限界が高く、また、測定精度も低くなっています。
核種分析も困難で、とくに、α放出核種、3Hの測定は容易ではありません。多くの場合、全β、全γ計数率として評価します。
このため、事故監視としての役割が主であり、正確な情報を得るためには、測定試料をサンプリングして、各種の測定装置を用いて解析する必要があります。
各種モニタに一般的に使用されている検出器を以下に示します。

設置型モニタの検出器
種類検出器
排水モニタβ線:プラスチックシンチレータ、液体シンチレータ
γ線:液浸型NaI(Tl)シンチレータ
ダスト・モニタα線:ZnS(Ag)シンチレータ
β線:GM計数管
γ線:NaI(Tl)シンチレータ
(ろ紙集塵装置と検出器の組み合わせ。なお、ラドン等の天然放射性核種の影響を補正する装置では、測定結果の応答が遅い)
ガス・モニタβ(γ)線:空気通気型電離箱(ダスト除去後の空気を測定)
β線:プラスチックシンチレータ
γ線:NaI(Tl)シンチレータ
ハンド・フット・クロス・モニタβ線:大口径GM計数管を複数配置、プラスチックシンチレータ
γ線:NaI(Tl)シンチレータ
α線:ガスフロー比例計数管
エリア・モニタγ線:電離箱、NaI(Tl)シンチレータ、GM計数管、Si半導体検出器
中性子線:BF3比例計数管、3He比例計数管(減速材付)

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